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第五章 刀工と騎士の戦争
騎士団の演習
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ギレイの剣を天空に掲げ、ミシュアは声を張り上げた。
「白蘭騎士団第一隊、鏃型陣形へッ!」
叫びながら、ミシュアは一角騎の腹を踵の拍車で蹴りつける。空を駆けていた一角騎が加速していくのを体感し、顔だけを背後に振り向ける。
薄い雲を突き破って現れるのは一角騎の群れ――白蘭騎士団第一隊総勢三千が鏃型陣形――ミシュアを頂点とした三角錐へと隊列を整える。地上とは違い、空戦では立体的に陣形を構築せねばならず、上下左右に注意を払うから難易度は高い。が、その早さ、形ともに申し分ない。
(久しぶりの演習だというのに、よくやってくれている)
ミシュアは微かに口元を緩める。今日の演習は一月後に控える合戦を見据えた空戦機動――戦闘時に置ける行軍――の訓練であり、幾つかの陣形変化、並びに突破、包囲、防御機動などをこなしていた。どれも満足のいく結果は得られている。
(さて、これで今日の締めだ)
思いながら、ちらりと眼下を伺う。リュッセンベルク城塞都市が手の平くらいの大きさ――おおまかな高度を確認。かつ、城砦都市上空を守るように滞空している飛翔騎影――仮想敵を務める白蘭騎士団第二、三隊――を確認し、ミシュアは更に叫んだ。
「敵の飛翔騎六千ッ、右翼下方角六十ッ、距離四メルッ!」
ミシュアは右手側の六十度下、四百メートルほど下を、剣の切っ先を指し示す。
「降下突撃にィッ、移れッ!」
叫び終える前に、ミシュアは手綱を取って一角騎の機首を巡らし、空を駆け下りている。大気の壁を切り裂いていく感覚を肌で感じながら、最高速度で降下していく。
背後の仲間は見ない――信頼している。その根拠は、背中を激しく揺らす、鬨の声音。
視界が窄まっていく。城塞都市と仮想敵たる第二、第三隊が拡大されて見えてくる。第二、第三隊も即応――両翼が突き出て包囲殲滅を狙う鶴翼陣形――wの形へ隊列が変化した。その陣形変化の動きに紛れ、おそらく、こちらの後背を突くように別働隊を出しているだろう。
(ええ――良い動き)
自らの騎士団の空戦機動を見定めて、ミシュアは軽く顎を引く。
(頃合いだ)
これ以上、最高速度で突っ込んでしまえば、仮想敵の第二、三隊と衝突してしまう。一度、加速した軍勢は止まれないのだ。そう考えて、ミシュアは叫んだ。
「敵に突撃したものと見なし、降下突撃終了ッ!」
剣を掲げ、切っ先をやや左上方に向ける。
「本日の機動訓練は終えるッ――迂回機動へと移行しつつ、速度、徐々に緩めろッ!」
自らも少し手綱を引きながら、顔だけを振り向ける。背後、付き従って仲間達の姿。全ての者の顔を見ることはできないが、一角騎の群れが速度を落としていく――そんな足並みの揃い方で、こちらを信頼してくれているのが伝わってくる。
(本当の突撃だったなら――)
仲間達の全ての顔は見ることは出来ない――戦争をしている最中ならば特に。
(何人生き残れるだろうか――?)
胸の内に湧き上がった、あるかも知れない未来。目を背けるように、正面を向き、首を微かに振る。追い出し切れない。戦争では人が死ぬ。自分の指揮によって、きっと、仲間が死ぬ。
それは敵がすることと何が違うのか。
「……、」
短く息を吐き、ミシュアはまた剣を掲げる。刀身が日を受けて輝いている。
剣の強い光に胸の内に湧き上がった暗い未来が幾分か晴れる……剣士として、騎士団長としての自分に戻れるほどには。
「第二、第三隊と合流し、リュッセンベルク城砦、第八砦に帰還するッ!」
叫び終え、ミシュアは納める。鍔鳴りの綺麗な音が響き、落ち着いてくる。鞘を握りしめていると、尚更に。
(迷うな、剣が敵を斬ることしか知らないように。わたしはより多くの敵を斬ればいい)
そう思い定めて、ミシュアは第一隊をリュッセンベルク城塞都市への空路を駆ける……いや、今や速歩というべきか。坂を軽やかに下りるように、城塞都市の城壁に突き立っている塔へと向かう。その最中で、第二、第三隊との合流をも済ませていた。
城塞都市を囲むように点在する高層の塔は、飛翔騎の滑走路を兼ねる離発着場であった。近づいて見れば分かるのだが、塔は緩やかな螺旋状になっていて、その螺旋階段の一つ一つが、およそ一千騎は収容出来るような巨大さだった。
最上段の離発着場、見た目には城の胸壁に見えるそこに、ミシュア率いる第一隊が順次、降りていく。無論、三千騎が一気には降り立てないので、隊を分けて螺旋階段のそれぞれへと。
蹄の音を石畳に響かせ、ミシュアは一角騎を離発着場に降り立たせた。速歩で勢いを殺しつつ、浅く傾斜した石畳を行く。仲間達の蹄の音も、次第に数多く連なっていく。着陸を終えてしばらくして、
「団長っ」
第一隊の千人長の一人が轡を並べて、声をかけてきた。
「その剣、本当にお気に入りですよね~」
「あ、ああ……そうだが?」
妙に楽しそうに聞いてくる千人長に、戸惑っていると。
「あの刀工さんとの式典、団長……すっごく良い顔してましたよっ!」
「そ……そうか?」
「はいっ、あたし初めて見ました、あんなにも恥ずかしそうで嬉しそうな団長っ!」
千人長がそう言うと、背後からも同意するような話し声やら笑い声が幾分、上がる。どういう訳か、ギレイとの式典以降、団員達の距離感が縮まっている。それは良いのだが、どう答えて良いものかと、ミシュアが口ごもる……その間に、千人長が続けていた。
「団員を代表して聞きますっ!」
「あ、ああ……何でも聞いてくれ」
「あの刀工さんとは、良い仲なんですかっ?」
背後から仲間達の歓声――『聞いたっ!』『聞きづらいことを!』『でも、みんなが聞きたかったことをッ!』――が次々と上がった。
思いも寄らなかった、そんな仲間達のはしゃぎようもあって、
「――、」
ミシュアはとっさに答えられなかった。というか……何故だが分からないが、あんまり答えたくなかった。ただ、嘘はつきたくなかった。だから、結局、
「理想的な仲だよ、剣士と刀工としてな」
などと口にした。嘘ではなかった……のに。
「またまた~」
半笑いで千人長が言ったのを皮切りに、仲間達は口々に、『本当に~?』とか『今後は違うんでしょう??』とか盛り上がっている――わりと、追求される流れだった。
またも何故だが分からないが、衝動的に、
「今はっ! 帰投することに集中してくれ、頼むからっ!」
自分でも不自然だと思えるくらいに、ミシュアは声を張り上げてしまう。でも、あんまり効果はなかったらしい。
『はっ』と威勢良く答える声にも、笑いが滲んでいる。というか、『帰ったら、むっちゃ聞きますねッ』『問いつめますねっ!』とか声が上がっている。
「……、」
再び、諫めようと開いた口を、ミシュアは閉じた。
(……合戦前だというのに、この浮かれよう……)
ミシュアはため息混じりに思って、ふと別のことへと思い至った。
(いや、合戦前……だからか?)
仲間達とて、戦争に赴くことがどういうことか知ってるはず。大規模な戦争の経験はないが、実戦はこなしているのだ。この考えが間違いではないことは、すぐに証明された。
「団長っ!」
上空から声――一角騎に跨って空を駆けてきたリンファがミシュアの前に降り立つ。リンファはやはり怪我から完全には回復せず、しかし、ユニリの補佐として戦況分析を務めている。
「ギレク騎士団から抽出された第六偵察小隊」
振り向いていたリンファの顔が曇り、声を潜めて続けた。
「消息を途絶えたそうです」
「そうか……」
戦争は着実に近づいてきている。
気がつけば、背後についてきてくれていた仲間達の、先ほどまであった浮ついた雰囲気は跡形もなく、消えていた。もし命令を下したなら、と付き従うよう備えているように。
皆も今が合戦の前という現実を、苦しいぐらいに分かっていたのだ。
苦しいほど、知っているからこそ……皆でこうしていられる時間が少ないことも分かっていて。だからこそ、今、楽しめる内に楽しもうとしていたのだろう。
誰一人、欠けていない今だからこそ、と。
いや、もしかしたら、ミシュアをも気遣ってくれていたのかもしれない。来るべき合戦に向け、緊張し過ぎていることを見て取られたのかもしれない。
だとしたら、皆の優しさを嬉しく思い、でも、だからこそ、ミシュアは思ってしまう。
(……わたしはやはり、団長としてまだまだなのか)
仲間達の抱く、かすかな戦争への不安。
団長の自分こそが、それを払拭したかった――少しでも。
騎士団長がどうこうしたところで、仲間達の不安を完全に消し去ることなど出来ないのかもしれない……でも、そうしたかった。
ミシュアはギレイの剣に触れた。
(わたしはやはり、この剣のように……)
この剣のようにありたいと、不意に思った。身近に存在するだけで、どんな時でも落ち着くような……それでいて、命を賭して戦える勇気をくれるような。
(仲間達が命を預けたいと思えるような騎士団長でありたい)
ギレイが剣を完成させてくれたなら、少しでも良い騎士団長に近づけると、ミシュアは思った。彼と自分ならばきっと、この願いを現実に出来るのだと信じられた。
自分は剣士で、彼は刀工なのだから……そういうふうに、出会ったのだから。
「白蘭騎士団第一隊、鏃型陣形へッ!」
叫びながら、ミシュアは一角騎の腹を踵の拍車で蹴りつける。空を駆けていた一角騎が加速していくのを体感し、顔だけを背後に振り向ける。
薄い雲を突き破って現れるのは一角騎の群れ――白蘭騎士団第一隊総勢三千が鏃型陣形――ミシュアを頂点とした三角錐へと隊列を整える。地上とは違い、空戦では立体的に陣形を構築せねばならず、上下左右に注意を払うから難易度は高い。が、その早さ、形ともに申し分ない。
(久しぶりの演習だというのに、よくやってくれている)
ミシュアは微かに口元を緩める。今日の演習は一月後に控える合戦を見据えた空戦機動――戦闘時に置ける行軍――の訓練であり、幾つかの陣形変化、並びに突破、包囲、防御機動などをこなしていた。どれも満足のいく結果は得られている。
(さて、これで今日の締めだ)
思いながら、ちらりと眼下を伺う。リュッセンベルク城塞都市が手の平くらいの大きさ――おおまかな高度を確認。かつ、城砦都市上空を守るように滞空している飛翔騎影――仮想敵を務める白蘭騎士団第二、三隊――を確認し、ミシュアは更に叫んだ。
「敵の飛翔騎六千ッ、右翼下方角六十ッ、距離四メルッ!」
ミシュアは右手側の六十度下、四百メートルほど下を、剣の切っ先を指し示す。
「降下突撃にィッ、移れッ!」
叫び終える前に、ミシュアは手綱を取って一角騎の機首を巡らし、空を駆け下りている。大気の壁を切り裂いていく感覚を肌で感じながら、最高速度で降下していく。
背後の仲間は見ない――信頼している。その根拠は、背中を激しく揺らす、鬨の声音。
視界が窄まっていく。城塞都市と仮想敵たる第二、第三隊が拡大されて見えてくる。第二、第三隊も即応――両翼が突き出て包囲殲滅を狙う鶴翼陣形――wの形へ隊列が変化した。その陣形変化の動きに紛れ、おそらく、こちらの後背を突くように別働隊を出しているだろう。
(ええ――良い動き)
自らの騎士団の空戦機動を見定めて、ミシュアは軽く顎を引く。
(頃合いだ)
これ以上、最高速度で突っ込んでしまえば、仮想敵の第二、三隊と衝突してしまう。一度、加速した軍勢は止まれないのだ。そう考えて、ミシュアは叫んだ。
「敵に突撃したものと見なし、降下突撃終了ッ!」
剣を掲げ、切っ先をやや左上方に向ける。
「本日の機動訓練は終えるッ――迂回機動へと移行しつつ、速度、徐々に緩めろッ!」
自らも少し手綱を引きながら、顔だけを振り向ける。背後、付き従って仲間達の姿。全ての者の顔を見ることはできないが、一角騎の群れが速度を落としていく――そんな足並みの揃い方で、こちらを信頼してくれているのが伝わってくる。
(本当の突撃だったなら――)
仲間達の全ての顔は見ることは出来ない――戦争をしている最中ならば特に。
(何人生き残れるだろうか――?)
胸の内に湧き上がった、あるかも知れない未来。目を背けるように、正面を向き、首を微かに振る。追い出し切れない。戦争では人が死ぬ。自分の指揮によって、きっと、仲間が死ぬ。
それは敵がすることと何が違うのか。
「……、」
短く息を吐き、ミシュアはまた剣を掲げる。刀身が日を受けて輝いている。
剣の強い光に胸の内に湧き上がった暗い未来が幾分か晴れる……剣士として、騎士団長としての自分に戻れるほどには。
「第二、第三隊と合流し、リュッセンベルク城砦、第八砦に帰還するッ!」
叫び終え、ミシュアは納める。鍔鳴りの綺麗な音が響き、落ち着いてくる。鞘を握りしめていると、尚更に。
(迷うな、剣が敵を斬ることしか知らないように。わたしはより多くの敵を斬ればいい)
そう思い定めて、ミシュアは第一隊をリュッセンベルク城塞都市への空路を駆ける……いや、今や速歩というべきか。坂を軽やかに下りるように、城塞都市の城壁に突き立っている塔へと向かう。その最中で、第二、第三隊との合流をも済ませていた。
城塞都市を囲むように点在する高層の塔は、飛翔騎の滑走路を兼ねる離発着場であった。近づいて見れば分かるのだが、塔は緩やかな螺旋状になっていて、その螺旋階段の一つ一つが、およそ一千騎は収容出来るような巨大さだった。
最上段の離発着場、見た目には城の胸壁に見えるそこに、ミシュア率いる第一隊が順次、降りていく。無論、三千騎が一気には降り立てないので、隊を分けて螺旋階段のそれぞれへと。
蹄の音を石畳に響かせ、ミシュアは一角騎を離発着場に降り立たせた。速歩で勢いを殺しつつ、浅く傾斜した石畳を行く。仲間達の蹄の音も、次第に数多く連なっていく。着陸を終えてしばらくして、
「団長っ」
第一隊の千人長の一人が轡を並べて、声をかけてきた。
「その剣、本当にお気に入りですよね~」
「あ、ああ……そうだが?」
妙に楽しそうに聞いてくる千人長に、戸惑っていると。
「あの刀工さんとの式典、団長……すっごく良い顔してましたよっ!」
「そ……そうか?」
「はいっ、あたし初めて見ました、あんなにも恥ずかしそうで嬉しそうな団長っ!」
千人長がそう言うと、背後からも同意するような話し声やら笑い声が幾分、上がる。どういう訳か、ギレイとの式典以降、団員達の距離感が縮まっている。それは良いのだが、どう答えて良いものかと、ミシュアが口ごもる……その間に、千人長が続けていた。
「団員を代表して聞きますっ!」
「あ、ああ……何でも聞いてくれ」
「あの刀工さんとは、良い仲なんですかっ?」
背後から仲間達の歓声――『聞いたっ!』『聞きづらいことを!』『でも、みんなが聞きたかったことをッ!』――が次々と上がった。
思いも寄らなかった、そんな仲間達のはしゃぎようもあって、
「――、」
ミシュアはとっさに答えられなかった。というか……何故だが分からないが、あんまり答えたくなかった。ただ、嘘はつきたくなかった。だから、結局、
「理想的な仲だよ、剣士と刀工としてな」
などと口にした。嘘ではなかった……のに。
「またまた~」
半笑いで千人長が言ったのを皮切りに、仲間達は口々に、『本当に~?』とか『今後は違うんでしょう??』とか盛り上がっている――わりと、追求される流れだった。
またも何故だが分からないが、衝動的に、
「今はっ! 帰投することに集中してくれ、頼むからっ!」
自分でも不自然だと思えるくらいに、ミシュアは声を張り上げてしまう。でも、あんまり効果はなかったらしい。
『はっ』と威勢良く答える声にも、笑いが滲んでいる。というか、『帰ったら、むっちゃ聞きますねッ』『問いつめますねっ!』とか声が上がっている。
「……、」
再び、諫めようと開いた口を、ミシュアは閉じた。
(……合戦前だというのに、この浮かれよう……)
ミシュアはため息混じりに思って、ふと別のことへと思い至った。
(いや、合戦前……だからか?)
仲間達とて、戦争に赴くことがどういうことか知ってるはず。大規模な戦争の経験はないが、実戦はこなしているのだ。この考えが間違いではないことは、すぐに証明された。
「団長っ!」
上空から声――一角騎に跨って空を駆けてきたリンファがミシュアの前に降り立つ。リンファはやはり怪我から完全には回復せず、しかし、ユニリの補佐として戦況分析を務めている。
「ギレク騎士団から抽出された第六偵察小隊」
振り向いていたリンファの顔が曇り、声を潜めて続けた。
「消息を途絶えたそうです」
「そうか……」
戦争は着実に近づいてきている。
気がつけば、背後についてきてくれていた仲間達の、先ほどまであった浮ついた雰囲気は跡形もなく、消えていた。もし命令を下したなら、と付き従うよう備えているように。
皆も今が合戦の前という現実を、苦しいぐらいに分かっていたのだ。
苦しいほど、知っているからこそ……皆でこうしていられる時間が少ないことも分かっていて。だからこそ、今、楽しめる内に楽しもうとしていたのだろう。
誰一人、欠けていない今だからこそ、と。
いや、もしかしたら、ミシュアをも気遣ってくれていたのかもしれない。来るべき合戦に向け、緊張し過ぎていることを見て取られたのかもしれない。
だとしたら、皆の優しさを嬉しく思い、でも、だからこそ、ミシュアは思ってしまう。
(……わたしはやはり、団長としてまだまだなのか)
仲間達の抱く、かすかな戦争への不安。
団長の自分こそが、それを払拭したかった――少しでも。
騎士団長がどうこうしたところで、仲間達の不安を完全に消し去ることなど出来ないのかもしれない……でも、そうしたかった。
ミシュアはギレイの剣に触れた。
(わたしはやはり、この剣のように……)
この剣のようにありたいと、不意に思った。身近に存在するだけで、どんな時でも落ち着くような……それでいて、命を賭して戦える勇気をくれるような。
(仲間達が命を預けたいと思えるような騎士団長でありたい)
ギレイが剣を完成させてくれたなら、少しでも良い騎士団長に近づけると、ミシュアは思った。彼と自分ならばきっと、この願いを現実に出来るのだと信じられた。
自分は剣士で、彼は刀工なのだから……そういうふうに、出会ったのだから。
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