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合宿編:最終日
最終日のダンス
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主催者のありがたぁいお話のあとは大人も子どもも飲んで食べて騒いで笑っておおいに楽しんでいた。双子はちょいと食べ物をつまみ、音楽家の演奏に合わせてキャハキャハ笑いながら元気に踊る。それを見て貴族生徒たちも踊りたくなったのか、皿をテーブルに置いてステップを踏んだ。シリルとライラがペアになり、クラリッサは(指を折られたくないので)ダフの誘いを断りジルとダンスをした。ダフはまたアーサーにペアになってもらおうと曲が終わるのを待っていた。友人の踊っている姿を眺めるダフの瞳には、少しばかりの羨望と寂しさが滲んでいた。
(シリルはダンスが上手だな。美青年だし、ダンスパーティーではいつも女子たちの取り合いだ。…いやでも俺もこの合宿で皿を割らないくらいの手加減はできるようになったんだ…!きっと以前よりもうまくやれる気がする!)
壁際でワインを飲みながら立っていると、生徒たちが使った皿を片付けているアデーレが目の前を通り過ぎた。アデーレは踊らずに食事をしている彼を見て首を傾げる。
「ん?ダフは踊らないの?」
「あ、いや。俺はアーサーと踊ろうと思って曲が終わるのを待ってます!」
「どうしてアーサー?あの子、男の子よ?」
「女の子と踊ると指を折ってしまうかもしれないので!女性パートを踊れるアーサーじゃないとだめなんです」
「骨を?折る?なあにそれ」
アデーレはクスクス笑い、右手をちょんと差し出した。
「下手でもよければ、私が相手になるけど」
「え」
「私は他の女の子と違って骨が太いから大丈夫だと思うわ。大人だし」
「ね、姉さん…!」
ダフは泣きそうな顔で笑い、アデーレの手を取って踊りながらダンススペースの中央を陣取った。彼の豪快なダンスに、踊り慣れていないアデーレはおたおたとついていくことしかできない。たしかに彼の力はかなり強く、アデーレの指でもミシミシと軋むほどだった。それに歩幅が広く大胆に動くので、なるほど貴族の女の子が彼の相手をするのは無理だろうとアデーレは早々に察した。
ダンススペースをめいいっぱい使って踊るダフとアデーレの派手なダンスに、大人たちも子どもたちも目を奪われる。アデーレのダンスは決して上手とは言えなかったが、それがかすんでしまうくらいにダフの笑顔が輝いていた。彼らのダンスにアーサーはにっこり笑う。
「アデーレ姉さん!!」
3曲目の途中、ダフは突然大声でパートナーの名前を呼んだ。みなの視線が気になり早くダンスが終わって欲しいと考えていたアデーレは、目を伏せながら「なに?」と返事をした。
「俺、この合宿に参加できて本当によかったです!!」
「ええ。あなた、この一カ月で本当に成長したわ」
「はい!!それに!!」
「それに?」
「アデーレ姉さんと出会えたから!!」
「ちょ、なに急に」
大声で恥ずかしいことを言われて思わずアデーレが顔を上げた。彼女と目があったダフはニカっと歯を見せて笑う。
「俺、この一か月で姉さんにたくさんのものをいただきました!!自分でも気づいてなかった心の穴に、姉さんはたくさんの思い出を注いでくれた!今日もそうです!!あなたと過ごした時間、あなたがくれた思い出、ずっと忘れません!!」
アデーレは顔を真っ赤にしながら口をパクパクさせた。ダフは激しいダンスをやめて、骨が折れそうなほど彼女をぎゅっと抱きしめた。
「さっき、守りたい人のことを考えたとき、アデーレ姉さんの顔も思い浮かんだんです。だから必要になったらいつでも俺を呼んでください。命をかけて、姉さんを守ります」
ダフはアデーレの耳元でそう呟き、最後に頬にキスをした。ちょうど曲が終わり束の間の静寂が訪れる。思いがけないことに固まってしまっているアデーレを置いて、ダフはその場を離れ、ワインを片手にサロンをあとにした。
ダンスをしていた生徒(とジル)のど真ん中に取り残されたアデーレを、彼らもポカンとした表情で見つめている。誰も言葉を発しておらず、なんなら音楽家も彼女に釘付けで次の曲を始めてくれない。遠くで見ていたベニートがため息をつきながらアデーレを回収してやっと次の曲に移ったが、生徒たち(特に女子)は目で会話しては小さな声で「キャー!」と叫び胸のドキドキを発散していた。
(シリルはダンスが上手だな。美青年だし、ダンスパーティーではいつも女子たちの取り合いだ。…いやでも俺もこの合宿で皿を割らないくらいの手加減はできるようになったんだ…!きっと以前よりもうまくやれる気がする!)
壁際でワインを飲みながら立っていると、生徒たちが使った皿を片付けているアデーレが目の前を通り過ぎた。アデーレは踊らずに食事をしている彼を見て首を傾げる。
「ん?ダフは踊らないの?」
「あ、いや。俺はアーサーと踊ろうと思って曲が終わるのを待ってます!」
「どうしてアーサー?あの子、男の子よ?」
「女の子と踊ると指を折ってしまうかもしれないので!女性パートを踊れるアーサーじゃないとだめなんです」
「骨を?折る?なあにそれ」
アデーレはクスクス笑い、右手をちょんと差し出した。
「下手でもよければ、私が相手になるけど」
「え」
「私は他の女の子と違って骨が太いから大丈夫だと思うわ。大人だし」
「ね、姉さん…!」
ダフは泣きそうな顔で笑い、アデーレの手を取って踊りながらダンススペースの中央を陣取った。彼の豪快なダンスに、踊り慣れていないアデーレはおたおたとついていくことしかできない。たしかに彼の力はかなり強く、アデーレの指でもミシミシと軋むほどだった。それに歩幅が広く大胆に動くので、なるほど貴族の女の子が彼の相手をするのは無理だろうとアデーレは早々に察した。
ダンススペースをめいいっぱい使って踊るダフとアデーレの派手なダンスに、大人たちも子どもたちも目を奪われる。アデーレのダンスは決して上手とは言えなかったが、それがかすんでしまうくらいにダフの笑顔が輝いていた。彼らのダンスにアーサーはにっこり笑う。
「アデーレ姉さん!!」
3曲目の途中、ダフは突然大声でパートナーの名前を呼んだ。みなの視線が気になり早くダンスが終わって欲しいと考えていたアデーレは、目を伏せながら「なに?」と返事をした。
「俺、この合宿に参加できて本当によかったです!!」
「ええ。あなた、この一カ月で本当に成長したわ」
「はい!!それに!!」
「それに?」
「アデーレ姉さんと出会えたから!!」
「ちょ、なに急に」
大声で恥ずかしいことを言われて思わずアデーレが顔を上げた。彼女と目があったダフはニカっと歯を見せて笑う。
「俺、この一か月で姉さんにたくさんのものをいただきました!!自分でも気づいてなかった心の穴に、姉さんはたくさんの思い出を注いでくれた!今日もそうです!!あなたと過ごした時間、あなたがくれた思い出、ずっと忘れません!!」
アデーレは顔を真っ赤にしながら口をパクパクさせた。ダフは激しいダンスをやめて、骨が折れそうなほど彼女をぎゅっと抱きしめた。
「さっき、守りたい人のことを考えたとき、アデーレ姉さんの顔も思い浮かんだんです。だから必要になったらいつでも俺を呼んでください。命をかけて、姉さんを守ります」
ダフはアデーレの耳元でそう呟き、最後に頬にキスをした。ちょうど曲が終わり束の間の静寂が訪れる。思いがけないことに固まってしまっているアデーレを置いて、ダフはその場を離れ、ワインを片手にサロンをあとにした。
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