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第三章 刀工と騎士と武芸大会

武芸大会の夜・2

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 星空のなかでギレイ達が跨った飛竜が緩やかに飛翔する、その下。
 
 城塞都市リュッセンベルクの某所。
 ベットでうつ伏せになった少女が、枕元の水晶に手を触れていた。
『武芸大会に関する、諸評価』
 と題された文言の下には、見たことのないほどの文字量が投影されている。
『あの飛竜で乱入して剣投げ込んだのって、規則違反だろ?』
 それが話題の中心だった。
『あらゆる武器使用が自由だから、なしってわけでもなくね?』
『最初から剣持ってたんなら別だけど、協力者が居るってのが不味いでしょ』
『規則違反なら、対戦相手の方がヤベェって。ミシュアを殺そうとしてたしょ、明らかに』
『もっというとさ、立会人もヤバかったしょ? ミシュアの剣、折れたのに止めないとか』
『規則違反に規則違反で勝って、それで良し? 無効試合でしょ』
『……確かにな。なんで、そうならなかった?』
『現場としては、対戦相手の負けっぷりが面白かったからかな~観客のノリで流れた』
『お前、居たの?』
『ああ、イケメンハゲ団長、見られて面白かった』
『まぁ、格好良かったしね~ミシュア』
 などと、文言が入り乱れて盛り上がってはいる……そんな水晶から、少女は手を離す。

(最終試合の振り返りに、みんなズレ始めてる……なら、)

 少女は思い、知り得ていたことを脳裏に描き、また水晶に触れた。
『乱入者の正体……ギレイ=アド。スリースター刀工』
 その文言を投影させると、食いついてくる者が増える……少女は淡々と、続ける。
『ギレイ=アドはリュッセンベルク都市に入る際、衛兵の許可を得ていない』
 文言の下ではようやく、情報の裏を取る人々が現れ始めた――少女は淡々と、続ける。
『ギレイ=アドは武芸大会に投下した剣にはルーキュルクギルドの魔法特許技術……古代レンギレ文字の刻印による強度付与であると目される。魔法特許侵害の可能性あり』

 少女は水晶から手を離す。
(ここまで情報を放り込めば……みんなが勝手に調べ始める。身分評議会では剣なんかよりも、みんなが気に食わない事実を投げ入れればいい)
 下らないことを思ってしまったと、少女は静かにため息をついた。
 そのまま、しばらく水晶を見つめていた少女は、身分評議会が自分の狙った以上の結論に達したことに、もう一つため息をついて、寝ることにした。

 一つ、ギレイ=アドの刀工の位を剥奪する。
 一つ、ミシュア=ヴァレルノの位はフィフス・スターに昇格。
    しかし、その条件は刀工をルーキュルクギルドとすること。

 身分評議会の、それが結論だった。
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