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淫魔編:1年ぶりの町巡り
【174話】ヴァジーからの依頼(ルアン)
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「アーサー、モニカ、少しいいかい?」
画家たちとの食事を楽しんだその夜、宿へ戻ろうと席を立った双子をヴァジーが呼び止めた。
「ん?どうしたのヴァジー?」
「君たち、来月は何か予定があるかな?」
「来月…は特にないよねアーサー?」
「うん。今月はアヴル行ったりダンジョン行くつもりしてるけど、来月の予定はからっぽ」
「そうか。だったら君たちに冒険者として依頼をしたいんだけど、いいかな?」
「依頼!!やるぅ!!」
「こらモニカ。内容を聞かずに受けちゃダメってカトリナに言われてるでしょ?」
「あっ、そうだった!ヴァジー、依頼内容を教えてくれる?」
「もちろん」
ヴァジーは画家たちから離れた席へ移動し、双子を座らせた。今回の依頼は画家としてではなく、資産家としてのものらしい。
「護衛を頼まれてほしいんだよ。長くなるけど、順を追って話してもいいかい?」
「うん!」
「僕とカユボティが資産家だって話はさっき聞いたと思うけれど。僕は親が裕福でその資産を受け継いだだけだが、カユボティは画家業とは別に事業をしているんだ。で、彼が来月、その事業の関係で異国に行かなければいけなくてね。語学が得意な僕がついていくことになった。…ただ、その国は魔物が多いと聞く。冒険者を雇おうと思ってはいたんだが、なんせ海を渡ったところだ。なかなか捕まらなくてね。悩んでいるときに君たちが現れたものだから、これはダメもとで頼んでみるしかないと思って声をかけたんだ」
異国と聞いて双子は目をキラキラさせた。矢継ぎ早に次々と質問を投げかける。
「異国ってどこ?!」
「ここからどのくらい遠いの?!」
「この国と違う言葉を話すの?!」
「異国の魔物ってどんなの?!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。ひとつずつ答えるから。…まず、僕たちが行くのはジッピンという少し変わった国さ。独自の文化があって面白いんだ」
「ジッピン?どこかで聞いたことがあるわ」
「あれだよモニカ。去年買ったポンチョがジッピンから取り寄せたイナリの毛皮でできてた」
「あ!それだわ」
「この国とジッピンはかなり離れていてね。片道船で2週間かかる」
「に、2週間?!」
「とおい…」
「言葉はこの国と全く違うよ。発音がとても難しい。書き文字はもっと難しい」
「そうなんだあ!」
「ジッピンの魔物はここと全く違うよ。むこうでは魔物ではなく"アヤカシ"と呼ばれている」
「アヤカシ…」
「人型の魔物が多いが、だからと言ってみんながみんな反魔法を使えるわけじゃないそうだ。もちろん、強い魔物は使うがね。…他に聞きたいことはあるかい?」
モニカが兄を見ると、アーサーは「大丈夫」と頷いた。モニカも頷き返しヴァジーを見る。
「大丈夫!」
「そうか。ジッピンでの滞在期間は2週間を予定してる。移動時間と合わせて約6週間…1か月半だね。君たちを拘束することになるわけだ。報酬は…そうだな、金貨100枚でどうだい?」
「金貨100枚?!」
「お、多くないかな?!」
「妥当な金額だと思うよ。金額の引き上げには応じるがこれ以上下げるつもりはない」
ヴァジーがそう言い切ったので、報酬は金貨100枚で決まった。あとは双子がこの依頼を受けるか受けないかだ。
「どうするモニカ?かなり長期の依頼になるけど」
「行きたい!!だってアーサー!異国に行けるんだよ?!行くしかないじゃない!アーサーも行きたいでしょ?!」
「僕は…」
アーサーが俯いて暗い顔をした。行きたくないのだと察したモニカはちょっぴり残念そうな顔をする。…が、顔を上げた兄の顔は満面の笑顔だった。
「すっごく行きたい!」
「…もぉー!!なによ!行きたくないと思ったじゃない!さては面白がったわね?!」
「えへへ。だってモニカがあんまり行きたそうな顔をするからからかいたくなっちゃった」
「アーサーのばかー!」
「というわけでヴァジー!僕たちその依頼受けるよ!出発はいつ?」
「おお、受けてくれるのか!助かる!出発は来月の15日だ。いけるかな?」
「分かった!その日にルアンに行ったらいい?」
「ああ。待ち合わせはこのカフェにしよう」
「分かった!」
双子が依頼を受けてくれて、ヴァジーは安堵の表情を浮かべた。特殊な依頼のためなかなか冒険者が引き受けてくれず、受けると申し出た冒険者は報酬にしか興味がない様子でどうも信用できなかったようだ。アーサーとモニカであれば、信頼できる上に実力も申し分ない。
「アーサー、モニカ。依頼を受けてくれて本当にありがとう。お礼と言ってはなんだが、ジッピンではいろんなところに連れて行ってあげる。楽しませると約束するよ」
「やったぁ!楽しみ!!」
「どきどきするねえモニカ!」
「うん!!早く来月になってほしいよぉ!!」
翌日、アーサーとモニカはヴァジーと一緒に冒険者ギルドへ行った。ヴァジーの依頼はC級クエストにランク付けされていたが、依頼者と冒険者の双方の希望ということでF級の双子でも承認が下りた。
ギルドのあとにカフェで朝食をとり、しばらく談笑してからヴァジーと別れた。町をぶらぶら歩きながらアーサーが妹に声をかける。
「モニカ、この依頼もあるし、アヴルで用事を済ませたらしばらくルアンで滞在しない?」
「いいわね!さっきチラッとクエスト募集掲示板を見たら、いくつかダンジョン掃討依頼もあったわ。ダンジョン依頼受けたりルアンを満喫して来月まで過ごしましょ!」
「決まりだね!そうと決まればシャナにインコ飛ばしておこう。不在にするときはシャナに連絡しろってカミーユに言われてたし」
「あと商人ギルドのマスターにも連絡しなきゃ。2か月卸さなかったらまた怒られちゃいそうだもの」
早速アーサーとモニカは宿に戻り、インコをシャナと商人ギルドへ飛ばした。その日のうちにインコが戻ってきて、シャナは「了解。無理はしないように」と、商人ギルドは「ルアンまで買い取りに行くので都合のいい日を教えてください」と伝言が返ってきた。ギルドにもう一度インコを飛ばし、双子はルアンで一泊してからアヴルへ向かった。
画家たちとの食事を楽しんだその夜、宿へ戻ろうと席を立った双子をヴァジーが呼び止めた。
「ん?どうしたのヴァジー?」
「君たち、来月は何か予定があるかな?」
「来月…は特にないよねアーサー?」
「うん。今月はアヴル行ったりダンジョン行くつもりしてるけど、来月の予定はからっぽ」
「そうか。だったら君たちに冒険者として依頼をしたいんだけど、いいかな?」
「依頼!!やるぅ!!」
「こらモニカ。内容を聞かずに受けちゃダメってカトリナに言われてるでしょ?」
「あっ、そうだった!ヴァジー、依頼内容を教えてくれる?」
「もちろん」
ヴァジーは画家たちから離れた席へ移動し、双子を座らせた。今回の依頼は画家としてではなく、資産家としてのものらしい。
「護衛を頼まれてほしいんだよ。長くなるけど、順を追って話してもいいかい?」
「うん!」
「僕とカユボティが資産家だって話はさっき聞いたと思うけれど。僕は親が裕福でその資産を受け継いだだけだが、カユボティは画家業とは別に事業をしているんだ。で、彼が来月、その事業の関係で異国に行かなければいけなくてね。語学が得意な僕がついていくことになった。…ただ、その国は魔物が多いと聞く。冒険者を雇おうと思ってはいたんだが、なんせ海を渡ったところだ。なかなか捕まらなくてね。悩んでいるときに君たちが現れたものだから、これはダメもとで頼んでみるしかないと思って声をかけたんだ」
異国と聞いて双子は目をキラキラさせた。矢継ぎ早に次々と質問を投げかける。
「異国ってどこ?!」
「ここからどのくらい遠いの?!」
「この国と違う言葉を話すの?!」
「異国の魔物ってどんなの?!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。ひとつずつ答えるから。…まず、僕たちが行くのはジッピンという少し変わった国さ。独自の文化があって面白いんだ」
「ジッピン?どこかで聞いたことがあるわ」
「あれだよモニカ。去年買ったポンチョがジッピンから取り寄せたイナリの毛皮でできてた」
「あ!それだわ」
「この国とジッピンはかなり離れていてね。片道船で2週間かかる」
「に、2週間?!」
「とおい…」
「言葉はこの国と全く違うよ。発音がとても難しい。書き文字はもっと難しい」
「そうなんだあ!」
「ジッピンの魔物はここと全く違うよ。むこうでは魔物ではなく"アヤカシ"と呼ばれている」
「アヤカシ…」
「人型の魔物が多いが、だからと言ってみんながみんな反魔法を使えるわけじゃないそうだ。もちろん、強い魔物は使うがね。…他に聞きたいことはあるかい?」
モニカが兄を見ると、アーサーは「大丈夫」と頷いた。モニカも頷き返しヴァジーを見る。
「大丈夫!」
「そうか。ジッピンでの滞在期間は2週間を予定してる。移動時間と合わせて約6週間…1か月半だね。君たちを拘束することになるわけだ。報酬は…そうだな、金貨100枚でどうだい?」
「金貨100枚?!」
「お、多くないかな?!」
「妥当な金額だと思うよ。金額の引き上げには応じるがこれ以上下げるつもりはない」
ヴァジーがそう言い切ったので、報酬は金貨100枚で決まった。あとは双子がこの依頼を受けるか受けないかだ。
「どうするモニカ?かなり長期の依頼になるけど」
「行きたい!!だってアーサー!異国に行けるんだよ?!行くしかないじゃない!アーサーも行きたいでしょ?!」
「僕は…」
アーサーが俯いて暗い顔をした。行きたくないのだと察したモニカはちょっぴり残念そうな顔をする。…が、顔を上げた兄の顔は満面の笑顔だった。
「すっごく行きたい!」
「…もぉー!!なによ!行きたくないと思ったじゃない!さては面白がったわね?!」
「えへへ。だってモニカがあんまり行きたそうな顔をするからからかいたくなっちゃった」
「アーサーのばかー!」
「というわけでヴァジー!僕たちその依頼受けるよ!出発はいつ?」
「おお、受けてくれるのか!助かる!出発は来月の15日だ。いけるかな?」
「分かった!その日にルアンに行ったらいい?」
「ああ。待ち合わせはこのカフェにしよう」
「分かった!」
双子が依頼を受けてくれて、ヴァジーは安堵の表情を浮かべた。特殊な依頼のためなかなか冒険者が引き受けてくれず、受けると申し出た冒険者は報酬にしか興味がない様子でどうも信用できなかったようだ。アーサーとモニカであれば、信頼できる上に実力も申し分ない。
「アーサー、モニカ。依頼を受けてくれて本当にありがとう。お礼と言ってはなんだが、ジッピンではいろんなところに連れて行ってあげる。楽しませると約束するよ」
「やったぁ!楽しみ!!」
「どきどきするねえモニカ!」
「うん!!早く来月になってほしいよぉ!!」
翌日、アーサーとモニカはヴァジーと一緒に冒険者ギルドへ行った。ヴァジーの依頼はC級クエストにランク付けされていたが、依頼者と冒険者の双方の希望ということでF級の双子でも承認が下りた。
ギルドのあとにカフェで朝食をとり、しばらく談笑してからヴァジーと別れた。町をぶらぶら歩きながらアーサーが妹に声をかける。
「モニカ、この依頼もあるし、アヴルで用事を済ませたらしばらくルアンで滞在しない?」
「いいわね!さっきチラッとクエスト募集掲示板を見たら、いくつかダンジョン掃討依頼もあったわ。ダンジョン依頼受けたりルアンを満喫して来月まで過ごしましょ!」
「決まりだね!そうと決まればシャナにインコ飛ばしておこう。不在にするときはシャナに連絡しろってカミーユに言われてたし」
「あと商人ギルドのマスターにも連絡しなきゃ。2か月卸さなかったらまた怒られちゃいそうだもの」
早速アーサーとモニカは宿に戻り、インコをシャナと商人ギルドへ飛ばした。その日のうちにインコが戻ってきて、シャナは「了解。無理はしないように」と、商人ギルドは「ルアンまで買い取りに行くので都合のいい日を教えてください」と伝言が返ってきた。ギルドにもう一度インコを飛ばし、双子はルアンで一泊してからアヴルへ向かった。
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