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第1章︰騎士の道
第5話
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「おはよーシュー。」
「お、おはよう…フランさん。」
教室にやって来た僕は、席に座って教本を読んでいるシューと挨拶を交わした。前髪を短くした影響か、彼の表情が明るくなったように見える。
「やっぱり、思い切って髪を切ってよかったよ~。こっちの方がシューに似合ってるもん。」
「そ、そう…?」
「うん。大丈夫、自信持っていいよ。」
「あ…ありがとう…。」
「じゃあまた、休憩時間にこっち来るね。」
彼の元を離れて自分の席へ向かうと、隣の席に座るニアと挨拶を交わした。
「あ、そうそう…さっき、クラスの女子がシュティレに話しかけてるのを見たわ。」
「そうなの?週番の子が課題を回収してたとか?」
「いいえ。あの子は週番じゃないはずよ。」
「それなら何の用事だったんだろう?」
「あ…!ほら見て!さっきとは別の子だけど、またシュティレに話しかけてる生徒が…」
ニアの視線の先に、彼に話しかけている2人組の女子生徒の姿があった。
「ほんとだ…。何の話をしてるんだろうね…?」
「ん…?何か受け取ってるわね。」
「なんだろう…袋?みたいだけど。」
「ここからじゃよくわからないわね…。後でシュティレから、話を聞いてみましょ。」
1つ目の講義を終え、僕達は真っ先に彼の元へ向かった。
「ちょっとシュティレ。あんた、講義が始まる前に女の子達から何か貰ってなかった?」
「え?あ、あぁ…あれは…。」
彼は机の脇にぶら下がった鞄から、小さな小袋を取り出した。
「それ…お菓子の袋?」
「うん…。よくわからないけど…くれるって言うからもらったんだ…。」
「へ、へぇ~…。よくわからないけど…貰ったと…。」
「だ…駄目…だったかな?」
「駄目って事ないけど…本当に、貰った理由を聞いてないの?」
「え?う、うん…。」
「どうかした?ニア…」
「…別になんでもないわ。次の講義は別の教室だから、早めに移動しましょ?」
「あーうん…そうだね。」
それから数日が経ち、夕飯を食べ終えて部屋でくつろぐ僕の元にシューがやって来た。
「こんな時間にどうしたの?」
「実は…その…。相談したい事が…。」
「相談?」
すると彼は、持っていた手提げ袋の中から数枚の封筒を取り出した。
「最近、部屋の郵便受けにこういうのが届くようになって…。」
「これ…手紙だよね?」
「うん。差出人の名前はあるんだけど…よく知らない人からも送られてくるんだ…。」
封筒の裏面を見てみると、確かにそこには差出人の名前が記されていた。それはどれも別の人物から送られた物で、特に変わった様子は見られない。
「同じ人から何通も…って訳でもないんだね。これのどこが問題なの?」
「問題なのは…手紙の内容で…。」
「見てもいい?」
「う、うん…。」
掴んだ封筒の中から紙を取り出すと、書かれた文字を目で追いかけた。
そこには、シューに対する差出人の想いが綴られていている。他の手紙にも目を通すが、どれも同じような内容が記されていた。
「…ラ…さん?あの…フランさん…!」
「へ?あ…ごめんごめん。えっと…シューが相談したいのは、具体的にどういう事?」
「えっと…こういう手紙を貰った事がないから…どうしていいかわからなくて…。」
「ごめんシュー…。僕にもどうしたらいいのか…よくわからないや。」
「そ、そっか…。」
「あ…そうだ…!ニアに相談してみるのはどうかな?」
「お、怒ったり…しないかな?」
「僕からもお願いしてみるから、今から部屋に行ってみようよ。まだ起きてると思うし。」
「う、うん…。」
少々気が進まない様子の彼を引き連れ、階段を上ってニアの部屋へと向かった。
「一体何の用?」
「ごめんねニア。ちょっと相談したい事があるんだ。部屋に入ってもいい?」
「しょうがないわね…。手短に頼むわよ?」
部屋の中に招き入れられた僕達は、先程の話を彼女に伝えた。
「ふぅん…。最近になって、ラブレターが届くようになったのね。」
「…ラブレターって何?」
「こういう手紙の事よ。あんた…知らないの?」
「そう言われても…貰った事がないから知らないよ。」
「へぇ~…意外ね。」
「え?どういう意味?」
「まぁ…今はそんな事どうでもいいわね。それより、これのどこが相談なのよ。」
「それはさっき話したでしょ?こういう手紙を貰った時、どうし…」
「手紙を貰ったからって、別に何もする必要はないわよ。どこかに呼び出されたならともかく…。」
「あ…!それなんだけど…。この手紙をくれた人が、訓練場の裏に…来るようにって書いてて…。」
「それを早く言いなさいよ!見せて。」
彼女は声を荒らげ、彼の手から奪い取るように手紙を掴んだ。
「…それで、実際に彼女とは会ったの?」
「う、うん…。それで…付き合ってください…って言われて…。」
「ちょっと!ラブレターを貰ってる事よりも、告白された事の方が重要じゃないの!」
「そ、それも相談するつもりで…!」
「付き合うってどこに?あ、もしかして、シューと一緒に訓練したいってこ…」
「ちょっとあんたは黙ってなさい。…で?何て返事したの?」
「そ…れが…分からなくて…。しばらく…考えさせて欲しいって…。」
「何悠長な事言ってんのよ!せっかくあんたの事を好きだって言ってくれる子がいるのに!」
「そ、そう言われても…!付き合うなんて…考えた事がなくて…。」
2人は何やら揉めている様子だが、一体何の話をしているのか…僕にはさっぱりわからなかった。
その後2人の意見は1つにまとまり、彼に告白をしてきたパルフェという女子生徒から話を聞く事になった。
「あなたがパルフェ?」
「うん!私、パルフェ言います。」
翌日、僕とニアは1人の女子生徒に声をかけた。女の子にしては珍しい短髪で、その鮮やかな色を際立たせる褐色の肌が特徴的だ。
彼女も同じクラスの生徒で実際に会って話した事は無いが、独特な喋り方をする噂を耳にしていた。
「確か…パルフェって島国出身だったよね?」
「うん。王国大陸、北にある小さな島、生まれたの!」
「なるほど…。それで変な喋り方なのね。」
「話…なに?」
「あなた、シュティレに告白したのよね?その理由を聞いてもいいかしら?」
「告白…理由?あなた達に話す意味、わからない。」
「気を悪くしたならごめんね?僕達、シューと友達だから彼の事が心配なんだ。」
「私、不満…なの?」
「パルフェが不満なんじゃないよ。2人に仲良くしてもらいたくて、パルフェがどんな子なのか知りたいんだ。」
「私…知りたい?なら、手合わせする!それがいい。」
「て、手合わせ…?」
「それって、模擬戦でもしようって事?」
「そう!模擬戦、相手の力わかる。私の事知る、最適。」
「なら、今から訓練場に行って模擬戦をしよう。立ち会いは僕でも構わない?」
「えっ…あんたが相手をするんじゃないの?」
「相手は女の子だよ?それに、パルフェに話を聞こうって言ったのはニアでしょ?こういう話は僕じゃ分からないし…出来ればニアにお願いしたいな。」
「はぁ…めんどくさい事になったわね…。…わかったわ。」
「それじゃあ移動しようか。」
パルフェの提案で模擬戦をする事にした僕達は、訓練場へと足を運んだ。
「手合わせ願います。」
「…面倒だからさっさと終わらせてあげるわ。」
白い線が引かれたコートの中に足を踏み入れた両者は、お互いに向かい合い、木剣を構えた。
「致命傷を与えたと僕が判断したら、そこで終わりね。あまり時間が無いから、1本勝負でいいかな?」
「うん!異論、ない。」
「ええ。早く済ませましょ。」
「じゃあいくよ?よーい…始め!」
パン!と大きく手を叩くと、その音と共に両者が動き出した。
「てやぁ!」
ニアは両手で握りしめた木剣を、右から左へ打ち振った。
ーコォン!!!
建物内に、木剣同士がぶつかり合う音が響き渡った。剣を交えたまま両者は睨み合い、ニアの剣を受け止めたパルフェが彼女の身体を突き飛ばした。
「っ…!」
「てい!」
パルフェは素早く身体を回転させ、数歩後退したニアに木剣を振り下ろした。ニアは間一髪の所で身体をひねり、横方向に受け身を取った。
「…思ったより力あるのね。驚いたわ。」
「私の力、まだまだある。驚くの、まだ早い。」
「そうね…。さっさと終わらせようかと思ったけど、そうもいかないみたいね!」
再び距離を詰めた2人は、しばらくの間激しい攻防を繰り広げた。
「きゃ…!?」
攻防の最中、素早くしゃがみ込んだパルフェがニアの足首を蹴飛ばした。床に倒れ込んだニアの首元スレスレに、パルフェの剣が振り下ろされる。
「手元に集中、足元がら空き。」
「っ…これは1本取られたわね…。」
ゆっくりと身体を起こすニアに、彼女は手を差し伸べた。
「私の力、見せられた。いい試合、ありがと。」
「あんたがこんなに動けるとは思わなかったわ。完敗よ…。」
立ち上がったニアの元に、僕は小走りで駆け寄った。
「ニア…!身体は大丈夫?」
「これくらい平気よ。」
「ごめん…手加減出来なかった。怪我、ないか…見てもらった方がいいかも。」
「そうだよニア。まだメドゥ教官もいると思うから、一緒に保健室に…」
「わ、わかったわよ…!そこまで言うなら…一応行っておくわ。…これ、よろしく。」
彼女は木剣を僕に押し付け、足早に訓練場の出入りへと歩いて行った。
「あ、ちょっと…ニア…!…ごめんパルフェ。この話は、また明日改めてさせてくれる?」
「わかった!また明日ね。」
手を振る彼女に見送られ、ニアを追いかけて保健室へと向かった。幸い大した怪我にはならず、寮へ戻った僕達はシューと再び話し合う事にした。
翌日、彼はパルフェと付き合う事になり、彼の相談は無事に解決された。
「お、おはよう…フランさん。」
教室にやって来た僕は、席に座って教本を読んでいるシューと挨拶を交わした。前髪を短くした影響か、彼の表情が明るくなったように見える。
「やっぱり、思い切って髪を切ってよかったよ~。こっちの方がシューに似合ってるもん。」
「そ、そう…?」
「うん。大丈夫、自信持っていいよ。」
「あ…ありがとう…。」
「じゃあまた、休憩時間にこっち来るね。」
彼の元を離れて自分の席へ向かうと、隣の席に座るニアと挨拶を交わした。
「あ、そうそう…さっき、クラスの女子がシュティレに話しかけてるのを見たわ。」
「そうなの?週番の子が課題を回収してたとか?」
「いいえ。あの子は週番じゃないはずよ。」
「それなら何の用事だったんだろう?」
「あ…!ほら見て!さっきとは別の子だけど、またシュティレに話しかけてる生徒が…」
ニアの視線の先に、彼に話しかけている2人組の女子生徒の姿があった。
「ほんとだ…。何の話をしてるんだろうね…?」
「ん…?何か受け取ってるわね。」
「なんだろう…袋?みたいだけど。」
「ここからじゃよくわからないわね…。後でシュティレから、話を聞いてみましょ。」
1つ目の講義を終え、僕達は真っ先に彼の元へ向かった。
「ちょっとシュティレ。あんた、講義が始まる前に女の子達から何か貰ってなかった?」
「え?あ、あぁ…あれは…。」
彼は机の脇にぶら下がった鞄から、小さな小袋を取り出した。
「それ…お菓子の袋?」
「うん…。よくわからないけど…くれるって言うからもらったんだ…。」
「へ、へぇ~…。よくわからないけど…貰ったと…。」
「だ…駄目…だったかな?」
「駄目って事ないけど…本当に、貰った理由を聞いてないの?」
「え?う、うん…。」
「どうかした?ニア…」
「…別になんでもないわ。次の講義は別の教室だから、早めに移動しましょ?」
「あーうん…そうだね。」
それから数日が経ち、夕飯を食べ終えて部屋でくつろぐ僕の元にシューがやって来た。
「こんな時間にどうしたの?」
「実は…その…。相談したい事が…。」
「相談?」
すると彼は、持っていた手提げ袋の中から数枚の封筒を取り出した。
「最近、部屋の郵便受けにこういうのが届くようになって…。」
「これ…手紙だよね?」
「うん。差出人の名前はあるんだけど…よく知らない人からも送られてくるんだ…。」
封筒の裏面を見てみると、確かにそこには差出人の名前が記されていた。それはどれも別の人物から送られた物で、特に変わった様子は見られない。
「同じ人から何通も…って訳でもないんだね。これのどこが問題なの?」
「問題なのは…手紙の内容で…。」
「見てもいい?」
「う、うん…。」
掴んだ封筒の中から紙を取り出すと、書かれた文字を目で追いかけた。
そこには、シューに対する差出人の想いが綴られていている。他の手紙にも目を通すが、どれも同じような内容が記されていた。
「…ラ…さん?あの…フランさん…!」
「へ?あ…ごめんごめん。えっと…シューが相談したいのは、具体的にどういう事?」
「えっと…こういう手紙を貰った事がないから…どうしていいかわからなくて…。」
「ごめんシュー…。僕にもどうしたらいいのか…よくわからないや。」
「そ、そっか…。」
「あ…そうだ…!ニアに相談してみるのはどうかな?」
「お、怒ったり…しないかな?」
「僕からもお願いしてみるから、今から部屋に行ってみようよ。まだ起きてると思うし。」
「う、うん…。」
少々気が進まない様子の彼を引き連れ、階段を上ってニアの部屋へと向かった。
「一体何の用?」
「ごめんねニア。ちょっと相談したい事があるんだ。部屋に入ってもいい?」
「しょうがないわね…。手短に頼むわよ?」
部屋の中に招き入れられた僕達は、先程の話を彼女に伝えた。
「ふぅん…。最近になって、ラブレターが届くようになったのね。」
「…ラブレターって何?」
「こういう手紙の事よ。あんた…知らないの?」
「そう言われても…貰った事がないから知らないよ。」
「へぇ~…意外ね。」
「え?どういう意味?」
「まぁ…今はそんな事どうでもいいわね。それより、これのどこが相談なのよ。」
「それはさっき話したでしょ?こういう手紙を貰った時、どうし…」
「手紙を貰ったからって、別に何もする必要はないわよ。どこかに呼び出されたならともかく…。」
「あ…!それなんだけど…。この手紙をくれた人が、訓練場の裏に…来るようにって書いてて…。」
「それを早く言いなさいよ!見せて。」
彼女は声を荒らげ、彼の手から奪い取るように手紙を掴んだ。
「…それで、実際に彼女とは会ったの?」
「う、うん…。それで…付き合ってください…って言われて…。」
「ちょっと!ラブレターを貰ってる事よりも、告白された事の方が重要じゃないの!」
「そ、それも相談するつもりで…!」
「付き合うってどこに?あ、もしかして、シューと一緒に訓練したいってこ…」
「ちょっとあんたは黙ってなさい。…で?何て返事したの?」
「そ…れが…分からなくて…。しばらく…考えさせて欲しいって…。」
「何悠長な事言ってんのよ!せっかくあんたの事を好きだって言ってくれる子がいるのに!」
「そ、そう言われても…!付き合うなんて…考えた事がなくて…。」
2人は何やら揉めている様子だが、一体何の話をしているのか…僕にはさっぱりわからなかった。
その後2人の意見は1つにまとまり、彼に告白をしてきたパルフェという女子生徒から話を聞く事になった。
「あなたがパルフェ?」
「うん!私、パルフェ言います。」
翌日、僕とニアは1人の女子生徒に声をかけた。女の子にしては珍しい短髪で、その鮮やかな色を際立たせる褐色の肌が特徴的だ。
彼女も同じクラスの生徒で実際に会って話した事は無いが、独特な喋り方をする噂を耳にしていた。
「確か…パルフェって島国出身だったよね?」
「うん。王国大陸、北にある小さな島、生まれたの!」
「なるほど…。それで変な喋り方なのね。」
「話…なに?」
「あなた、シュティレに告白したのよね?その理由を聞いてもいいかしら?」
「告白…理由?あなた達に話す意味、わからない。」
「気を悪くしたならごめんね?僕達、シューと友達だから彼の事が心配なんだ。」
「私、不満…なの?」
「パルフェが不満なんじゃないよ。2人に仲良くしてもらいたくて、パルフェがどんな子なのか知りたいんだ。」
「私…知りたい?なら、手合わせする!それがいい。」
「て、手合わせ…?」
「それって、模擬戦でもしようって事?」
「そう!模擬戦、相手の力わかる。私の事知る、最適。」
「なら、今から訓練場に行って模擬戦をしよう。立ち会いは僕でも構わない?」
「えっ…あんたが相手をするんじゃないの?」
「相手は女の子だよ?それに、パルフェに話を聞こうって言ったのはニアでしょ?こういう話は僕じゃ分からないし…出来ればニアにお願いしたいな。」
「はぁ…めんどくさい事になったわね…。…わかったわ。」
「それじゃあ移動しようか。」
パルフェの提案で模擬戦をする事にした僕達は、訓練場へと足を運んだ。
「手合わせ願います。」
「…面倒だからさっさと終わらせてあげるわ。」
白い線が引かれたコートの中に足を踏み入れた両者は、お互いに向かい合い、木剣を構えた。
「致命傷を与えたと僕が判断したら、そこで終わりね。あまり時間が無いから、1本勝負でいいかな?」
「うん!異論、ない。」
「ええ。早く済ませましょ。」
「じゃあいくよ?よーい…始め!」
パン!と大きく手を叩くと、その音と共に両者が動き出した。
「てやぁ!」
ニアは両手で握りしめた木剣を、右から左へ打ち振った。
ーコォン!!!
建物内に、木剣同士がぶつかり合う音が響き渡った。剣を交えたまま両者は睨み合い、ニアの剣を受け止めたパルフェが彼女の身体を突き飛ばした。
「っ…!」
「てい!」
パルフェは素早く身体を回転させ、数歩後退したニアに木剣を振り下ろした。ニアは間一髪の所で身体をひねり、横方向に受け身を取った。
「…思ったより力あるのね。驚いたわ。」
「私の力、まだまだある。驚くの、まだ早い。」
「そうね…。さっさと終わらせようかと思ったけど、そうもいかないみたいね!」
再び距離を詰めた2人は、しばらくの間激しい攻防を繰り広げた。
「きゃ…!?」
攻防の最中、素早くしゃがみ込んだパルフェがニアの足首を蹴飛ばした。床に倒れ込んだニアの首元スレスレに、パルフェの剣が振り下ろされる。
「手元に集中、足元がら空き。」
「っ…これは1本取られたわね…。」
ゆっくりと身体を起こすニアに、彼女は手を差し伸べた。
「私の力、見せられた。いい試合、ありがと。」
「あんたがこんなに動けるとは思わなかったわ。完敗よ…。」
立ち上がったニアの元に、僕は小走りで駆け寄った。
「ニア…!身体は大丈夫?」
「これくらい平気よ。」
「ごめん…手加減出来なかった。怪我、ないか…見てもらった方がいいかも。」
「そうだよニア。まだメドゥ教官もいると思うから、一緒に保健室に…」
「わ、わかったわよ…!そこまで言うなら…一応行っておくわ。…これ、よろしく。」
彼女は木剣を僕に押し付け、足早に訓練場の出入りへと歩いて行った。
「あ、ちょっと…ニア…!…ごめんパルフェ。この話は、また明日改めてさせてくれる?」
「わかった!また明日ね。」
手を振る彼女に見送られ、ニアを追いかけて保健室へと向かった。幸い大した怪我にはならず、寮へ戻った僕達はシューと再び話し合う事にした。
翌日、彼はパルフェと付き合う事になり、彼の相談は無事に解決された。
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