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学院編:オヴェルニー学院
【133話】報告
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ジュリア姫に手を引かれて先生たちが駆け付けた時には、吸血鬼たちはすでに灰と化していた。隅に干からびた死体が積まれ、床に血だまりが出来ている部屋に入る。服が血だらけになっているアーサー達を見て先生たちは顔を真っ青にした。
「ウィルク王子!アーサー!モニカ!」
ビアンナ先生が3人の元へ駆け寄った。
「ああっ、なんてこと…!ここで何があったのです?!怪我は?!」
「僕たちに怪我はありません。それより牢屋に閉じ込められているマーサたちは…?」
「彼女たちはカーティス先生たちが保護しました…」
「そうですか。よかった…」
「ここで何があったのです?」
「吸血鬼が2体棲みついていました。…セルジュ先生とロイです」
「なんですって?!」
「先生。お話があります。先生の部屋でお話しできますか?」
アーサーがそう言ってアイテムボックスからちらりと冒険者カードをのぞかせた。何かを察した先生はハッとしてから頷いた。
「先に王子と姫を休ませてあげてください」
「分かりました。王子、立てますか?」
「はい」
彼らは地上へ上がった。アーサーとモニカはビアンナ先生の後ろをついていき、姫と王子はザラ先生によって医務室へ連れていかれた。
「さて、事情を話していただきましょうか」
双子はビアンナ先生の部屋へ入り椅子へ座る。先生はこの騒動に動揺を隠しきれていない。
「その前にカミーユへ伝書インコを飛ばさせてください」
「カミーユですって…?S級冒険者までも絡んでいたの…」
「インコ、カミーユに伝言お願い。センニュウソウサ カンリョウ」
《センニュウソウサ カンリョウ》
「うん」
「潜入捜査…。なるほど、侯爵に頼まれたのですね」
「はい。改めまして自己紹介をさせていただきます。僕たちはF級冒険者のアーサーとモニカです」
「S級冒険者であるカミーユに依頼され、この学院の生徒失踪についての潜入捜査をしていました」
「では、リングイール家と言うのは…」
「僕たちが貴族を装う際に利用する架空の貴族です」
「どおりで聞いたことがなかったのですね。分かりました。では、捜査の結果を教えてくださる?」
「はい。この学院には2体の吸血鬼が棲みついていました。セルジュ先生とロイです。彼らが生徒たちを地下へ誘拐していました。手口としては、グレープジュースと偽り、生徒たちにロイの血を飲ませて吸血欲を発症させます。それに気付かずウィルク王子やジュリア姫は3日間血を飲み続けていました。そして今日、ロイは彼らに血を与えなかった。そうすると…」
「禁断症状が出ますね」
「ええ。禁断症状が出て意識が朦朧としている生徒を医務室、もしくは地下へ誘拐します。医務室ではセルジュ先生がいて、僕は薬を打たれて眠らされました。気が付くと隠し部屋の牢屋へ閉じ込められていました。牢屋には前に誘拐されていた生徒たち6人もいました。吸血鬼は彼らを自分たちの餌として…加えて生徒たちにチムシーを寄生させて、娯楽品のように眺めて遊んでいたようです」
「なんともおぞましい…」
「ロイは私とアーサーのことも狙っていたようで、今晩私たちと他の生徒たちを地下へ誘拐しました。そこで吸血鬼と戦闘になり、2体を倒しました」
「なるほど。…いくつか質問していいかしら?」
「はい」
「まず、あなたたちもロイに狙われていたのでしょう?なぜあなたたちは禁断症状を起こさなかったの?」
「ウィルク王子の誕生日パーティーの日、モニカが禁断症状を起こしました。…僕たちは以前にも吸血欲を発症したことがあるので、禁断症状が出るのが早かったのでしょう。その時はまだグレープジュースが原因だと知らなかったので、僕たちはその日から学院内の食べ物を一切取らないようにしていました」
「そうだったのですか…。さすが冒険者ですね。経験がちがうわ。…では、次の質問です。あなたたちは簡単に吸血鬼を倒したと言いますが、吸血鬼は非常に強い魔物なのですよ。体が硬く、反魔法を使い、強力な攻撃魔法を打つと聞きます。どうやって倒したのです?」
「攻撃魔法に関しては、反属性魔法で相殺できました。反魔法は聖魔法で相殺できます」
「僕もモニカの聖魔法を付与した属性武器で吸血鬼の体を斬りました」
「……」
ビアンナ先生は唖然として双子を見つめている。アーサーとモニカは不思議そうに首を傾げた。
「先生?どうされましたか?」
「…あなたたち、本当にF級冒険者ですか?やっていることがA級ですよ…」
「いえいえ。僕たちなんてまだまだ」
「ええ。もうほんと、まだまだ」
カミーユたちにボロ負けし続けている双子は、自分たちはまだまだへっぽこ冒険者だと思っていた。判断の基準が違いすぎて、ビアンナ先生にはただの謙遜にしか聞こえなかった。
「その年齢にして恐ろしい実力ですね…。聖女でもないのに聖魔法を使うなんて、S級冒険者のリアーナだけだと思ってましたよ」
モニカはぎくりと汗を垂らす。そのリアーナに聖魔法を教えてもらったのだから。
「それに、モニカさん。あなた授業では全く魔法を使えないと聞いていましたよ。冒険者であることを隠すために実力を抑えていたのですか?」
「い、いえ。あれは、ほんとに、私なりに頑張っていたんです…」
「?」
「わたし詠唱では上手に魔法が使えなくて…」
「そうなのですか。では無詠唱で?」
「いえ、歌を…」
「歌?歌で魔法を使うなんて、聞いたことがありません…」
「あはは…」
「話がそれましたが、冒険者のアーサーさん。モニカさん。吸血鬼を倒してくださったこと、そして失踪した生徒たちを取り戻してくださったこと、心より感謝申し上げます」
ビアンナ先生はそう言って深々と頭を下げた。双子は慌てて「顔をあげてください!」と言った。
「生徒たちが回復するまで、しっかりと医務室で療養させます。…アーサーさんとモニカさんは、もう依頼を完了されたのですね。拠点へ帰られるのですか?」
先生の言葉に、アーサーとモニカは目を見合わせた。「どうする?」「どうしよっか」とコソコソ相談している。しばらく話し合った後、先生に向き直った。
「先生。もう少し学院にいてもいいですか?」
「もちろん構いませんよ。お二人のような実力者がいてくだされば、生徒たちの刺激になります。…モニカ、私の方からザラに伝えておきますので、これからは無理に詠唱しなくてもいいですよ」
「本当ですか?!やったぁ~!」
「よかったねモニカ!」
「うん!!」
先生に報告し終え、アーサーとモニカはリリー寮へ戻った。生徒たちが寝ている中、コソコソと血まみれになった服を着替えベッドへ潜る。翌朝二人は何事もなかったかのように起きて食堂へ向かった。
「ウィルク王子!アーサー!モニカ!」
ビアンナ先生が3人の元へ駆け寄った。
「ああっ、なんてこと…!ここで何があったのです?!怪我は?!」
「僕たちに怪我はありません。それより牢屋に閉じ込められているマーサたちは…?」
「彼女たちはカーティス先生たちが保護しました…」
「そうですか。よかった…」
「ここで何があったのです?」
「吸血鬼が2体棲みついていました。…セルジュ先生とロイです」
「なんですって?!」
「先生。お話があります。先生の部屋でお話しできますか?」
アーサーがそう言ってアイテムボックスからちらりと冒険者カードをのぞかせた。何かを察した先生はハッとしてから頷いた。
「先に王子と姫を休ませてあげてください」
「分かりました。王子、立てますか?」
「はい」
彼らは地上へ上がった。アーサーとモニカはビアンナ先生の後ろをついていき、姫と王子はザラ先生によって医務室へ連れていかれた。
「さて、事情を話していただきましょうか」
双子はビアンナ先生の部屋へ入り椅子へ座る。先生はこの騒動に動揺を隠しきれていない。
「その前にカミーユへ伝書インコを飛ばさせてください」
「カミーユですって…?S級冒険者までも絡んでいたの…」
「インコ、カミーユに伝言お願い。センニュウソウサ カンリョウ」
《センニュウソウサ カンリョウ》
「うん」
「潜入捜査…。なるほど、侯爵に頼まれたのですね」
「はい。改めまして自己紹介をさせていただきます。僕たちはF級冒険者のアーサーとモニカです」
「S級冒険者であるカミーユに依頼され、この学院の生徒失踪についての潜入捜査をしていました」
「では、リングイール家と言うのは…」
「僕たちが貴族を装う際に利用する架空の貴族です」
「どおりで聞いたことがなかったのですね。分かりました。では、捜査の結果を教えてくださる?」
「はい。この学院には2体の吸血鬼が棲みついていました。セルジュ先生とロイです。彼らが生徒たちを地下へ誘拐していました。手口としては、グレープジュースと偽り、生徒たちにロイの血を飲ませて吸血欲を発症させます。それに気付かずウィルク王子やジュリア姫は3日間血を飲み続けていました。そして今日、ロイは彼らに血を与えなかった。そうすると…」
「禁断症状が出ますね」
「ええ。禁断症状が出て意識が朦朧としている生徒を医務室、もしくは地下へ誘拐します。医務室ではセルジュ先生がいて、僕は薬を打たれて眠らされました。気が付くと隠し部屋の牢屋へ閉じ込められていました。牢屋には前に誘拐されていた生徒たち6人もいました。吸血鬼は彼らを自分たちの餌として…加えて生徒たちにチムシーを寄生させて、娯楽品のように眺めて遊んでいたようです」
「なんともおぞましい…」
「ロイは私とアーサーのことも狙っていたようで、今晩私たちと他の生徒たちを地下へ誘拐しました。そこで吸血鬼と戦闘になり、2体を倒しました」
「なるほど。…いくつか質問していいかしら?」
「はい」
「まず、あなたたちもロイに狙われていたのでしょう?なぜあなたたちは禁断症状を起こさなかったの?」
「ウィルク王子の誕生日パーティーの日、モニカが禁断症状を起こしました。…僕たちは以前にも吸血欲を発症したことがあるので、禁断症状が出るのが早かったのでしょう。その時はまだグレープジュースが原因だと知らなかったので、僕たちはその日から学院内の食べ物を一切取らないようにしていました」
「そうだったのですか…。さすが冒険者ですね。経験がちがうわ。…では、次の質問です。あなたたちは簡単に吸血鬼を倒したと言いますが、吸血鬼は非常に強い魔物なのですよ。体が硬く、反魔法を使い、強力な攻撃魔法を打つと聞きます。どうやって倒したのです?」
「攻撃魔法に関しては、反属性魔法で相殺できました。反魔法は聖魔法で相殺できます」
「僕もモニカの聖魔法を付与した属性武器で吸血鬼の体を斬りました」
「……」
ビアンナ先生は唖然として双子を見つめている。アーサーとモニカは不思議そうに首を傾げた。
「先生?どうされましたか?」
「…あなたたち、本当にF級冒険者ですか?やっていることがA級ですよ…」
「いえいえ。僕たちなんてまだまだ」
「ええ。もうほんと、まだまだ」
カミーユたちにボロ負けし続けている双子は、自分たちはまだまだへっぽこ冒険者だと思っていた。判断の基準が違いすぎて、ビアンナ先生にはただの謙遜にしか聞こえなかった。
「その年齢にして恐ろしい実力ですね…。聖女でもないのに聖魔法を使うなんて、S級冒険者のリアーナだけだと思ってましたよ」
モニカはぎくりと汗を垂らす。そのリアーナに聖魔法を教えてもらったのだから。
「それに、モニカさん。あなた授業では全く魔法を使えないと聞いていましたよ。冒険者であることを隠すために実力を抑えていたのですか?」
「い、いえ。あれは、ほんとに、私なりに頑張っていたんです…」
「?」
「わたし詠唱では上手に魔法が使えなくて…」
「そうなのですか。では無詠唱で?」
「いえ、歌を…」
「歌?歌で魔法を使うなんて、聞いたことがありません…」
「あはは…」
「話がそれましたが、冒険者のアーサーさん。モニカさん。吸血鬼を倒してくださったこと、そして失踪した生徒たちを取り戻してくださったこと、心より感謝申し上げます」
ビアンナ先生はそう言って深々と頭を下げた。双子は慌てて「顔をあげてください!」と言った。
「生徒たちが回復するまで、しっかりと医務室で療養させます。…アーサーさんとモニカさんは、もう依頼を完了されたのですね。拠点へ帰られるのですか?」
先生の言葉に、アーサーとモニカは目を見合わせた。「どうする?」「どうしよっか」とコソコソ相談している。しばらく話し合った後、先生に向き直った。
「先生。もう少し学院にいてもいいですか?」
「もちろん構いませんよ。お二人のような実力者がいてくだされば、生徒たちの刺激になります。…モニカ、私の方からザラに伝えておきますので、これからは無理に詠唱しなくてもいいですよ」
「本当ですか?!やったぁ~!」
「よかったねモニカ!」
「うん!!」
先生に報告し終え、アーサーとモニカはリリー寮へ戻った。生徒たちが寝ている中、コソコソと血まみれになった服を着替えベッドへ潜る。翌朝二人は何事もなかったかのように起きて食堂へ向かった。
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