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淫魔編:ダンジョン巡り@ルアン
【179話】信じられないこと
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「ビュリー、おはよう。今日の調子はどうだい?」
「おはようございますギルドマスター。悪くはないですね」
「そうかいそうかい。結構なことだね」
「はい」
「……」
「……」
アーサーとモニカがダンジョン掃討報告をした翌朝の冒険者ギルドでは、ギルドマスターであるクサカヴと受付嬢のビュリーが挨拶を交わしていた。口数が少なく表情の乏しいビュリーと会話が途切れてしまい、クサカヴは間を持たすために腕をぶんぶん振っている。ビュリーは無言でその様子を眺めていた。
「…あー、ビュリー、今日も楽しく…」
「失礼ギルドマスター。私宛の伝書インコが来ました」
「そ、そうかい」
クサカヴの言葉を遮りビュリーは手にインコを乗せる。アンヴルダンジョンの管理人からだ。
《アンヴルダンジョン マモノ センメツカクニン カンリョウ カンシャスル》
「なんですって?!」
《アンヴルダンジョン マモノ センメツカクニン カンリョウ カンシャスル》
「う、うそよ。そんなはずないわ」
何度聞き返しても同じことしか言わないインコにビュリーは首を横に振った。あまりの狼狽えぶりにクサカヴが不思議そうに尋ねた。
「どうしたんだいビュリー。アンヴルダンジョンはGランクだろう?殲滅報告がなぜ信じられないんだい?」
「この依頼を受けた冒険者は、昨日の朝受けて夕方には帰ってきたんです」
「ほう。優秀な低クラス冒険者たちだね。それとも大人数で依頼を受けたのかな?」
「いいえ。子ども2人だけです。それに、Fクラスになったのは1年半も前なのに、依頼完了証明書は二人合わせて25枚しか持っていないような子だったんです。そんな彼らが半日でダンジョン掃討を完了できるはずが…」
「Fクラス冒険者の子ども2人?」
「はい。男の子と女の子のペアで、どちらも銀色の髪でした。顔立ちも似ていたのでおそらく兄妹かと」
「銀色の髪をした兄妹だって?!それはまさか、アーサーさんとモニカさんではないかい?!」
「え、ええ。確かそのような名前だった気が」
肯定の言葉を聞き、クサカヴはパッと顔を輝かせた。
「なんと!!彼らがこの町に来ていると?!その上依頼まで受けてくれているのかい!!それはそれは!!ありがたいことこの上ない!!それに男爵も喜ばれる!!」
「え…?ギルドマスター、彼らをご存じで?それに…男爵とは…オリバ伯爵のことですか?」
「ああ!もちろんだとも!彼らには前に世話になったことがあるんだよ。男爵はもちろんオリバ伯爵のことさ」
「世話…?世話をしたのではなくて、世話になったのですか…?あんな子たちに?」
「あんな子たちって言うけどねビュリー。アーサーさんとモニカさんは巷で有名なんだよ」
「そうなんですか?」
「ああ。なんせあのカミーユパーティの秘蔵っ子だと聞く。アーサーさんとモニカさんもポントワーブに住んでいてね。よく一緒にいるらしいよ」
「なんですって?!あのカミーユさんのパーティとお知り合い?!」
「ああ。その上彼らはエリクサーの生みの親だ」
「エリクサーの?!」
「そうだよ。つまり、あの子たちのどちらかが類まれな回復魔法を使えると言うことだ。あと、以前彼らは画家の護衛をしたことがあるらしくてね。そこでマンティコアを5体ほど撃退したらしい」
「マンティコア…。C級魔物を5体も…?」
「そこから分かるだろう。彼らの実力はF級ではない。C級以上だろう。依頼完了証明書が少ないのは、エリクサー作りに精を出していたからじゃないかな?彼らは別に冒険者一筋でやっていくつもりはなさそうだからね。むしろ冒険者なんてしなくとも、私の数百倍…いやそれ以上の収入があるはずだ」
あまりの情報の多さにビュリーの頭はパンク寸前だった。貧乏で弱い冒険者だと思っていた子どもが、資産家でマンティコアを5体も倒すほどの実力を持っているという。ルアンを治めている男爵もどうやら彼らのことを知っていて、その上カミーユパーティと仲が良いらしい。ビュリーはインコをじっと見てからクサカヴのほうを向いた。
「じゃ、じゃあ、半日でダンジョン掃討完了というのも…」
「普通なら考えられないが…彼らならありえるね。ビュリー、私も久しぶりに彼らに会いたい。今すぐインコを飛ばしてくれるかい?」
「は、はい。分かりました…」
「おはようございますギルドマスター。悪くはないですね」
「そうかいそうかい。結構なことだね」
「はい」
「……」
「……」
アーサーとモニカがダンジョン掃討報告をした翌朝の冒険者ギルドでは、ギルドマスターであるクサカヴと受付嬢のビュリーが挨拶を交わしていた。口数が少なく表情の乏しいビュリーと会話が途切れてしまい、クサカヴは間を持たすために腕をぶんぶん振っている。ビュリーは無言でその様子を眺めていた。
「…あー、ビュリー、今日も楽しく…」
「失礼ギルドマスター。私宛の伝書インコが来ました」
「そ、そうかい」
クサカヴの言葉を遮りビュリーは手にインコを乗せる。アンヴルダンジョンの管理人からだ。
《アンヴルダンジョン マモノ センメツカクニン カンリョウ カンシャスル》
「なんですって?!」
《アンヴルダンジョン マモノ センメツカクニン カンリョウ カンシャスル》
「う、うそよ。そんなはずないわ」
何度聞き返しても同じことしか言わないインコにビュリーは首を横に振った。あまりの狼狽えぶりにクサカヴが不思議そうに尋ねた。
「どうしたんだいビュリー。アンヴルダンジョンはGランクだろう?殲滅報告がなぜ信じられないんだい?」
「この依頼を受けた冒険者は、昨日の朝受けて夕方には帰ってきたんです」
「ほう。優秀な低クラス冒険者たちだね。それとも大人数で依頼を受けたのかな?」
「いいえ。子ども2人だけです。それに、Fクラスになったのは1年半も前なのに、依頼完了証明書は二人合わせて25枚しか持っていないような子だったんです。そんな彼らが半日でダンジョン掃討を完了できるはずが…」
「Fクラス冒険者の子ども2人?」
「はい。男の子と女の子のペアで、どちらも銀色の髪でした。顔立ちも似ていたのでおそらく兄妹かと」
「銀色の髪をした兄妹だって?!それはまさか、アーサーさんとモニカさんではないかい?!」
「え、ええ。確かそのような名前だった気が」
肯定の言葉を聞き、クサカヴはパッと顔を輝かせた。
「なんと!!彼らがこの町に来ていると?!その上依頼まで受けてくれているのかい!!それはそれは!!ありがたいことこの上ない!!それに男爵も喜ばれる!!」
「え…?ギルドマスター、彼らをご存じで?それに…男爵とは…オリバ伯爵のことですか?」
「ああ!もちろんだとも!彼らには前に世話になったことがあるんだよ。男爵はもちろんオリバ伯爵のことさ」
「世話…?世話をしたのではなくて、世話になったのですか…?あんな子たちに?」
「あんな子たちって言うけどねビュリー。アーサーさんとモニカさんは巷で有名なんだよ」
「そうなんですか?」
「ああ。なんせあのカミーユパーティの秘蔵っ子だと聞く。アーサーさんとモニカさんもポントワーブに住んでいてね。よく一緒にいるらしいよ」
「なんですって?!あのカミーユさんのパーティとお知り合い?!」
「ああ。その上彼らはエリクサーの生みの親だ」
「エリクサーの?!」
「そうだよ。つまり、あの子たちのどちらかが類まれな回復魔法を使えると言うことだ。あと、以前彼らは画家の護衛をしたことがあるらしくてね。そこでマンティコアを5体ほど撃退したらしい」
「マンティコア…。C級魔物を5体も…?」
「そこから分かるだろう。彼らの実力はF級ではない。C級以上だろう。依頼完了証明書が少ないのは、エリクサー作りに精を出していたからじゃないかな?彼らは別に冒険者一筋でやっていくつもりはなさそうだからね。むしろ冒険者なんてしなくとも、私の数百倍…いやそれ以上の収入があるはずだ」
あまりの情報の多さにビュリーの頭はパンク寸前だった。貧乏で弱い冒険者だと思っていた子どもが、資産家でマンティコアを5体も倒すほどの実力を持っているという。ルアンを治めている男爵もどうやら彼らのことを知っていて、その上カミーユパーティと仲が良いらしい。ビュリーはインコをじっと見てからクサカヴのほうを向いた。
「じゃ、じゃあ、半日でダンジョン掃討完了というのも…」
「普通なら考えられないが…彼らならありえるね。ビュリー、私も久しぶりに彼らに会いたい。今すぐインコを飛ばしてくれるかい?」
「は、はい。分かりました…」
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