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魔女編:カミーユたちとの特訓

【80話】温泉

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カトリナのおいしいご飯を食べ終わると、魔女が6人分のタオルを持って来た。

「温泉に行っておいでぇ」

温泉と聞いて双子は大喜びだ。カミーユの服をひっぱって「早くいこう!!」と急かした。
冷たい風に体を縮めながら、彼らは山の奥地へ進んだ。木々を抜けると、もこもこと白い湯気が漂う小さな温泉があった。

「わああああ!!!」

「これが温泉?!」

「そうだ」

「モニカ!入ろう!!」

「うん!!」

「お、ちょ、ちょっとまっ…!」

大人たちの前で服を脱ぎ捨て、二人は大きな音をたてながら温泉へ飛び込んだ。が、思っていたより熱かったらしく「あつっ!あっつぅ!!」と言いながらすぐ湯から出てきた。

「だから待てって言ったんだよ…。ここの温泉は熱いから体を慣らしながら入れって…」

「それよりモニカ…ちょっと体を隠してくれないかな?なんだか犯罪を犯してる気分になるから」

「犯罪?どうしてぇ?」

「かー!!アーサーは全然育ってねえなあ!!」

「育ってるもん!前よりちょっとガッシリしたもん!!」

「前はひょろっひょろのガリッガリだったからな!今で普通くらいだ!」

「ええー」

「俺らも入るぞ。女はあっちな」

「うぃー」

ちょうどよく温泉の中央に大きな岩があり視界が遮られるので、男性陣と女性陣に分かれた。
しばらくしたら熱いお湯にも慣れたので気持ち良くお湯に浸かることができた。アーサーは両手で湯をすくい目をキラキラさせている。

「見てカミーユ!このお湯、白いよ!」

「濁り湯って言うんだ。疲労回復の効果があるんだぜ。しっかり浸かるんだぞ」

「うん!」

「アーサー、カミーユとの特訓どうだった?」

ジルが尋ねると、アーサーが悔しそうな表情を浮かべた。

「全然攻撃が当たらないんだ。躱されるし、剣は受け流されるし…」

「目が慣れてきたら当たるようになるよ」

「そうかなあ」

「はん。そう簡単に当てさせるかよ」

「カミーユ大人げないぞ!」

「うおぁ!」

後ろからリアーナの声がしてカミーユが飛び上がる。振り返ると、リアーナ、カトリナ、モニカが岩の傍でこちらを見ている。

「なにやってんだおまえら!あっちいけ!」

「いいじゃん!にごり湯で見えやしねえよ!」

「そうよォ。せっかくみんなで入ってるんだし、お湯につかりながら楽しくお話しましょ?ね、アーサー?」

「うん!その方がたのしいと思う!」

「リアーナはともかく、カトリナはまずいよ。もう少し離れてくれる?」

「おいジル!あたしに失礼だぞ!」

「わーい!またカミーユとお風呂に入れた~!」

モニカが嬉しそうにカミーユに近づくと、カミーユはアーサーを盾にしてモニカの姿が見えないように目を背けた。モニカは不服そうに頬を膨らませる。

「そんな嫌な顔しなくたっていいじゃない!カミーユのばかぁ!」

「そうだそうだー!カミーユのバカーえろおやじー」

「リアーナおまえ後で覚えてろよ?」

「お?今やるか?いいぜ!」

「ああん?後悔すんじゃねーぞ?」

バシャァと音を立ててカミーユとリアーナが立ち上がった。カトリナは口に手をあてて「まあまあ」と呟きながらその光景を眺めている。ジルは咄嗟に顔を湯につけてリアーナの裸直視を回避した。双子は「ケンカはだめだよぉ!」と二人を止めに入った。

「カミーユぅ…あたしは10年前と違うんだぜ?今じゃああんたにも負けねえよ!」

「ああ、お前は強くなった。だがな、俺だって強くなってんだぜ?」

ビリビリと二人の闘志で空気が震える。リアーナが呼んだのかカミーユとリアーナの間に一筋の風が通った。その風で二人の裸(特にカミーユの股間)が激しく揺れ、思わずカトリナが噴き出した。

「カミーユ、リアーナ、落ち着いてェ。かっこいいセリフを言っているけれど、とっても面白い絵になってしまってるわ」

「「ああん?」」

カトリナがニコニコしながら彼らの体を指さした。二人は指さす方を見て、自分たちが素っ裸だということを思い出す。目を相手の体へ移し、顔を真っ赤にして自分の体を隠した。二人とも水しぶきを立てて勢いよく湯にしゃがみ込む。終わった気配を感じたのか、やっとジルが湯から顔を上げた。双子はホッと胸を撫でおろす。

「はあ、カミーユとリアーナは旅の途中必ず一回はこうなる」

ジルが独り言のように唸った。

「よくケンカするの?」

「ケンカというか、なんというか…」

「二人とも好戦的でしょう?敵に手ごたえがなかったら、いつの間にか二人でやり合ってるのよねェ…」

「で、いつもあのセリフをやり合う前に言うんだ」

「ずっと使いまわしなのォ」

ハァ、とジルとカトリナがため息をつく。なんだか大変そうだなあ、とアーサーとモニカが目を見合わせた。一方カミーユとリアーナは、顔を真っ赤にしてにらみ合っていた。リアーナが恥ずかしさを隠すためか大声でわめいている。

「おい、今の、忘れろよなぁ!!」

「あん?お前の裸なんかに興味ねーよ。お前こそ忘れろ」

「ガハハ、ちっちゃすぎてなーんにも見えなかったね!!」

「ああん?!やんのか?」

「お、やるかあ?!」

「えええまた始まっちゃうの?!」

再び立ち上がったカミーユとリアーナを見て、あわわわとアーサーが助けを求めてジルに飛びついた。しかしジルはまた湯に顔を沈めて流れに身を任せる気満々だ。カトリナも「もう知らないわァ」とにごり湯で肌をこすってくつろぎ始めた。

「け、けんかはダメえ!」

どうにかして二人を落ち着けようと、モニカは水魔法で冷水をたっぷり二人に浴びせかけた。カミーユとリアーナは、驚いて固まったあと、寒さに震えて湯に潜った。

「さっむ!!さっむ!!」

「なにすんだモニカ!」

「ケンカだめ!なかよく温泉はいるの!」

「カミーユ、リアーナ、いい加減にしなさァい」

モニカの必死な声とカトリナのキレ気味の声に、二人は縮こまった。小さい声で「すみませんでした…」と言ってからは、まったりとした時間を過ごせた。
ホカホカに温まったあと、6人は小屋へ戻り魔女が作ってくれた自称ホットミルクを飲んだ。ミルクの割には変な味がしたが、それのおかげで湯冷めすることなく眠ることができた。
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