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付き添い
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「え、えーと。応募者はどちらかな?」
王は戸惑いの表情を見せながら言った。
今王の目の前には二人の人物が頭を下げているからである。
「少年の方が今回の応募者です、王様」
大臣が王に教えたり
「そ、そうであったか。それでは双方、頭をあげよ」
戸惑いは消えないまま王は言った。
「それでは応募者の方はお名前をお願いします」
大臣は言った。
「はい……。名前はマ、マルクです」
か細く今にも消えそうな声で少年は言った。
「ありがとうございます。それでは」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。なんかこのまま進みそうだから聞くがこの応募者の隣の者は誰なんだ?」
大臣の進行を遮る形で王は尋ねた。
「失礼しました。彼女はこのマルクさんのお母様です。どうしても心配でとのことで特別に同席を許可致しました」
大臣は答えた。
「そ、そうか」
王は未だ疑問が晴れない様子だった。
「ではマルクさん。今回応募に至った理由をお聞かせください」
大臣は聞いた。
「え、えっと……」
マルクは下を向いてしまい言葉が出ない様子だ。
「オホン。それは私から説明してもよろしいかしら?」
マルクの母親は言った。
「私の夫は有名な銀行員でとても優秀な成績を収めてますのその夫と私の息子であるこの子ならきっと代々語り継がれるような最高の勇者になれますわ。実際いつも学校のテストも一位ですもの。こんな頭脳明晰な子が勇者になれないわけないですものね。だから今回応募させて頂きましたのよ。オホホホ」
高飛車な女は高飛車な声を出した。
「なるほど。おっしゃる通りかもしれませんね。私からは以上ですが王様何かございますか?」
「いや、あるにはあるがなんじゃかいつもとテンポが違わないかの?」
王はトントン拍子で疑問もなく進める大臣を不思議に思っていた。
「そんなことはありませんよ。さあ王様、よろしくお願いします」
大臣は再度言った。
「んー、まずはマルク君と言ったかな。君は学校で武術とかは習っているのかの?」
王は尋ねた。
「この子は元々病弱で武術の時はいつも見学させているんです。それが何か問題ございますこと?」
母親は子に話をさせる前に自ら話し始めた。
「ああ、いや、わしは彼に話を聞こうとしたんじゃが。もちろん頭が良いのはよろしいが勇者となったら魔物と当然戦う必要がある。じゃから力もないとなれないと思うんじゃよ。だから尋ねさせてもらったんじゃ」
王は言った。
「ふん。力だけの馬鹿なんて他にたくさんいますでしょ。魔物と戦うのはそういう人に任せてマルクちゃんがその頭脳で指示を出せば良いんでなくって?」
母親はきつい目で王を睨んだ。
「任せっきりだと仲間との信頼関係も生まれず上手くやれんと思うんじゃが。それに先程から話をしてるのはお母さんばかりでマルク君からは何も聞けていないんじゃが。自分の意思を伝えられんようなら戦いの指示も出せんと思うがいかがかな?」
王は怯まず言った。
「なんて失礼な。マルクちゃん、王様のお望み通り言ってやんなさい。勇者に相応しいのは自分だって!」
母親はややヒステリックに言ったり
「ぼ、僕は……」
マルクは口を動かした。
「ふむ。どうなんじゃ。ゆっくり話して構わんぞ」
王は先程母親に向けた強い視線ではなく優しい目で少年を見た。
「僕は学者になりたいんだ。勇者なんてなれないよ」
マルクは微かな声で言った。
母親は唖然とし言葉が出ない様子だった。
「よく言えたの。ほれ、彼は学者になりたいという立派な夢がある。それを親のエゴで捻じ曲げることは許されんことじゃ。違うかの?」
今度は母親に言った。
「もう良いわ。ほんとにどうしようもない王様だこと。そんなこと言われるくらいならこっちから願い下げだわ。行きましょ、マルクちゃん!」
母親は体を震わせながら言った後、マルクの手を引き玉座の間を後にした。
「ふう……」
大臣は緊張の輪が解けたようにホッとため息をついた。
「のう、大臣よ。今回はいつもの大臣らしくなく見えたが」
王は言った。
「あの手の母親は一度炎上すると何をするかが分かりませんからな。なるべく刺激しないようにしていたのですが」
大臣は答えた。
「最近よく聞くモンスターペアレントとかいう奴かの。ではわしの話し方は大臣にとっては良くなかったということか?」
王は聞いた。
「いえ、そんなことはございません。私も同じことを考えておりましたから。子供の夢を親が無下に摘み取ることはあってはなりませんからな。今回の王は素晴らしかったですよ」
「今回はということはいつもは至らない王ということか?」
王は大臣に言った。
「あ、いやそういう訳では。そ、それより結果は如何様にしましょう?」
大臣は焦った様子だ。
「はっはっは。冗談じゃよ。そうじゃな、自分から応募を取り下げるようなことを言っておったし特に通知もしなくて良いのではないかな。あの手のタイプは変に刺激をしても良くないんじゃろ?」
先程の大臣の台詞を借りて王は言った。
「そうですね。ではそのまま何もなかったと言うことで。ところで次の応募者の到着ですが遅れるため翌日にしたいとのことですがよろしいでしょうか?」
大臣は確認した。
「ふむ。仕方あるまい。では本日のオーディションは終いじゃな」
「はい。ではお食事の準備が整いますので食堂までどうぞ」
大臣と王は玉座の間を後にした。
王は戸惑いの表情を見せながら言った。
今王の目の前には二人の人物が頭を下げているからである。
「少年の方が今回の応募者です、王様」
大臣が王に教えたり
「そ、そうであったか。それでは双方、頭をあげよ」
戸惑いは消えないまま王は言った。
「それでは応募者の方はお名前をお願いします」
大臣は言った。
「はい……。名前はマ、マルクです」
か細く今にも消えそうな声で少年は言った。
「ありがとうございます。それでは」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。なんかこのまま進みそうだから聞くがこの応募者の隣の者は誰なんだ?」
大臣の進行を遮る形で王は尋ねた。
「失礼しました。彼女はこのマルクさんのお母様です。どうしても心配でとのことで特別に同席を許可致しました」
大臣は答えた。
「そ、そうか」
王は未だ疑問が晴れない様子だった。
「ではマルクさん。今回応募に至った理由をお聞かせください」
大臣は聞いた。
「え、えっと……」
マルクは下を向いてしまい言葉が出ない様子だ。
「オホン。それは私から説明してもよろしいかしら?」
マルクの母親は言った。
「私の夫は有名な銀行員でとても優秀な成績を収めてますのその夫と私の息子であるこの子ならきっと代々語り継がれるような最高の勇者になれますわ。実際いつも学校のテストも一位ですもの。こんな頭脳明晰な子が勇者になれないわけないですものね。だから今回応募させて頂きましたのよ。オホホホ」
高飛車な女は高飛車な声を出した。
「なるほど。おっしゃる通りかもしれませんね。私からは以上ですが王様何かございますか?」
「いや、あるにはあるがなんじゃかいつもとテンポが違わないかの?」
王はトントン拍子で疑問もなく進める大臣を不思議に思っていた。
「そんなことはありませんよ。さあ王様、よろしくお願いします」
大臣は再度言った。
「んー、まずはマルク君と言ったかな。君は学校で武術とかは習っているのかの?」
王は尋ねた。
「この子は元々病弱で武術の時はいつも見学させているんです。それが何か問題ございますこと?」
母親は子に話をさせる前に自ら話し始めた。
「ああ、いや、わしは彼に話を聞こうとしたんじゃが。もちろん頭が良いのはよろしいが勇者となったら魔物と当然戦う必要がある。じゃから力もないとなれないと思うんじゃよ。だから尋ねさせてもらったんじゃ」
王は言った。
「ふん。力だけの馬鹿なんて他にたくさんいますでしょ。魔物と戦うのはそういう人に任せてマルクちゃんがその頭脳で指示を出せば良いんでなくって?」
母親はきつい目で王を睨んだ。
「任せっきりだと仲間との信頼関係も生まれず上手くやれんと思うんじゃが。それに先程から話をしてるのはお母さんばかりでマルク君からは何も聞けていないんじゃが。自分の意思を伝えられんようなら戦いの指示も出せんと思うがいかがかな?」
王は怯まず言った。
「なんて失礼な。マルクちゃん、王様のお望み通り言ってやんなさい。勇者に相応しいのは自分だって!」
母親はややヒステリックに言ったり
「ぼ、僕は……」
マルクは口を動かした。
「ふむ。どうなんじゃ。ゆっくり話して構わんぞ」
王は先程母親に向けた強い視線ではなく優しい目で少年を見た。
「僕は学者になりたいんだ。勇者なんてなれないよ」
マルクは微かな声で言った。
母親は唖然とし言葉が出ない様子だった。
「よく言えたの。ほれ、彼は学者になりたいという立派な夢がある。それを親のエゴで捻じ曲げることは許されんことじゃ。違うかの?」
今度は母親に言った。
「もう良いわ。ほんとにどうしようもない王様だこと。そんなこと言われるくらいならこっちから願い下げだわ。行きましょ、マルクちゃん!」
母親は体を震わせながら言った後、マルクの手を引き玉座の間を後にした。
「ふう……」
大臣は緊張の輪が解けたようにホッとため息をついた。
「のう、大臣よ。今回はいつもの大臣らしくなく見えたが」
王は言った。
「あの手の母親は一度炎上すると何をするかが分かりませんからな。なるべく刺激しないようにしていたのですが」
大臣は答えた。
「最近よく聞くモンスターペアレントとかいう奴かの。ではわしの話し方は大臣にとっては良くなかったということか?」
王は聞いた。
「いえ、そんなことはございません。私も同じことを考えておりましたから。子供の夢を親が無下に摘み取ることはあってはなりませんからな。今回の王は素晴らしかったですよ」
「今回はということはいつもは至らない王ということか?」
王は大臣に言った。
「あ、いやそういう訳では。そ、それより結果は如何様にしましょう?」
大臣は焦った様子だ。
「はっはっは。冗談じゃよ。そうじゃな、自分から応募を取り下げるようなことを言っておったし特に通知もしなくて良いのではないかな。あの手のタイプは変に刺激をしても良くないんじゃろ?」
先程の大臣の台詞を借りて王は言った。
「そうですね。ではそのまま何もなかったと言うことで。ところで次の応募者の到着ですが遅れるため翌日にしたいとのことですがよろしいでしょうか?」
大臣は確認した。
「ふむ。仕方あるまい。では本日のオーディションは終いじゃな」
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