エテルノ・レガーメ

りくあ

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第16章︰2人で

第149話

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「今日は転移魔法をやるぞ。」
「えっ!?」

数日経ったある日、突如部屋にやってきたヴェラが魔法の練習を申し出てきた。

「急ぎの仕事が無いから、いつも通り魔法の練習をするだけだ。何をそんなに驚いている?」
「いや…転移魔法って聞いてつい…。」
「前にも言ったが、もし失敗しても私が迎えに行く。そもそもルナやミグが居るのだから、記憶を失ったり知らない土地に飛んだとしてもなんとかなるわよ。それに…早めに教えておけば、後は自分のペースで練習出来ていいだろう?」
「それはそうだけど…心の準備が…。」

以前ルナが転移魔法“ヴァンデルン”に失敗し、カナ村へ飛ばされてしまった時の事が心のどこかで引っかかっていた。自分もそうなってしまったらどうしようという恐怖から、教わる事を躊躇っていたのだ。

「あまり渋っているようなら教えないわよ?私は面倒だから、それでも一向に構わ…」
「い、今からやろう…!天気もいいし、中庭でいいよね?…行こうヴェラ!」

彼女の背中を押し、勢いよく部屋を飛び出した。
これまで彼女には、様々な魔法を教わった。得意不得意はあるものの、どれも繰り返し練習する事で時間をかけて身に付けてきた。「大丈夫。なんとかなる。」…そう自分に言い聞かせていると、僕を心配したルナが後ろからそっと肩に手を触れた。

「ルカ…大丈夫?」
「あ、ルナ…。」
「お前は中にいなさい。余計な魔力は使わない方がいい。」
「それはわかってるけど…少しでも緊張を解した方が集中出来るでしょ?」
「わかってるならいいわ。せっかくのやる気を無くさないように、話があるなら手短にしなさい。」
「ルカ。私の時はルカが身体の外に出られない状況だったから、あんな事になっちゃったけど…今は私もミグもついてる!どこに行っても、ルカと一緒にいるから大丈夫だよ。」
「ごめんルナ…弱気になって…。」
「私だって怖かったもん。結局あれ以来、転移魔法を試してないしね…。ルカが転移出来るようになったら、いろんな所に連れて行って欲しいな。あ、でも、無理はしなくていいんだよ!絶対出来るようになってねって、圧力をかけてる訳じゃ…」
「ルナ!お前は私の話を聞いていたのか?話は終わり!さっさと戻りなさい!」
「ル、ルカ!とにかく大丈夫だから!自信もっ…」

半ば強引に身体の中へ押し込まれた彼女は、最後まで僕を励まし続けた。

「全く…。よく喋る奴だ。」
「…ヴェラ。僕、頑張るよ。」

彼女に背中を押され、自身が吸血鬼になると決意した時の事を思い出した。目標の為に薬を作る事も大事だが、新しい魔法を習得すれば必然と出来る事も増えてくる。色々と不安な気持ちが残るものの、覚悟を決めて廊下の先にある中庭へ向かった。



「イメージするのは場所だ。その場の雰囲気を思い出し、そこに行った時の事を思い出せ。もし転移に成功しても、まずは戻って来なさい。それを繰り返し出来るようになったら、どこへ行っても問題ないだろう。」
「うん。わかった。」

魔法を唱えて地面に血を垂らすと、足元に黒い霧が広がった。その中に身体が沈み出し、僕はそっと目を閉じた。

『 イメージするのは場所…。その場の雰囲気…行った時の事を思い出す…。』

何の光も感じられない空間で、ひたすら場所のイメージを巡らせた。しばらくすると頭上から光が差し込み、その中に身体が引き込まれていった。



「…ぁ。」

目を開くと、前方に大きな建物が立っていた。白い外壁に黄色の屋根が映え、綺麗に磨かれた窓ガラスが透き通った青色をしている。場所の名前はわからないが、どこかで見た事のある懐かしさを感じた。

「ルカ!大丈夫か?俺の事わかるか!?」
「何言ってるのミグ…もちろんわかるよ。」
「よかった…。記憶が無くなってたらどうしようかと…。」

慌てて身体の外に出てきたミグが、僕の腕を掴んで身体を揺すった。正常である僕の姿を見て、彼は安堵しているようだ。

「ねぇここ。来た事あったっけ?」
「さぁ?俺は見た事ないけど…」
「なんか不思議…懐かしい感じがするんだ。」
「この建物が?」
「…ルカも?私もなんだか…見覚えがある気がしてたの。」

続けて外へ出てきたルナが、ミグの隣に立って建物の方をぼんやりと眺めている。

「ルナも?」
「けど、転移出来るのは歩いた事のある場所だろ?名前も知らない土地に、どうやって来たんだ?」
「そうだよね?私の時は、失敗して知らない所に飛ばされちゃったけど…今回は成功してるみたいだし。」
「うーん…。喉の辺りまで出かかってる気がするんだけど…。」
「とにかく今は戻ろう。ヴェラもそう言ってたろ?ああ見えて、なんだかんだ心配してるはずだ。」
「うん…そうだね。」



何事もなくレジデンスへ戻ると、ベンチに座って脚を組むヴェラの姿があった。

「どうやら成功したようだな。」
「うん。思ったよりすんなり出来て驚いたよ…。」
「お前は元から筋がいい。私の弟子なら出来て当然だ。ところで…行き先は決めなかったが、どこに転移したんだ?」
「それが…」

僕は彼女の隣に腰を下ろし、先程見た風景を説明した。そこは彼女も知らない場所らしく、魔法自体は成功したが多くの謎を残す結果となってしまった。



翌日、覚えたての転移魔法を使って近くの森へ薬草を摘みに出かけた。

「ほんと便利だねぇ~。こんなに早く移動出来るなら、薬草の備蓄なんて必要ないかもしれないよ?」
「んな訳あるか。備蓄ってもんは、非常時の為にあるんだぞ?必要のない備えなんてない。」
「わ、わかってるよそれくらい…!すごく便利だって言いたかったの!」

最近わかった事だが、ルナとミグのこうしたやり取りは2人の仲が良いからこそ出来る会話なのだ。喧嘩するほど仲がいいと言うのは、まさにこの事だろう。

「遠くまで行くのはちょっと勇気がいるけど、そのうちギルドの方にも行ってみたいなぁ。」
「この間手紙を書いたばかりだし、しばらくは行けなくても心配ないだろ。」
「手紙といえば…この間、みんなから返事が届いてたよね?」
「うん。みんな元気そうだったよ!」
「ギルドに行くより先に、エーリに行ってフランの話をしよっか。全員に話すのは無理でも、何人かに話が出来れば少しは違うと思うし。」
「うん…そうだね。」

彼女は少々躊躇いつつ、僕の提案を受け入れた。恐らく彼女は、皆の反応が気になるのだろう。不安からか、あまり気乗りしていないように見える。

「話すと決めたなら、早めにやっておいた方がよくないか?明日とかさ。」
「仕事がなければ大丈夫だと思うけど…。後でヴェラに確認してみるね。」  

摘み終えた薬草を持ち帰り、彼女の部屋を訪ねた。



「明日?明日も何も、明後日もその次もやるべき仕事はあるわよ?」
「えぇ!?どうしてこういう時に限って仕事が山積みに…。」
「いつも暇だと思ったら大間違いよ。何か急ぎの用事でも?」
「急ぎって程じゃ…ないんだけど…。みんなに話があって、エーリに行きたいんだ。」

私用で仕事を休ませる程、彼女が優しい性格でない事はわかっていた。ダメ元で理由を話したが、彼女は呆れた様な表情を浮かべている。

「エーリにねぇ…。…話なんていつでも出来るわ。仕事より優先する用事じゃないのはわかるな?」
「うん…。仕方ないから、また暇な時を見計らって…」
「仕事として、エーリの裏にある森で薬草を摘んでくるのなら許可してもいい。」
「え、本当!?」
「こんな所で嘘をついてどうする。」
「ありがとうヴェラ!あ、何を摘んでくればいい?紙に書いてくれたら、それを沢山集めてくるよ!」
「ならばそうしよう。ちょっとそこに座って待ちなさい。」



朝を迎え、薬草を摘みに行くという表向きの理由でエーリへ向かう事になった。

「あんまり朝早いのも良くないよね?先に薬草を摘んじゃう?」
「いや。摘むのは帰りの方がいいだろ。摘み取ってから時間を置くのはよくないし。」
「むしろ、朝だったらみんな居るかもしれないよ?私も、先にみんなの所に行くのがいいと思う!」
「タクトなら起きてそう…かな?部屋の前に移動してみるね。」

魔法を唱え、彼の部屋の前に移動した。軽く扉を叩いて反応を待ったが、返事が返ってくる事はなく、扉には鍵が掛けられていた。

「さすがにまだ寝てるみたい…。一応、アレクの部屋にも行ってみようかな。」

今度は階段を降りて行き、1階にある彼の部屋へ向かった。同じように扉を叩くが、やはり返事が返ってくる様子はない。

「やっぱり時間が早かったかなぁ…。先に薬草をレジデンスに持ち帰って、それからまた出直すとか…」
「待てルカ。鍵が空いてるぞ。」

後ろから伸びてきた彼の手が、取っ手を掴んで扉を開いた。

「あ、ちょっとミグ…!いくらなんでも勝手に部屋に入るのは…」
「鍵をかけてないのが悪い。アレクー入るぞー。」
「もー…!怒られたらミグのせいだからね!」

彼の後に続いて部屋の中に入ると、ベッドの上で横たわっているアレクを見つけた。

「おいアレ…」
「ミグ…!起こしたら可哀想だよ!起きるまで、部屋で待たせてもらおう?」
「ちょっとやそっとじゃ起きないって。…と言うか、昼過ぎまで起きなかったらどうするつも…」
「んん?んー…。」

僕達の声で目が覚めたのか、布団の上で寝返りをうち、閉じていた瞼を開いた。

「あ、アレク。起きた?」
「ん?…おわぁぁ!?なんでルカがここにおるん!?」
「朝っぱらから大きな声を出すなよ。びっくりするだろ。」
「いやいや!こっちの方がびっくりやわ!」
「お、落ち着いてアレク…!実は…みんなに話したい事があって来たんだ。その…あんまり目立ちたくないから、呼んで来てくれると嬉しいんだけど…。」
「随分急な話やな…。ほんなら、声掛けてくるわ。ちょっと待っとってな。」
「ごめんねアレク。ありがとう…!」

彼が部屋を出た後、テーブルの側に置かれたクッションの上に腰を下ろした。しばらく部屋で待っていると、ユイとユノ、レミリーの3人が部屋の中へやって来た。

「まぁ~。本当にルカがいるわ~。」
「久しぶりレミリー…!ユイとユノも久しぶりだよね。」
「うん。久しぶり。」

レミリーは僕の方へ歩み寄ると、隣に置かれたクッションの上に腰を下ろした。一方ユイとユノは、ベッドに近い方へ歩いて行き、テーブルを取り囲む様な位置に座り込んだ。

「なぁレミリー。本当にって…俺が嘘言ってると思っとったんか?」
「あら。あたしも、寝ぼけておかしな事を言ってるかと思ったわよ?」
「そんなに俺は信用されてへんのか!?」
「アレク。声大きい。」
「す、すまん…。」

扉の前に取り残されたアレクは、ベッドの上へ移動すると壁にもたれ掛かるように座った。

「ララとタクトは居なかった?」
「ララなら、昨日からフルリオの方に行ってて居ないわよ。今日の夕方には帰ってくるんじゃないかしら?」
「タクトは、今朝早く出かけるのを見かけた。」
「じゃあ…これで全員か…。」
「話があるそうねぇ?一体何のお話かしら~?」
「驚かないで聞いて欲しいんだけど…。」

僕は彼等に、フランの事について話を始めた。
彼が言葉、感情、記憶を失ってしまった事や、彼は自分と同じ吸血鬼もどきで、フランとは別にルドルフという吸血鬼の人格がある事、そして彼が、勉学を共にした僕達と関わりたくないと話している旨を伝えた。

「やっぱり…何か変だと思ってたのよ!」
「じゃあ、今のフランはフランやないって事か?」
「まぁ…そうなるね。みんなとフランがやり取りしてるのを、ルドルフも見てたとは思うけど…。」
「フランは人間だったのねぇ…。普通にしていたから、全然わからなかったわぁ~。」
「それはフラン自身も最初は知らなくて、中級吸血鬼になる頃にわかったんだ。みんなに話さなきゃって思ってたみたいだけど、中々勇気が出なかったみたい。」
「そりゃそうよね…。」

突然告げられた彼の秘密に、それぞれ思いは違うようだった。心の内はわからないが、この場にいる全員が何とも言えない複雑な心境である事が見て取れる。

「フランの話、ララが聞いたらきっと悲しむ…。」
「僕もそう思う…。…けど、みんなにもララにも、知ってて欲しい事だったから話さなきゃと思って。」
「2人にもそのうち話しておくわ。信じられないかもしれないけど、その話で色々と辻褄が合うもの。」
「まだ状況が飲み込めないんやけど…なんとか元には戻せへんのか?」
「うーん…。前にヴェラが、記憶っていうのはすごく脆くて、1度無くなったら元に戻すのは難しいって言ってた。何か思い出すきっかけがあると、すんなり記憶が戻る事もあるらしいけど…。」
「それなら尚更、積極的に彼に関わった方が良さそうね~。」
「せやな!少しづつ話しとったら、そのうち打ち解けるかもしれへんで?」
「で、でも…!…ルドルフが心を開くのは難しいと思う。同じ身体を共有してるフランにすら、心を許してないように見えるんだ。きっとみんなに、キツイ言葉を言ってくると思うよ?だから…」
「そんなの今に始まった事じゃ無いじゃない。…元々、言いたい事はなんでも言うような奴だったし。要するに、そいつも含めてフランだって事でしょ?」
「え?」

ルドルフに接触を試みようとする彼等の提案を否定すると、思いもよらぬ答えが返ってきた。

「そうやでルカ!まずは、なんでもやってみんとわからんやろ?」
「ちょっとした反抗期だと思えば可愛いものだわ~。ねぇユノ?」
「ん。私達は何言われても気にしない。だから心配しないでルカ。」
「みんな…。」
「また何かわかったら、手紙でもなんでも連絡して。私達の方でも何か出来ないか考えてみるわ。」
「うん!ありがとうみんな。」

皆に話を打ち明けた後、帰りに森で薬草を摘んでレジデンスへ戻っていった。



「思ったよりすんなり聞き入れたみたいで良かったな。」

階段を降りていき、いつも通りソファーに腰を下ろすと、ミグがテーブルの上に紅茶を用意した。

「うん。信じてもらえなかったらどうしようかと思ってたけど、みんな真剣に聞いてくれて驚いたよ。」
「あいつらも、フランの事が気になるんだろ。お前が嘘をつくような奴じゃないって事も、わかってきたみたいだしな。」
「ところで…ルナは?」
「あのなぁ…俺等が毎回一緒に居ると思ったら大間違いだぞ?2人一緒に使い魔になったとは言え、別行動が出来ないわけじゃないんだし…」
「あ、ルカおかえり!今日はこっち来るの早かったね。」

階段の上から、彼女の声が聞こえて来た。ゆっくりと階段を降りた彼女は、定位置である出入口付近のソファーの上に腰を下ろした。

「あ、うん。今日は結構魔力を消耗したから疲れたのかも…。いつもより、早く眠くなっちゃったんだよね。」
「じゃあマッサージしてあげる!さぁさぁ横になって~。」
「え?ルナの方こそ、翻訳で疲れてるんじゃない?僕の事は気にしなくていいよ。」
「なら、俺がしてやるよ。それならいいだろ?」
「そう?じゃあ私の代わりに任せた!」
「はいはい任されました。」
「あ、そうだルナ。アスルフロルの事が書いてある所は読み進めた?」
「うん。読んだよ!それがさぁ~…」

彼にマッサージをされている間、彼女は現在翻訳している本の内容を話し始めた。以前、前のページに書かれていたブルートの育成方法について話を聞いたが、彼女の読み通り、その先のページにはアスルフロルの育成方法が書かれていたそうだ。
アスルフロルは夜にしか花を咲かせない珍しい薬草で、日の当たりにくい場所で自生している。光は少なく、綺麗な水と空気を好む為、野生に生える事も人の手で育てる事も難しい。薬に使われる事は滅多に無く、効能の無い薬草としてその名前が世間に定着してしまった。

「昔の研究で、アスルフロルには花の方に効能がある事がわかったんだって。書いてある事は難しくてよく分からないんだけど…アスルフロルの花が、薬を作るのに役立つみたい。」
「へぇ~…。僕も本で読んだ事あるけど、それほど詳しくは書かれてなかったなぁ。」
「そういえば、前にルカもアスルフロルを探しに行った事あったよな?結局あれ、どうしたんだ?」
「へ?ぁ…えっ……と…///」

彼の何気ない一言に、顔が熱くなるのを感じた。僕がアスルフロルを取りに行ったのは、ルナにプレゼントする為だった。
アスルフロルの花は、好きな相手に贈る事で自分の想いが届くと言われている。花を直接渡すのは照れくさく、薬に作り替えてそれを彼女に贈ったのだ。

「何に使ったかなんて、わざわざ聞かなくてもいいでしょ…!それより、読んでてわかった事なんだけど…アスルフロルって、1度根付いたらずっとそこに咲き続けるんだって。」 
「え?それってどういう事?」
「まずは芽が出て葉が伸びて、成長して花が咲いたら枯れて、その後自分で種を零して、また同じ所に生えてくるみたい。もちろん、一生その場所に咲き続ける訳じゃないよ!周りの環境が変わって、アスルフロルにとって良くない場所になっちゃうと、育たなくなるの。」
「へぇ~…。生命力は強いのに、デリケートな薬草なんだね。」
「俺達の暮らしで環境が変わって、少しづつ数が減っていった…って事か。」
「ブルートの枝は、ヴィエトルで取れるかもしれないけど…。アスルフロルは、見つけられるかどうかが問題だね。」
「邪魔するぞ。」
「うわぁ!?ヴェラ!どうやってここに!」

玄関の扉を開け、何食わぬ顔をしたヴェラが家の中へ入って来た。

「そろそろ翻訳が終わる頃かと思って、話を聞きに来た。」
「タイミングが良すぎて逆に怖いよ…。って言うか、そういう話じゃなくて!どうやってここ…」
「ミグ。紅茶を頼む。」
「ちょっとヴェラ…!?」

彼女は僕の話を聞き流し、空いていたルナの隣に腰を下ろした。

「まぁまぁ…。私の時もしょっちゅう来てたし、気にしたら負けだよルカ。」
「そういう事だ。細かい事は気にするな。」
「えぇ~…。」
「そんな事より、早く話を進めてくれ。」
「じゃあ、私から話すね。」

彼女は僕に話した内容を、同じようにヴェラに説明した。

「ブルートとアスルフロルか…中々難儀だな。」
「どっちも環境に敏感だしね…。どうやったら、2つの材料を安定して調達出来るかな?」
「どちらも1箇所に集中させて栽培するか、各地に植えてみて増える場所を探すかのどちらかだろうな。1箇所に集中させた場合は、管理が楽だが自然災害に巻き込まれたらひとたまりもない。しかし、各地に植えるとなると、それだけ数が必要になるのと同時に管理が難しくなる。」
「なるほど…。」
「うぅ…なんだか頭が痛くなる話だね…。」
「まずは育てられるのかどうかと、アネミーオを作る事でメリットがあるかどうかを確認するのが良くないか?」
「そうだな。」
「あ、さっきの話に戻るけど…アスルフロルの種はどうやって手に入れる?探しても見つかるかどうか…。」
「なぜ探す?家の前に大量に咲いてるじゃないか。」
「え?…あぁー!」
「そっか!夢の中から種を持ち出せばいいんだね!さすがヴェラ~。頭いいね~。」
「お前達とは作りが違う。」
「いや…作りは一緒だろ…。」
「とにかくありがとうヴェラ!まずは、ブルートとアスルフロルを育てる所からやってみるよ!」
「また進展があったら話しなさい。知恵くらいは貸してやろう。」

こうして、貧血の薬“アネミーオ”を復活させるべく、僕達の挑戦は始まった。
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