上 下
475 / 718
画廊編:4人での日々

ガチャガチャ

しおりを挟む
画廊"夢見"を思う存分満喫したジュリア、ウィルク、ビアンナ先生、カーティス先生。ジュリアはウキヨエを3点と、簪を14本購入した。簪をそんなに買ってどうするの、とモニカが尋ねると、ジュリアは少し照れながらこう言った。

「リリー寮の女子にプレゼントしようかと思いまして」

「わー!!素敵ー!!」

「きっとみんな喜ぶよ!!」

(アーサー様とモニカ様の画廊を流行らせるには貴族の力が必須ですわ。リリー寮ほどの家系である女子たちの手に渡り話題になれば、きっとバンスティン中から注目を浴びる。グレンダあたりは影響力がありそうね。彼女とマーサにはキモノも贈りましょうか)

「ねえモニカ様?グレンダとマーサはキモノが似合うと思いません?私、彼女たちにキモノも贈りたいですわ。一緒に選んでいただけますか?」

「えー!キモノもぉ!?ジュリア、グレンダとマーサのことが大好きなんだねー!」

「ええ、とっても好きですわ」

「いいよいいよー!一緒にえらぼー!!」

アーサーとモニカはジュリアがただ単純に、友人にプレゼントをしたいだけだと思っていた。実力の有無で人によって態度を変えていた彼女が、リリー寮の女子全員にプレゼントをすると聞き、双子はキャッキャと喜んだ。ジュリアもそれに合わせて笑っていたが、そばで見ていた先生たちには彼女の真意が見え透いていた。

「…本当に、アーサーとモニカのことを慕っていますね、ジュリア王女は」

「ええ。まあ、命の恩人ですからねえ」

ウィルクには彼女の考えていることを読み取ることができなかった。だが、姉の笑顔がどこか嘘くさいとは思った。

(僕はもうお姉さまの本当の顔が分かりません。笑顔も、高慢な態度も、怒っている顔ですら、今ではすべて嘘に見える。お姉さま、あなたの本当の顔は、一体どこにあるのでしょう)

ウィルクはウキヨエを1枚と、ジッピンの雑貨を3つ購入した。雑貨は扇子、"ゲタ"と呼ばれているジッピンの靴、そして箸。どれもアーサーに勧められたものだった。

「お兄さまに選んでいただいたジッピンのもの…。一生、大切にします!」

「気に入ってもらえて嬉しいなあ」

「…えへへ」

双子が卒業してから、ウィルクが弟のように甘えた表情をすることはなくなった。彼らの前でしか甘えなかったので当然だ。ウィルクはいつも、王族として毅然に振舞うよう心掛けていた。
久しぶりにアーサーとモニカに会えたウィルクは、緊張の糸がほどけてしまったかのように、ずっと表情が緩んでいる。そんな彼をビアンナ先生とカーティス先生は、柔らかい目で見つめていた。

ビアンナ先生はウキヨエをとても気に入ったのか、5枚も購入していた。どれも鳥が描かれていたものだった。

「ビアンナ先生は、鳥が好きなんですか?」

「ええ。好きです。かわいらしいではありませんか」

「ふふっ」

「どうして笑うのです?」

「いえっ!すみません!ビアンナ先生が鳥を好きだって知れて嬉しくて」

「そうですか。…また、鳥の絵を仕入れたら教えてください」

「はい!」

カーティス先生は何も買わなかった。彼がご所望なのは、芸術品ではなく異国の武器だった。

「おいアーサー!どうしてジッピンの武器を仕入れなかったんだ!」

「あのですねっ、カタナはジッピンでも限られた人しか買うことができなくてぇ…」

「カタナ!?カタナっていうのか!!お前は持ってんのか?!」

「も、持ってますけど…」

「おお!見せろ!!」

カーティス先生がうるさいので、アーサーはため息をつきながら自分のカタナをアイテムボックスから取り出した。見慣れない刀身に先生は「おおおお!!」と歓声をあげる。

「すげえ!!なんだこれは!!こんなほそっこい剣で切れるのか!?」

「はい。スルっと切れますよ。僕は好きです」

「なんだとぉぉっ!試し切りしたい!!」

「だっ、だめです!先生、画廊でカタナを振り回さないでください!!」

アーサーのカタナを、鞘に入ったままブンブン振り回すカーティス先生。アーサーが必死に止めているが、彼の軽い体では抑えきれない。見かねたジョアンナ先生が、カーティス先生の耳を掴んで店を出た。戻って来た彼は、両腕を見えない縄で後ろ手に拘束されていた。

双子の友人らしき4人を遠くから眺めながら、カユボティとヴァジーが虚ろな目で笑っていた。

「アーサーとモニカの友人…か。なるほど変人だ」

「彼らは家族かな?にしては全員髪色が違うが」

「さあね。どうだっていいが、店で暴れるのは遠慮いただきたいねえ」

「ああ。カタナを仕入れることは考えていたんだが…。やめとこう」

「そのほうが良いね。ジッピン酒もやめておいたほうが良いかな」

「…それは僕のために、仕入れて欲しいかな」
しおりを挟む
感想 494

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ReBirth 上位世界から下位世界へ

小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは―― ※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。 1~4巻発売中です。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。