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休日
13話 お父さんとペット
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いつの間にか眠ってたみたい。目が覚めると朝日が窓から差し込んでいた。昨日着た服のまま、私は布団にくるまっていた。
「目が覚めましたか?」
枕元から澄んだ声が聞こえた。顔を上げると、あぐらをかいた薄雪が頬杖をついて私を眺めていた。
「…おはようございます」
「おはようございます、花雫。よく眠れましたか?」
「あ、はい。昨日の記憶が途中からないくらい、しっかり寝ちゃってたみたいです」
「酔った花雫は面白かったよ。笑い上戸なんですね。箸が落ちただけで楽しそうに笑っていました」
「とんだご迷惑をおかけしたようで…申し訳ありません…」
「迷惑?ふふ。あんなもの迷惑でもなんでもない。あなたが楽し気に笑っていただけですよ。どこも滅んでいなければ誰かを傷つけたわけでもない。頭を下げることなんて、ひとつも起きていませんよ」
さすが何千年と生きてるおじいちゃん。いつも言うことのスケールが大きい。
「綾目は?」
「綾目はまだ眠っています。長年猫に化けていたからでしょうか。睡眠時間が長すぎるね。起こしましょうか」
「いえ、大丈夫です。あは、寝てる綾目もかわいい」
少年の姿に戻り、畳の上で丸まって寝てる綾目。私は彼の頭をそっと撫でた。綾目が気持ちよさそうにクルクルと喉を鳴らし、「みぁぇ…」と漏らしながら私の手に頭をなすりつけた。それがかわいすぎて、私は彼の隣で横になって二度寝を試みようとした。なのに。
「みぁぁぇぅ!?」
「いつまで猫の真似事をしているんだい綾目」
薄雪が綾目の頬をぎゅっと握り、起こしてしまった。
「あー!!なんでそんなことするんですか薄雪!!寝てる綾目かわいかったのに!!」
「花雫。ヒトは布団に入って眠らないと体を痛めてしまうのでしょう?こんなところで寝てはいけません」
「それもそうですね。綾目、布団で一緒に二度寝しよ?」
「あ…いや…それはぁ…」
私の誘いに、綾目はビクビクしながら首を振った。彼の瞳に薄雪が映っているのは間違いない。怯え方からして怖い顔でもしてるのかな。
そう思って振り返ると、薄雪は微笑を含んだ表情を浮かべている。なんかあれだな、彼氏を威嚇する過保護なお父さんみたいだ。わたしゃ高校生か。
「…お父さん」
「あっ!また心読んだなー!」
「お父さん…」
心の中の”お父さん”発言に、薄雪は少しがっかりしていて、綾目は笑いをこらえて肩を震わせていた。薄雪は綾目を睨みつけたあと、袖から扇子を取り出して口元に当てた。
「では、綾目のことはどう思っているのですか?」
「綾目のこと?」
え?綾目?綾目はペットでしょ?猫だし(猫じゃないけど)。
「ペット」
「ペット…」
今度は綾目ががっかりした表情を浮かべ、薄雪が笑いをこらえる番だった。薄雪は扇子を広げ顔を隠してプルプル震えている。笑いがおさまったのか扇子を閉じると、そこにはニヤニヤしている薄雪がいた。
「綾目。お父さんとペットだって」
「はいぃ…」
「どちらもカゾクだが、お父さんの方が血が繋がっているから縁が深いよね?」
「は、はいぃ…」
「ふむ。ならいいんだ」
なぜか上機嫌になった薄雪に、綾目がぼそりと「薄雪さまの機嫌が直ればなんでもいいです…」と呟いた。何を張り合ってるんだろうかこのあやかしは。
「目が覚めましたか?」
枕元から澄んだ声が聞こえた。顔を上げると、あぐらをかいた薄雪が頬杖をついて私を眺めていた。
「…おはようございます」
「おはようございます、花雫。よく眠れましたか?」
「あ、はい。昨日の記憶が途中からないくらい、しっかり寝ちゃってたみたいです」
「酔った花雫は面白かったよ。笑い上戸なんですね。箸が落ちただけで楽しそうに笑っていました」
「とんだご迷惑をおかけしたようで…申し訳ありません…」
「迷惑?ふふ。あんなもの迷惑でもなんでもない。あなたが楽し気に笑っていただけですよ。どこも滅んでいなければ誰かを傷つけたわけでもない。頭を下げることなんて、ひとつも起きていませんよ」
さすが何千年と生きてるおじいちゃん。いつも言うことのスケールが大きい。
「綾目は?」
「綾目はまだ眠っています。長年猫に化けていたからでしょうか。睡眠時間が長すぎるね。起こしましょうか」
「いえ、大丈夫です。あは、寝てる綾目もかわいい」
少年の姿に戻り、畳の上で丸まって寝てる綾目。私は彼の頭をそっと撫でた。綾目が気持ちよさそうにクルクルと喉を鳴らし、「みぁぇ…」と漏らしながら私の手に頭をなすりつけた。それがかわいすぎて、私は彼の隣で横になって二度寝を試みようとした。なのに。
「みぁぁぇぅ!?」
「いつまで猫の真似事をしているんだい綾目」
薄雪が綾目の頬をぎゅっと握り、起こしてしまった。
「あー!!なんでそんなことするんですか薄雪!!寝てる綾目かわいかったのに!!」
「花雫。ヒトは布団に入って眠らないと体を痛めてしまうのでしょう?こんなところで寝てはいけません」
「それもそうですね。綾目、布団で一緒に二度寝しよ?」
「あ…いや…それはぁ…」
私の誘いに、綾目はビクビクしながら首を振った。彼の瞳に薄雪が映っているのは間違いない。怯え方からして怖い顔でもしてるのかな。
そう思って振り返ると、薄雪は微笑を含んだ表情を浮かべている。なんかあれだな、彼氏を威嚇する過保護なお父さんみたいだ。わたしゃ高校生か。
「…お父さん」
「あっ!また心読んだなー!」
「お父さん…」
心の中の”お父さん”発言に、薄雪は少しがっかりしていて、綾目は笑いをこらえて肩を震わせていた。薄雪は綾目を睨みつけたあと、袖から扇子を取り出して口元に当てた。
「では、綾目のことはどう思っているのですか?」
「綾目のこと?」
え?綾目?綾目はペットでしょ?猫だし(猫じゃないけど)。
「ペット」
「ペット…」
今度は綾目ががっかりした表情を浮かべ、薄雪が笑いをこらえる番だった。薄雪は扇子を広げ顔を隠してプルプル震えている。笑いがおさまったのか扇子を閉じると、そこにはニヤニヤしている薄雪がいた。
「綾目。お父さんとペットだって」
「はいぃ…」
「どちらもカゾクだが、お父さんの方が血が繋がっているから縁が深いよね?」
「は、はいぃ…」
「ふむ。ならいいんだ」
なぜか上機嫌になった薄雪に、綾目がぼそりと「薄雪さまの機嫌が直ればなんでもいいです…」と呟いた。何を張り合ってるんだろうかこのあやかしは。
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