385 / 718
合宿編:二週目・基礎特訓
【404話】兄弟杖
しおりを挟む
「アーサー、モニカ!ちょっと日に焼けたんじゃない?特訓頑張ってるのね」
「きゃーーー!!」
「シャナぁぁぁっ!!!」
シャナが到着したのは翌朝だった。こっそりと屋敷に入り、双子の背後に立って肩をつんつんとつつく。振り返ったアーサーとモニカは驚きと喜びで屋敷に響き渡る声で彼女の名前を呼んだ。
双子がシャナに抱きついておおはしゃぎしていると、カミーユとリアーナが速足でやってきた。
「おーー!!シャナ!わざわざ悪いな!!ありがとー!!」
「かまわないわ。出張杖屋は初めてしたけれど、なかなか胸が弾むわね」
「シャナ。無理言ったな」
「気にしないで。あなたたちにも会いたかったし」
「……」
カミーユはぐぅ…と唇を噛み拳を握りしめた。アーサーとモニカはこっそり目を見合わせニヤニヤする。ここがもしカミーユの家だったらきっとハグとキスをしていただろう。今は生徒たちがいるので、イメージを崩すまいと必死に我慢しているはずだ。
「シャナ!杖を選んでほしいやつを紹介するな!おーーい!ライラー!!」
「は、はい!!」
「こっちこーい!」
「はいぃっ!」
リアーナに呼ばれ、ライラは頬張っていた肉を急いで飲みこみ駆け寄ってきた。美人エルフにぺこりと頭を下げ、ぽわっと頬を赤らめた。
(う、わぁぁっ…。エルフってきれいな人が多いけど、こんな美人なエルフははじめて見たぁ…。き、緊張するよぉ…)
「ライラ!このおっぱいのでけえ美人エルフはシャナっていうんだ!あたしが知る中でも1,2を争う優秀で信頼できる杖師!あたしの杖ももちろんシャナ製!」
「えー!!リアーナの杖もシャナのなの?!」
「モニカ知らなかったのか?」
「知らなかったー!!」
「ちっちゃい頃はばあちゃんが適当に作った杖使ってたんだけど、ポントワーブに来てからはシャナの杖を使ってる!わざわざあたしのためにシャナが杖を作ってくれたんだ!」
「ええ。あなたに合う杖を作るのは楽しかったわ」
「シャナぁ!今日はこいつにピッタリの杖を見つけてやってくれよな!!こいつはライラ!一流アーチャーのくせになかなか良い魔力も持ってやがる欲張りセットなガキだ!」
「あら」
シャナはライラを一目見て口元に手を当てた。がっかりされたかと思いライラがおろおろしていると、おもむろにシャナが彼女に抱き着いた。
「ぅあっ?!」
「あなたの魔力!!なんてあたたかいの!!こぶりではあるけれど、とっても優しくてホワホワした魔力!!ああん素敵だわ!この子の杖を選ばせてくれるの?!なんて嬉しいの!今日はなんて良い日なの!」
シャナのことばにアーサーがクスっと笑った。シャナは素敵な魔力を持った人を見るとああいう反応をしてしまうのだろう。モニカがはじめてシャナの杖屋を訪れたときも、シャナは似たような反応をしてモニカを驚かせていた。アーサーが5年前を振り返ってほのぼのしているうちに、話はずいぶん先に進んでいた。
「よーし、じゃあライラは早速シャナについていけ!」
「だ、大丈夫ですか?朝はカトリナさんの…」
「おう、カトリナにはもう言ってある!今日は弓術は休みだ!」
「わ、わかりました!」
「ライラ。じゃあいきましょうか。馬車にたくさん杖を積んできたのよ。あなたにぴったりなものがきっと見つかるわ」
「はい!」
ライラはシャナのあとを駆け足でついていった。見えなくなるまで目で追いかけてから、モニカがアーサーの腕に抱きついて頭をぐりぐりこすりつけた。
「アーサー!!ライラも今日からシャナの杖を持つのよ!」
「うん!!いいのが見つかるといいねえ!」
「ライラと私の杖は兄弟みたいなものよね!!なんだか嬉しい~!!」
「同じ杖師からうまれた杖だもんね!嬉しいねえー!」
「リアーナとも兄弟杖よ!!すごいでしょー!!」
「いいなあー!僕も魔法使えたら絶対シャナの杖を持つのにー!!」
《魔法も使えんのに杖なんぞ持たんでよい!!》
アーサーがぽろっとこぼした言葉に思わず杖が口出しした。
「わかってるよー!もしあったらの話だもーん!」
《ならんならん!!》
「どうしてさぁ!」
《な、なんでもない!アーサーなんぞもう知らんっ!》
「えぇ?どうして怒ってるの藍~」
「怒ってなどない!」
「藍はわたしとアーサーを独り占めしたいのよ」
モニカが兄の耳元で囁いた。それを聞いてアーサーは「なるほど~!」と納得したが、杖は蒸気を発しながら必死に否定した。
《ち、ちがう!!アーサーなんぞに所持された杖はすぐにお前の血で赤く染まってしまうだろうからな!!それが哀れで止めているのだ!!決して独り占めしたいからなどではない!!》
「はいはいっ」
「心配しなくっても私たちには藍だけだよっ」
それから藍が何を言っても双子はニコニコしてそれをなだめるだけだった。子ども扱いされたのが気に食わなかったのか、本音がバレバレで逆ギレしてごまかすしかなかったのか、藍はアーサーとモニカを爆風で吹っ飛ばした。
「きゃーーー!!」
「シャナぁぁぁっ!!!」
シャナが到着したのは翌朝だった。こっそりと屋敷に入り、双子の背後に立って肩をつんつんとつつく。振り返ったアーサーとモニカは驚きと喜びで屋敷に響き渡る声で彼女の名前を呼んだ。
双子がシャナに抱きついておおはしゃぎしていると、カミーユとリアーナが速足でやってきた。
「おーー!!シャナ!わざわざ悪いな!!ありがとー!!」
「かまわないわ。出張杖屋は初めてしたけれど、なかなか胸が弾むわね」
「シャナ。無理言ったな」
「気にしないで。あなたたちにも会いたかったし」
「……」
カミーユはぐぅ…と唇を噛み拳を握りしめた。アーサーとモニカはこっそり目を見合わせニヤニヤする。ここがもしカミーユの家だったらきっとハグとキスをしていただろう。今は生徒たちがいるので、イメージを崩すまいと必死に我慢しているはずだ。
「シャナ!杖を選んでほしいやつを紹介するな!おーーい!ライラー!!」
「は、はい!!」
「こっちこーい!」
「はいぃっ!」
リアーナに呼ばれ、ライラは頬張っていた肉を急いで飲みこみ駆け寄ってきた。美人エルフにぺこりと頭を下げ、ぽわっと頬を赤らめた。
(う、わぁぁっ…。エルフってきれいな人が多いけど、こんな美人なエルフははじめて見たぁ…。き、緊張するよぉ…)
「ライラ!このおっぱいのでけえ美人エルフはシャナっていうんだ!あたしが知る中でも1,2を争う優秀で信頼できる杖師!あたしの杖ももちろんシャナ製!」
「えー!!リアーナの杖もシャナのなの?!」
「モニカ知らなかったのか?」
「知らなかったー!!」
「ちっちゃい頃はばあちゃんが適当に作った杖使ってたんだけど、ポントワーブに来てからはシャナの杖を使ってる!わざわざあたしのためにシャナが杖を作ってくれたんだ!」
「ええ。あなたに合う杖を作るのは楽しかったわ」
「シャナぁ!今日はこいつにピッタリの杖を見つけてやってくれよな!!こいつはライラ!一流アーチャーのくせになかなか良い魔力も持ってやがる欲張りセットなガキだ!」
「あら」
シャナはライラを一目見て口元に手を当てた。がっかりされたかと思いライラがおろおろしていると、おもむろにシャナが彼女に抱き着いた。
「ぅあっ?!」
「あなたの魔力!!なんてあたたかいの!!こぶりではあるけれど、とっても優しくてホワホワした魔力!!ああん素敵だわ!この子の杖を選ばせてくれるの?!なんて嬉しいの!今日はなんて良い日なの!」
シャナのことばにアーサーがクスっと笑った。シャナは素敵な魔力を持った人を見るとああいう反応をしてしまうのだろう。モニカがはじめてシャナの杖屋を訪れたときも、シャナは似たような反応をしてモニカを驚かせていた。アーサーが5年前を振り返ってほのぼのしているうちに、話はずいぶん先に進んでいた。
「よーし、じゃあライラは早速シャナについていけ!」
「だ、大丈夫ですか?朝はカトリナさんの…」
「おう、カトリナにはもう言ってある!今日は弓術は休みだ!」
「わ、わかりました!」
「ライラ。じゃあいきましょうか。馬車にたくさん杖を積んできたのよ。あなたにぴったりなものがきっと見つかるわ」
「はい!」
ライラはシャナのあとを駆け足でついていった。見えなくなるまで目で追いかけてから、モニカがアーサーの腕に抱きついて頭をぐりぐりこすりつけた。
「アーサー!!ライラも今日からシャナの杖を持つのよ!」
「うん!!いいのが見つかるといいねえ!」
「ライラと私の杖は兄弟みたいなものよね!!なんだか嬉しい~!!」
「同じ杖師からうまれた杖だもんね!嬉しいねえー!」
「リアーナとも兄弟杖よ!!すごいでしょー!!」
「いいなあー!僕も魔法使えたら絶対シャナの杖を持つのにー!!」
《魔法も使えんのに杖なんぞ持たんでよい!!》
アーサーがぽろっとこぼした言葉に思わず杖が口出しした。
「わかってるよー!もしあったらの話だもーん!」
《ならんならん!!》
「どうしてさぁ!」
《な、なんでもない!アーサーなんぞもう知らんっ!》
「えぇ?どうして怒ってるの藍~」
「怒ってなどない!」
「藍はわたしとアーサーを独り占めしたいのよ」
モニカが兄の耳元で囁いた。それを聞いてアーサーは「なるほど~!」と納得したが、杖は蒸気を発しながら必死に否定した。
《ち、ちがう!!アーサーなんぞに所持された杖はすぐにお前の血で赤く染まってしまうだろうからな!!それが哀れで止めているのだ!!決して独り占めしたいからなどではない!!》
「はいはいっ」
「心配しなくっても私たちには藍だけだよっ」
それから藍が何を言っても双子はニコニコしてそれをなだめるだけだった。子ども扱いされたのが気に食わなかったのか、本音がバレバレで逆ギレしてごまかすしかなかったのか、藍はアーサーとモニカを爆風で吹っ飛ばした。
10
お気に入りに追加
4,353
あなたにおすすめの小説
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ
あげは
ファンタジー
「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」
学院卒業記念パーティーで、婚約者である王太子アルフリードに突然婚約破棄された、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢。
家族にも愛されていなかったユミエラは、王太子に婚約破棄されたことで利用価値がなくなったとされ家を勘当されてしまう。
しかし、ユミエラに特に気にした様子はなく、むしろ喜んでいた。
これまでの生活に嫌気が差していたユミエラは、元孤児で転生者の侍女ミシェルだけを連れ、その日のうちに家を出て人のいない森の奥に向かい、森の中でカフェを開くらしい。
「さあ、ミシェル! 念願のスローライフよ! 張り切っていきましょう!」
王都を出るとなぜか国を守護している神獣が待ち構えていた。
どうやら国を捨てユミエラについてくるらしい。
こうしてユミエラは、転生者と神獣という何とも不思議なお供を連れ、優雅なスローライフを楽しむのであった。
一方、ユミエラを追放し、神獣にも見捨てられた王国は、愚かな王太子のせいで混乱に陥るのだった――。
なろう・カクヨムにも投稿
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜
青空ばらみ
ファンタジー
一歳で両親を亡くし母方の伯父マークがいる辺境伯領に連れて来られたパール。 伯父と一緒に暮らすお許しを辺境伯様に乞うため訪れていた辺境伯邸で、たまたま出くわした侯爵令嬢の無知な善意により 六歳で見習い冒険者になることが決定してしまった! 運良く? 『前世の記憶』を思い出し『スマッホ』のチェリーちゃんにも協力してもらいながら 立派な冒険者になるために 前世使えなかった魔法も喜んで覚え、なんだか百年に一人現れるかどうかの伝説の国に迷いこんだ『迷い人』にもなってしまって、その恩恵を受けようとする『当たり人』と呼ばれる人たちに貢がれたり…… ぜんぜん理想の田舎でまったりスローライフは送れないけど、しょうがないから伝説の国の魔道具を駆使して 気ままに快適冒険者を目指しながら 周りのみんなを無自覚でハッピーライフに巻き込んで? 楽しく生きていこうかな! ゆる〜いスローペースのご都合ファンタジーです。
小説家になろう様でも投稿をしております。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。