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淫魔編:フォントメウ
【210話】モヤモヤ
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すっかりほかほかになった4人は(アーサーとモニカは茹でだこのように真っ赤になっていた)、夜のフォントメウをゆったりと歩いて家に帰った。あてがわれた寝室でアーサーとモニカはベッドに飛び込む。久しぶりに二人っきりになれて、モニカは「んーーー」と甘えた声を出しながら兄にぎゅーっと抱きついた。アーサーはモニカの頭をぽんぽんと撫で、ふぅとため息をついた。
「モニカ、本当になんともないの?」
「なんともないよ。むしろ前より調子がいいくらい」
「無理してない?」
「してないよ。アーサーは?今も気持ちがしんどい?」
「シャナの加護魔法とアンクレットのおかげでずいぶん落ち着いたよ」
「もう自分を傷つけない?」
「傷つけない。今の僕の命はミアーナからもらったものだし。それに、僕が生きてたらモニカに何かあったときに命を分け与えることができるから。そんな大切な命、もう自分で傷つけないよ。心配かけてごめんね。それに…自分の命を粗末にしてごめん。ミアーナがくれた命の貯金、僕が全部使っちゃった…」
「やっぱり分かってないのね!」
モニカは兄の頬をバチンと叩いた。突然わりと本気で叩かれたので、痛みと驚きでアーサーは叩かれたところに手を当てながら妹を見た。モニカはムスとした顔でアーサーを睨みつけている。
「私はアーサーの命の話をしてるの!!ミアーナの命とか私の命とか命の貯金とか今はどうでもいいのよ!!あんたが!!一人で勝手に!!死のうとしたことの話をしているの!!」
「ご、ごめん…」
「私がアーサーのこと大好きなの分かってないの?!ねえ、伝わってないのかなあ?!鈍感アーサーくんには私の気持ち伝わってないのかなあ?!」
胸ぐらを掴まれガクガクと揺らされる。それでも怒りがおさまらないのか、モニカはアーサーに馬乗りになって往復ビンタをした。
「ぶぁっ!わぶっ…いたっ!モニっ…!ぶっ!」
「このっ!このバカ!!バカ!!」
「ごめっ!ごめんってモニカ!もうっ!ぶぁっ、もうしないからっ!」
「あんた、加護の糸のこと知らないときにあんなことしたんでしょ?!二度目がないと思ってたときにあんなことしたんでしょ?!いくらアーサーでも私の大好きなアーサーを傷つけることは許さない!!死んじゃってたら一生あんたを恨み続けることになるとこだった!!それに…そこまでアーサーを追い詰めちゃった私自身のこともね!!」
うわぁぁぁんとモニカが大声で泣き出してしまった。アーサーはおろおろしながら妹を抱きしめる。
「ごめんっ…!本当にごめんね…」
「あんたが死んじゃったら私はどうなるの?!ひとりぼっちになるんだよ?あんな大きな家にひとりで暮らさせるつもりだったの?それとももう私が元に戻らないって思ってた?!あんなことになってたけど、私だって実はすっごい頑張ってたんだからね…!アーサーにまた会いたかったから、ずっとずっと、がんばってたんだから…!」
「うん…」
「アーサーがいなかったら私なんにもできないんだよ?エリクサーだって作れないし、お金の管理だってできないし、トロワも私ひとりじゃどうしたらいいのか分からない…。それに、ウィルクとの約束だって、守れなくなっちゃうんだよ…!」
「うん…」
「加護の糸があるからアーサーは死ななかったし、糸が私と繋がってるからあんたはもう自分を傷つけたりしないでしょう。でも…、私はっ、そんな理由がなくたって、自分のことを大切に思えるようになってほしかった…っ!!」
「ごめんね」
「ごめんねじゃないのよーーー!!!」
「ぐぅぁあっ!」
モニカの強烈なアッパーカットがアーサーの顎に見事ヒットした。アーサーは一瞬意識が飛んで、自分が今どこにいてなにをしているのか分からなくなった。ほわほわしているアーサーの目を覚ますため、モニカの平手打ちが飛んでくる。意識が戻ったアーサーは咄嗟にモニカの両手首を掴んで次の攻撃が出せないようにした。
「ちょっと!離しなさいよ!」
「さすがにこれ以上はだめ!執拗に頭部を攻撃するのはやめて?!」
「離しなさいっ!離しなさいーーーー!!」
両手が使えなくなったので、モニカは兄の額めがけて頭突きを繰り出した。だが、アーサーの人間離れした防御力にモニカが敵うはずはなかった。ほとんどダメージを受けていないアーサーと、痛すぎてうめき声をあげているモニカ。アーサーは申し訳なさそうに妹の赤くなった額をさすった。
「ご、ごめんねモニカ…。痛かったでしょ…?」
「うぅぅ…たんこぶできちゃったよぉ…」
「あー、ほんとだ…。ぷっくりしてる…」
「アーサーは痛くないの…?」
「あ、うん。アッパーのほうが数倍痛かったし…」
「そう…じゃあこれからは怒った時にアッパーするね…」
「できたら毒のほうが嬉しいな…」
「それだとご褒美になっちゃうじゃない…」
二人は目を見合わせてクスリと笑った。毒気を抜かれたモニカは、アーサーの上でスライムのようにだらんと脱力した。
「はーあ。なんで怒ってたのか分かんなくなっちゃった」
「僕がモニカの一番いやなことをしちゃったんだよ。それで怒ってた」
「あ、そう。そうよ。これからは絶対しないでね」
「うん。約束する」
「じゃあいいの」
「これで仲直り?」
「仲直り」
「ほっ」
「あーすっきりした。モヤモヤがなくなったー」
「よかったよかった」
「…アーサーは?私に言いたいことないの?」
「ん?もう言ったよ?元に戻ってくれてありがとうって」
「ちがう。モヤモヤーってしてることはない?」
「……」
「あるのね。言ってみて」
アーサーはしばらく黙っていた。モニカは急かすことなく言葉を待つ。苦しそうな、泣きそうな顔をして、アーサーはモニカから目を逸らしながら尋ねた。
「…僕の姿を見ても、いやな気持ちにならない?」
「なるわけないじゃない。言ったでしょ?同じ姿をしてても全く違うって」
「……」
「アーサー」
名前を呼ばれ、ちらりと妹を見たアーサーの目から涙が流れる。モニカは兄の頬を伝うそれを親指で拭いながら、申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「ごめんね。私がばかだったばっかりに、アーサーにとっても辛い思いをさせてしまった…。特訓のときジルからインマが姿を変えられるって教わってたのに、すっかり忘れてたから…」
「忘れてたから…?」
「インマを挑発しちゃったの。誘惑をかけたいならアーサーになってから出直してきなさいって…」
「モニカァ…」
モニカと淫魔がそんな会話をしていたとは知らなかったので、アーサーは呆れた声を出した。びっくりしすぎて涙もひっこんでしまったようだ。ため息をつきながら頭をかいているアーサーに、モニカはビクビクしながら謝った。
「ご、ごめんなさいぃ…」
「そもそも僕がモニカから目を離したのが悪いよ。悪いけどさ、さすがにあれはキツかったよ?!だって考えても見てよ。自分と同じ姿のやつが、自分の妹とあんなことしてたんだよ?あああ…思い出しただけで吐きそう…」
「うぅぅ…」
「これからは魔物を挑発なんてしないでね…」
「はい…」
「あと、これからダンジョン行くときは前もって棲息してる魔物のことを調べよう。行く前に予習していたらモニカだって忘れることもなかっただろうし」
「そうね。私たち、考えなしだもの。魔女で痛い目見たのに懲りないね…」
「反省しなきゃね…。そのせいでシャナたちにすっごく迷惑かけちゃったし…」
「杖、あんなことになっちゃうし…」
二人は自分たちの不甲斐なさにため息をついた。落ち着いたらちゃんとシャナたちにお礼をして、杖が戻って来たらたっぷり杖をもてなそうと決めた。そして、ダンジョンに行くときは、必ずダンジョンマップを購入し、出現魔物を予習することも。
「あっ、そうだアーサー。あなた、インマを倒してすぐポントワーブに戻ったのよね?」
「うん。だから掃討は完了してないよ。それに、残り3つのダンジョン掃討依頼も受けたまま」
「そうよね。どうするの?」
「ルアンに戻ってから掃討しに行こうと思ってる。4つも受注した依頼を破棄しちゃったら、ジッピンの依頼も取り下げられちゃうと思うんだよね。だってあれ、もともとC級依頼でしょ?それを無理言って受けさせてもらったからさ」
「でも私は魔力がまだ回復できてないよ」
「うん。モニカはお留守番」
「まさか一人で行くつもり?」
「ううん。もうそろそろ依頼を終えたベニートたちがポントワーブに戻ってくるでしょ?だから一緒についてきてもらおうと思って。ベニートたちの都合が良ければ、だけど」
「わ!良い考え!ベニートたちはもうC級冒険者だし、それに私たちと違って頭脳派よ。ダンジョンの潜り方を教えてもらえるわ」
「うん。そう思ってさ。ちょっと勉強してくるよ。モニカはその間、クロネたちと絵を描いたりしてゆっくりルアンで過ごしてほしいんだ」
「ベニートたちがついてきてくれたらね。都合がつかなかったら依頼は破棄するわ。アーサーを1人でダンジョンに潜らせるくらいだったら、ジッピンがダメになるほうがましよ。ヴァジーには申し訳ないけど…」
「ま、このことはポントワーブに帰ってからまた考えよう。明日フォントメウを発つってシャナが言ってたし」
「そうね。ああ、もうフォントメウとお別れかあ。跪かれるのはあんまり好きじゃないけど、町並みがとっても好きだったわ」
「僕も。はじめは早く帰りたいなあって思ってたけど、今はもう少しここにいたいって思ってるよ」
アーサーはそう言いながら部屋の灯りを消し、布団にもぐりモニカとぴったりとくっついた。しばらくこれからどうするかの話をしていたが、いつの間にかモニカは寝息を立てていた。アーサーは妹の頭の上に顎を乗せ目を瞑る。ゆっくりと二人で話せたことでお互いのモヤモヤは無事解消できた。杖も無事戻って来られるとのことだったので、これで全て元通りになる目途が立った。淫魔と遭遇して9日が経ったその日、アーサーはやっと安心して眠ることができた。
「モニカ、本当になんともないの?」
「なんともないよ。むしろ前より調子がいいくらい」
「無理してない?」
「してないよ。アーサーは?今も気持ちがしんどい?」
「シャナの加護魔法とアンクレットのおかげでずいぶん落ち着いたよ」
「もう自分を傷つけない?」
「傷つけない。今の僕の命はミアーナからもらったものだし。それに、僕が生きてたらモニカに何かあったときに命を分け与えることができるから。そんな大切な命、もう自分で傷つけないよ。心配かけてごめんね。それに…自分の命を粗末にしてごめん。ミアーナがくれた命の貯金、僕が全部使っちゃった…」
「やっぱり分かってないのね!」
モニカは兄の頬をバチンと叩いた。突然わりと本気で叩かれたので、痛みと驚きでアーサーは叩かれたところに手を当てながら妹を見た。モニカはムスとした顔でアーサーを睨みつけている。
「私はアーサーの命の話をしてるの!!ミアーナの命とか私の命とか命の貯金とか今はどうでもいいのよ!!あんたが!!一人で勝手に!!死のうとしたことの話をしているの!!」
「ご、ごめん…」
「私がアーサーのこと大好きなの分かってないの?!ねえ、伝わってないのかなあ?!鈍感アーサーくんには私の気持ち伝わってないのかなあ?!」
胸ぐらを掴まれガクガクと揺らされる。それでも怒りがおさまらないのか、モニカはアーサーに馬乗りになって往復ビンタをした。
「ぶぁっ!わぶっ…いたっ!モニっ…!ぶっ!」
「このっ!このバカ!!バカ!!」
「ごめっ!ごめんってモニカ!もうっ!ぶぁっ、もうしないからっ!」
「あんた、加護の糸のこと知らないときにあんなことしたんでしょ?!二度目がないと思ってたときにあんなことしたんでしょ?!いくらアーサーでも私の大好きなアーサーを傷つけることは許さない!!死んじゃってたら一生あんたを恨み続けることになるとこだった!!それに…そこまでアーサーを追い詰めちゃった私自身のこともね!!」
うわぁぁぁんとモニカが大声で泣き出してしまった。アーサーはおろおろしながら妹を抱きしめる。
「ごめんっ…!本当にごめんね…」
「あんたが死んじゃったら私はどうなるの?!ひとりぼっちになるんだよ?あんな大きな家にひとりで暮らさせるつもりだったの?それとももう私が元に戻らないって思ってた?!あんなことになってたけど、私だって実はすっごい頑張ってたんだからね…!アーサーにまた会いたかったから、ずっとずっと、がんばってたんだから…!」
「うん…」
「アーサーがいなかったら私なんにもできないんだよ?エリクサーだって作れないし、お金の管理だってできないし、トロワも私ひとりじゃどうしたらいいのか分からない…。それに、ウィルクとの約束だって、守れなくなっちゃうんだよ…!」
「うん…」
「加護の糸があるからアーサーは死ななかったし、糸が私と繋がってるからあんたはもう自分を傷つけたりしないでしょう。でも…、私はっ、そんな理由がなくたって、自分のことを大切に思えるようになってほしかった…っ!!」
「ごめんね」
「ごめんねじゃないのよーーー!!!」
「ぐぅぁあっ!」
モニカの強烈なアッパーカットがアーサーの顎に見事ヒットした。アーサーは一瞬意識が飛んで、自分が今どこにいてなにをしているのか分からなくなった。ほわほわしているアーサーの目を覚ますため、モニカの平手打ちが飛んでくる。意識が戻ったアーサーは咄嗟にモニカの両手首を掴んで次の攻撃が出せないようにした。
「ちょっと!離しなさいよ!」
「さすがにこれ以上はだめ!執拗に頭部を攻撃するのはやめて?!」
「離しなさいっ!離しなさいーーーー!!」
両手が使えなくなったので、モニカは兄の額めがけて頭突きを繰り出した。だが、アーサーの人間離れした防御力にモニカが敵うはずはなかった。ほとんどダメージを受けていないアーサーと、痛すぎてうめき声をあげているモニカ。アーサーは申し訳なさそうに妹の赤くなった額をさすった。
「ご、ごめんねモニカ…。痛かったでしょ…?」
「うぅぅ…たんこぶできちゃったよぉ…」
「あー、ほんとだ…。ぷっくりしてる…」
「アーサーは痛くないの…?」
「あ、うん。アッパーのほうが数倍痛かったし…」
「そう…じゃあこれからは怒った時にアッパーするね…」
「できたら毒のほうが嬉しいな…」
「それだとご褒美になっちゃうじゃない…」
二人は目を見合わせてクスリと笑った。毒気を抜かれたモニカは、アーサーの上でスライムのようにだらんと脱力した。
「はーあ。なんで怒ってたのか分かんなくなっちゃった」
「僕がモニカの一番いやなことをしちゃったんだよ。それで怒ってた」
「あ、そう。そうよ。これからは絶対しないでね」
「うん。約束する」
「じゃあいいの」
「これで仲直り?」
「仲直り」
「ほっ」
「あーすっきりした。モヤモヤがなくなったー」
「よかったよかった」
「…アーサーは?私に言いたいことないの?」
「ん?もう言ったよ?元に戻ってくれてありがとうって」
「ちがう。モヤモヤーってしてることはない?」
「……」
「あるのね。言ってみて」
アーサーはしばらく黙っていた。モニカは急かすことなく言葉を待つ。苦しそうな、泣きそうな顔をして、アーサーはモニカから目を逸らしながら尋ねた。
「…僕の姿を見ても、いやな気持ちにならない?」
「なるわけないじゃない。言ったでしょ?同じ姿をしてても全く違うって」
「……」
「アーサー」
名前を呼ばれ、ちらりと妹を見たアーサーの目から涙が流れる。モニカは兄の頬を伝うそれを親指で拭いながら、申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「ごめんね。私がばかだったばっかりに、アーサーにとっても辛い思いをさせてしまった…。特訓のときジルからインマが姿を変えられるって教わってたのに、すっかり忘れてたから…」
「忘れてたから…?」
「インマを挑発しちゃったの。誘惑をかけたいならアーサーになってから出直してきなさいって…」
「モニカァ…」
モニカと淫魔がそんな会話をしていたとは知らなかったので、アーサーは呆れた声を出した。びっくりしすぎて涙もひっこんでしまったようだ。ため息をつきながら頭をかいているアーサーに、モニカはビクビクしながら謝った。
「ご、ごめんなさいぃ…」
「そもそも僕がモニカから目を離したのが悪いよ。悪いけどさ、さすがにあれはキツかったよ?!だって考えても見てよ。自分と同じ姿のやつが、自分の妹とあんなことしてたんだよ?あああ…思い出しただけで吐きそう…」
「うぅぅ…」
「これからは魔物を挑発なんてしないでね…」
「はい…」
「あと、これからダンジョン行くときは前もって棲息してる魔物のことを調べよう。行く前に予習していたらモニカだって忘れることもなかっただろうし」
「そうね。私たち、考えなしだもの。魔女で痛い目見たのに懲りないね…」
「反省しなきゃね…。そのせいでシャナたちにすっごく迷惑かけちゃったし…」
「杖、あんなことになっちゃうし…」
二人は自分たちの不甲斐なさにため息をついた。落ち着いたらちゃんとシャナたちにお礼をして、杖が戻って来たらたっぷり杖をもてなそうと決めた。そして、ダンジョンに行くときは、必ずダンジョンマップを購入し、出現魔物を予習することも。
「あっ、そうだアーサー。あなた、インマを倒してすぐポントワーブに戻ったのよね?」
「うん。だから掃討は完了してないよ。それに、残り3つのダンジョン掃討依頼も受けたまま」
「そうよね。どうするの?」
「ルアンに戻ってから掃討しに行こうと思ってる。4つも受注した依頼を破棄しちゃったら、ジッピンの依頼も取り下げられちゃうと思うんだよね。だってあれ、もともとC級依頼でしょ?それを無理言って受けさせてもらったからさ」
「でも私は魔力がまだ回復できてないよ」
「うん。モニカはお留守番」
「まさか一人で行くつもり?」
「ううん。もうそろそろ依頼を終えたベニートたちがポントワーブに戻ってくるでしょ?だから一緒についてきてもらおうと思って。ベニートたちの都合が良ければ、だけど」
「わ!良い考え!ベニートたちはもうC級冒険者だし、それに私たちと違って頭脳派よ。ダンジョンの潜り方を教えてもらえるわ」
「うん。そう思ってさ。ちょっと勉強してくるよ。モニカはその間、クロネたちと絵を描いたりしてゆっくりルアンで過ごしてほしいんだ」
「ベニートたちがついてきてくれたらね。都合がつかなかったら依頼は破棄するわ。アーサーを1人でダンジョンに潜らせるくらいだったら、ジッピンがダメになるほうがましよ。ヴァジーには申し訳ないけど…」
「ま、このことはポントワーブに帰ってからまた考えよう。明日フォントメウを発つってシャナが言ってたし」
「そうね。ああ、もうフォントメウとお別れかあ。跪かれるのはあんまり好きじゃないけど、町並みがとっても好きだったわ」
「僕も。はじめは早く帰りたいなあって思ってたけど、今はもう少しここにいたいって思ってるよ」
アーサーはそう言いながら部屋の灯りを消し、布団にもぐりモニカとぴったりとくっついた。しばらくこれからどうするかの話をしていたが、いつの間にかモニカは寝息を立てていた。アーサーは妹の頭の上に顎を乗せ目を瞑る。ゆっくりと二人で話せたことでお互いのモヤモヤは無事解消できた。杖も無事戻って来られるとのことだったので、これで全て元通りになる目途が立った。淫魔と遭遇して9日が経ったその日、アーサーはやっと安心して眠ることができた。
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