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初夏編:田舎のポントワーブ
【350話】プラム狩り
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アンジェラ、モル、ピクルはおしゃべりをしながら田舎道を歩いていた。ピクルは14年間ずっとここで暮らしており両親の手伝いをしているらしい。ときどき交流がある農業仲間の子どもたちとは友人だが、だいたいみんな農業の手伝いで忙しくなかなか会えないそうだ。勉強は週に一度家にやってくる家庭教師に教えてもらっているが、ピクルはあまり勉強が好きではないのでその日が来るのが憂鬱だと言っていた。
「アンジェラとモルはお勉強好き?」
「うーん。わ…僕はあんまり好きじゃないなあ。文字を読んでたら眠たくなっちゃう」
「わたしも!」
「わたしは嫌いじゃないかな。色んな事を知れるのは楽しいよ」
「それはアンジェラは特別だからだよ…」
「特別?アンジェラは特別なの?」
「あ、えっ、えっと」
「ううん。普通よ。ちょっと記憶力がいいだけ」
モニカが失言しそうになったのを慌ててアーサーがフォローした。ピクルはアンジェラを羨ましそうに見て唇をとがらせている。
「あーあ!いいなあ~。アンジェラ、とってもかわいいうえに賢いのね!」
「そんなことないよ。モルのほうがかわいいもん」
「アンジェラの方がかわいいに決まってるでしょ。ああ、アンジェラかわいい~」
双子がいつもの癖で褒め合いをしてしまい、ピクルは二人を交互に見てしょんぼりと肩を落とした。
「あ…、そうなのね。アンジェラとモルって、そういう仲なんだぁ…」
「えっ?なにが?」
「そういう仲ってなあに?」
「つ、付き合ってるんでしょ…?」
「え!!」
「なんでそうなるの?!ぼ…私たち従弟よ?!」
「だって、ラブラブなんだもん…」
「ラブラブ?!」
「キスとかしたことあるんでしょ…?」
「キスはしたことあるけど…」
「やっぱりあるんだぁ…」
「で、でもあれはそういう意味のキスじゃなかったよ!アンジェラが僕に勝つためにやったんだもん!」
「そうそう!勝負しててね、モルすっごく強いから、キスして油断させるしか勝つ方法がなかったの!」
「勝負で勝つためにキスするの?都会の子たちってみんなそんななの?」
「いや…ちがうと思います…」
「あれはほんとにひどかったよ。僕の気持ちを踏みにじった」
「ごめんなさい…」
学院での出来事を思い出し、モニカがジトッとした目でアーサーを睨んだ。アーサーは申し訳なさで縮こまってしまっている。そしてピクルは、自分とまったく違う世界で生きてきた二人を見て少し落ち込んだ。
しょぼんとしたピクルを見て、アーサーとモニカは(どうしよう…)と目を見合わせた。ピクルがなぜ落ち込んでしまったのかがハッキリと分からなかったが、なんとなく疎外感を抱いたことだけは感じ取った。二人はこくりと頷きピクルの手をぎゅっと握る。孤独を紛らわせるには手を繋ぐのが一番だと、アーサーとモニカは知っていた。二人に手を繋がれたピクルは、恥ずかしそうにしながらも彼らの手を握り返す。
「わ!ピクル見て!スライムがいるー!」
「ほんとだ!このあたりにもいるんだね!」
「うん。このあたりって森が近いでしょ?スライムとか小さくて弱い魔物がちらほらいるの」
「そうなんだあ。こわくない?」
「うん。小さい魔物くらいならお父さんがなんとかしてくれる。稀に大きな魔物が出てきたりするんだけど、そのときはインコを飛ばして冒険者に来てもらうの」
「へー!」
「だから私たちね、一人一羽インコを持ってるのよ。あんまり友だちがいない私にとって、このインコが親友なの」
ピクルはそう言ってアイテムボックスから一羽のインコを取り出した。黄色いインコでピクルに良く懐いている。伝言を頼んでもいないのに、嬉しそうに言葉を発していた。
《ピクル!デンゴン カ?!ソレトモ ヒトリゴトカ?!》
「どっちでもないわ。お友だちにあなたを見せびらかそうと思って」
《ミセモノジャ ナイ!》
「あは、ごめんごめん」
「わーすごい!インコとこんなに意思疎通取れる人はじめて見たよ!」
「この子が特別なのかも。小さい時からずっと話しかけてたら、ある日突然自分から喋るようになっちゃって。えへへ。…あ、プラム園に着いたわ。アンジェラ、モル。ここが私たちの家のプラム園よ」
「わぁぁ!」
ピクルが指さした先には、プラムがたわわになっている木がたくさんあった。プラム園に近づくにつれ、さわやかな果物の香りがふんわり流れてくる。アーサーとモニカは深く息を吸い込んでからプラム園へ走り出した。
「アンジェラ!モル!あんまり奥へ行っちゃだめよー!森に近いから!」
「「はーい!!」」
「あと、木になってる実は好きなだけとっていいけど、そのまま食べると酸っぱいからねー!!」
「わーー!ありがとー!!」
「ピクルー!どんな実を採ればいいの~?!」
「黄色くってまぁるいのがオススメ!ジャムにするとおいしいのー!」
「わー!ピクルも一緒に採ろー!」
「うん!」
プラムに大はしゃぎするアンジェラとモルがかわいくて、ピクルはクスクス笑いながら二人と一緒にプラムを採った。ダメだと言っているのに、好奇心に勝てなかった双子はプラムを生でかじってしまい、酸っぱさで顔をしわくちゃにした。顔立ちが良い二人がぶさいくな顔をしたのが面白くてしばらくピクルの笑いがおさまらなかった。
「アンジェラとモルはお勉強好き?」
「うーん。わ…僕はあんまり好きじゃないなあ。文字を読んでたら眠たくなっちゃう」
「わたしも!」
「わたしは嫌いじゃないかな。色んな事を知れるのは楽しいよ」
「それはアンジェラは特別だからだよ…」
「特別?アンジェラは特別なの?」
「あ、えっ、えっと」
「ううん。普通よ。ちょっと記憶力がいいだけ」
モニカが失言しそうになったのを慌ててアーサーがフォローした。ピクルはアンジェラを羨ましそうに見て唇をとがらせている。
「あーあ!いいなあ~。アンジェラ、とってもかわいいうえに賢いのね!」
「そんなことないよ。モルのほうがかわいいもん」
「アンジェラの方がかわいいに決まってるでしょ。ああ、アンジェラかわいい~」
双子がいつもの癖で褒め合いをしてしまい、ピクルは二人を交互に見てしょんぼりと肩を落とした。
「あ…、そうなのね。アンジェラとモルって、そういう仲なんだぁ…」
「えっ?なにが?」
「そういう仲ってなあに?」
「つ、付き合ってるんでしょ…?」
「え!!」
「なんでそうなるの?!ぼ…私たち従弟よ?!」
「だって、ラブラブなんだもん…」
「ラブラブ?!」
「キスとかしたことあるんでしょ…?」
「キスはしたことあるけど…」
「やっぱりあるんだぁ…」
「で、でもあれはそういう意味のキスじゃなかったよ!アンジェラが僕に勝つためにやったんだもん!」
「そうそう!勝負しててね、モルすっごく強いから、キスして油断させるしか勝つ方法がなかったの!」
「勝負で勝つためにキスするの?都会の子たちってみんなそんななの?」
「いや…ちがうと思います…」
「あれはほんとにひどかったよ。僕の気持ちを踏みにじった」
「ごめんなさい…」
学院での出来事を思い出し、モニカがジトッとした目でアーサーを睨んだ。アーサーは申し訳なさで縮こまってしまっている。そしてピクルは、自分とまったく違う世界で生きてきた二人を見て少し落ち込んだ。
しょぼんとしたピクルを見て、アーサーとモニカは(どうしよう…)と目を見合わせた。ピクルがなぜ落ち込んでしまったのかがハッキリと分からなかったが、なんとなく疎外感を抱いたことだけは感じ取った。二人はこくりと頷きピクルの手をぎゅっと握る。孤独を紛らわせるには手を繋ぐのが一番だと、アーサーとモニカは知っていた。二人に手を繋がれたピクルは、恥ずかしそうにしながらも彼らの手を握り返す。
「わ!ピクル見て!スライムがいるー!」
「ほんとだ!このあたりにもいるんだね!」
「うん。このあたりって森が近いでしょ?スライムとか小さくて弱い魔物がちらほらいるの」
「そうなんだあ。こわくない?」
「うん。小さい魔物くらいならお父さんがなんとかしてくれる。稀に大きな魔物が出てきたりするんだけど、そのときはインコを飛ばして冒険者に来てもらうの」
「へー!」
「だから私たちね、一人一羽インコを持ってるのよ。あんまり友だちがいない私にとって、このインコが親友なの」
ピクルはそう言ってアイテムボックスから一羽のインコを取り出した。黄色いインコでピクルに良く懐いている。伝言を頼んでもいないのに、嬉しそうに言葉を発していた。
《ピクル!デンゴン カ?!ソレトモ ヒトリゴトカ?!》
「どっちでもないわ。お友だちにあなたを見せびらかそうと思って」
《ミセモノジャ ナイ!》
「あは、ごめんごめん」
「わーすごい!インコとこんなに意思疎通取れる人はじめて見たよ!」
「この子が特別なのかも。小さい時からずっと話しかけてたら、ある日突然自分から喋るようになっちゃって。えへへ。…あ、プラム園に着いたわ。アンジェラ、モル。ここが私たちの家のプラム園よ」
「わぁぁ!」
ピクルが指さした先には、プラムがたわわになっている木がたくさんあった。プラム園に近づくにつれ、さわやかな果物の香りがふんわり流れてくる。アーサーとモニカは深く息を吸い込んでからプラム園へ走り出した。
「アンジェラ!モル!あんまり奥へ行っちゃだめよー!森に近いから!」
「「はーい!!」」
「あと、木になってる実は好きなだけとっていいけど、そのまま食べると酸っぱいからねー!!」
「わーー!ありがとー!!」
「ピクルー!どんな実を採ればいいの~?!」
「黄色くってまぁるいのがオススメ!ジャムにするとおいしいのー!」
「わー!ピクルも一緒に採ろー!」
「うん!」
プラムに大はしゃぎするアンジェラとモルがかわいくて、ピクルはクスクス笑いながら二人と一緒にプラムを採った。ダメだと言っているのに、好奇心に勝てなかった双子はプラムを生でかじってしまい、酸っぱさで顔をしわくちゃにした。顔立ちが良い二人がぶさいくな顔をしたのが面白くてしばらくピクルの笑いがおさまらなかった。
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