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合宿編:二週目・基礎特訓
【408話】二週目最終日:シリル
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◇◇◇シリル◇◇◇
「はぁっ…!はぁっ…!」
午後の剣術の特訓で、とうとう体力の限界を迎えたシリルが膝をついた。立ちあがろうとしても足が震えて力が入らない。汗で手がすべり剣もうまく持てない。シリルは顔をしかめて落とした剣に手を伸ばした。
「くそっ…!動けっ…動けよ僕の体っ…!!」
「!」
シリルから数メートル離れたところでカミーユと剣を交えていたアーサーに彼の悲痛な声が聞こえた。ちらりとシリルを見ると、明らかに体力切れを起こしておりもう剣も持てない状態だ。カミーユもそのことに気付いているのだろう。小さくため息をつき、アーサーとの特訓を切り上げようとしているのが分かった。
「カミーユ!!」
「っ!」
剣を交えながら、アーサーがカミーユのすねに蹴りを入れた。かなり力を入れて蹴ったのか、カミーユの脚がジィンと痺れる。モニカの足であれば少なくともひびは入っていただろう。
「なんだアーサー。蹴りなんて入れやがって」
「まだ僕との特訓終わってないよ!なによそ見してんの!」
「ちっ。そういうことかよ…」
「僕まだ元気なんだけど!ヘトヘトにしたいんじゃないの?!」
「いや、お前はもう諦めた…。普通の特訓でお前をバテさせることなんてできねーよ。それよりシリ…」
「ふんっ!!」
「ぐぉっ!おまえなあ!!」
カミーユがシリルの元へ行こうとするたびに、アーサーは彼のみぞおちや脛に拳と蹴りをめり込ませた。カミーユはイライラしながらアーサーを蹴り飛ばして歩き出すが、すぐにアーサーの剣や拳が飛んでくる。挙句の果てにカミーユの頭に体全体を使ってしがみつく始末だ。
「ぅおぉぉい!!アーサー!お遊びじゃねーんだぞ!!離れろぉ!!」
「遊んでなんかないよ!僕は本気!!」
「本気でそんな戦い方があるかよ!!」
「定石に囚われちゃだめってカミーユが言ってた!!」
「だからってこんなやり方教えてねえぇっ!!!」
ワーワーと騒ぎながら、アーサーにしがみつかれたままカミーユがシリルの元へ向かった。アーサーが何をしても歩みは止まらず、とうとう膝をついてうなだれているシリルの前にカミーユが立った。目に涙を溜めたシリルが震えながら顔を上げる。
「シリル」
「…はい」
「もう限界か?」
「……」
「限界じゃない!!!!」
「ぐぁっ!!」
シリルが黙り込むと、代わりにアーサーが大声で叫んだ。カミーユの脛をもう一度蹴ってひるませてから友人に手を差し伸べる。
「シリル!立って!まだいけるでしょ!!」
「…アーサー。僕、もう…」
「聞こえない!シリルはまだいける!」
「アーサー…」
「おいアーサー。シリルが体力カッスカスなのおまえも分かってるだろ。戦意も喪失してる。無理をさせるな」
「無理じゃない!!」
「アーサァァ…」
聞き分けのないアーサーにカミーユはイラァッとこめかみに青筋を立てた。
「聞けアーサー。例えば敵がウジャウジャいるダンジョン最奥で、今のシリルみたいになったやつがいるとする。お前はそいつを魔物まみれの場所に、まだいけるだろっつって放り出すのか?お?」
「休める場所がなくて、そんな場所を通らなきゃ一緒に帰られないなら、そうする」
「ほう。で?」
「でも大丈夫!!僕がいるから!僕がシリルを守るよ!!見捨てるなんて絶対にいやだ!!」
「……」
「なるほどな。はぁ…お前はそういうやつだよなあ」
カミーユは額に手を置いてククっと笑った。ゆっくりと手が剣に伸び、剣先をアーサーに向ける。そのときのカミーユはギラギラしていてとても楽しそうだった。
「いいぜアーサー。俺は今からシリルを狙う。守ってみせろよ。最後まで守れたら、シリルは明日も特訓を受けられる。だが、守れなかったら…お前らどっちも馬車に乗せるぞ」
「分かった!!」
アーサーはぱっと顔を輝かせてコクコク頷いた。シリルに背を向け嬉しそうに剣を構え、カミーユの攻撃に備える。
「!」
二人が剣を振りあげようとしたとき、アーサーの肩が引っ張られた。振り返ると苦し気な表情をシリルが立っている。
「シリル…!」
「守られるなんてごめんだよ。僕も戦う。…足手まといかもしれないけど」
「!!!」
「…ほぉ~」
息を吹き返したシリルに、カミーユはかすかに頬を緩めた。アーサーは満面の笑顔でシリルにハグをする。
「シリルは足手まといなんかじゃないよ!!心強い!!ありがとう!!」
「僕のほうこそありがとう。ちょっとくじけかけちゃった」
「くじけたって、僕が何度だって起き上がらせるよ!シリルがもうやだって言ったって、やめさせてやんない!」
「あはは。厳しいなあアーサーは」
「ちがうよ?厳しいのはカミーユだよ。ひどいよねえ、シリルがこんなになるまでいじめてー」
「い、いじめてんじゃねえよ特訓だっつーの!」
「いじめに近いよねぇ?」
「うん(僕が厳しくしてって言ったんだけど)」
(こいつが厳しくしろって言ったのに!)
濡れ衣を着せられたカミーユが驚いてシリルに視線を送ったが、シリルは目を合わすまいと顔を逸らした。それに気付かなかったアーサーはやる気満々でカミーユに剣を向ける。
「カミーユ!!シリルにきつすぎる特訓してー!!このぉー!!」
(シーリールー!!てめぇー!!)
(カ、カミーユさんごめんなさいっ!)
「おいシリルー!!お前絶対倒れんなよ!!このやろぉ!!明日からもっときつい特訓してやるからな!!」
「た、たおれません!!!」
「あーほらまたシリルいじめるー!!!」
「ちげぇぇっ!!」
「はぁっ…!はぁっ…!」
午後の剣術の特訓で、とうとう体力の限界を迎えたシリルが膝をついた。立ちあがろうとしても足が震えて力が入らない。汗で手がすべり剣もうまく持てない。シリルは顔をしかめて落とした剣に手を伸ばした。
「くそっ…!動けっ…動けよ僕の体っ…!!」
「!」
シリルから数メートル離れたところでカミーユと剣を交えていたアーサーに彼の悲痛な声が聞こえた。ちらりとシリルを見ると、明らかに体力切れを起こしておりもう剣も持てない状態だ。カミーユもそのことに気付いているのだろう。小さくため息をつき、アーサーとの特訓を切り上げようとしているのが分かった。
「カミーユ!!」
「っ!」
剣を交えながら、アーサーがカミーユのすねに蹴りを入れた。かなり力を入れて蹴ったのか、カミーユの脚がジィンと痺れる。モニカの足であれば少なくともひびは入っていただろう。
「なんだアーサー。蹴りなんて入れやがって」
「まだ僕との特訓終わってないよ!なによそ見してんの!」
「ちっ。そういうことかよ…」
「僕まだ元気なんだけど!ヘトヘトにしたいんじゃないの?!」
「いや、お前はもう諦めた…。普通の特訓でお前をバテさせることなんてできねーよ。それよりシリ…」
「ふんっ!!」
「ぐぉっ!おまえなあ!!」
カミーユがシリルの元へ行こうとするたびに、アーサーは彼のみぞおちや脛に拳と蹴りをめり込ませた。カミーユはイライラしながらアーサーを蹴り飛ばして歩き出すが、すぐにアーサーの剣や拳が飛んでくる。挙句の果てにカミーユの頭に体全体を使ってしがみつく始末だ。
「ぅおぉぉい!!アーサー!お遊びじゃねーんだぞ!!離れろぉ!!」
「遊んでなんかないよ!僕は本気!!」
「本気でそんな戦い方があるかよ!!」
「定石に囚われちゃだめってカミーユが言ってた!!」
「だからってこんなやり方教えてねえぇっ!!!」
ワーワーと騒ぎながら、アーサーにしがみつかれたままカミーユがシリルの元へ向かった。アーサーが何をしても歩みは止まらず、とうとう膝をついてうなだれているシリルの前にカミーユが立った。目に涙を溜めたシリルが震えながら顔を上げる。
「シリル」
「…はい」
「もう限界か?」
「……」
「限界じゃない!!!!」
「ぐぁっ!!」
シリルが黙り込むと、代わりにアーサーが大声で叫んだ。カミーユの脛をもう一度蹴ってひるませてから友人に手を差し伸べる。
「シリル!立って!まだいけるでしょ!!」
「…アーサー。僕、もう…」
「聞こえない!シリルはまだいける!」
「アーサー…」
「おいアーサー。シリルが体力カッスカスなのおまえも分かってるだろ。戦意も喪失してる。無理をさせるな」
「無理じゃない!!」
「アーサァァ…」
聞き分けのないアーサーにカミーユはイラァッとこめかみに青筋を立てた。
「聞けアーサー。例えば敵がウジャウジャいるダンジョン最奥で、今のシリルみたいになったやつがいるとする。お前はそいつを魔物まみれの場所に、まだいけるだろっつって放り出すのか?お?」
「休める場所がなくて、そんな場所を通らなきゃ一緒に帰られないなら、そうする」
「ほう。で?」
「でも大丈夫!!僕がいるから!僕がシリルを守るよ!!見捨てるなんて絶対にいやだ!!」
「……」
「なるほどな。はぁ…お前はそういうやつだよなあ」
カミーユは額に手を置いてククっと笑った。ゆっくりと手が剣に伸び、剣先をアーサーに向ける。そのときのカミーユはギラギラしていてとても楽しそうだった。
「いいぜアーサー。俺は今からシリルを狙う。守ってみせろよ。最後まで守れたら、シリルは明日も特訓を受けられる。だが、守れなかったら…お前らどっちも馬車に乗せるぞ」
「分かった!!」
アーサーはぱっと顔を輝かせてコクコク頷いた。シリルに背を向け嬉しそうに剣を構え、カミーユの攻撃に備える。
「!」
二人が剣を振りあげようとしたとき、アーサーの肩が引っ張られた。振り返ると苦し気な表情をシリルが立っている。
「シリル…!」
「守られるなんてごめんだよ。僕も戦う。…足手まといかもしれないけど」
「!!!」
「…ほぉ~」
息を吹き返したシリルに、カミーユはかすかに頬を緩めた。アーサーは満面の笑顔でシリルにハグをする。
「シリルは足手まといなんかじゃないよ!!心強い!!ありがとう!!」
「僕のほうこそありがとう。ちょっとくじけかけちゃった」
「くじけたって、僕が何度だって起き上がらせるよ!シリルがもうやだって言ったって、やめさせてやんない!」
「あはは。厳しいなあアーサーは」
「ちがうよ?厳しいのはカミーユだよ。ひどいよねえ、シリルがこんなになるまでいじめてー」
「い、いじめてんじゃねえよ特訓だっつーの!」
「いじめに近いよねぇ?」
「うん(僕が厳しくしてって言ったんだけど)」
(こいつが厳しくしろって言ったのに!)
濡れ衣を着せられたカミーユが驚いてシリルに視線を送ったが、シリルは目を合わすまいと顔を逸らした。それに気付かなかったアーサーはやる気満々でカミーユに剣を向ける。
「カミーユ!!シリルにきつすぎる特訓してー!!このぉー!!」
(シーリールー!!てめぇー!!)
(カ、カミーユさんごめんなさいっ!)
「おいシリルー!!お前絶対倒れんなよ!!このやろぉ!!明日からもっときつい特訓してやるからな!!」
「た、たおれません!!!」
「あーほらまたシリルいじめるー!!!」
「ちげぇぇっ!!」
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