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合宿編:四週目・王様ゲーム

最終週の特訓風景

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生徒たちはペナルティを受け、午後にもう一度王様ゲームをした。毒状態のままだったが"兵士"になったモニカは今までの鬱憤を晴らすかのように大暴れしていた。リアーナが反属性魔法で打ち消してくれていたから良かったものの、いなかったら屋敷が崩壊していたのではないかと、C級冒険者は夕飯のときにあの凶悪な魔法を思い出してブルっと震えた。
3度目の王様ゲームでも生徒組は王冠を奪われ、生徒組は二度目の大ムカデの毒を、アーサーは1時間大蛇と共に過ごす羽目になった。

最終週2日目からは、午前は自主練習、午後は前半がS級vs生徒の2vs3、後半は生徒同士の3vs3、最後に1度の王様ゲームをして、ペナルティを受けて終了だ。

実践で見つけた自分の改善点を午前で解消し、それをまた実践で確かめる。生徒たちは自主練習も対戦も熱心にしていたので大人たちも満足そうだった。S級は自主練習をしている生徒たちの元を定期的に訪れ、アドバイスをしたり練習相手になった。C級も生徒たちを見回り、怪我治療や体力/魔力管理をこまめにした。充実した環境のおかげで生徒たちはぐんぐん成長していた。

アーサーは自主練習で5本同時に弓を射る練習をしていた。練習を重ね、なんとか5本同時に射ることはできるようになったが命中率がひどい。今のままでは3本だけ射るほうがよっぽど役に立つ。センス抜群のアーサーでも、カトリナと同じ技を習得するにはまだまだ時間がかかりそうだ。

「あーむずかしい!でも楽しいなー!!できないことがあるって楽しいー!!」

「ふふ。どうして手の皮をずる剥けにして、朝から晩までやってもできないことに楽しめるのかしらァ」

「こんなに練習してもできないこと初めてなんだもん!わくわくする!」

「天才の言うことねェ」

「ところでカトリナは5本同時はどのくらい練習してできるようになったのぉ?」

「うーん、一週間くらいかしら」

「カトリナこそ天才じゃないか!!」

「弓の才能だけよォ。ほら、もう一度よアーサー」

「うん!!」

モニカは身体強化魔法の練習をした。コントロールがその時によってまちまちなので、強化しすぎて練習用の魔物が死んでしまったり、強化が弱すぎることがほとんどだった。だが、何百回に一度、完璧な身体強化を成功させることができた。リアーナはまだ人間に身体強化魔法をかけることを許可してくれないが、いつもモニカのことを褒めて励ましてくれた。

「こ、今度こそ成功させてやるんだからっ!」

《ふむぅ…。我の調整もまだまだだな…。モニカ!まずは2回連続で成功するまで続けるぞ!》

「うん!わたしもがんばるね!じゃあいくよぉ~!」

《って…おぉぉい!出だしから大失敗ではないかぁぁっ!》

「ふぇぇんっ!むずかしいよぉぉぉっ」

クラリッサの成長速度は凄まじく、合宿前に比べて魔法も体術も磨きがかかっていた。さすがに3週間以上カミーユたちにしごかれては嫌でも痛み耐性がついたようで、今では骨が折れたり腹に剣が刺さったくらいでは眉一つ動かさなかった。彼女は魔法も体術もバランス良くこなせるので、S級冒険者は彼女がどのように化けてくれるのか楽しみにしているようだった。相変わらず回復魔法が苦手だが、王様ゲームでペナルティを受けた人たちの治癒を手伝っていくうちに、実践でなんとか役に立つ程度には成長した。

「リアーナさん!今日も練習相手になってくださいますか?!」

「おー!いいぜー!!お前とやんのたのしいんだよなー!」

「く、悔しいですが私も楽しいです…っ、悔しいですが…っ」

「ぎゃはは!なにデレてんだよかわいいなあクラリッサは~!」

「ちょ!ちょっと頭をガシガシと撫でないでくださる?!…頭を撫でられるなんて、両親にもされたことがなかったわ。ふふ」

ライラは3本5連射の練習と回復魔法の練習をした。彼女もアーサーと同じく、形だけの5連射はできるようになったが命中率がかなり低い。今はひとまず4連射の精度をあげるために練習中だ。
また、新しい杖を手に入れてから彼女の魔法の評価はがらりと変わり、今では頼りになるヒーラーとして重宝されている。魔力量はかなり少なく、実践で回復魔法ができるほどはまだ慣れていないが、アーチャーとヒーラーという珍しい組み合わせは間違いなく引く手あまたの人材となりうるだろう。

「あらライラ、ケガしてるのに回復魔法を使わないのォ?」

「はいっ。今までの特訓で、戦闘中の弓から杖の持ち替えは逆にリスクが高くなるって分かりましたから…っ。持ち替えてる間に隙ができて攻撃されちゃうし、だから、怪我は戦いが終わってから治します!」

「いいわねェ。理想は素早く持ち替えていつでも回復魔法ができることだけど。それにはまだ自主練習が必要ということねェ」

「アーサーに付き合ってもらってちょっとずつ練習中です!」

「ふふ。がんばるのよォ」

シリルは剣術はそこそこの伸びだったが、溢れるほどの知識量と機転の早さに、ジルは彼に参謀としての素質を見出していた。その実力は特に王様ゲームで発揮され、回数を重ねるごとにS級冒険者が王冠を奪うことが難しくなっていた。はじめは良い子ちゃんだったシリルも、S級冒険者の挑発と勝ちへの執着心によりだんだんと狡猾な表情を浮かべるようになってきたのでジルはゾクゾクしたという。

「アーサー!カミーユさんを毒で沈めて!ライラは弓をしまって回復魔法に専念!ダフはモニカを命がけで守って!クラリッサ!リアーナさんの魔法をひとつずつ反属性で消さなくてもいい!土魔法で作ったドームで僕たちを隔離して!それもリアーナさんにすぐ消されちゃうだろうけど、これで少しは魔法と弓の攻撃から逃れられる!」

「おいシリルぅぅ!!えげつねえ指示出すんじゃねええええっ!!俺を殺す気満々じゃねえか!!」

「こうでもしないとカミーユさん倒せませんからね」

「だめだこいつ!!表情がジルにそっくりになってきやがった!!こええ!何教わってんだあいつにぃぃ!!」

ダフは優秀だった剣術をより洗練させ、盾役としても活躍できるようになっていた。自主練習ではアデーレに付き合ってもらい、椅子の上に乗せた王冠を守る練習をよくしていた。高火力であり防御術が優れたダフを、将来はカミーユとジルの両方の役をダフひとりでやってのけてしまうんじゃないかとS級冒険者は期待していた。持久力もずいぶん身についたようで、特訓が終わってからもアデーレと剣を交わしていた。

「アデーレ姉さん!今日もお願いします!!」

「あら、また私?カミーユさんに見てもらった方がいいんじゃない?」

「カミーユさんにも見てもらってますよ!いろんな剣士と剣を交えたいんです!」

「いいけど…今日もお皿洗い手伝ってね」

「もちろんです!!姉さんに皿を割らずに洗う方法を教えてもらってから人生変わりました!!姉さんは人生の師匠です!!」

「それは言い過ぎ。じゃ、遠慮なく今日もボコボコにさせてもらうわね」
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