44 / 50
第五章 刀工と騎士の戦争
刀工と騎士と戦争
しおりを挟む
ギレイは飛竜の手綱を引いて、高度を上げた。背後で響く、自分の、今は彼女の剣を納める鍔鳴りの音を聴きながら。
(ミシュアさん――)
自分の腰に回された、彼女の手を感じながら。
(本当は逃げてしまいたいんじゃないか――?)
ギレイは飛竜を駆った。街を巡回したいという、騎士としての彼女が言わせた嘘に気づきながら、何も言わずに。作り物みたいに小さく見える都市、本来ならば見上げるほどに高く分厚い城壁を見下ろしながら、逃れるように……暮れなずむ空を駆けた。
今は、二人だけだった。
城塞都市を過ぎ去って、眼下には雪景色が広がっていた。夕日が眩しすぎて、向かい風が強すぎて、高度を下げていく。足下に広がる、雪原へと近づいていく。
当たり前のことではあるけれど、戦争が近づいている城塞都市の外には誰もいなかった。
今は、本当に二人きりだった。
(このまま……)
思ってしまう……ずっと思わないようにしようとしていたことを。
(このまま、何処かへ――二人で)
思い返すのは、評議会のこと。彼女と会えないようにした人々。確かに存在し、でも、顔も名も知らない無数の人々。彼らはしかし、彼女と街を巡った日には優しくしてくれた人々でもあった。きっと、自分たちに本当に悪意のある人々はきっと少ない。
でも……それでも、さきほどの多くの歓声が告げていたように、彼らは騎士を戦地に向かわせる……そう、望んでいる人々だった。
(僕たちのことを誰も知らない何処かへ――)
思い返すのは、自分が知っている人々のこと。
親友のハサン、今や上司のルーキュルク、ルド親方。よく知らない人々の顔。鍛冶道具を商人や居酒屋の人、かつ、彼女と街を巡った時にすれ違っただけの人の顔まで、様々に思い返す。
(僕たちを知る誰かが――)
思い返すのは、自分が知っていた人々。
死なせてしまった戦友、傭兵時代に顔を合わせただけの人々から始まって……もしかしたら友にさえなれたかもしれないアベルまで。
(僕は……)
戦い敗れて、もう会えなくなってしまった人々。
彼らの顔を思い返すと、どうしても。
(……剣を――)
飛竜の手綱を握る己の手を見る……鉄槌を握っていない、己の手。思い返すのは、鉄槌の感触、鉄を打ったときの手応え、火花、甲高い音色。親方や剣を渡した人々のことで。
「……」
かつての自分を思い出すかのように、ギレイは自分の鍛冶小屋があった森へと飛竜を降り立たせていた。ここに来たのは、おそらく、身体に染みついていた習慣だった。でも、それだけじゃないようにも、ギレイは自覚していた。
「……、」
ルーキュルクギルドの工房とは違って、未だ残雪のある鍛冶小屋が見えた。久しぶりに来たそこに、懐かしさがこみ上げる。飛竜を降りて、かつて、そうしていたように小屋へと歩んでいく。残雪を踏みしめて、立ち止まる。自分と同じように飛竜を降りて、歩み寄ってくれていた彼女も立ち止まった。それを、まるで触れているかのように背中で感じながら、口を開いた。
「ミシュアさん」
「……なに? ギレイさん」
ギレイの唇が震えた。
これから言おうとしていることへの、ほんの少しの、躊躇だった。
でも、ほんの少しで済んだ。
そのことが、何故だか不思議なほど嬉しかった。
「僕はね、キミと一緒に逃げたい……戦争のないところまで」
彼女が、まるで泣くかのように息をのむ気配を、背中で感じる。やっぱり彼女も、似たようなことを思い、それを口にすることを躊躇していたのだと感じ取った。
「ギレイさん……それは……」
「うん、分かってる……みんながきっと、ミシュアさんを責めるだろう。騎士団の仲間や今も都市に残っていた人々……もしかしたら、遠い異国の人までも」
「……」
「だから、僕がキミを逃がす。キミを責め立てる人々が、そんな人々の言葉が届かないところまで、ずっとずっと遠くまで――何処までも一緒に逃げてしまいたいんだ」
彼女は何も言わなかった。
ただ、背中に彼女の額がそっと預けられた、彼女の息も。
乱れた吐息は、彼女が泣いているのだと訴えていた。
「大丈夫……きっと大丈夫だよ、戦争もない……ううん、魔族と人間が争うことのない、騎士も刀工も必要ないところ……ううん、身分評議会みたいな、人間同士の言い争いさえもないところへ、みんながただ穏やかに暮らすだけの……そんな場所が何処かに……」
ある、とは、ギレイには言えなかった。
彼女の涙が伝ったかのように、自分の頬にも一筋の涙が流れていた。構わなかった、ずっと言いたくて、言えなかったこと……ほとんどはもう彼女に伝ったはずだった。
だから、彼女と共に涙を流していく……流させしまう何かに、身も心も委ねた。
彼女も、多分、そうだった。
二人きりで、二人にしか分かち合えない何かを預け合った。
もしかしたら、彼女と過ごした時間のなかで一番、心を重ね合わせられたのかもしれなかった。二人だけで過ごしていけば、もしかしたら、さきほど口にしたように見知らぬ何処かで穏やかに過ごしていくことも叶うかもしれなかった。
ただ、ギレイにはもう一つ言えなかったことがあった。
(……二人きりで生きていきたい)
彼女にそう言おうとして、言えなかった……だから。
「ギレイさん……ありがとう」
彼女が言うことを知っていたのだと思う。
「ありがとう、本当に……ええ、本当に。ギレイさんが言ってくれたこと、想ってくれたこと……絶対に忘れない。ずっと胸のうちにしまっておく……誰にも渡さない――奪わせない――たとえ、戦地でも」
二人きりで優しい日々を泣きながら、夢見た。でも、二人のためにしかならない夢なんて、彼女はきっと斬り捨てると、ギレイは知っていた。
「だってね、ギレイさん」
「ん?」
「わたしはやっぱり、みんなのことを忘れるなんて出来ないよ……きっと、ギレイさんも」
「そう……かな?」
「そうだよ」
「……そっか」
「ええ、みんなを置き去りにして……忘れたフリをして、わたし達が日々を過ごしたとしても……そんな日々はきっと、わたし達の絆を……」
「――分かってる、その続きは言わなくても」
ギレイは、知っていた。
彼女はやはり綺麗な騎士だと、ここで出会った頃から知っていたのだった。
でも、剣を携えない、彼女をも知っている。
「ミシュアさん」
そして、自分は刀工だった――今、戦争に赴こうと決意した彼女の。
なら、自分のやることは決まった。彼女の命を――もしかしたら、それ以上の何かを預けられる剣を鍛え上げることだった。
約束でもあったかのように、もう一度、出逢うかのように、振り返り合う。
向かい合う……鉄槌を握っていない自分を知ってくれている、彼女へと。
「僕は貴女のためだけの剣を、鍛え上げるよ」
「ええ、信じて待ってるね――貴方の剣を」
うなずき微笑んだ彼女の瞳――残っていた涙が流れ落ちた。
(ミシュアさん――)
自分の腰に回された、彼女の手を感じながら。
(本当は逃げてしまいたいんじゃないか――?)
ギレイは飛竜を駆った。街を巡回したいという、騎士としての彼女が言わせた嘘に気づきながら、何も言わずに。作り物みたいに小さく見える都市、本来ならば見上げるほどに高く分厚い城壁を見下ろしながら、逃れるように……暮れなずむ空を駆けた。
今は、二人だけだった。
城塞都市を過ぎ去って、眼下には雪景色が広がっていた。夕日が眩しすぎて、向かい風が強すぎて、高度を下げていく。足下に広がる、雪原へと近づいていく。
当たり前のことではあるけれど、戦争が近づいている城塞都市の外には誰もいなかった。
今は、本当に二人きりだった。
(このまま……)
思ってしまう……ずっと思わないようにしようとしていたことを。
(このまま、何処かへ――二人で)
思い返すのは、評議会のこと。彼女と会えないようにした人々。確かに存在し、でも、顔も名も知らない無数の人々。彼らはしかし、彼女と街を巡った日には優しくしてくれた人々でもあった。きっと、自分たちに本当に悪意のある人々はきっと少ない。
でも……それでも、さきほどの多くの歓声が告げていたように、彼らは騎士を戦地に向かわせる……そう、望んでいる人々だった。
(僕たちのことを誰も知らない何処かへ――)
思い返すのは、自分が知っている人々のこと。
親友のハサン、今や上司のルーキュルク、ルド親方。よく知らない人々の顔。鍛冶道具を商人や居酒屋の人、かつ、彼女と街を巡った時にすれ違っただけの人の顔まで、様々に思い返す。
(僕たちを知る誰かが――)
思い返すのは、自分が知っていた人々。
死なせてしまった戦友、傭兵時代に顔を合わせただけの人々から始まって……もしかしたら友にさえなれたかもしれないアベルまで。
(僕は……)
戦い敗れて、もう会えなくなってしまった人々。
彼らの顔を思い返すと、どうしても。
(……剣を――)
飛竜の手綱を握る己の手を見る……鉄槌を握っていない、己の手。思い返すのは、鉄槌の感触、鉄を打ったときの手応え、火花、甲高い音色。親方や剣を渡した人々のことで。
「……」
かつての自分を思い出すかのように、ギレイは自分の鍛冶小屋があった森へと飛竜を降り立たせていた。ここに来たのは、おそらく、身体に染みついていた習慣だった。でも、それだけじゃないようにも、ギレイは自覚していた。
「……、」
ルーキュルクギルドの工房とは違って、未だ残雪のある鍛冶小屋が見えた。久しぶりに来たそこに、懐かしさがこみ上げる。飛竜を降りて、かつて、そうしていたように小屋へと歩んでいく。残雪を踏みしめて、立ち止まる。自分と同じように飛竜を降りて、歩み寄ってくれていた彼女も立ち止まった。それを、まるで触れているかのように背中で感じながら、口を開いた。
「ミシュアさん」
「……なに? ギレイさん」
ギレイの唇が震えた。
これから言おうとしていることへの、ほんの少しの、躊躇だった。
でも、ほんの少しで済んだ。
そのことが、何故だか不思議なほど嬉しかった。
「僕はね、キミと一緒に逃げたい……戦争のないところまで」
彼女が、まるで泣くかのように息をのむ気配を、背中で感じる。やっぱり彼女も、似たようなことを思い、それを口にすることを躊躇していたのだと感じ取った。
「ギレイさん……それは……」
「うん、分かってる……みんながきっと、ミシュアさんを責めるだろう。騎士団の仲間や今も都市に残っていた人々……もしかしたら、遠い異国の人までも」
「……」
「だから、僕がキミを逃がす。キミを責め立てる人々が、そんな人々の言葉が届かないところまで、ずっとずっと遠くまで――何処までも一緒に逃げてしまいたいんだ」
彼女は何も言わなかった。
ただ、背中に彼女の額がそっと預けられた、彼女の息も。
乱れた吐息は、彼女が泣いているのだと訴えていた。
「大丈夫……きっと大丈夫だよ、戦争もない……ううん、魔族と人間が争うことのない、騎士も刀工も必要ないところ……ううん、身分評議会みたいな、人間同士の言い争いさえもないところへ、みんながただ穏やかに暮らすだけの……そんな場所が何処かに……」
ある、とは、ギレイには言えなかった。
彼女の涙が伝ったかのように、自分の頬にも一筋の涙が流れていた。構わなかった、ずっと言いたくて、言えなかったこと……ほとんどはもう彼女に伝ったはずだった。
だから、彼女と共に涙を流していく……流させしまう何かに、身も心も委ねた。
彼女も、多分、そうだった。
二人きりで、二人にしか分かち合えない何かを預け合った。
もしかしたら、彼女と過ごした時間のなかで一番、心を重ね合わせられたのかもしれなかった。二人だけで過ごしていけば、もしかしたら、さきほど口にしたように見知らぬ何処かで穏やかに過ごしていくことも叶うかもしれなかった。
ただ、ギレイにはもう一つ言えなかったことがあった。
(……二人きりで生きていきたい)
彼女にそう言おうとして、言えなかった……だから。
「ギレイさん……ありがとう」
彼女が言うことを知っていたのだと思う。
「ありがとう、本当に……ええ、本当に。ギレイさんが言ってくれたこと、想ってくれたこと……絶対に忘れない。ずっと胸のうちにしまっておく……誰にも渡さない――奪わせない――たとえ、戦地でも」
二人きりで優しい日々を泣きながら、夢見た。でも、二人のためにしかならない夢なんて、彼女はきっと斬り捨てると、ギレイは知っていた。
「だってね、ギレイさん」
「ん?」
「わたしはやっぱり、みんなのことを忘れるなんて出来ないよ……きっと、ギレイさんも」
「そう……かな?」
「そうだよ」
「……そっか」
「ええ、みんなを置き去りにして……忘れたフリをして、わたし達が日々を過ごしたとしても……そんな日々はきっと、わたし達の絆を……」
「――分かってる、その続きは言わなくても」
ギレイは、知っていた。
彼女はやはり綺麗な騎士だと、ここで出会った頃から知っていたのだった。
でも、剣を携えない、彼女をも知っている。
「ミシュアさん」
そして、自分は刀工だった――今、戦争に赴こうと決意した彼女の。
なら、自分のやることは決まった。彼女の命を――もしかしたら、それ以上の何かを預けられる剣を鍛え上げることだった。
約束でもあったかのように、もう一度、出逢うかのように、振り返り合う。
向かい合う……鉄槌を握っていない自分を知ってくれている、彼女へと。
「僕は貴女のためだけの剣を、鍛え上げるよ」
「ええ、信じて待ってるね――貴方の剣を」
うなずき微笑んだ彼女の瞳――残っていた涙が流れ落ちた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
婚約者に裏切られた女騎士は皇帝の側妃になれと命じられた
ミカン♬
恋愛
小国クライン国に帝国から<妖精姫>と名高いマリエッタ王女を側妃として差し出すよう命令が来た。
マリエッタ王女の侍女兼護衛のミーティアは嘆く王女の監視を命ぜられるが、ある日王女は失踪してしまった。
義兄と婚約者に裏切られたと知ったミーティアに「マリエッタとして帝国に嫁ぐように」と国王に命じられた。母を人質にされて仕方なく受け入れたミーティアを帝国のベルクール第二皇子が迎えに来た。
二人の出会いが帝国の運命を変えていく。
ふわっとした世界観です。サクッと終わります。他サイトにも投稿。完結後にリカルドとベルクールの閑話を入れました、宜しくお願いします。
2024/01/19
閑話リカルド少し加筆しました。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる