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画廊編:半年後
黄緑色の欠片
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王城の一室。従者がドアをノックすると小さく返事が返ってきた。中ではヴィクス王子が寝衣のままソファに腰かけている。従者の準備が整うと立ち上がり、彼女が彼の服を着替えさせるのを薄く微笑みながら眺めている。
従者が衣装を整えているとき、ヴィクスは独り言のようにつぶやいた。
「僕はこの国で最もしあわせな人なのだろうね。でもどうしてだろう。こんなにしあわせなのに僕は満たされない。…恵まれた僕がこんなことを言ったら国民は憤るだろうね」
「いいえヴィクス王子。あなたさまに憤る国民など誰一人おりません。あなたさまは次期国王となるお方です。どうかそのようなこと、おっしゃらないでくださいまし」
「…ふふ。冗談だよ。誰がそんなこと思うものか」
「ええ、それでこそヴィクス王子でございます。今日もよくお似合いですよ。宝石よりあなた様の方がずっと輝いておりますわ」
「ありがとう。…そうだ、この指輪も嵌めてくれるかな?」
「あら、見慣れない指輪ですわね。その黄緑色…ペリドットかしら」
「そうだよ。よく分かったね」
「ええ。宝石のことはだいたい分かりますが…なぜこのような安価な宝石を…?」
「大切な人にいただいたんだ。きれいだろう?微弱だけど加護魔法がかかっているんだ」
「まあ、加護魔法…それはすばらしいですわね…。ええ…、きれいですわ…。ですが王子には少し…」
「なにかな?」
「…安価な宝石すぎるのでは…?」
「王族が安価な宝石を身に付けることはそんなにおかしいことなのかな?僕が嵌めたいと思うものを否定するほどに?」
ヴィクスの声は穏やかだった。だが、彼のまわりがひんやりとした空気に包まれる。従者はゾッとして跪き謝罪した。
「た、大変失礼いたしました!!出過ぎた真似をいたしました!!どうか命だけは…!!」
「分かってくれたのならいいんだ。でも次は気を付けてね。僕の風魔法が君の可憐なか細い首をうっかりかすめてしまうかもしれないから」
「ひ…ひぃぃっ…」
ヴィクスは怯えて震えている従者の顎に手をかけ、目を合わせてにっこり笑って見せた。従者は恐怖で目に涙を浮かべている。そんな彼女の額にキスをして、ヴィクスは静かに部屋を出た。
◇◇◇
「私の愛しいヴィクス。おはよう。よく眠れたかしら?」
「母上、おはようございます。ええ、ぐっすり」
王室へ入ってきたヴィクスに、王妃が駆け寄り愛情深く抱きしめた。ヴィクスは母を抱き返しながら王座に腰をおろしている国王と目を合わす。二人はこっそり目を見合わせ、困ったように微笑んだ。
「まったく。おまえはわしとヴィクスのどちらを愛しているんだ」
国王がそうからかうと、王妃は高らかに笑って見せた。
「ほほほ。もちろんどちらも愛しておりますわよ。同じくらいに」
「それはそれは。わしは最愛の息子に嫉妬せねばいかんのか」
「僕は父上に嫉妬しなければならないのですか?勝ち目がなくて涙が出てしまいます」
「ほっほっほ!ヴィクスは世辞がうまいのぉ」
「いいえ。僕は思っていることしか口に出しません」
「ん~。かわいい我が息子よ。わしともハグを」
「おはようございます、父上」
国王ともハグを交わしヴィクスは二人に笑顔を向けた。しばらく最愛の息子を眺めていた両親は、ふと彼の小指に目を留める。
「あら?ヴィクス、小指に嵌めている指輪はなにかしら」
「この前宝石商が売りに来たものです。気に入ったので購入しました」
「まあ…。その安っぽい黄緑色はひょっとして…ペリドット?」
「ええ。幼く光るこの宝石を一目見て気に入りました」
「…ヴィクス。それはいかん。いかんぞ。次期国王ともあろうものがペリドットなどと…」
「……」
「ええ、こんなものあなたには似合わないわ」
「ですがこれは僕が選んで…」
「嘘をおっしゃい。あなたほどの審美眼を持つ者がこのような宝石を選ぶはずがありませんでしょう。それに、王城に出入りする宝石商がペリドットなんて持ってくるはずがないわ」
「これはただのペリドットではありません。フォントメウの加護魔法がかけられており…」
「まあ、フォントメウの加護魔法。それは素晴らしいわね。あなたが持つほどなのだからさぞ強力な加護魔法なのでしょう。それで?どのような加護魔法なのかしら?」
「…魔力回復速度上昇です」
「おほほ。それはすばらしい。ですが同じ効果のものをあなたはすでに持っているわよね?それも国宝級の」
「……」
「微弱の加護魔法…そんな目に見えないちっぽけなもののために自身の価値を下げるのではありません。こんなものジュリアにでも譲ったらどうかしら?今度私があなたにぴったりの指輪を選んであげるわ」
「いいえ、僕はこれがいいのです」
「ヴィクス。いつものお前らしくない。指輪ひとつに何を意地になっておる。指輪などいくらでも持っておろう。そのような安っぽい指輪、誰が好き好んでつけるものか。捨ててしまいなさい」
「あっ」
国王はそう言いながらヴィクスの手を掴み指輪を引き抜いた。その指輪を床に落とし、目に映らないよう踏みつける。茫然とそれを見つめているヴィクスをよそに、国王は従者を呼んだ。
「おい。この指輪を捨ててくれ。そしてヴィクスに特上の指輪を持ってきてやれ」
「かしこまりました」
「……」
「さあヴィクス。公務の時間よ。突っ立っていないでお座りなさい。もうすぐあなたにぴったりの指輪が来るから」
「…父上。捨てるのだけはおやめください…」
「いいや。その執着しているところからして、捨てねば再び身に付ける気であろう」
「いいえ…。二度と身に付けないと約束します。だからどうか…」
「ならん。このような卑しい宝石を我が最愛の息子が所持していると考えるだけでも恐ろしい。そうだ。未練が残らぬよう、目の前で砕いてやろう」
「え…」
「あら。それはいいですわね」
「おい。ハンマーでこの指輪を砕いてくれ」
「かしこまりました」
「や…」
すぐにハンマーを持った従者が現れた。王室が傷つかないよう、ご丁寧に石板まで持ってきている。従者は石板に指輪を置き、容赦なくハンマーを振り下ろした。
「あっ…」
砕け散る黄緑色の宝石。その破片がヴィクスの足元に一片転がり落ちた。それを眺めるヴィクスの目は虚ろで、顔から感情が抜け落ちている。無残な姿になった指輪を見て国王と王妃は満足げに笑った。
「おほほ。これで一件落着ですわ。さあ私の愛しいヴィクス。そろそろ公務へ移りましょう」
「…はい。母上」
オヴェルニー学院から突如届いたひとつのアイテムボックス。中には微小の加護魔法が付与された指輪と、異国の茶葉、異国の版画、ルアンである意味有名な画家の絵画が入っていた。
送り主はウィルクだったが、その贈り物が誰からかはすぐに分かった。ヴィクスはどれほど嬉しかったことか。
その夜は最愛の兄姉からのはじめてのプレゼントを抱きしめながら眠りについた。夢で二人に会えた気さえした。
異国のお茶は独特な味がしたが疲れが癒されるようだった。版画と絵画はこっそり部屋に飾っている。
そしてこの日、ずっと大切に保管しておいた指輪を、双子の誕生日だからと思い切って嵌めてみた。その日彼はただ、最愛の兄姉の誕生日をこっそり祝いたくて大切な指輪を嵌めただけだった。
公務が終わり自分の部屋に戻ると、壁にかけていた版画と絵画がなくなっていた。従者にどこにやったのか尋ねると、ヴィクスが妙なものを所持していたら処分するように王妃から言われたので、暖炉の火で焼却したと返ってきた。
ヴィクスは慌てて暖炉へ駆け寄った。ちらちらと灰が舞うそこに残されたのは、かすかに残る焦げた絵の具の匂いだけだった。
その日彼らが砕いたものは宝石だけではなかった。灰にしたものは絵画だけではなかった。
誰もいなくなった寝室で、ヴィクスはソファで横になる。ぼんやりと天井を眺める瞳は枯れていた。雨すら降らない、枯れた土地。何かに助けを求めるように、ヴィクスは煌びやかなシャンデリアに向けて手を伸ばす。
「この世に生まれ落ちたその時から僕は誰よりも多くのものを持っていた。
恵まれた環境。
僕は飢えを知らない。毎日三度、食べきれないほどの食事が目の前に並ぶ。
僕は寒さを知らない。僕が入る1時間前から部屋の暖炉は焚べられ、眠る半時間前から布団が温められる。
僕は寂しさを知らない。両親からの愛情を一身に受け、まわりには僕の話し相手をする従者がたくさんいる。
僕自身も恵まれている。今では第一王位継承権を持つ者だ。能力も容姿も秀でている。…ふふ、まあ、魔力の半分を失い、こんなにやつれてしまった今では能力も容姿も秀でているとはとても言えないか。
…僕はこの国で最もしあわせな人なのだろうね。
でもどうしてだろう。こんなにしあわせなのに、僕は満たされない。飢えている。とても寒い。寂しい。惨めだ。自分が醜くて見ていられない。
恵まれた僕がこんなことを言ったら国民は憤るだろうね。いや、それこそ僕が望むことだ。
どうか国民たちよ、僕に…王族に憤ってくれ。憎んでくれ。剣を向けてくれ…早く…早く」
伸ばした手は空を掴むだけだった。ヴィクスは自嘲的に笑いゆっくりと起き上がる。ベッドへ潜り込むとぬくぬくとした布団が彼の体を温めた。
翌朝ヴィクスは爽やかな笑顔で王室へ出向く。最愛の両親と愛情たっぷりのハグをして、冗談を交わしたあといつもと変わらぬ公務につく。
従者が衣装を整えているとき、ヴィクスは独り言のようにつぶやいた。
「僕はこの国で最もしあわせな人なのだろうね。でもどうしてだろう。こんなにしあわせなのに僕は満たされない。…恵まれた僕がこんなことを言ったら国民は憤るだろうね」
「いいえヴィクス王子。あなたさまに憤る国民など誰一人おりません。あなたさまは次期国王となるお方です。どうかそのようなこと、おっしゃらないでくださいまし」
「…ふふ。冗談だよ。誰がそんなこと思うものか」
「ええ、それでこそヴィクス王子でございます。今日もよくお似合いですよ。宝石よりあなた様の方がずっと輝いておりますわ」
「ありがとう。…そうだ、この指輪も嵌めてくれるかな?」
「あら、見慣れない指輪ですわね。その黄緑色…ペリドットかしら」
「そうだよ。よく分かったね」
「ええ。宝石のことはだいたい分かりますが…なぜこのような安価な宝石を…?」
「大切な人にいただいたんだ。きれいだろう?微弱だけど加護魔法がかかっているんだ」
「まあ、加護魔法…それはすばらしいですわね…。ええ…、きれいですわ…。ですが王子には少し…」
「なにかな?」
「…安価な宝石すぎるのでは…?」
「王族が安価な宝石を身に付けることはそんなにおかしいことなのかな?僕が嵌めたいと思うものを否定するほどに?」
ヴィクスの声は穏やかだった。だが、彼のまわりがひんやりとした空気に包まれる。従者はゾッとして跪き謝罪した。
「た、大変失礼いたしました!!出過ぎた真似をいたしました!!どうか命だけは…!!」
「分かってくれたのならいいんだ。でも次は気を付けてね。僕の風魔法が君の可憐なか細い首をうっかりかすめてしまうかもしれないから」
「ひ…ひぃぃっ…」
ヴィクスは怯えて震えている従者の顎に手をかけ、目を合わせてにっこり笑って見せた。従者は恐怖で目に涙を浮かべている。そんな彼女の額にキスをして、ヴィクスは静かに部屋を出た。
◇◇◇
「私の愛しいヴィクス。おはよう。よく眠れたかしら?」
「母上、おはようございます。ええ、ぐっすり」
王室へ入ってきたヴィクスに、王妃が駆け寄り愛情深く抱きしめた。ヴィクスは母を抱き返しながら王座に腰をおろしている国王と目を合わす。二人はこっそり目を見合わせ、困ったように微笑んだ。
「まったく。おまえはわしとヴィクスのどちらを愛しているんだ」
国王がそうからかうと、王妃は高らかに笑って見せた。
「ほほほ。もちろんどちらも愛しておりますわよ。同じくらいに」
「それはそれは。わしは最愛の息子に嫉妬せねばいかんのか」
「僕は父上に嫉妬しなければならないのですか?勝ち目がなくて涙が出てしまいます」
「ほっほっほ!ヴィクスは世辞がうまいのぉ」
「いいえ。僕は思っていることしか口に出しません」
「ん~。かわいい我が息子よ。わしともハグを」
「おはようございます、父上」
国王ともハグを交わしヴィクスは二人に笑顔を向けた。しばらく最愛の息子を眺めていた両親は、ふと彼の小指に目を留める。
「あら?ヴィクス、小指に嵌めている指輪はなにかしら」
「この前宝石商が売りに来たものです。気に入ったので購入しました」
「まあ…。その安っぽい黄緑色はひょっとして…ペリドット?」
「ええ。幼く光るこの宝石を一目見て気に入りました」
「…ヴィクス。それはいかん。いかんぞ。次期国王ともあろうものがペリドットなどと…」
「……」
「ええ、こんなものあなたには似合わないわ」
「ですがこれは僕が選んで…」
「嘘をおっしゃい。あなたほどの審美眼を持つ者がこのような宝石を選ぶはずがありませんでしょう。それに、王城に出入りする宝石商がペリドットなんて持ってくるはずがないわ」
「これはただのペリドットではありません。フォントメウの加護魔法がかけられており…」
「まあ、フォントメウの加護魔法。それは素晴らしいわね。あなたが持つほどなのだからさぞ強力な加護魔法なのでしょう。それで?どのような加護魔法なのかしら?」
「…魔力回復速度上昇です」
「おほほ。それはすばらしい。ですが同じ効果のものをあなたはすでに持っているわよね?それも国宝級の」
「……」
「微弱の加護魔法…そんな目に見えないちっぽけなもののために自身の価値を下げるのではありません。こんなものジュリアにでも譲ったらどうかしら?今度私があなたにぴったりの指輪を選んであげるわ」
「いいえ、僕はこれがいいのです」
「ヴィクス。いつものお前らしくない。指輪ひとつに何を意地になっておる。指輪などいくらでも持っておろう。そのような安っぽい指輪、誰が好き好んでつけるものか。捨ててしまいなさい」
「あっ」
国王はそう言いながらヴィクスの手を掴み指輪を引き抜いた。その指輪を床に落とし、目に映らないよう踏みつける。茫然とそれを見つめているヴィクスをよそに、国王は従者を呼んだ。
「おい。この指輪を捨ててくれ。そしてヴィクスに特上の指輪を持ってきてやれ」
「かしこまりました」
「……」
「さあヴィクス。公務の時間よ。突っ立っていないでお座りなさい。もうすぐあなたにぴったりの指輪が来るから」
「…父上。捨てるのだけはおやめください…」
「いいや。その執着しているところからして、捨てねば再び身に付ける気であろう」
「いいえ…。二度と身に付けないと約束します。だからどうか…」
「ならん。このような卑しい宝石を我が最愛の息子が所持していると考えるだけでも恐ろしい。そうだ。未練が残らぬよう、目の前で砕いてやろう」
「え…」
「あら。それはいいですわね」
「おい。ハンマーでこの指輪を砕いてくれ」
「かしこまりました」
「や…」
すぐにハンマーを持った従者が現れた。王室が傷つかないよう、ご丁寧に石板まで持ってきている。従者は石板に指輪を置き、容赦なくハンマーを振り下ろした。
「あっ…」
砕け散る黄緑色の宝石。その破片がヴィクスの足元に一片転がり落ちた。それを眺めるヴィクスの目は虚ろで、顔から感情が抜け落ちている。無残な姿になった指輪を見て国王と王妃は満足げに笑った。
「おほほ。これで一件落着ですわ。さあ私の愛しいヴィクス。そろそろ公務へ移りましょう」
「…はい。母上」
オヴェルニー学院から突如届いたひとつのアイテムボックス。中には微小の加護魔法が付与された指輪と、異国の茶葉、異国の版画、ルアンである意味有名な画家の絵画が入っていた。
送り主はウィルクだったが、その贈り物が誰からかはすぐに分かった。ヴィクスはどれほど嬉しかったことか。
その夜は最愛の兄姉からのはじめてのプレゼントを抱きしめながら眠りについた。夢で二人に会えた気さえした。
異国のお茶は独特な味がしたが疲れが癒されるようだった。版画と絵画はこっそり部屋に飾っている。
そしてこの日、ずっと大切に保管しておいた指輪を、双子の誕生日だからと思い切って嵌めてみた。その日彼はただ、最愛の兄姉の誕生日をこっそり祝いたくて大切な指輪を嵌めただけだった。
公務が終わり自分の部屋に戻ると、壁にかけていた版画と絵画がなくなっていた。従者にどこにやったのか尋ねると、ヴィクスが妙なものを所持していたら処分するように王妃から言われたので、暖炉の火で焼却したと返ってきた。
ヴィクスは慌てて暖炉へ駆け寄った。ちらちらと灰が舞うそこに残されたのは、かすかに残る焦げた絵の具の匂いだけだった。
その日彼らが砕いたものは宝石だけではなかった。灰にしたものは絵画だけではなかった。
誰もいなくなった寝室で、ヴィクスはソファで横になる。ぼんやりと天井を眺める瞳は枯れていた。雨すら降らない、枯れた土地。何かに助けを求めるように、ヴィクスは煌びやかなシャンデリアに向けて手を伸ばす。
「この世に生まれ落ちたその時から僕は誰よりも多くのものを持っていた。
恵まれた環境。
僕は飢えを知らない。毎日三度、食べきれないほどの食事が目の前に並ぶ。
僕は寒さを知らない。僕が入る1時間前から部屋の暖炉は焚べられ、眠る半時間前から布団が温められる。
僕は寂しさを知らない。両親からの愛情を一身に受け、まわりには僕の話し相手をする従者がたくさんいる。
僕自身も恵まれている。今では第一王位継承権を持つ者だ。能力も容姿も秀でている。…ふふ、まあ、魔力の半分を失い、こんなにやつれてしまった今では能力も容姿も秀でているとはとても言えないか。
…僕はこの国で最もしあわせな人なのだろうね。
でもどうしてだろう。こんなにしあわせなのに、僕は満たされない。飢えている。とても寒い。寂しい。惨めだ。自分が醜くて見ていられない。
恵まれた僕がこんなことを言ったら国民は憤るだろうね。いや、それこそ僕が望むことだ。
どうか国民たちよ、僕に…王族に憤ってくれ。憎んでくれ。剣を向けてくれ…早く…早く」
伸ばした手は空を掴むだけだった。ヴィクスは自嘲的に笑いゆっくりと起き上がる。ベッドへ潜り込むとぬくぬくとした布団が彼の体を温めた。
翌朝ヴィクスは爽やかな笑顔で王室へ出向く。最愛の両親と愛情たっぷりのハグをして、冗談を交わしたあといつもと変わらぬ公務につく。
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