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淫魔編:モニカの画家生活
【233話】強くならないと
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「……」
「……」
「……」
しばらくの沈黙が流れたあと、イェルドが二人にしか聞こえない声で話しかける。
「で。どうするんだこれから」
「なにがだ?」
「とぼけんな。分かってんだろお?低ランクダンジョンだよ。ルアンダンジョンの他にも変異種が棲息してる可能性がある。低級冒険者の死亡率を無駄に上げないためにもなんとかしないと」
「…現状どうにもできないな。ルアンのギルマスは…善良な人だがギルドに影響力がなさそうだったし」
「そうね。王様オークの件を本部に報告するとは言ってくれたけど…。あのギルマスの報告じゃ本部は動かなさそう」
「あんなに冒険者が死んでるのにか…」
「本部で働いてる人間なんて、冒険者のことはただの数字としか思ってないさ。100人死んでもあいつらが見るのは死体じゃなくて紙に書かれた"100"って数字だけ。上級ならまだしも、低級冒険者が死んでも本部は痛くも痒くもないしな。低級が何人死んでも本部は動かないだろう」
「くそっ、冒険者の命をなんだと思ってんだよ…」
「イェルド、お前も見ただろう。全国の低ランクダンジョンに一度上級冒険者を潜らせろって提案したときのギルマスの顔」
「ああ。そんなこと言われましてもって顔してたな」
「本部より冒険者と接点が多いギルマスでさえ、低級のために時間を割こうとは思わないんだ。上級冒険者に指定依頼すると金もかかるしな」
「それでも…せめて死亡率が高いダンジョンには上級冒険者を派遣してあげてほしいわ。変異種がいる可能性が高いもの」
「だな。ま、俺らみたいな中級冒険者がなに言ったって無駄だな…。今日実感したよ」
「カミーユさんに直接お願いしたら動いてくれるんじゃない?」
「ばか。知ってるだろう?いまカミーユさんのパーティには異常なほどの指定依頼が出されてる。あの人たちには頼めない。別のS級か…せめてA級が動いてくれないと」
「俺らがもっと強ければな…」
イェルドはそう呟き悔しそうに拳を握った。アデーレも気分が沈んでいるのか、目を伏せてワイングラスを揺らしている。クイっとグラスに残っていたワインを飲み干したあと、ベニートが口を開く。
「そうだな…。俺たちはまだまだ…弱い。王様オークだってアーサーとモニカの魔法液がなければ負けてた。きっとこうやってうまいめしも食えてなかっただろうな。俺らの実力はその程度しかない。悔しいことにな」
「早く強くなりたいね。強くなって…低級冒険者が死なないようにサポートしてあげられたら…」
「そうだな。本部が頼りにならないんだったら、俺たちが強くなってやるしかない」
「よっしゃー!!そうと決まれば早速明日依頼受けに行こうぜ!!強くなるには数をこなすのが一番手っ取り早いだろ?!」
突然やる気満々になったイェルドが立ちあがって肩をコキコキ鳴らした。そんな彼をベニートとアデーレは冷めた目で見上げている。
「え…さすがに休みたい」
「俺も。疲れた。一週間休暇だよ」
「ええー?!なんだったんだよさっきの威勢は?!」
「あれは疲れをとってからの話だ。イェルド、お前だって本当は疲れが溜まってるだろう。無理は禁物」
「むぅぅ…分かった…」
「さて、しんどい話はここまでにして、今はうまい食事をたのしもうぜ」
「そうね。せっかくアーサーとモニカがご馳走してくれたんだから」
「はっ!そうだった!俺まだ注文してないメニューあるんだった!」
イェルドはメニューを引っ掴んで、売り子が覚えきれない量の注文をした(ベニートとアデーレはワインを各3本ずつ頼んでいた)。酔ってじゃれ合っている双子を肴にしながら、疲れ切った体に酒を流し込む。大人たちがやっと帰ろうと席を立った頃には、アーサーとモニカはぴったりくっついてすやすや眠っていた。
「……」
「……」
しばらくの沈黙が流れたあと、イェルドが二人にしか聞こえない声で話しかける。
「で。どうするんだこれから」
「なにがだ?」
「とぼけんな。分かってんだろお?低ランクダンジョンだよ。ルアンダンジョンの他にも変異種が棲息してる可能性がある。低級冒険者の死亡率を無駄に上げないためにもなんとかしないと」
「…現状どうにもできないな。ルアンのギルマスは…善良な人だがギルドに影響力がなさそうだったし」
「そうね。王様オークの件を本部に報告するとは言ってくれたけど…。あのギルマスの報告じゃ本部は動かなさそう」
「あんなに冒険者が死んでるのにか…」
「本部で働いてる人間なんて、冒険者のことはただの数字としか思ってないさ。100人死んでもあいつらが見るのは死体じゃなくて紙に書かれた"100"って数字だけ。上級ならまだしも、低級冒険者が死んでも本部は痛くも痒くもないしな。低級が何人死んでも本部は動かないだろう」
「くそっ、冒険者の命をなんだと思ってんだよ…」
「イェルド、お前も見ただろう。全国の低ランクダンジョンに一度上級冒険者を潜らせろって提案したときのギルマスの顔」
「ああ。そんなこと言われましてもって顔してたな」
「本部より冒険者と接点が多いギルマスでさえ、低級のために時間を割こうとは思わないんだ。上級冒険者に指定依頼すると金もかかるしな」
「それでも…せめて死亡率が高いダンジョンには上級冒険者を派遣してあげてほしいわ。変異種がいる可能性が高いもの」
「だな。ま、俺らみたいな中級冒険者がなに言ったって無駄だな…。今日実感したよ」
「カミーユさんに直接お願いしたら動いてくれるんじゃない?」
「ばか。知ってるだろう?いまカミーユさんのパーティには異常なほどの指定依頼が出されてる。あの人たちには頼めない。別のS級か…せめてA級が動いてくれないと」
「俺らがもっと強ければな…」
イェルドはそう呟き悔しそうに拳を握った。アデーレも気分が沈んでいるのか、目を伏せてワイングラスを揺らしている。クイっとグラスに残っていたワインを飲み干したあと、ベニートが口を開く。
「そうだな…。俺たちはまだまだ…弱い。王様オークだってアーサーとモニカの魔法液がなければ負けてた。きっとこうやってうまいめしも食えてなかっただろうな。俺らの実力はその程度しかない。悔しいことにな」
「早く強くなりたいね。強くなって…低級冒険者が死なないようにサポートしてあげられたら…」
「そうだな。本部が頼りにならないんだったら、俺たちが強くなってやるしかない」
「よっしゃー!!そうと決まれば早速明日依頼受けに行こうぜ!!強くなるには数をこなすのが一番手っ取り早いだろ?!」
突然やる気満々になったイェルドが立ちあがって肩をコキコキ鳴らした。そんな彼をベニートとアデーレは冷めた目で見上げている。
「え…さすがに休みたい」
「俺も。疲れた。一週間休暇だよ」
「ええー?!なんだったんだよさっきの威勢は?!」
「あれは疲れをとってからの話だ。イェルド、お前だって本当は疲れが溜まってるだろう。無理は禁物」
「むぅぅ…分かった…」
「さて、しんどい話はここまでにして、今はうまい食事をたのしもうぜ」
「そうね。せっかくアーサーとモニカがご馳走してくれたんだから」
「はっ!そうだった!俺まだ注文してないメニューあるんだった!」
イェルドはメニューを引っ掴んで、売り子が覚えきれない量の注文をした(ベニートとアデーレはワインを各3本ずつ頼んでいた)。酔ってじゃれ合っている双子を肴にしながら、疲れ切った体に酒を流し込む。大人たちがやっと帰ろうと席を立った頃には、アーサーとモニカはぴったりくっついてすやすや眠っていた。
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