エテルノ・レガーメ2

りくあ

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第6章:忍び寄る闇

第73話

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「手合わせ、ありがとうございました。」

あれから毎日、レヴィとの剣の稽古は続いた。今度はルドルフではなく、僕が彼の相手をしている。

「日に日に動きが良くなってる気がするよ。もうルドルフじゃ勝てないかも。」
「おい。やってもいないのに勝手に決めつけるな。」
「やらなくてもわかるよ。そのくらいレヴィは頑張ってるもん。」
「俺様が頑張っていないといいたいのか?」
「あー…そう言っているように聞こえちゃった?」
「貴様…。」
「な、仲がいいんですね…。」
「レヴィもそう思う?僕達、何だかんだ気が合うと思うんだ。」
「貴様の気の所為だ。勘違いするな。」
「もー。照れなくたっていい…」
「おーい!レヴィー!フランー!帰ろうぜー!」

スレイに呼ばれ、僕達は稽古を切り上げて家へ帰る事にした。

「稽古を付けてくれるだけじゃなく、食事の手伝いまでして下さってありがとうございます。」
「いいよいいよ。僕もレヴィに料理の稽古を付けてもらってる気持ちでやってるから、お互い様ってやつだね。」

研究所でゼノの手伝いをするのと同時に、夕飯を作るレヴィの手伝いをするようになった。作業は順調に進み、明日の朝に再び鉱山へと出発する予定だ。

「いよいよ明日だね!」
「うん。準備は万全だし、今度こそ鉱石を入手したいね。」
「ゼノとマコが付いてくるってのはちょっと心配だけど…。人数が増えれば、その分早く見つかるだろうしね。」
「大丈夫ですよ。2人の事は僕がちゃんとみてますから。」
「へへ。レヴィが頼もしくて助かるぜ!」
「それはそうと兄さん。明日は早く起きてくださいね?寝坊したら置いていきますよ。」
「えー!やだやだー!叩き起してもいいから、置いてかないでよー。」
「あはは。これじゃあ、どっちがお兄さんかわからないね。」

数人で食卓を囲んで団欒するのはいつぶりだろうか。吸血鬼の領土にいた頃は、ララさんやユノさんと食事を共にすることはあったが、気兼ねなく食事を楽しむ事は少なかった。
僕はこの貴重な機会と時間を噛み締めながら、夜を迎えた。



「おお~。ここが例の洞窟ッスか~。」
「ここまで来るのに疲れたでしょうから、中に入るのは明日にしましょう。」
「はぁ~い。」
「じゃあまた、テントはフランにお願いするとして…。2人もフランの手伝いをお願いできる?俺とレヴィは食材を取ってくるからさ。」
「わかったッス。2人共、気をつけるッスよ。」
「熊さんによろしくねぇ~。」
「いやいや…よろしくはしたくないよ…。」
「それでは行ってきます。」

残された僕達は、テントの設営を始めた。前回は1つあれば十分だったが、今回は人数が多い事から2つのテントを設営する事になる。
テントの設営に不慣れな2人にやり方を教えながら、作業を進めた。

「みんなただいまー。」

設営を終えて時間が出来たので、枝を集めて火起こしをしていると、スレイとレヴィの2人が戻ってきた。

「おかえりッス。食材、取れたッスか?」
「うん!大量大量~。」
「わぁ~。こんなに沢山のお魚、どうしたのぉ?」
「へへ。俺、素潜りは昔から得意でさ!レヴィと一緒にやれば、こんなの朝飯前よ!」
「厳密には夕食前だけどねぇ~。」
「こ、細かい事はいいの!」
「テントだけじゃなく焚き火まで…さすがフランさんは多彩ですね。」
「騎士学校で散々やらされたからね。野営は慣れたもんだよ。」
「俺、野営なんてした事なかったッスから、ちょっと不安だったんッスけど…。フランがいれば心強いッス!」
「あたしもあたしも~。」
「料理の腕はレヴィに負けちゃうけどね。」
「ふふ。ここは僕の腕の見せどころですね。魚の処理は僕がやるので、手伝って貰えますか?」
「あ、処理の仕方…僕もやってみたいな。」
「あたしも手伝うよぉ~。」
「マコは見てるだけにした方がいいッス。俺等と大人しく待ってるッスよ。」
「そんな事ないし~。串に指して焼くぐらいは出来るし~。」
「俺だってそれくらい出来るぜ!」
「串に指すくらいで張り合わないで欲しいッス…。」

こうして僕達は和気あいあいと食事の準備をし、鉱山探索1日目を終えたのだった。



「ここからは俺の出番ッスね。」

翌日。洞窟探索に向けて、意気揚々と鞄を漁り始めた。

「あ、これ、僕達が手伝ったやつ?」
「そうッス!名付けて…」
「名前はなんでもいいから早く行こうぜ。」
「わ、わかったッスよ!それじゃあ…スイッチオンッス!」

顔と同じくらいの大きさの機械が、彼の合図と共に前へ進み始めた。前方にはライトが取り付けてあって、暗い洞窟の中を明るく照らす。
機械の進む先へ歩みだしたゼノの後を追いかけ、僕達は洞窟へと足を踏み入れた。

「明るくするだけなら、別に機械じゃなくても良かったんじゃ…。」
「明るくするだけだと、なめてもらっちゃ困るッスね。なんと!洞窟探索に役立つ、多数の機能を持ち合わせてるッス!」
「明るくする他にどんな事が出来るの?」
「金属や鉱石が近くにあると、音を立てて反応してくれる金属探知の機能があるッス。あと、万が一水中に落ちても大丈夫なように、防水対策もばっちりッスよ。」
「水があるかどうかはわからないですけど…。誤って崖下に落ちるなんて事はないんですか?」
「そこは心配ご無用ッス。見た目だけじゃなく、耐久性もしっかりしてるッスから、崖から落ちても壊れる心配がないッス。」
「いくら耐久性があるからって、高い崖だったら流石に…。」
「俺の計算では、100m下に落ちても問題なかったッスよ。」
「えっ!そんなに!?」
「これは頼もしい相棒だね。」
「ふふん。俺の最高傑作ッスからね!」

自分が手掛けた機械が褒められ、彼は得意げに鼻を鳴らした。
すると、前方をゆっくり進んでいた機械が音を立ててその場に止まった。

「ん?なんだ?」
「あ、もしかして…鉱石を見つけたとかぁ?」
「む…これは…。」

機械のすぐ側に落ちていた小さな石を持ち上げた彼は、ライトに照らして目を凝らした。全体的に黒っぽい色をしていて、ゴツゴツとしている。

「ただの石ころッスね。」
「え?でもさっき、金属や鉱石に反応して音を出すって…。」
「誤作動かもしれないッス。ま、仮に金属だったとしても、俺達が探してる物とは別物みたいッスよ?」
「そっかー…残念。」
「もしかしたら金属かもしれないんだよねぇ?あたし、もらってもいいー?」
「別に構わないッスよ。」
「やったぁー!」

彼女は黒い石を受け取ると、大事そうに上着のポケットにしまい込んだ。

「さてと…。もっと奥まで進んでみるッスかね。」
「だいぶ奥まで来ましたけど…引き返さなくて大丈夫でしょうか?」
「ほぼ一本道だったし、まだそんなに時間も経ってないと思うよ。」
「レヴィは心配性だからなぁ~。そんな心配しなくたって大丈夫だって!」
「わ、わかりました…。みんながそう言うなら…。」

彼の心配を他所に、僕達は更に奥を目指して進み出した。
それから何度かゼノの機械は音を発するが、どれも目的の鉱石ではなかった。半ば諦めかけた頃、僕達に思いもよらぬ悲劇が起こった。

「わっ!な、なに!?」

ゴゴゴという地鳴りと共に、地面が揺れるような感覚がした。すると、洞窟の天井部分の岩が崩れ、こちらに向かって転がり落ちて来た。

「マコ!」

僕は彼女を突き飛ばし、落石から逃れようとした。しかし、砕けた落石の破片が足首に当たったらしく、彼女の表情は苦渋の色を浮かべていた。

「痛ったぁ…。」
「マコさん!大丈夫ですか!?」
「小さかったからそんなでも無いけど…ちょっと立てないかもぉ…。」
「僕が背負うよ!ゼノ。一旦捜索は打ち切って、洞窟を出よう。」
「わ、わかったッス!」

急いで洞窟を出ると、僕は彼女をテントの中へ運び込んだ。

「岩が足に当たったんだよね?どの辺が痛む?」
「うーん…。この辺かなぁ…。」
「ルドルフ。治癒を頼むよ。」

俺はフランに言われた通り、女の足首に治癒魔法を唱えた。

「治療はしたが、動くなら明日にしろ。」
「まさか、吸血鬼の彼に治してもらえるなんて思ってなかったよぉ。」
「俺様の治療は高くつくぞ?」
「ちょっとルドルフ。マコに変な事言わな…」
「何の音だ?」
「え?」

ルドルフは、首をかしげながらマコに問いかけた。

「音?何か聞こえるのぉ?」
「そうか。貴様等の耳では聞こえんか。」
「もう…吸血鬼自慢はいいから、どんな音が聞こえるのか教えてよ。」
「キリキリと金属が擦れるような音だ。女の近くから聞こえる。」
「え?あたしぃ?」

彼女は黙りこみ、耳を澄ませている。

「うーん。聞こえないねぇ。」
「金属…。もしかして、さっきマコがポケットに入れた石…とか?」
「これ?」

女の手から石を掴み取ると、耳元に近付ける。微かではあるが、先程聞き取った音が聞こえてきた。

「これだな。」
「へぇ~。ゼノはただの石だって言ってたけど、音が鳴る石なんて珍しいよね。」
「あれぇ?確か、あたし達が探してる石って、魔力を込めると共鳴するんだったよねぇ?その音、もしかして共鳴してる音だったりしてぇ。」
「え?でも、石に触れたのはついさっきだよ?魔力を込めた覚えはないけど…。」
「試してみるか。」

俺は石を握りしめ、光の魔法を唱えた。テントの中が、一瞬にして光に包まれる。手に握られた石はボロボロと崩れ落ち、中から緑色の綺麗な宝石が姿を現した。

「わぁ!すんごくきれぇい!」
「これ、資料に載ってた鉱石だよ!やっぱりこれがそうだったんだ!」
「ゼノゼノー!鉱石見つけたよぉー!」

僕達はまさかの方法で見つかった鉱石を手に、プラニナタへと帰って行った。
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