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魂魄編:ペンダント
失くしたペンダント
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「……あれ?」
翌朝、モニカより早く目覚めたアーサーが、顔を洗っていたときにはじめて気が付いた。
「ペンダント……」
鏡に映る彼の首には、いつもつけているペンダントがなかった。
お風呂に入るときは外しているので、そのまま首にかけるのを忘れたのかな、と思い脱衣所を探すが、そこにもない。寝室や調合室、リビング、ダイニング……家中探してもどこにもない。
アーサーは顔を真っ青にしてモニカを起こした。
「ん……どうしたの、アーサー……。この世の終わりみたいな顔して……」
「モニカ! どうしよう! セルジュ先生のペンダント、どこにもないんだ!!」
「えっ!?」
モニカはベッドから飛び起きて、兄と一緒にペンダントを探した。やはり、どこにもない。
「ねえ、藍、朝霧! ペンダント知らない!?」
《知らぬ。そもそも昨日は、我も朝霧もずっとアイテムボックスの中に閉じ込められていたのだぞ》
《そういうこった!! 暗ぇ空間に閉じ込められてた俺に分かるわきゃねぇだろぉ!!》
「そ、そうだよね、ごめん……」
藁にも縋る思いで杖と脇差に尋ねたが、手掛かりはなし。
「ルアンから帰ってきた時にはちゃんと付けてたよね? 僕……」
「た、たぶん……」
「だめだ、リーノのお屋敷でペンダントを付けたのは覚えてるんだけど、それ以降一度も自分を鏡で見てないから、記憶の目に残ってない……」
アーサーとモニカは頭を抱えた。
アーサーがペンダントを付けていることが当たり前すぎて、モニカも彼がペンダントをつけていたかどうか、記憶に残っていない。
「と……とりあえず、町を探してみない? もしかしたら昨日町を歩いてたときに落としちゃったのかも」
モニカは、ひどく落ち込んでいるアーサーの肩を揺らした。
アーサーにとって、セルジュとロイの魂魄が入っているペンダントは、モニカの次に大切な宝物だった。それを失くしてしまったことがショックで、アーサーはいつになく狼狽えている。
モニカの提案に、アーサーは涙を拭いながら頷いた。
アーサーとモニカは家を出て、町中歩き回った。
道の溝を覗き込んだり、花木が生い茂る花壇の中へ入っていく双子を、町人たちがジロジロと見ながら通り過ぎた。
双子は日が暮れるまで町中を歩き回ったが、昨日行った店にも、行き来した道にも見当たらなった。
誰かが拾って保管してくれているかもしれないと考え、冒険者ギルドやよく行く店にも声をかけた。
「ペンダントですか? いいえ、こちらには届いていませんね」
「そうですか……」
冒険者ギルドのお姉さんに尋ねたが、彼女は首を横に振った。
「捜索依頼を出しますか?」
「そうだね、出しとこうかな……」
「かしこまりました。捜索依頼はG級の依頼ですので、依頼料金貨1枚です」
アーサーとモニカはしょんぼりしながら金貨を支払い、冒険者ギルドを出た。
その後足を運んだ、レストランの店主も、雑貨屋の店主も、服の店主も、ペンダントを見かけていないと言った。
「こんばんはー……」
諦めそうになる気持ちを必死にこらえて、双子は行きつけのカフェへ入った。このカフェは、老若男女問わず人気がある。もしかしたら何か情報があるかもしれない。
二人が入店したことに気付き、店主のお兄さんは目を細めた。
「ん? ……ああ、アーサーとモニカか。久しぶりだな。いつものフレンチトーストか?」
「あ……ううん。ちょっとね、失くし物をしちゃって……」
俯き加減にアーサーが呟くと、お兄さんは「失くし物?」と首を傾げた。
「うん。金色のペンダントなんだけど……。たぶん昨日落としちゃって。お兄さん、見かけたりしてない?」
「金色のペンダント、ね……。いや、知らないな」
「お客さんからそういう話聞いてない……?」
「んー。今日はずっと忙しかったから、あんまりお客さんと話ができてなかったんだが……。少なくとも俺の耳には入ってないな……」
「そっか……。ありがとう……」
頼みの綱だったカフェでも目撃情報なし。アーサーは深いため息をつき、そんな彼の背中をモニカがさすった。
トボトボと店を出ようとすると、お兄さんが「アーサー、モニカ」と呼び止めた。
「ん……?」
「なあに、お兄さん……」
「今日一日メシも食わずに歩き回ってたんだろ。ゲッソリしてるぞ。座んな。なんか作ってやるから」
「気持ちは嬉しいけど……食欲がないんだ……」
「ありがとう、お兄さん」
「……じゃあ、飲みもんだけでも飲んでけ。お前らがそんなゲッソリしてると、町のみんなが心配するからな」
「……」
「とりあえず座りな。ちょうど新作ジュースがあるんだ。味見してくれよ」
お兄さんはそう言ってニカっと笑った。
アーサーとモニカは目を見合わせ、困ったように笑う。正直そんな気分ではないのだが、お兄さんの親切を無下にしないでおこうと、二人は椅子に座った。
翌朝、モニカより早く目覚めたアーサーが、顔を洗っていたときにはじめて気が付いた。
「ペンダント……」
鏡に映る彼の首には、いつもつけているペンダントがなかった。
お風呂に入るときは外しているので、そのまま首にかけるのを忘れたのかな、と思い脱衣所を探すが、そこにもない。寝室や調合室、リビング、ダイニング……家中探してもどこにもない。
アーサーは顔を真っ青にしてモニカを起こした。
「ん……どうしたの、アーサー……。この世の終わりみたいな顔して……」
「モニカ! どうしよう! セルジュ先生のペンダント、どこにもないんだ!!」
「えっ!?」
モニカはベッドから飛び起きて、兄と一緒にペンダントを探した。やはり、どこにもない。
「ねえ、藍、朝霧! ペンダント知らない!?」
《知らぬ。そもそも昨日は、我も朝霧もずっとアイテムボックスの中に閉じ込められていたのだぞ》
《そういうこった!! 暗ぇ空間に閉じ込められてた俺に分かるわきゃねぇだろぉ!!》
「そ、そうだよね、ごめん……」
藁にも縋る思いで杖と脇差に尋ねたが、手掛かりはなし。
「ルアンから帰ってきた時にはちゃんと付けてたよね? 僕……」
「た、たぶん……」
「だめだ、リーノのお屋敷でペンダントを付けたのは覚えてるんだけど、それ以降一度も自分を鏡で見てないから、記憶の目に残ってない……」
アーサーとモニカは頭を抱えた。
アーサーがペンダントを付けていることが当たり前すぎて、モニカも彼がペンダントをつけていたかどうか、記憶に残っていない。
「と……とりあえず、町を探してみない? もしかしたら昨日町を歩いてたときに落としちゃったのかも」
モニカは、ひどく落ち込んでいるアーサーの肩を揺らした。
アーサーにとって、セルジュとロイの魂魄が入っているペンダントは、モニカの次に大切な宝物だった。それを失くしてしまったことがショックで、アーサーはいつになく狼狽えている。
モニカの提案に、アーサーは涙を拭いながら頷いた。
アーサーとモニカは家を出て、町中歩き回った。
道の溝を覗き込んだり、花木が生い茂る花壇の中へ入っていく双子を、町人たちがジロジロと見ながら通り過ぎた。
双子は日が暮れるまで町中を歩き回ったが、昨日行った店にも、行き来した道にも見当たらなった。
誰かが拾って保管してくれているかもしれないと考え、冒険者ギルドやよく行く店にも声をかけた。
「ペンダントですか? いいえ、こちらには届いていませんね」
「そうですか……」
冒険者ギルドのお姉さんに尋ねたが、彼女は首を横に振った。
「捜索依頼を出しますか?」
「そうだね、出しとこうかな……」
「かしこまりました。捜索依頼はG級の依頼ですので、依頼料金貨1枚です」
アーサーとモニカはしょんぼりしながら金貨を支払い、冒険者ギルドを出た。
その後足を運んだ、レストランの店主も、雑貨屋の店主も、服の店主も、ペンダントを見かけていないと言った。
「こんばんはー……」
諦めそうになる気持ちを必死にこらえて、双子は行きつけのカフェへ入った。このカフェは、老若男女問わず人気がある。もしかしたら何か情報があるかもしれない。
二人が入店したことに気付き、店主のお兄さんは目を細めた。
「ん? ……ああ、アーサーとモニカか。久しぶりだな。いつものフレンチトーストか?」
「あ……ううん。ちょっとね、失くし物をしちゃって……」
俯き加減にアーサーが呟くと、お兄さんは「失くし物?」と首を傾げた。
「うん。金色のペンダントなんだけど……。たぶん昨日落としちゃって。お兄さん、見かけたりしてない?」
「金色のペンダント、ね……。いや、知らないな」
「お客さんからそういう話聞いてない……?」
「んー。今日はずっと忙しかったから、あんまりお客さんと話ができてなかったんだが……。少なくとも俺の耳には入ってないな……」
「そっか……。ありがとう……」
頼みの綱だったカフェでも目撃情報なし。アーサーは深いため息をつき、そんな彼の背中をモニカがさすった。
トボトボと店を出ようとすると、お兄さんが「アーサー、モニカ」と呼び止めた。
「ん……?」
「なあに、お兄さん……」
「今日一日メシも食わずに歩き回ってたんだろ。ゲッソリしてるぞ。座んな。なんか作ってやるから」
「気持ちは嬉しいけど……食欲がないんだ……」
「ありがとう、お兄さん」
「……じゃあ、飲みもんだけでも飲んでけ。お前らがそんなゲッソリしてると、町のみんなが心配するからな」
「……」
「とりあえず座りな。ちょうど新作ジュースがあるんだ。味見してくれよ」
お兄さんはそう言ってニカっと笑った。
アーサーとモニカは目を見合わせ、困ったように笑う。正直そんな気分ではないのだが、お兄さんの親切を無下にしないでおこうと、二人は椅子に座った。
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