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宮城旭
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しばらく下半身丸出しでソファに脱力していた栄智は、のそりと起き上がるとパンツだけ履き、ソファに腰掛け直す。氷がすっかり溶けて薄くなったコーラを不味そうに飲んで、ポッキーを食べている俺に視線を移した。何か言いたげな目を、俺も見つめ返す。
「…………旭さんって、俺のこと好きなんすか」
「ゲッホ!!!え!?なに、なんで!?今さら聞く!?」
俺は愛しい恋人にその関係の根幹を揺るがす問いを投げかけられ、ここ最近で1番大きい声を出した。俺のリアクションを見る冷めた目に、さっきのセックスに愛がなかったと思われたのかと猛省して栄智の肩を掴む。
「尿道いじったのそんなに嫌だった……!?悪い、それはホントにごめん、でもつい栄智が可愛くて、だから尿道は──」
「っ、それはもういい!……真剣に、マジで、どう思ってんのか聞いてるんです。正直この関係って俺が旭さんに付き合わせてるだけですよね。だから、セフレならそろそろ、そう言ってもらいた──」
「待て待て!んなわけないでしょ、付き合おうってなってから別れ話なんてした?してないよな?つまりお互い好きで付き合い続けてるわけじゃん」
「いやでも。だって、言われたことないし。旭さんから好きとか、一言も……」
栄智は消えそうな声で言って、顔を真っ赤にした。
それを見て(かわいい……)というところで思考が停止しそうになるが、俺は頑張って頭を動かした。もしかして、俺って1度も栄智に好きって言ってないんだっけ。思い出そうとしても何も思い出せない。可愛いと言うだけ言って満足してしまっていたらしい事実を認識し、冷や汗が出る。
「……確かに、言ったことない、かも」
「だからないっすよ。俺が言うんだから本当にない」
赤い顔のまま、栄智はふいと横を向いて顔をしかめた。そこに不機嫌を装った悲しみが見えてしまって、いじらしさと己の罪悪感で心臓が締まる。ダメな自分を殴りそうになった手をどうにか諫めて、その勢いで俺は力の限り栄智を抱きしめた。
「っごめん!好きだよ!栄智大好き!可愛い、好き!」
「いった!おい、力強すぎ……!」
離れろと暴れる栄智から離れる気はなく、俺は負けじと頭を撫でてあやした。抵抗は弱まったものの、まだムッとしている目を見つめて「ほんとに好き」と伝える。
「好きだから、別れる気もセフレになる気もない。嫌いにならないで、お願い。愛してるよ」
頬に手を添えてお願いすると、栄智からやっと不機嫌と悲しみが消えていく。残ったのは赤い顔だけだ。
「……そうですか。わかりました」
「え、それだけ?」
「なにが」
「俺はこんなに愛を囁いたのに、それだけ?俺も聞きたいな~栄智の気持ち」
「っ、知ってるだろ、そんなの……」
「言わないならキスするぞ、おら」
顎を掴んで脅すと、怒るかと思った栄智は少し目を大きくしてからそらした。
「……じゃあ、言わないですけど」
赤らめた頬を隠しもせずに言う。それだけで俺を倒すには十分だった。もっと構おうと思っていたのに、そんな目論見は霧散した。
「あぁ~……これは完全に俺の負けです。負けました」
「うん。俺の勝ち」
栄智は俺を見てから目を閉じた。普段の素直になり切れない空気がない。好きだと言われたことへの安堵が、彼を素直にさせているのが伝わってきて、俺はまた心臓が締まった。
そっと触れるだけのキスをして、おでこをくっつける。
「好きだよ、栄智」
「……俺も、好きです」
囁くと恥じらいの声が返ってくる。これからは毎日好きって言おうと誓いながら、俺はもう1度唇を重ねた。
おわり
「…………旭さんって、俺のこと好きなんすか」
「ゲッホ!!!え!?なに、なんで!?今さら聞く!?」
俺は愛しい恋人にその関係の根幹を揺るがす問いを投げかけられ、ここ最近で1番大きい声を出した。俺のリアクションを見る冷めた目に、さっきのセックスに愛がなかったと思われたのかと猛省して栄智の肩を掴む。
「尿道いじったのそんなに嫌だった……!?悪い、それはホントにごめん、でもつい栄智が可愛くて、だから尿道は──」
「っ、それはもういい!……真剣に、マジで、どう思ってんのか聞いてるんです。正直この関係って俺が旭さんに付き合わせてるだけですよね。だから、セフレならそろそろ、そう言ってもらいた──」
「待て待て!んなわけないでしょ、付き合おうってなってから別れ話なんてした?してないよな?つまりお互い好きで付き合い続けてるわけじゃん」
「いやでも。だって、言われたことないし。旭さんから好きとか、一言も……」
栄智は消えそうな声で言って、顔を真っ赤にした。
それを見て(かわいい……)というところで思考が停止しそうになるが、俺は頑張って頭を動かした。もしかして、俺って1度も栄智に好きって言ってないんだっけ。思い出そうとしても何も思い出せない。可愛いと言うだけ言って満足してしまっていたらしい事実を認識し、冷や汗が出る。
「……確かに、言ったことない、かも」
「だからないっすよ。俺が言うんだから本当にない」
赤い顔のまま、栄智はふいと横を向いて顔をしかめた。そこに不機嫌を装った悲しみが見えてしまって、いじらしさと己の罪悪感で心臓が締まる。ダメな自分を殴りそうになった手をどうにか諫めて、その勢いで俺は力の限り栄智を抱きしめた。
「っごめん!好きだよ!栄智大好き!可愛い、好き!」
「いった!おい、力強すぎ……!」
離れろと暴れる栄智から離れる気はなく、俺は負けじと頭を撫でてあやした。抵抗は弱まったものの、まだムッとしている目を見つめて「ほんとに好き」と伝える。
「好きだから、別れる気もセフレになる気もない。嫌いにならないで、お願い。愛してるよ」
頬に手を添えてお願いすると、栄智からやっと不機嫌と悲しみが消えていく。残ったのは赤い顔だけだ。
「……そうですか。わかりました」
「え、それだけ?」
「なにが」
「俺はこんなに愛を囁いたのに、それだけ?俺も聞きたいな~栄智の気持ち」
「っ、知ってるだろ、そんなの……」
「言わないならキスするぞ、おら」
顎を掴んで脅すと、怒るかと思った栄智は少し目を大きくしてからそらした。
「……じゃあ、言わないですけど」
赤らめた頬を隠しもせずに言う。それだけで俺を倒すには十分だった。もっと構おうと思っていたのに、そんな目論見は霧散した。
「あぁ~……これは完全に俺の負けです。負けました」
「うん。俺の勝ち」
栄智は俺を見てから目を閉じた。普段の素直になり切れない空気がない。好きだと言われたことへの安堵が、彼を素直にさせているのが伝わってきて、俺はまた心臓が締まった。
そっと触れるだけのキスをして、おでこをくっつける。
「好きだよ、栄智」
「……俺も、好きです」
囁くと恥じらいの声が返ってくる。これからは毎日好きって言おうと誓いながら、俺はもう1度唇を重ねた。
おわり
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面白かったです!!!
栄智くんが健気で素直で可愛いすぎます!!🥰
旭さん、あっと言う間に絆されたダメダメリーマンだけど、栄智くんの事は本当に大好きなんですね😊恋人になってからは栄智くんが男前でかっこいいです🥰惚れます!!
ありがとうございました!!
わ~嬉しい感想をありがとうございます!;;お楽しみいただけたなら幸いです!!mm