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淫魔編:先輩の背中
【215話】遺書
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準備期間の1日目が終わった。双子とベニートたちはギルドに籠り、とっぷり日が暮れるまで細かい打ち合わせをしていた。宿へ戻った頃には、アーサーもモニカも頭を使いすぎてぐったりしている。部屋へ入るや否やベッドに倒れこみ爆睡した。
2日目。彼らは必要な物を買い揃えるために町へ出た。干し肉、パン、チーズなどの食糧。薬、エリクサー、包帯などの応急手当道具や矢などを手際よく購入していく。
アーサーとモニカが一番ハッとしたのは、ベニートたちが水や油をたっぷり買っていたことだった。今まではモニカの水魔法や火魔法で簡単に水の調達や灯りを維持することができていたので、意識して用意するという考えに至らなかった。だが、確かにそれらは必要不可欠なものだ。今回のように、万が一モニカの魔力が枯渇してしまった場合に備え、今後はしっかり水や油も買うようにしようと双子は決めた。
3日目。午前中に改めて打ち合わせをし、午後は明日に備えコンディションを整えるためにゆっくり休息をとった。今回留守番をするモニカは、アーサーの疲れが取れるよう精一杯サポートした。例えば夜、風呂上りのアーサーをマッサージしてあげたり、忘れ物がないかもう一度アイテムボックスの中身を点検した。
「アーサー、ちょっと俺の部屋に来い」
モニカにマッサージをしてもらっている時、ベニートがちょっとだけドアを開けてアーサーを手招きした。モニカもついて行こうとしたがベニートに止められる。彼女は少しシュンとしながら部屋に残りアイテムボックスのチェックをした。
「…よし!かんぺき!忘れものなんてひとつもないわ!それにこの、モニカ特製マップも入れておくの!」
じゃじゃーん!と誰もいない部屋でマップを掲げる。マップには、出現地に魔物の名前と弱点がびっしりと書き込まれている。さらに要所要所で「休憩は大事!」「水分補給を忘れずに!」「毒がある魔物だけど刺されに行っちゃダメだよ!」「あともうちょっとで掃討完了!」などのメッセージが書かれている(モニカの似顔絵に吹き出しを付けて)。それを4マップ分、モニカは寝る間を惜しんで作っていたのだ。アーサーとベニートたちの役に少しでも立ちたかったのだろう。
マップをアイテムボックスに突っ込んで、モニカはベッドへ寝転んだ。アーサーがいない広いベッドは居心地が悪い。
「明日からひとりかあ。アーサーはクロネたちと絵を描いたりしたら良いって言ってくれてたけど…。私だけそんな呑気にしてていいのかなあ…。みんな危険な目にあってるときにさ…」
◇◇◇
ベニートの部屋にはアデーレとイェルドもいた。全員寝衣を着てくつろいでいる様子だ。アーサーが入ってくると、アデーレが「座って」と椅子を指さした。
「どうしたのみんな?こんな夜に」
「明日からダンジョンに潜るでしょ?私たちは、ダンジョンに潜る前夜にいつもしてることがあるの」
「いつもしてること?」
「そうだ」
ベニートがメンバーの前に紙とペンを置いた。アーサーはベニートを見上げて首を傾げる。
「何か書くの?」
「ああ」
「何を書くの?」
「遺書だ」
「……」
アーサーの表情が真剣になり、ゆっくりと紙に視線を落とす。イェルドはそんな彼の肩に腕をかけて優しく言った。
「俺たちはもちろん死ぬ気はないし、アーサーを死なせるつもりは毛頭ねえ。だけど万が一ってことがあるからな。俺たちは…いや、ダンジョンに潜る冒険者はたいがいやってる」
「これはケジメというか、覚悟を決めるものでもあるの。よし、絶対生きて帰ってくるぞーって。だってこんなもの、大切な人に読ませたくないでしょう?」
「そういうことだ。俺たちは生きて帰ってくるために遺書を書く。アーサーも書いてみたら分かる。絶対に死ねないって思うから。だから書け。モニカに。カミーユさんに。…お前が大切だと思ってる全ての人へ、書くんだ」
「…うん」
ベニートたちに見守られながら、アーサーはゆっくりと筆をすすめた。実際はアーサーになにかあっても死ぬことはないのだが、加護の糸はないものとして書いた。モニカに遺書を書いているとき、感極まってボロボロと大粒の涙を落してしまい紙にたくさんのシミがついてしまった。他にもカミーユたちや、シャナ、ボルーノ、ベニートたち、イチ、クロネ、ウィルク、ジュリアなど、大好きな人達へのメッセージをしたためる。言葉を残したいと思う人が、伝えたいと思う言葉がこれほどたくさんあることに初めて気付いた。
(これを読んだらモニカ絶対泣いちゃうだろうなあ…。いや、怒るかな?泣きながら怒るかも。どちらにせよ僕が死んじゃったらきっとルアンが氷漬けになっちゃうな。ふふ。それは困るなあ。
カミーユも悲しむだろうな。カミーユよりジルが心配。ジル、僕が死んじゃったらショックで寝込んじゃいそう。それか僕を殺した魔物をボコボコにしに行くだろうな。リアーナだって、カトリナだって、きっと泣いちゃうよね。だってこんなに僕のこと大切にしてくれてたんだもん。
ウィルクは…怒りそうだなあ。約束したじゃないかって。お兄さまの嘘つきって言われそう。弟にうそつきだって思われるのはいやだな。ジュリアには、僕に何かあったらモニカを頼むって書いておこう。あの子はしっかりしてるから、きっとモニカを守ってくれる。そしてヴィクス…。僕が死んだらヴィクスはどうなっちゃうんだろう。今よりもっとおかしくなっちゃうのかな。僕がなんとかしてあげないといけないのに…)
5枚の紙にびっしりとメッセージを書き、やっとアーサーがペンを置いた。ごしごしと目をこすり、深い吐息をつきながら椅子にもたれる。彼は天井を見上げてぼそりと呟いた。
「…だめだ。死ねない」
ベニート、アデーレ、イェルドが目を見合わせてホッとした表情で微笑んだ。遺書を書く意味が、アーサーに充分伝わったようだ。
「…僕ね」
アーサーが遠くを見ながら小さい声を出した。ベニートたちは黙ってその言葉に耳を傾ける。
「ちょっと前に、自分の心臓に剣を刺したんだ」
「っ……」
初耳だった彼らは衝撃を受けて固まった。アーサーは言葉を続ける。
「錯乱してた。わけわかんなくなっちゃってた。だから死んだ方がいいって思っちゃった。…でも、僕、それを抜きにしてもずっとね。僕がいない方が良いんじゃないかって、心のどこかでずっと思ってた。生まれてこなかった方が良かったんじゃないかって。その方が、モニカはきっと幸せだっただろうって…思ってた」
「そんなこと…」
イェルドが口を挟みかけたが、すぐアデーレに小突かれて黙った。
「でも…遺書を書いて気付いたよ。僕が死んだらたくさんの人が泣いちゃう。悲しんだり、怒ったりしちゃう。僕、みんなにそんな思いさせたくないよ。それに、僕にはまだたくさんやり残してることがある。それは僕にしかできないことだから…」
だから、と言ったあとアーサーはベニートたちの目をまっすぐと見た。
「僕は死なない。死んじゃだめだ。死にたくない」
それを聞き、ベニートたちは力強く頷いた。
「死ぬもんか。生きて帰るんだ。もちろん4人全員でな」
「当たり前でしょ。絶対に生きて帰るのよ」
「アーサー、その気持ちが生き延びる力になる。ずっと、それを忘れるな」
「うん」
「さて。重い話はこれで終わりだ。最後に乾杯するぞ。アーサー、お前15歳なら一応酒いけるよな?」
「え、あ、うん。年齢的には…一応。飲んだことはないけど」
「じゃあ今日は俺らに付き合って一口だけ飲んでもらうぞ。これもいつもやってるんだ。前夜に乾杯」
「分かった!」
ベニートが4人分のグラスにワインを注いだ。アーサーは慣れない手つきでグラスを持ち、彼らと乾杯をする。おそるおそる一口ワインを飲んで「ぐぇぇっ!なにこれぇっ!」と顔をしかめながらグラスをテーブルに置いた。その反応にベニートたちは大笑いしたが、しばらくしてアーサーの様子がおかしいことに気付く。あの一口で見事酔っ払ったアーサーの仕草や言葉に、7歳も年上のアデーレがドキッとしてしまう。
「ちょっと!!アーサーどうにかしてよ!!私こんなアーサー知らない!!」
「一口飲んだだけでこれかよ!!おい、モニカ呼んで来い!!」
「がははは!アーサーお前やるなあ?悪いやつだぜ!!」
「え、急にどうしたの?…ってアーサー?!顔が真っ赤だよ?!」
「あ、モニカだー。今日もかわいいねぇ。こっち来てよ~」
「?!」
とろんと落ちた目でアーサーがモニカを手招きする。モニカが近づくと、ぎゅーっと抱きついて離れなくなった。
「モニカ。ずっと僕と一緒にいてね。ずっとだよ?」
「ちょ、ちょっと!ベニート!アーサーに何したの?!なにこれ?!」
「僕のこと一番すき?僕はモニカのこと一番すきー」
「きゃーーー!!なによこれ!!え?!」
「酒を一口飲ませちまったんだよ…。まさかこうなると思わなくて…」
「ノアとチャドが言ってた…。アーサーはブランデー入りの焼き菓子を食べただけで、ひどい酔い方をするって…!」
「まじかよ!!明日には治るんだろうなあ?!」
「大丈夫。あの日もしばらくしたら元に戻ってたらしいから…。と、とにかくアーサーを部屋に戻すわ。もう用事は済んだの?」
「ああ。もう終わった。すまんモニカ。迷惑かける」
「いいの。でもこれからはお酒飲ませちゃダメよ?私でさえ扱いに困るわ…」
「ええ。二度と飲ませないわ。今後一生」
モニカはアーサーを引き取り、自分たちの部屋に戻った。それからもアーサーは普段絶対に言葉にしないようなことを言ってモニカを赤面させていた。
「この記憶消えててあげてよ…?普段すっごく意識して口にしないようにしてるんだからさあ…」
しばらくは我慢していたモニカもさすがにたまらなくなって、最終的に兄の口に睡眠薬を突っ込んで強制的に眠らせた。
2日目。彼らは必要な物を買い揃えるために町へ出た。干し肉、パン、チーズなどの食糧。薬、エリクサー、包帯などの応急手当道具や矢などを手際よく購入していく。
アーサーとモニカが一番ハッとしたのは、ベニートたちが水や油をたっぷり買っていたことだった。今まではモニカの水魔法や火魔法で簡単に水の調達や灯りを維持することができていたので、意識して用意するという考えに至らなかった。だが、確かにそれらは必要不可欠なものだ。今回のように、万が一モニカの魔力が枯渇してしまった場合に備え、今後はしっかり水や油も買うようにしようと双子は決めた。
3日目。午前中に改めて打ち合わせをし、午後は明日に備えコンディションを整えるためにゆっくり休息をとった。今回留守番をするモニカは、アーサーの疲れが取れるよう精一杯サポートした。例えば夜、風呂上りのアーサーをマッサージしてあげたり、忘れ物がないかもう一度アイテムボックスの中身を点検した。
「アーサー、ちょっと俺の部屋に来い」
モニカにマッサージをしてもらっている時、ベニートがちょっとだけドアを開けてアーサーを手招きした。モニカもついて行こうとしたがベニートに止められる。彼女は少しシュンとしながら部屋に残りアイテムボックスのチェックをした。
「…よし!かんぺき!忘れものなんてひとつもないわ!それにこの、モニカ特製マップも入れておくの!」
じゃじゃーん!と誰もいない部屋でマップを掲げる。マップには、出現地に魔物の名前と弱点がびっしりと書き込まれている。さらに要所要所で「休憩は大事!」「水分補給を忘れずに!」「毒がある魔物だけど刺されに行っちゃダメだよ!」「あともうちょっとで掃討完了!」などのメッセージが書かれている(モニカの似顔絵に吹き出しを付けて)。それを4マップ分、モニカは寝る間を惜しんで作っていたのだ。アーサーとベニートたちの役に少しでも立ちたかったのだろう。
マップをアイテムボックスに突っ込んで、モニカはベッドへ寝転んだ。アーサーがいない広いベッドは居心地が悪い。
「明日からひとりかあ。アーサーはクロネたちと絵を描いたりしたら良いって言ってくれてたけど…。私だけそんな呑気にしてていいのかなあ…。みんな危険な目にあってるときにさ…」
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「どうしたのみんな?こんな夜に」
「明日からダンジョンに潜るでしょ?私たちは、ダンジョンに潜る前夜にいつもしてることがあるの」
「いつもしてること?」
「そうだ」
ベニートがメンバーの前に紙とペンを置いた。アーサーはベニートを見上げて首を傾げる。
「何か書くの?」
「ああ」
「何を書くの?」
「遺書だ」
「……」
アーサーの表情が真剣になり、ゆっくりと紙に視線を落とす。イェルドはそんな彼の肩に腕をかけて優しく言った。
「俺たちはもちろん死ぬ気はないし、アーサーを死なせるつもりは毛頭ねえ。だけど万が一ってことがあるからな。俺たちは…いや、ダンジョンに潜る冒険者はたいがいやってる」
「これはケジメというか、覚悟を決めるものでもあるの。よし、絶対生きて帰ってくるぞーって。だってこんなもの、大切な人に読ませたくないでしょう?」
「そういうことだ。俺たちは生きて帰ってくるために遺書を書く。アーサーも書いてみたら分かる。絶対に死ねないって思うから。だから書け。モニカに。カミーユさんに。…お前が大切だと思ってる全ての人へ、書くんだ」
「…うん」
ベニートたちに見守られながら、アーサーはゆっくりと筆をすすめた。実際はアーサーになにかあっても死ぬことはないのだが、加護の糸はないものとして書いた。モニカに遺書を書いているとき、感極まってボロボロと大粒の涙を落してしまい紙にたくさんのシミがついてしまった。他にもカミーユたちや、シャナ、ボルーノ、ベニートたち、イチ、クロネ、ウィルク、ジュリアなど、大好きな人達へのメッセージをしたためる。言葉を残したいと思う人が、伝えたいと思う言葉がこれほどたくさんあることに初めて気付いた。
(これを読んだらモニカ絶対泣いちゃうだろうなあ…。いや、怒るかな?泣きながら怒るかも。どちらにせよ僕が死んじゃったらきっとルアンが氷漬けになっちゃうな。ふふ。それは困るなあ。
カミーユも悲しむだろうな。カミーユよりジルが心配。ジル、僕が死んじゃったらショックで寝込んじゃいそう。それか僕を殺した魔物をボコボコにしに行くだろうな。リアーナだって、カトリナだって、きっと泣いちゃうよね。だってこんなに僕のこと大切にしてくれてたんだもん。
ウィルクは…怒りそうだなあ。約束したじゃないかって。お兄さまの嘘つきって言われそう。弟にうそつきだって思われるのはいやだな。ジュリアには、僕に何かあったらモニカを頼むって書いておこう。あの子はしっかりしてるから、きっとモニカを守ってくれる。そしてヴィクス…。僕が死んだらヴィクスはどうなっちゃうんだろう。今よりもっとおかしくなっちゃうのかな。僕がなんとかしてあげないといけないのに…)
5枚の紙にびっしりとメッセージを書き、やっとアーサーがペンを置いた。ごしごしと目をこすり、深い吐息をつきながら椅子にもたれる。彼は天井を見上げてぼそりと呟いた。
「…だめだ。死ねない」
ベニート、アデーレ、イェルドが目を見合わせてホッとした表情で微笑んだ。遺書を書く意味が、アーサーに充分伝わったようだ。
「…僕ね」
アーサーが遠くを見ながら小さい声を出した。ベニートたちは黙ってその言葉に耳を傾ける。
「ちょっと前に、自分の心臓に剣を刺したんだ」
「っ……」
初耳だった彼らは衝撃を受けて固まった。アーサーは言葉を続ける。
「錯乱してた。わけわかんなくなっちゃってた。だから死んだ方がいいって思っちゃった。…でも、僕、それを抜きにしてもずっとね。僕がいない方が良いんじゃないかって、心のどこかでずっと思ってた。生まれてこなかった方が良かったんじゃないかって。その方が、モニカはきっと幸せだっただろうって…思ってた」
「そんなこと…」
イェルドが口を挟みかけたが、すぐアデーレに小突かれて黙った。
「でも…遺書を書いて気付いたよ。僕が死んだらたくさんの人が泣いちゃう。悲しんだり、怒ったりしちゃう。僕、みんなにそんな思いさせたくないよ。それに、僕にはまだたくさんやり残してることがある。それは僕にしかできないことだから…」
だから、と言ったあとアーサーはベニートたちの目をまっすぐと見た。
「僕は死なない。死んじゃだめだ。死にたくない」
それを聞き、ベニートたちは力強く頷いた。
「死ぬもんか。生きて帰るんだ。もちろん4人全員でな」
「当たり前でしょ。絶対に生きて帰るのよ」
「アーサー、その気持ちが生き延びる力になる。ずっと、それを忘れるな」
「うん」
「さて。重い話はこれで終わりだ。最後に乾杯するぞ。アーサー、お前15歳なら一応酒いけるよな?」
「え、あ、うん。年齢的には…一応。飲んだことはないけど」
「じゃあ今日は俺らに付き合って一口だけ飲んでもらうぞ。これもいつもやってるんだ。前夜に乾杯」
「分かった!」
ベニートが4人分のグラスにワインを注いだ。アーサーは慣れない手つきでグラスを持ち、彼らと乾杯をする。おそるおそる一口ワインを飲んで「ぐぇぇっ!なにこれぇっ!」と顔をしかめながらグラスをテーブルに置いた。その反応にベニートたちは大笑いしたが、しばらくしてアーサーの様子がおかしいことに気付く。あの一口で見事酔っ払ったアーサーの仕草や言葉に、7歳も年上のアデーレがドキッとしてしまう。
「ちょっと!!アーサーどうにかしてよ!!私こんなアーサー知らない!!」
「一口飲んだだけでこれかよ!!おい、モニカ呼んで来い!!」
「がははは!アーサーお前やるなあ?悪いやつだぜ!!」
「え、急にどうしたの?…ってアーサー?!顔が真っ赤だよ?!」
「あ、モニカだー。今日もかわいいねぇ。こっち来てよ~」
「?!」
とろんと落ちた目でアーサーがモニカを手招きする。モニカが近づくと、ぎゅーっと抱きついて離れなくなった。
「モニカ。ずっと僕と一緒にいてね。ずっとだよ?」
「ちょ、ちょっと!ベニート!アーサーに何したの?!なにこれ?!」
「僕のこと一番すき?僕はモニカのこと一番すきー」
「きゃーーー!!なによこれ!!え?!」
「酒を一口飲ませちまったんだよ…。まさかこうなると思わなくて…」
「ノアとチャドが言ってた…。アーサーはブランデー入りの焼き菓子を食べただけで、ひどい酔い方をするって…!」
「まじかよ!!明日には治るんだろうなあ?!」
「大丈夫。あの日もしばらくしたら元に戻ってたらしいから…。と、とにかくアーサーを部屋に戻すわ。もう用事は済んだの?」
「ああ。もう終わった。すまんモニカ。迷惑かける」
「いいの。でもこれからはお酒飲ませちゃダメよ?私でさえ扱いに困るわ…」
「ええ。二度と飲ませないわ。今後一生」
モニカはアーサーを引き取り、自分たちの部屋に戻った。それからもアーサーは普段絶対に言葉にしないようなことを言ってモニカを赤面させていた。
「この記憶消えててあげてよ…?普段すっごく意識して口にしないようにしてるんだからさあ…」
しばらくは我慢していたモニカもさすがにたまらなくなって、最終的に兄の口に睡眠薬を突っ込んで強制的に眠らせた。
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