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淫魔編:先輩の背中
【212話】ベニートたちへのお願い
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フォントメウを発った3日後の夜、馬車はポントワーブの門を通った。シャナとユーリに見送られ、双子は自分たちの家へ帰る。
「モニカ、明日私の杖屋に来て頂戴。ブナが戻ってくるまでの間の杖を貸すから」
「ありがとうシャナ。じゃあ、明日行くね」
「ええ、待ってるわ」
「おやすみ、アーサー、モニカ」
「おやすみシャナ、ユーリ!」
家の中に入ったアーサーとモニカはすぐさま寝室へ行ってベッドに倒れこんだ。休憩を挟んでいたとはいえ、3日間も馬車の硬い椅子に座りっぱなしで疲労の限界を迎えていた。枕に顔をうずめながらアーサーがくぐもった声で尋ねる。
「モニカ…お風呂どうする…?」
「うう…入りたいけど…入りたくない…」
「僕も…」
「明日の朝に入ってもいい…?もう動きたくないよぉ…」
「そうしよう…。でも服だけは着替えよっか」
「んんん…やだぁ…」
「だめだよモニカ。シーツが汚れちゃうでしょ?」
「明日洗えばいいもん…」
「だめー」
アーサーはよろよろと立ち上がり寝衣に着替えた。モニカの寝衣をベッドに置くが、一向に着替えようとしない。はぁ…とため息をつきながら、モニカの服を着替えさせる。自分でまったく動いてくれないので一苦労だった。脱いだ服を籠に入れ、アーサーも再びベッドに寝転んだ。二人ともあっという間に眠りに落ち、目が覚めたのは翌日の昼過ぎだった。
起きた双子はお風呂に入り(早速フォントメウで購入した泡風呂液を使った)、モニカが軽く化粧をしてから二人でシャナの杖屋へ向かった。ごはんを食べずに家を出たので、歩きながら果物をかじっている。
「起きてからベニートにインコ飛ばしたんだー」
「さすがアーサー!仕事が早いねえ。それで、返事は返ってきたの?」
「うん。すぐに返事が返ってきたよ。一昨日ポントワーブに帰ってきたんだって。夕方にうちに来てくれるって」
「わー!久しぶりにベニートたちに会えるのね!うれしい~」
「一緒にルアンについてきてくれるかなあ」
「ベニートたちも結構忙しいもんね。聞いてみなきゃ分からないわ」
そんな話をしている間にシャナの杖屋に到着する。店内に入ると、シャナがテーブルに案内してくれた。お茶とお菓子を出したあと、シャナが一本の杖をモニカに差し出す。
「これが、ブナの代わりの杖?」
「ええ。ブナに一番使い心地が近い杖よ。でもずっとブナを使ってたモニカには、まったく違う杖だって分かってしまうだろうけど。ちょっと振ってみて?」
モニカは杖を持って一振りした。確かに手に持った感覚はブナによく似ている。シャナもそれを感じ取ったようだ。
「うん、大丈夫そうね。よかった」
「ありがとうシャナ。じゃあ、これ借りるね」
「ええ。ふふ、この杖はずっとモニカに使われたがっていたから今すごく喜んでいるわ」
「え、そうなのー?私にはこの杖の声が聞こえないや…」
「普通は聞こえないものだから仕方がないわ。レンタル料は金貨5枚ね」
「はーい」
杖屋としてのシャナは、双子に対しても一切サービスをせずしかるべき料金を請求する。そこは職人としてのこだわりらしい。アーサーとモニカにとってもその方がやりやすかった。アーサーは金貨5枚をトレーに乗せる。シャナはニコニコとそれを受け取り、双子に尋ねた。
「で、これからどうするの?しばらくポントワーブにいる?」
「うーん、まだ未定かなあ」
「そうなのね。決まったらちゃんと私に報告するのよ?あと、これからも何かあったら私を頼ってね」
「ありがとう、シャナ」
「あんまり無茶はしないように!」
「はい!」
杖屋でまったりとしていたら、いつの間にかすっかり夕方になっていた。アーサーとモニカは急いで家に帰ってベニートたちを迎える準備をする。モニカはササッと料理を作り、アーサーは料理とビールをテーブルに並べた。準備が整ってすぐベニートたちが玄関のベルを鳴らす。ドアを開けると、アーサーとモニカはイェルドにがっしりハグをされた。
「よぉぉ!!アーサー、モニカ!!元気だったかぁぁ?!」
「こらイェルド。出会って早々この子たちを絞め殺す気?」
「お前たちずいぶん成長したな?大人っぽくなった」
「イェルド!アデーレ!ベニート!久しぶり!!」
「入って入って!ちょっとしたご飯用意してるから!!」
アーサーとモニカが三人の手を引きダイニングへ連れて行った。できたての料理と冷えたビールに3人は嬉しそうな声をあげている。5人で食事を楽しみ全ての皿が空いてから、アーサーは本題を切り出した。
「ねえ、3人は近々依頼が入ってるの?」
「ん?いや。今月の残りはゆっくりする予定だ」
「私たちが依頼を受けるのは月初めよ。まとめて依頼を受けて、3日間の準備期間、3週間で依頼をこなして、残りは休息と決めてるの」
「へええ!!すごいね!冒険者みたい!」
「いや、冒険者だから」
「俺ら専業の冒険者だからな!がっつりやってるぜ!」
「ま、ダンジョン掃討を受けるときはそんなにきれいなスケジュールではこなせないけどな」
ベニートがダンジョンの話をしたので双子が目を見合わせた。こくりと頷き、アーサーが身を乗り出す。
「ベニート、アデーレ、イェルド。お願いがあるんだ」
「ん?」
双子の口から"お願い"という言葉を初めて聞いたので、C級冒険者は首を傾げた。イェルドはもうすでにテンションが上がっている。
「お願い?!お前らからのお願いだって?!」
「イェルド静かにして」
「なんだ?お願いって」
「あのね、もしよければなんだけど、僕たちの依頼を手伝ってほしいんだ」
アーサーは、ルアンでダンジョン掃討依頼を5つ受けたこと、その途中で戦闘不能になったこと、今のモニカが魔法を使えないこと、今依頼が4つ残っていることを話した。その話を聞いてベニートたちは不思議そうに眉間にしわを寄せる。
「お前たちがFランクダンジョンで戦闘不能?信じられない」
「モニカの魔力が枯渇?一体何があったの?」
「お前ら1年半前でもFランクダンジョンなんて余裕だったじゃないか!なのにどうしてそこまでボロボロになった?!」
「実は…」
モゴモゴと淫魔の一件を説明すると、イェルドはショックで倒れそうになっていた。そんな彼を両側で支えながら、ベニートとアデーレが訝し気に双子を見る。
「大変な目にあったのね。二人が無事に帰ってこられてよかったわ。でも…」
「なあ…。まさかとは思うが、誘惑対策をしないで行ったのか?」
「うぅっ…」
アーサーとモニカの体がびくついた。二人の圧に気おされ無意識に俯き目を逸らしてしまう。双子の反応にアデーレは信じられないというように首を振った。
「ダンジョンの情報に淫魔のことは書かれてなかったの?」
「受付嬢に教えてもらってました…」
「緊急な依頼だったのか?」
「期限は2か月ありました…」
「……」
ベニートは頭を抱えて深いため息をついた。
「カミーユさんたちはこの二人に何も教えなかったのか…?」
「カミーユたちは関係ないよ!僕が考えなしだったから悪いんだよ!」
「当然でしょ」
「あ、はい…」
「いやしかし…。ダンジョンの潜り方も知らないとは思わなかった」
「俺もあんまり知らないが、ベニートとアデーレが全部やってくれるからなあ」
「イェルドは静かにしてて」
「はい」
「で、依頼を4つも残したまま、モニカという最強の矛と盾を失ったアーサーは俺たちに助けを求めたと」
テーブルを指でトントンと叩きながらベニートが尋ねる。双子は半泣きになりながら頷いた。アデーレは「なるほどね」と呟き頬杖をついた。
「確かにモニカを連れて行けなかったら、さすがのアーサーでもダンジョン掃討は厳しいわね」
「うん。もしよければ、一緒にルアンについてきてくれないかな?もちろん報酬は支払うし、依頼完了証明書も渡すよ」
「もちろん手伝うぞ!かわいいアーサーとモニカの頼みなんだからな!」
イェルドが即答した。反論すると思っていたベニートとアデーレも、意外にも頷いている。
「むしろその方が都合がいい。お前たちにダンジョンの潜り方を教えてやれる」
「そうね。期限は2か月って言った?」
「うん。期限はそうなんだけど、3週間後に指定依頼が入ってるんだ。できたらそれまでに全部掃討したいな」
「Gランク2つとFランク2つだっけ?1つあたり約5日。いけるんじゃない?」
「俺たちとアーサーならいけるな。さっそく明日出発しよう」
「分かった」
「明日?!今すぐ行こうぜ!」
「イェルドだけ行ってきなさい。どうせ迷子になるでしょうけど」
「いやさすがに馬車で迷子にはならねえし!」
「そうかしら」
「アーサー、モニカ。ちなみに俺たちに報酬も証明書も必要ない。そもそも今のクラスより下の証明書ってあんまり意味がないからな」
「え?だったらせめて報酬は全額もらってほしいんだけど…」
「いらない。俺たち今金に困ってないから」
ベニートがそう言うと、イェルドが「ヒュー」と口笛を吹いた。アデーレもニヤニヤ笑っている。パーティの反応にベニートは少し顔を赤らめた。
「まっ、とにかく、金も証明書も必要ない!」
「その代わり、ルアンの町を案内してくれよ!俺たちあんまりルアンに行ったことないんだ!」
「ええ。ルアンはおいしい料理がたくさんあるって聞いているわ。早めにダンジョンを終わらせられたら、おいしいところに連れて行って」
「ほ、本当にそれでいいの?」
「おいアーサー。水臭いな。俺らはもう兄弟みたいなもんだろ?そんなことで気をつかわなくていい。むしろ俺たち抜きでダンジョンに行かれるほうが心配で眠れない」
「ありがとう…!」
「決まりだな。じゃ、解散。モニカ、ごはんおいしかった。ごちそうさま」
明日の支度をするために、ベニートたちはそそくさと帰って行った。
ジッピン依頼まであと3週間。それまでに4つのダンジョン掃討を完了するため、翌日彼らはルアンへ向かった。
「モニカ、明日私の杖屋に来て頂戴。ブナが戻ってくるまでの間の杖を貸すから」
「ありがとうシャナ。じゃあ、明日行くね」
「ええ、待ってるわ」
「おやすみ、アーサー、モニカ」
「おやすみシャナ、ユーリ!」
家の中に入ったアーサーとモニカはすぐさま寝室へ行ってベッドに倒れこんだ。休憩を挟んでいたとはいえ、3日間も馬車の硬い椅子に座りっぱなしで疲労の限界を迎えていた。枕に顔をうずめながらアーサーがくぐもった声で尋ねる。
「モニカ…お風呂どうする…?」
「うう…入りたいけど…入りたくない…」
「僕も…」
「明日の朝に入ってもいい…?もう動きたくないよぉ…」
「そうしよう…。でも服だけは着替えよっか」
「んんん…やだぁ…」
「だめだよモニカ。シーツが汚れちゃうでしょ?」
「明日洗えばいいもん…」
「だめー」
アーサーはよろよろと立ち上がり寝衣に着替えた。モニカの寝衣をベッドに置くが、一向に着替えようとしない。はぁ…とため息をつきながら、モニカの服を着替えさせる。自分でまったく動いてくれないので一苦労だった。脱いだ服を籠に入れ、アーサーも再びベッドに寝転んだ。二人ともあっという間に眠りに落ち、目が覚めたのは翌日の昼過ぎだった。
起きた双子はお風呂に入り(早速フォントメウで購入した泡風呂液を使った)、モニカが軽く化粧をしてから二人でシャナの杖屋へ向かった。ごはんを食べずに家を出たので、歩きながら果物をかじっている。
「起きてからベニートにインコ飛ばしたんだー」
「さすがアーサー!仕事が早いねえ。それで、返事は返ってきたの?」
「うん。すぐに返事が返ってきたよ。一昨日ポントワーブに帰ってきたんだって。夕方にうちに来てくれるって」
「わー!久しぶりにベニートたちに会えるのね!うれしい~」
「一緒にルアンについてきてくれるかなあ」
「ベニートたちも結構忙しいもんね。聞いてみなきゃ分からないわ」
そんな話をしている間にシャナの杖屋に到着する。店内に入ると、シャナがテーブルに案内してくれた。お茶とお菓子を出したあと、シャナが一本の杖をモニカに差し出す。
「これが、ブナの代わりの杖?」
「ええ。ブナに一番使い心地が近い杖よ。でもずっとブナを使ってたモニカには、まったく違う杖だって分かってしまうだろうけど。ちょっと振ってみて?」
モニカは杖を持って一振りした。確かに手に持った感覚はブナによく似ている。シャナもそれを感じ取ったようだ。
「うん、大丈夫そうね。よかった」
「ありがとうシャナ。じゃあ、これ借りるね」
「ええ。ふふ、この杖はずっとモニカに使われたがっていたから今すごく喜んでいるわ」
「え、そうなのー?私にはこの杖の声が聞こえないや…」
「普通は聞こえないものだから仕方がないわ。レンタル料は金貨5枚ね」
「はーい」
杖屋としてのシャナは、双子に対しても一切サービスをせずしかるべき料金を請求する。そこは職人としてのこだわりらしい。アーサーとモニカにとってもその方がやりやすかった。アーサーは金貨5枚をトレーに乗せる。シャナはニコニコとそれを受け取り、双子に尋ねた。
「で、これからどうするの?しばらくポントワーブにいる?」
「うーん、まだ未定かなあ」
「そうなのね。決まったらちゃんと私に報告するのよ?あと、これからも何かあったら私を頼ってね」
「ありがとう、シャナ」
「あんまり無茶はしないように!」
「はい!」
杖屋でまったりとしていたら、いつの間にかすっかり夕方になっていた。アーサーとモニカは急いで家に帰ってベニートたちを迎える準備をする。モニカはササッと料理を作り、アーサーは料理とビールをテーブルに並べた。準備が整ってすぐベニートたちが玄関のベルを鳴らす。ドアを開けると、アーサーとモニカはイェルドにがっしりハグをされた。
「よぉぉ!!アーサー、モニカ!!元気だったかぁぁ?!」
「こらイェルド。出会って早々この子たちを絞め殺す気?」
「お前たちずいぶん成長したな?大人っぽくなった」
「イェルド!アデーレ!ベニート!久しぶり!!」
「入って入って!ちょっとしたご飯用意してるから!!」
アーサーとモニカが三人の手を引きダイニングへ連れて行った。できたての料理と冷えたビールに3人は嬉しそうな声をあげている。5人で食事を楽しみ全ての皿が空いてから、アーサーは本題を切り出した。
「ねえ、3人は近々依頼が入ってるの?」
「ん?いや。今月の残りはゆっくりする予定だ」
「私たちが依頼を受けるのは月初めよ。まとめて依頼を受けて、3日間の準備期間、3週間で依頼をこなして、残りは休息と決めてるの」
「へええ!!すごいね!冒険者みたい!」
「いや、冒険者だから」
「俺ら専業の冒険者だからな!がっつりやってるぜ!」
「ま、ダンジョン掃討を受けるときはそんなにきれいなスケジュールではこなせないけどな」
ベニートがダンジョンの話をしたので双子が目を見合わせた。こくりと頷き、アーサーが身を乗り出す。
「ベニート、アデーレ、イェルド。お願いがあるんだ」
「ん?」
双子の口から"お願い"という言葉を初めて聞いたので、C級冒険者は首を傾げた。イェルドはもうすでにテンションが上がっている。
「お願い?!お前らからのお願いだって?!」
「イェルド静かにして」
「なんだ?お願いって」
「あのね、もしよければなんだけど、僕たちの依頼を手伝ってほしいんだ」
アーサーは、ルアンでダンジョン掃討依頼を5つ受けたこと、その途中で戦闘不能になったこと、今のモニカが魔法を使えないこと、今依頼が4つ残っていることを話した。その話を聞いてベニートたちは不思議そうに眉間にしわを寄せる。
「お前たちがFランクダンジョンで戦闘不能?信じられない」
「モニカの魔力が枯渇?一体何があったの?」
「お前ら1年半前でもFランクダンジョンなんて余裕だったじゃないか!なのにどうしてそこまでボロボロになった?!」
「実は…」
モゴモゴと淫魔の一件を説明すると、イェルドはショックで倒れそうになっていた。そんな彼を両側で支えながら、ベニートとアデーレが訝し気に双子を見る。
「大変な目にあったのね。二人が無事に帰ってこられてよかったわ。でも…」
「なあ…。まさかとは思うが、誘惑対策をしないで行ったのか?」
「うぅっ…」
アーサーとモニカの体がびくついた。二人の圧に気おされ無意識に俯き目を逸らしてしまう。双子の反応にアデーレは信じられないというように首を振った。
「ダンジョンの情報に淫魔のことは書かれてなかったの?」
「受付嬢に教えてもらってました…」
「緊急な依頼だったのか?」
「期限は2か月ありました…」
「……」
ベニートは頭を抱えて深いため息をついた。
「カミーユさんたちはこの二人に何も教えなかったのか…?」
「カミーユたちは関係ないよ!僕が考えなしだったから悪いんだよ!」
「当然でしょ」
「あ、はい…」
「いやしかし…。ダンジョンの潜り方も知らないとは思わなかった」
「俺もあんまり知らないが、ベニートとアデーレが全部やってくれるからなあ」
「イェルドは静かにしてて」
「はい」
「で、依頼を4つも残したまま、モニカという最強の矛と盾を失ったアーサーは俺たちに助けを求めたと」
テーブルを指でトントンと叩きながらベニートが尋ねる。双子は半泣きになりながら頷いた。アデーレは「なるほどね」と呟き頬杖をついた。
「確かにモニカを連れて行けなかったら、さすがのアーサーでもダンジョン掃討は厳しいわね」
「うん。もしよければ、一緒にルアンについてきてくれないかな?もちろん報酬は支払うし、依頼完了証明書も渡すよ」
「もちろん手伝うぞ!かわいいアーサーとモニカの頼みなんだからな!」
イェルドが即答した。反論すると思っていたベニートとアデーレも、意外にも頷いている。
「むしろその方が都合がいい。お前たちにダンジョンの潜り方を教えてやれる」
「そうね。期限は2か月って言った?」
「うん。期限はそうなんだけど、3週間後に指定依頼が入ってるんだ。できたらそれまでに全部掃討したいな」
「Gランク2つとFランク2つだっけ?1つあたり約5日。いけるんじゃない?」
「俺たちとアーサーならいけるな。さっそく明日出発しよう」
「分かった」
「明日?!今すぐ行こうぜ!」
「イェルドだけ行ってきなさい。どうせ迷子になるでしょうけど」
「いやさすがに馬車で迷子にはならねえし!」
「そうかしら」
「アーサー、モニカ。ちなみに俺たちに報酬も証明書も必要ない。そもそも今のクラスより下の証明書ってあんまり意味がないからな」
「え?だったらせめて報酬は全額もらってほしいんだけど…」
「いらない。俺たち今金に困ってないから」
ベニートがそう言うと、イェルドが「ヒュー」と口笛を吹いた。アデーレもニヤニヤ笑っている。パーティの反応にベニートは少し顔を赤らめた。
「まっ、とにかく、金も証明書も必要ない!」
「その代わり、ルアンの町を案内してくれよ!俺たちあんまりルアンに行ったことないんだ!」
「ええ。ルアンはおいしい料理がたくさんあるって聞いているわ。早めにダンジョンを終わらせられたら、おいしいところに連れて行って」
「ほ、本当にそれでいいの?」
「おいアーサー。水臭いな。俺らはもう兄弟みたいなもんだろ?そんなことで気をつかわなくていい。むしろ俺たち抜きでダンジョンに行かれるほうが心配で眠れない」
「ありがとう…!」
「決まりだな。じゃ、解散。モニカ、ごはんおいしかった。ごちそうさま」
明日の支度をするために、ベニートたちはそそくさと帰って行った。
ジッピン依頼まであと3週間。それまでに4つのダンジョン掃討を完了するため、翌日彼らはルアンへ向かった。
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