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学院編:オヴェルニー学院

【108話】最終戦

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ダフの言っていた通り、ダリア寮やビオラ寮の選手の剣術戦へかけている気持ちは凄まじかった。この日のためにずっと特訓してきたのであろう熱のこもった剣技で観客を魅了した。なんとなくで参加しているリリー寮の選手では足元にも及ばない選手がほとんどだった。

マーサは第2試合でダリア寮のパイヴィ選手に敗退した。女生徒は思えない腕力でマーサの肩に剣を突き刺した。痛みで大泣きしているマーサをパイヴィは冷たい目で見つめていた。

ウィルク王子は第3試合でビオラ寮のシリル選手に負けてしまった。王子は剣技が巧みと言っても所詮は10歳。4年かけてじっくり鍛えてきたシリルには手の打ちようがなかった。シリルは赤子の手をひねるように簡単にウィルクの胸元から下腹にかけて深い傷を負わせた。

グレンダも第3試合で惜しくも敗戦した。相手はローズ寮のヴェーラ選手だ。互角で長い時間攻防を続けたが、グレンダが体力切れを起こしてしまいヴェーラの剣をまともに食らってしまった。試合が終了した時にはグレンダの顔も体も傷だらけだった。カーティス先生が心配そうに彼女に駆け寄ると、第一声が「授業サボってなかったら勝てたのに!!」だったので先生は大声で笑って彼女の頭を撫でた。エリクサーのおかげで傷跡はひとつも残らなかった。

他の選手たちは残念ながら第1試合でぼろ負けした。早々にギブアップした人もいれば、開始5秒で攻撃をくらって試合終了になった人もいた。最終戦に残ったのは、アーサーたった一人だけだった。

最終戦に残った選手は、リリー寮1人、ローズ寮2人、ダリア寮1人、ビオラ寮の3人だ。寮対抗剣術大会は最終戦に残った選手が最も多いビオラ寮の優勝と決定した。最終戦からは寮関係なく対戦相手が組まれる。学院ナンバー1を決める対戦の始まりだ。

アーサー以外の敗退したリリー寮の選手たちは観客席で声援を送りながら観戦している。休憩時間が終わり、リーノとニコロが実況席へ座り大声を張り上げた。長時間にわたる実況で声も枯れてきているが、それでも盛り上げるために元気いっぱいだ。

《ニコロいける?》

《まって。オレンジジュース飲むから。…おっけー》

《よし、じゃあいくよ。って待ってもう拡声器のスイッチ入ってたわ》

《え?まじ?お前の素の声聞かれたな。はやく実況始めてよ》

《さあー!!最終戦が始まったああ!!みなさん準備は万端ですか?!ここからの試合はいっときも目を離せないこと間違いなしですからね!!みなさん喉がつぶれるまで選手に声援を送ってあげてください!!1試合目の選手はリリー寮アーサー選手と、ビオラ寮シリル選手ぅぅぅ!!!》

《どちらの選手も小柄ですがナメちゃぁいけませんよ。シリル選手は昨年も最終戦に残りましたからね。ダフ選手に敗れてしまいましたが、彼もシリル選手のことを絶賛していました。彼ほど真摯に剣と向き合っている選手はいないと。ダフ選手にそう言わせるなんてよっぽどですね。シリル選手のまじめでひたむきな性格は生徒だけでなく先生たちからも愛されています》

《対してアーサー選手は説明するまでもないでしょう!あの優勝候補であるダフ選手に第1試合に勝ったダークホースです!!剣技もさることながら、彼の人当たりのいい雰囲気に惹かれますね。対戦した選手はみなアーサー選手のことをこう言います。"あいつの剣技と顔にうっかり惚れそうになっちまう"とね!!》

《シリル選手も美青年ですからね。これは女子大歓喜。美青年対決の始まりです》

「ふぁいと!ふぁいと!シーリールー!!」

「きゃあああ!!アーサーくーーん!!」

対抗戦ではじめてアーサーの存在を知った他寮の女子生徒も、キャーキャーとアーサーの名前を呼んで応援している。ジュリア王女も「アーサー様ぁぁぁぁ!!!」と王女らしからぬ大声で必死に声援を送っていた。こっそり観客席へ戻ってノアの隣で座っているモニカも「がんばれアーサー!」と声を張り上げていた。(ジュリアは観戦に夢中すぎてモニカが戻って来たことに気付いていない)

「ふん、見ものだな」

「ウィルク王子、また何か仕掛けたんですか?」

取り巻きがニヤニヤしながらウィルク王子に尋ねると、王子は悪い顔をしながら頷いた。

「あいつは僕の体に傷をつけたんだよ?脅すのは簡単だった」
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