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合宿編:三週目・ダンジョン掃討特訓
天才って…
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ツヴァイアントの追手から抜け出せた双子は、ホッと一息つき気を取り直して奥へ進んだ。改めて地面に目をやると、ツヴァイアントがちょろちょろまわりを這っている。靴に塗ったハッカ油のおかげでアントから寄ってくることはないが、もうあんな目に遭いたくないアーサーとモニカはアントと充分距離を取って歩いた。
「ねえリアーナ?」
「ん?」
地面を這っているツヴァイアントを眺めながら、アーサーがリアーナに声をかけた。
「さっき、"普通の"冒険者だったら僕たちがした方法でアントから逃げるって教えてくれたよね」
「おう!」
「じゃあ"普通じゃない"冒険者はどうするの?」
「普通じゃねえ冒険者つーのはいわゆる10割殲滅を義務付けられてるS級のやつらのことだ!あたしらはこういうめんどくせえ魔物の相手するのが仕事だから逃げられねえんだよなー。じゃあどうするかっていうと、視覚強化魔法でアントの分泌してる匂いのモトを視覚化してそれを辿って巣を叩く!」
「視覚強化魔法!」
「シャナがしてたやつだわ!!」
「そうそう。シャナの身体強化魔法は最高だ!あたしはあんまりうまくない…」
「大丈夫よォリアーナ。あなたの身体強化魔法で充分よ」
「それはお前らの基礎能力値がけた違いにすげえからだよ。他のやつらだったらたぶんアント追えねえと思う」
「あら。私たちはあなたの類まれな魔法能力値と魔法種類に助けられてるわ」
「えへへ~なんだよカトリナ~照れるじゃんか~」
唐突にいちゃつきはじめたS級冒険者を見てアーサーはニコニコした。カミーユパーティーは互いの能力を認め合い尊敬し合っている。自分もいつかこんなパーティーを組みたいなあとアーサーはぼんやり考えた。
数時間歩いたところで休息をとるのにちょうどいい洞穴を見つけた(おそらくカトリナがさりげなく誘導していたのだろう)。彼らはそこで火を起こし食事を摂った。ダンジョン内で食べる食事はいつもよりおいしく感じる。アーサーはバナナを、モニカはリンゴを焚火で炙り、パンにはさんでかじっていた。
「おー。おまえらうまそうなもん食ってんな!」
「おいしいよー!!」
「リアーナも食べるー?」
「食べるー!!」
「ふふ。イェルドはアデーレが作ってくれたごはん?」
「はい!俺とベニートに5日分の保存食作ってくれたんですよ!アデーレのメシはうまいから嬉しいです!」
「まあ、なんて優しい仲間なの。素敵ねェ」
「カトリナさんとリアーナさんは干し肉だけですか?」
「ええ。ダンジョン内ではそれしか食べないわ」
「えー!」
「AランクやSランクだとゆっくりごはんを食べる暇がないし…」
「齧りながら戦えるしな!」
モニカはカミーユたちが干し肉をかじりながら巨大な魔物と戦っているところを想像して吹き出した。モニカのイメージの中では「ビール飲みてぇー!」と叫びながらリアーナが聖魔法を放っていたので余計おもしろかった。
食事で空腹を満たしたころに、カトリナが双子に声をかけた。
「さて、これからどうしていくかだけど。次の区域からあなたたちには魔物と戦ってもらうわァ。今までに比べて強い魔物が棲息しているから気をつけるのよ」
「はーい!!」
「こっから毒系の魔物がうじゃうじゃだから気を付けろよ!おいアーサー!にやけてんじゃねえぇー!!」
「にっ、にやけてないもん!」
「いやニヤけてたね!!アーサー!お前は毒状態になったら1回につき1日バナナ禁止だ!」
「えええーーーー!!!」
「がはは!バナナ取り上げられたくなかったら毒は諦めるんだなあ!!」
「むぅぅ!!」
アーサーは頬をぷくぅと膨らませてリアーナに無言の抗議をしていたが、モニカとイェルドも当然リアーナの味方のため抗議に加勢してくれない。しばらく粘っていたがリアーナが禁止令を取り消すわけもなく、バナナと毒を天秤にかけてアーサーはしぶしぶ頷いた。
「わかったよぉ…。毒はがまんするよぉ…」
「あたりまえじゃない。仲間に迷惑かけちゃうから、毒は瓶に抽出しといて帰ってから楽しみなさいって前から言ってるでしょ?」
「いやモニカ…。それもおかしいんだよなあ…」
イェルドが虚ろな声でつっこんだ。猛毒を食らい喜んでいるアーサーを目の前で見たことがあるイェルドにとって(そのあと自分もふざけて飲んで瀕死になったことも相まって)、あの出来事はトラウマに近かった。
「なにがこわかったかって、血反吐吐きながらニヤニヤしてたのがすっげー怖かったんだよなあ…」
「たまにいるよなあ、状態異常が好きなやつ!ぎゃはは!」
「いるわよねェ。私は状態異常は好きじゃないけど、魔女に肺を取られるのはちょっとゾクゾクしちゃうのよ」
「カトリナ肺取られたときテンション上がってるもんな!死ぬほどしんどいのにバンバン戦闘参加するし!!」
「なぜかしらァ。あの瞬間が一番生きてるって感じがするのよねェ」
「……」
双子の会話とS級冒険者の会話に挟まれたイェルドは、体育座りをして唇をきゅっと噛んだ。
(うん。分かってた。やっぱり俺はA級までの人間だ。天才ってちょっと頭おかしいです)
「ねえリアーナ?」
「ん?」
地面を這っているツヴァイアントを眺めながら、アーサーがリアーナに声をかけた。
「さっき、"普通の"冒険者だったら僕たちがした方法でアントから逃げるって教えてくれたよね」
「おう!」
「じゃあ"普通じゃない"冒険者はどうするの?」
「普通じゃねえ冒険者つーのはいわゆる10割殲滅を義務付けられてるS級のやつらのことだ!あたしらはこういうめんどくせえ魔物の相手するのが仕事だから逃げられねえんだよなー。じゃあどうするかっていうと、視覚強化魔法でアントの分泌してる匂いのモトを視覚化してそれを辿って巣を叩く!」
「視覚強化魔法!」
「シャナがしてたやつだわ!!」
「そうそう。シャナの身体強化魔法は最高だ!あたしはあんまりうまくない…」
「大丈夫よォリアーナ。あなたの身体強化魔法で充分よ」
「それはお前らの基礎能力値がけた違いにすげえからだよ。他のやつらだったらたぶんアント追えねえと思う」
「あら。私たちはあなたの類まれな魔法能力値と魔法種類に助けられてるわ」
「えへへ~なんだよカトリナ~照れるじゃんか~」
唐突にいちゃつきはじめたS級冒険者を見てアーサーはニコニコした。カミーユパーティーは互いの能力を認め合い尊敬し合っている。自分もいつかこんなパーティーを組みたいなあとアーサーはぼんやり考えた。
数時間歩いたところで休息をとるのにちょうどいい洞穴を見つけた(おそらくカトリナがさりげなく誘導していたのだろう)。彼らはそこで火を起こし食事を摂った。ダンジョン内で食べる食事はいつもよりおいしく感じる。アーサーはバナナを、モニカはリンゴを焚火で炙り、パンにはさんでかじっていた。
「おー。おまえらうまそうなもん食ってんな!」
「おいしいよー!!」
「リアーナも食べるー?」
「食べるー!!」
「ふふ。イェルドはアデーレが作ってくれたごはん?」
「はい!俺とベニートに5日分の保存食作ってくれたんですよ!アデーレのメシはうまいから嬉しいです!」
「まあ、なんて優しい仲間なの。素敵ねェ」
「カトリナさんとリアーナさんは干し肉だけですか?」
「ええ。ダンジョン内ではそれしか食べないわ」
「えー!」
「AランクやSランクだとゆっくりごはんを食べる暇がないし…」
「齧りながら戦えるしな!」
モニカはカミーユたちが干し肉をかじりながら巨大な魔物と戦っているところを想像して吹き出した。モニカのイメージの中では「ビール飲みてぇー!」と叫びながらリアーナが聖魔法を放っていたので余計おもしろかった。
食事で空腹を満たしたころに、カトリナが双子に声をかけた。
「さて、これからどうしていくかだけど。次の区域からあなたたちには魔物と戦ってもらうわァ。今までに比べて強い魔物が棲息しているから気をつけるのよ」
「はーい!!」
「こっから毒系の魔物がうじゃうじゃだから気を付けろよ!おいアーサー!にやけてんじゃねえぇー!!」
「にっ、にやけてないもん!」
「いやニヤけてたね!!アーサー!お前は毒状態になったら1回につき1日バナナ禁止だ!」
「えええーーーー!!!」
「がはは!バナナ取り上げられたくなかったら毒は諦めるんだなあ!!」
「むぅぅ!!」
アーサーは頬をぷくぅと膨らませてリアーナに無言の抗議をしていたが、モニカとイェルドも当然リアーナの味方のため抗議に加勢してくれない。しばらく粘っていたがリアーナが禁止令を取り消すわけもなく、バナナと毒を天秤にかけてアーサーはしぶしぶ頷いた。
「わかったよぉ…。毒はがまんするよぉ…」
「あたりまえじゃない。仲間に迷惑かけちゃうから、毒は瓶に抽出しといて帰ってから楽しみなさいって前から言ってるでしょ?」
「いやモニカ…。それもおかしいんだよなあ…」
イェルドが虚ろな声でつっこんだ。猛毒を食らい喜んでいるアーサーを目の前で見たことがあるイェルドにとって(そのあと自分もふざけて飲んで瀕死になったことも相まって)、あの出来事はトラウマに近かった。
「なにがこわかったかって、血反吐吐きながらニヤニヤしてたのがすっげー怖かったんだよなあ…」
「たまにいるよなあ、状態異常が好きなやつ!ぎゃはは!」
「いるわよねェ。私は状態異常は好きじゃないけど、魔女に肺を取られるのはちょっとゾクゾクしちゃうのよ」
「カトリナ肺取られたときテンション上がってるもんな!死ぬほどしんどいのにバンバン戦闘参加するし!!」
「なぜかしらァ。あの瞬間が一番生きてるって感じがするのよねェ」
「……」
双子の会話とS級冒険者の会話に挟まれたイェルドは、体育座りをして唇をきゅっと噛んだ。
(うん。分かってた。やっぱり俺はA級までの人間だ。天才ってちょっと頭おかしいです)
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