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魔女編:Fクラスクエスト旅
【67話】救出
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「ハァ…ハァ…」
剣を振るい続けて8時間以上が経った。アーサーにはもう剣を握る握力すらない。血を流しすぎて体の感覚もない。抱えているモニカの体はだんだんと冷たくなっていた。
「モニカ…死なないで…お願いだから…」
妹をぎゅっと抱きしめ、ガタガタと大きく震える手で剣を握りなおした。そのとき、背後から魔物の断末魔が聞こえた。そして複数の足跡。
「アーサー!!!」
「その声は…」
「っ!ひどい傷ね。もう大丈夫よ。はやく山を降りましょう」
「その前にエリクサーを飲ませる!イェルド、アデーラ、魔物の相手を頼む」
「任せろ!」
ベニート、イェルド、アデーラは、偶然にもクエストのために昨晩からスィフィシュ町に来ていた。伝書インコが彼らを見つけたのが4時間前。アーサーの危険を聞き、彼らは馬に乗って助けに来たのだ。誰かがアーサーとモニカを抱きかかえた。アーサーは真っ暗な視界で抱きかかえている人の方に顔を向け、かすれた声を漏らした。
「モニカが…モニカが…」
「大丈夫だ。心臓はまだ動いてる。呼吸も浅いがかろうじてしてる。安心しろ。…って、お前、まさか目が…?」
一向に視線が合わないことに違和感を覚えベニートが問いかける。アーサーは答えることなく意識を失った。それに気付いたイェルドが槍を魔物を倒しながら叫んだ。
「アーサー大丈夫か?!」
「気を失っただけだ。しかしよくもまあこの失血量で魔物と戦えてたな…」
ベニートはモニカとアーサーにエリクサーと増血薬を飲ませた。しばらくして外傷は塞がり血が止まる。モニカとアーサーの真っ青だった顔色も少し赤みがかった。
「よし、容態が安定した。山を下りるぞ」
「おう!」
「ひとまずスィフィシュの医者に連れていく?」
「…いや、ポントワーブへ戻ろう。アーサーの目が気になる。カミーユさんに報告しておきたい」
「分かった。急いで帰りましょう」
彼らは馬を走らせ半日でポントワーブへ戻った。双子の家に入り(鍵が玄関前の植木鉢の下にあることを教えてもらっていた)、ベッドへ横たえる。伝書インコで医者とボルーノ、カミーユたちを呼んだ。
すぐに駆け付けたのはカミーユのパーティだった。大量の血がしみ込んだボロボロの防具を身に付けて意識を失っている双子を見て、血相を変えて双子に駆け寄った。彼らが何度呼びかけても目を覚まさない。カミーユは信じられない、という顔でベニートの方を向いた。
「こいつらがFクラスの魔物でこんなことになるはずがねえ…イレギュラーな敵にぶち当たったのか?!」
「彼らがいたのはウィツ山です。俺たちが見つけたときは、低級魔物がアーサー達に襲い掛かっていました。ただ…」
「なんだ?」
「アーサーは、目が見えてなかったように感じました」
「目…?」
「それに、おかしいぞ。モニカから魔力の気配がないんだ」
リアーナが訝しげにモニカを見つめている。それを聞いたカミーユが伝書インコをシャナに飛ばした。
「ウィツ山って…たしか頂上に魔女が棲んでいたわよねェ?」
カトリナがモニカの手をさすりながら不安げに呟いた。
「まさか、魔女に襲われた…?」
「ありえるな…。それだと目が見えてないのも魔力が消えてるのも納得できる」
そんな話をしている間に、医者とボルーノが到着した。医者が容態を診て、診断に合わせてボルーノが薬を調合する。
「外傷はエリクサーでだいたい治っているね。だがどちらも骨が折れている。血も足りていない。毒は…大丈夫そうだ。状態異常もない」
「増血薬と回復機能を向上させる薬を作ろう。あとは痛み止めじゃな…」
半時間後、伝書インコを受け取り駆けつけたシャナは、双子を見た瞬間顔を真っ青にした。
「なんてこと…」
「シャナ、どう見る?」
「この二人に、呪いがかかっているわ…。モニカは魔力を器ごと奪われてる。アーサーは…?」
「やはり魔女か。アーサーは恐らく視力を奪われている」
「そんな…!」
「どうする?カミーユ。行くか?あたしは行くぞ」
怒りで震えながら、リアーナがカミーユに問いかけた。
「行くに決まってる。シャナ、あの武器はどこにある?」
「地下倉庫よ。でも、呪いを解くためにはこの子たちを再び魔女の元へ行かせないといけない…」
「そうよカミーユ。この子たちをある程度回復させてからじゃないと、危険だわァ」
「そうだな…こいつらの回復を待ってからだ。ジル、お前はどうする?来るか?」
「……」
「ジル?」
「あ、ごめん。早く魔女を殺したい」
「よし、じゃあ武器を整えとけよ。魔女はただの武器で首をはねたところで死なんからな」
「分かってる」
「シャナ、聖水をいただけるかしらァ?」
「ええ。もちろんよ。たっぷり用意しておくわ」
「ベニート、イェルド、アデーラ」
カミーユがEクラス組に声をかける。彼らは「はい!」と返事をした。
「お前たち、こいつらの世話を頼んでいいか?」
「もちろんです」
「こいつらが目を覚ましたらインコを飛ばしてくれ。俺たちは魔女狩りの準備を進める」
「任せてください」
カミーユは双子の手を握り額に当て、頬にキスをした。そしてコキコキと肩を鳴らしたあと、パーティに「行くぞ」と声をかけて部屋を出た。シャナ、リアーナ、ジル、カトリナも双子にキスをしてからカミーユについていく。残されたベニートたちは、双子に薬を与えたり、体を拭いたりして三日三晩看病をした。
剣を振るい続けて8時間以上が経った。アーサーにはもう剣を握る握力すらない。血を流しすぎて体の感覚もない。抱えているモニカの体はだんだんと冷たくなっていた。
「モニカ…死なないで…お願いだから…」
妹をぎゅっと抱きしめ、ガタガタと大きく震える手で剣を握りなおした。そのとき、背後から魔物の断末魔が聞こえた。そして複数の足跡。
「アーサー!!!」
「その声は…」
「っ!ひどい傷ね。もう大丈夫よ。はやく山を降りましょう」
「その前にエリクサーを飲ませる!イェルド、アデーラ、魔物の相手を頼む」
「任せろ!」
ベニート、イェルド、アデーラは、偶然にもクエストのために昨晩からスィフィシュ町に来ていた。伝書インコが彼らを見つけたのが4時間前。アーサーの危険を聞き、彼らは馬に乗って助けに来たのだ。誰かがアーサーとモニカを抱きかかえた。アーサーは真っ暗な視界で抱きかかえている人の方に顔を向け、かすれた声を漏らした。
「モニカが…モニカが…」
「大丈夫だ。心臓はまだ動いてる。呼吸も浅いがかろうじてしてる。安心しろ。…って、お前、まさか目が…?」
一向に視線が合わないことに違和感を覚えベニートが問いかける。アーサーは答えることなく意識を失った。それに気付いたイェルドが槍を魔物を倒しながら叫んだ。
「アーサー大丈夫か?!」
「気を失っただけだ。しかしよくもまあこの失血量で魔物と戦えてたな…」
ベニートはモニカとアーサーにエリクサーと増血薬を飲ませた。しばらくして外傷は塞がり血が止まる。モニカとアーサーの真っ青だった顔色も少し赤みがかった。
「よし、容態が安定した。山を下りるぞ」
「おう!」
「ひとまずスィフィシュの医者に連れていく?」
「…いや、ポントワーブへ戻ろう。アーサーの目が気になる。カミーユさんに報告しておきたい」
「分かった。急いで帰りましょう」
彼らは馬を走らせ半日でポントワーブへ戻った。双子の家に入り(鍵が玄関前の植木鉢の下にあることを教えてもらっていた)、ベッドへ横たえる。伝書インコで医者とボルーノ、カミーユたちを呼んだ。
すぐに駆け付けたのはカミーユのパーティだった。大量の血がしみ込んだボロボロの防具を身に付けて意識を失っている双子を見て、血相を変えて双子に駆け寄った。彼らが何度呼びかけても目を覚まさない。カミーユは信じられない、という顔でベニートの方を向いた。
「こいつらがFクラスの魔物でこんなことになるはずがねえ…イレギュラーな敵にぶち当たったのか?!」
「彼らがいたのはウィツ山です。俺たちが見つけたときは、低級魔物がアーサー達に襲い掛かっていました。ただ…」
「なんだ?」
「アーサーは、目が見えてなかったように感じました」
「目…?」
「それに、おかしいぞ。モニカから魔力の気配がないんだ」
リアーナが訝しげにモニカを見つめている。それを聞いたカミーユが伝書インコをシャナに飛ばした。
「ウィツ山って…たしか頂上に魔女が棲んでいたわよねェ?」
カトリナがモニカの手をさすりながら不安げに呟いた。
「まさか、魔女に襲われた…?」
「ありえるな…。それだと目が見えてないのも魔力が消えてるのも納得できる」
そんな話をしている間に、医者とボルーノが到着した。医者が容態を診て、診断に合わせてボルーノが薬を調合する。
「外傷はエリクサーでだいたい治っているね。だがどちらも骨が折れている。血も足りていない。毒は…大丈夫そうだ。状態異常もない」
「増血薬と回復機能を向上させる薬を作ろう。あとは痛み止めじゃな…」
半時間後、伝書インコを受け取り駆けつけたシャナは、双子を見た瞬間顔を真っ青にした。
「なんてこと…」
「シャナ、どう見る?」
「この二人に、呪いがかかっているわ…。モニカは魔力を器ごと奪われてる。アーサーは…?」
「やはり魔女か。アーサーは恐らく視力を奪われている」
「そんな…!」
「どうする?カミーユ。行くか?あたしは行くぞ」
怒りで震えながら、リアーナがカミーユに問いかけた。
「行くに決まってる。シャナ、あの武器はどこにある?」
「地下倉庫よ。でも、呪いを解くためにはこの子たちを再び魔女の元へ行かせないといけない…」
「そうよカミーユ。この子たちをある程度回復させてからじゃないと、危険だわァ」
「そうだな…こいつらの回復を待ってからだ。ジル、お前はどうする?来るか?」
「……」
「ジル?」
「あ、ごめん。早く魔女を殺したい」
「よし、じゃあ武器を整えとけよ。魔女はただの武器で首をはねたところで死なんからな」
「分かってる」
「シャナ、聖水をいただけるかしらァ?」
「ええ。もちろんよ。たっぷり用意しておくわ」
「ベニート、イェルド、アデーラ」
カミーユがEクラス組に声をかける。彼らは「はい!」と返事をした。
「お前たち、こいつらの世話を頼んでいいか?」
「もちろんです」
「こいつらが目を覚ましたらインコを飛ばしてくれ。俺たちは魔女狩りの準備を進める」
「任せてください」
カミーユは双子の手を握り額に当て、頬にキスをした。そしてコキコキと肩を鳴らしたあと、パーティに「行くぞ」と声をかけて部屋を出た。シャナ、リアーナ、ジル、カトリナも双子にキスをしてからカミーユについていく。残されたベニートたちは、双子に薬を与えたり、体を拭いたりして三日三晩看病をした。
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