エテルノ・レガーメ

りくあ

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第16章︰2人で

第146話

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「もう1度やってみろ。」
「わかった。」

翌日、ヴェラと2人で魔法の練習をしていた。中庭の椅子に腰を下ろしている彼女の前に立ち、見た目を変える変幻魔法“エンドレ”を唱えた。
すると身体の表面が溶けだし、姿が変わっていくのを感じた。彼女が手に持っている大きめの鏡には、髪色が黒に染った自身の姿が映し出されている。

「あ、あれ…?」
「お前の中のライガのイメージは、髪が黒い事しかないのか?」
「そ、そういう訳じゃないけど…。」

見た事のない人に変化するのはイメージしづらいと言われ、たまたま廊下を歩いていたライガをイメージする事にした。しかし、自分の中で彼のイメージを固めきれず、結果的に髪色が変化するだけになってしまった。

「髪型も体型も目の色も…ほとんどそのままじゃない。言ったでしょ?これはイメージ力が大事だって。」
「それはわかってるけど…!やっぱりすぐは難しいよ。それに、ライガとはあんまり会わないし…」
「言い訳だけは1人前ね。…なら、お前が1番目に焼き付いてる人物を思い浮かべなさい。まずはそこからね。」
「1番…目に焼き付いてる人物かぁ…。」

僕は再び目を閉じ、ある人を思い浮かべながら魔法を唱えた。

「わぁ…。」

目を開けて鏡を見ると、そこにはヴェラの姿が映っていた。自分が右手をあげると鏡に映った彼女も、同じように手を挙げている。

「人の身体で遊ぶな。」
「あ、遊んでなんかいないよ!本当に僕の身体なのか確認したくて…」
「目に焼き付いてる人物を思い浮かべろとは言ったが…まさかこの私をモデルにするとは思わなかったわ。」
「なんだかんだ言って、1番最初に会った吸血鬼がヴェラだったから、長い付き合いだなーと思って。」
「…そう。」
「やっぱり目の前で見てるとイメージもしやすいね!次はルナとかミグにしてみようかな…。」
「それはいいけど、体型の変化がまだまだ甘いわね。胸に肉を付けろとは言わないが、膨らませるくらいはした方がいいぞ。」
「あー…うん…。今後は男だけにしておこうかな…。」
「好きにしなさい。」
「あ、ヴェラ…!」

彼女は一言を言い残し、その場から去って行った。



「ルカ。ちょっといいか?」
「あ、はい!」

食堂で食事をしていると、突然現れたライガが僕に声をかけてきた。報告書を渡しに自分から声をかける事はよくあるが、彼から声をかけられる事はほとんど無い。

「食事中だったか…。終わってからでいいから、後で俺の部屋に来てくれ。話がある。」
「はい…わかりました。」


食事後、彼の部屋へ向かうとソファーに座って話をしているライガとレーガの姿があった。

「あれ?レーガも居たんだね…。」
「僕が居たらまずい事でも?」
「そ、そうじゃないけど…」
「お前達2人に話があって呼んだんだ。立ってないでそこに座れ。」
「はい…。」

彼に促されてレーガの隣に腰を下ろすと、テーブルの上に1枚の紙を置いた。

「この依頼をお前達にやってもらいたい。」
「え、依頼?」
「なんで僕と彼なの?エレナやヴェラじゃ出来ない理由でも?」
「あぁ。依頼内容はそこに書いてあるが、イフェスティオで行われる祭りの手伝いをする事になった。」
「なんで僕らがする必要があるのさ。そんなのエーリに任せておけば人手は足りるでしょ?」
「お前は口の減らない奴だな。やる必要ない依頼などあるわけないだろう。」
「じゃあ僕等2人でやる理由は?」
「祭りには男しか参加出来ないそうだ。」
「ならライガは?」
「俺は留守番だ。」
「えーずるい!留守番なら僕がするのに!」
「お前に留守を任せられる訳ないだろう。つべこべ言わず行ってこい。」

半ば強引に部屋から押し出された僕達は、廊下で静かに顔を見合わせた。

「…何?」
「え?あ、ううん…なんでもない。ところで、依頼の詳しい内容って…」
「これ見たら?僕は先に行くよ。」

彼は僕の胸元に依頼書を押し付け、階段を下り始めた。

「え…一緒に行かないの!?」
「一緒に行動しろとは言われてない。僕は好き勝手やるから、君も適当にやっといて。それじゃ。」
「あ…」

彼は背を向けたまま軽く手を振り、窓の外へ飛び出した。慌てて窓に駆け寄ると、背中に生えた羽を動かして空を舞う彼の姿が見える。

「いいなぁ…僕も空を飛んでみたい…。」
「ルカ…?そんな所で…何をしてるんですか?」
「あ、フィー。」

彼女はゆっくりと階段をのぼり、僕の隣で立ち止まった。右手にバケツを持っていて、左手には箒とちりとりを持っている。

「すごい荷物だね。これから掃除?」
「はい…。ライガの部屋と一緒に、私の部屋も掃除しようかと…。」
「へぇ~。ライガの部屋ってフィーが掃除してるんだね。」
「ライガは忙しいですから…。こういった雑務は…私で充分です。」
「雑務って言っても、やる事いっぱいあって大変でしょ?僕でよければ手伝…」
「それ…依頼書ですよね?忙しいのではないですか…?」

僕の右手に視線を落とす彼女を見て、先程レーガに押し付けられた依頼書を持っていた事に気づいた。

「あ…そうだった。イフェスティオに行かなきゃいけないんだった…。」
「あぁ…それでレーガは飛んでいたんですね。」
「そうだ。イフェスティオに行くなら、ここからどうやって行ったらいいかな?」
「そうですね…。イリスシティアから馬車が出ていたはずです。それに乗るのがいいかと…。」
「なるほど…馬車ね!ありがとうフィー。」
「ハッキリとは覚えていないので…違ってたらごめんなさい…。」
「そしたら街で誰かに聞くから大丈夫だよ。じゃあ、行ってくるね!」
「い、行ってらっしゃい…です…。」

恥ずかしそうに小さく手を振る彼女に見送られ、狼の姿をしたミグの背中に乗って街へ向かう事にした。



「なぁ。馬車乗り場はここだけじゃないんだろ?どこの乗り場からイフェスティオに行けるのか、聞いといた方が良かったんじゃないか?」
「あー…。あんまりフィーの邪魔したらいけないと思って、そこまで頭が回らなかったなぁ…。」
「ん…?この匂いは…。」

狼状態のミグは、地面に鼻を近づけて匂いを嗅ぎ始めた。

「どうかした?」
「ちょっと気になる匂いがする。こっちだ。」
「ま、待ってよミグ…!」

突然歩き出した彼の後ろを付いていくと、乗り場の近くにあるベンチに、見慣れた服装の人物が座っていた。

「あ!アレク!それにタクトも!」
「ん?おおー!ルカやん!久しぶ…」
「ちょっとアレク!ル…じゃなくて、レーヴェ様でしょ?幹部に…なられたんだから…。」
「あぁ~…。いいよいいよそんなの!レーヴェなんて呼ぶ人1人もいないし、2人も今まで通りルカって呼んで?」
「ほ、ほら…!やっぱりルカでええって。」
「本人がそれでいいならいいけど…。気をつけなよ?また、この間みたいな事になったら…」
「この間って?」
「いやいや!大した事やないから気にせんで!」
「そう…?あ、でも丁度よかった!2人に聞きたい事があるんだけどいいかな?」
「うん。構わないけど…。」
「これからイフェスティオに行きたいんだけど、どこの乗り場に行ったらいいかな?」
「なんや!ルカもイフェスティオに行くんか?俺等もこれから行くとこで、ここで馬車が来るのを待ってたんや。」
「そうなの?助かった~。街に来たのはいいけど、どれに乗っていいかわからなくて困ってたんだよね。一緒について行ってもいい?」
「もちろん!な、タクト。」
「うん。大歓迎だよ。」
「ありがとう2人とも!」

しばらく話をしていると1台の馬車が僕達の前に止まり、それに乗り込んでイフェスティオへと向かった。



「そうだアレク。さっきの話、聞いてもいい?」
「さっきの話?コルトに行った時の話か?」
「そっちじゃなくて、ほら…僕の事ルカって呼んだ時にタクトが言ってた、この間みたいな事になったら~って話。」
「あぁ…それなぁ…。」

向かいの席に座っているアレクが、目線を逸らしながら苦笑いを浮かべた。

「実はこの間、フラ…フルク様に会ったんだ。」
「フランに?それがどうしたの?」
「アレクがフルク様の事をフランって呼んだら、それが気に触ったのか剣を向けてきてね…。」
「えっ…!」
「あいつ、幹部になってから変になったと思わんか?喋り方は同じやのに、なんか雰囲気悪くなった気がするわ~。」
「そんな事があったんだね…。」
「まぁ、怪我をした訳じゃないから、今後は気をつけようねって話をしたんだ。」
「ま、そんだけの話や!それよりルカは、なんでイフェスティオに行くん?」
「お祭りの手伝いに行くんだ。えっと…無事祈願祭…だっけ?」
「もしかして、無事息災祈願祭?」
「そうそれ!」
「なんや!俺等と目的は一緒なんやな。」
「え!そうなの?」
「けど、幹部の方にまで依頼が行くとは思わへんかったなぁ。」
「人手がいる作業なんだろうね。ルカ以外には誰か来ないの?」
「レーガが一緒だよ。…置いていかれちゃったけど。」
「ははは!ラギト様は男を好かんからなぁ。タクトとフラ…フルク様くらいやないの?」
「前々から思ってたけど、どうして僕が好かれてるんだろう?フルク様はわかるよ?ラギト様に育てられてたし。」
「うーん…なんだろうね…?」
「2人ばっかりずるいわ~。俺も頭撫でられたり、ハグされたりしたいわぁ。」
「される方の立場を考えてよ。ラギト様にそういう事された後の、周りの視線が…」

馬車に揺られながらあれこれ話をしていると、あっという間に目的地のイフェスティオへ辿り着いた。



「思ったより早かったね。」
「ふへ~。やっぱりここはいつ来ても暑いわぁ~。」

馬車を下りると、この街特有の暖かく湿った空気が肌を撫でた。火山の街と呼ばれるだけあって、山から離れた街中でもかなりの暑さを感じる。

「元々暑い所なんだからしょうがないよ。まずは役所に行って、何をしたらいいか聞いてみよっか。」
「うん。」

足並みを揃えて役所へ向かうと、先に来ていたレーガの姿を見つけた。その隣には、いつの間にか来ていたフランが何食わぬ顔で立っている。

「あれ!?フランも来てたの?」
「…思ったより早かったね。もっと遅く来るかと思っ…」
「お、お久しぶりです…ラギト様。」

タクトを見つけたレーガは、お菓子を見つけた子供のようにキラキラと目を輝かせている。そして一目散に駆け寄ると、何の躊躇も無く彼の手を握りしめた。

「タクト!いや~ほんと久しぶりだね。前に会ったのいつだっけ?遊びに来てっていつも言ってるのに~。」
「す、すみません!色々とやる事がありまして…」
「そんなの適当に済ませちゃえばいいのに~。」
「そ、そういう訳には…!」
「お久しぶりですラギト様!」

レーガの対応に困っているタクトを見兼ねて、様子を見ていたアレクが2人の会話に混ざっていった。

「やぁアレク。久しぶりだね。」
「ルカから聞きました。ラギト様も祭りの手伝いに来たんですよね?」
「うん。そうだよ。」
「その…フルク様も参加されるんですか?」
「そうそう。丁度フランも依頼を終えた所だったから、こっちを手伝うように言われたんだ。」
「ラギト様。そろそろ移動しませんか?日が暮れる前に終わらせた方がいいと思います。」

離れた所に立っていたフランが、こちらに近づき会話に割って入った。

「あ、そうだったね。僕達、火山の近くまで行く用事を任されたからちょっと行ってくるよ。」
「お、お気をつけて…!」
「ありがとうタクト。戻って来たらまた話をしようね~。」

笑顔で手を振りながら去っていくレーガに対し、フランは顔色1つ変えずに彼の後ろをついて行った。

「はぁ~…何言われるかわからんのって心臓に悪いわぁ~。」
「まさかフルク様まで居るとは思わなかったね。」
「僕もびっくりしたよ!ライガは、レーガと2人で行けって言ってたから…。」
「後から合流したって感じやったな~。あ!それはそうと、俺等もそろそろ動かんと!」
「そうだった!えっと…」
「あらやだ!ルカじゃな~い!」
「え?」

名前を呼ばれて後ろを振り返ると、巨漢な男がこちらに手を振っていた。

「あー!サエ!久しぶり!」
「やだ~!覚えててくれたのね~嬉しいわ~!」
「え、な、なんや?…知り合いなんか?」
「あ、うん!前にイフェスティオに来た時に助けてもらったんだ。彼はサエードって言って、学者なんだよ!」
「初めましてサエードさん。エーリ学院上級吸血鬼、タクトワイライネです。」
「俺も、こいつと同じく上級吸血鬼のアレクセイルージやで。よろしゅうな!」
「あらやだ!上級吸血鬼の方と知り合いなのね~!すごいわ~ルカ!」
「2人とも僕の友達なんだ!あ、それとね…」
「ね、ねぇルカ。あんまり喋ってる時間は…」
「そ、そうだったね…。ごめんねサエ。僕達、祭りの手伝いに来たからそろそろ何か手をつけなきゃと思ってた所で…」
「そうなの?なら、あたしの手伝いをお願いしちゃおうかしら~!」
「え?どういう事?」

彼は祭りの手伝いを指揮する役員の1人で、丁度人手を探している所だったらしい。偶然居合わせた僕達は彼の手伝いをする事になり、家の中へ招かれた。

「お邪魔します!」
「どうぞどうぞ~。あ、お茶いれるわね~。」
「手伝うよサエ!」
「ダメよ~。ルカも大事なお客様なんだから~。あたしに任せて座ってて頂戴!」
「わ、わかった…。」



用意された紅茶を飲みながら、サエの話に耳を傾けた。

「無事息災祈願祭っていうのは、昔からこの辺りで行われてた祭りでねぇ?病気や災いなどが無く、平穏に暮らしていけますように~ってお祈りするのが目的なのよぉ。」
「へぇ~…。じゃあ、みんなで楽しくワイワイ騒ぐって感じじゃないんだね。」
「サエードさん。気になる事があるんですけど、聞いてもいいですか?」
「もちろんいいわよ~。」
「依頼内容に男のみが参加出来ると書いてあったんですけど、それは何故ですか?」
「昔からある祭りだっていうのは、さっき言ったたわよね?昔は男女を差別する傾向があって、女は男より下に見られてたのよ~。昔の伝統ってやつで、男だけが祭りに参加するっていうのが決まりなの。」
「男ばっかりでやるなんて、むさ苦しいしかあらへんよなぁ。」
「あら。そんな事ないわよ~?男達が力を合わせて、伝統ある祭りを来世に伝える…あたしはとっても素敵だと思うわぁ~。」
「なんて言うか…華がないよね。」
「そう!まさにそれなの!あたし達が今からやるのは、まさに祭りの華と呼べる装飾品を作る作業よぉ!」
「…ごめん。もっと詳しく教えてくれる?」

祭りの詳しい話を聞いた後、祭りに使用する飾りを作る作業に取り掛かった。奥の部屋から持ち込まれた材料をテーブルに広げ、サエが再び口を開いて説明を始めた。

「まずは、この藁を必要な長さに切って、束の端をこっちの糸で縛ってねぇ。」
「これ、藁って言うんや!初めて見たかもしれんなぁ。」
「そう?森によく生えてる細長い植物だよ。それを乾燥させると、こんな風にしなやかになって切れにくくなるの。」
「ルカは物知りやんなぁ~。」
「アレク~そんな呑気に話してないで手を動かしてよ?」
「わ、わかってるって!」
「次はどうするの?」
「端を縛ったら、束を2つに分けて、2つの束を同じ方向にねじって…」
「え?えぇ?」
「そうじゃないよアレク。こうやって…」
「えぇー!?なんやそれ!どうしたらそうなるんや!?」
「えっと…。あれ?違ったかな…」
「も~!2人とも不器用ねぇ。よ~く見てなさい?これをこうして…」

サエの丁寧な説明の甲斐あって、なんとかその日のうちに作業を終える事が出来た。



「だー!終わったぁ!」
「あはは。お疲れ様。」
「終わったのはいいけどすっかり暗くなっちゃったね…。」
「そうだ!泊まる所をまだ決めてなかったよね?部屋が空いてるといいけどなぁ…。」
「あら。泊まる場所がないならあたしの家に泊まればいいわ~。3人一緒の部屋で良ければね?」
「え、いいの?」
「で、でも、これ以上ご迷惑をおかけする訳には…」
「サエの方から泊まってええ、って言ってくれてるんやで?明日も手伝わなあかんし、ここはお言葉に甘えて泊めてもらおうや~。」
「そうよそうよ~。大丈夫!3人でも、そんなに狭くないと思うから~。」
「サエードさんがいいなら…。ありがとうございます…!」
「お礼なんていいわよ~。じゃ、部屋を案内するわねぇ~。」



彼に案内された部屋は、3人でも充分な広さだった。

「ベッド…2つしかないけどどうする?」
「俺はソファーでいいよ。自分の部屋でも、ベッドに辿り着く前にソファーで寝ちゃう事が多いから、なんか慣れちゃったんだよね。」
「それ、身体が痛くならない?マッサージしようか?」
「え?ルカがマッサージするんか?」
「ミグに教わったからね!よくルナにもしてあげてたし、自分で言うのもなんだけど中々上手いと思…」
「…うけど、俺ほどじゃないだろ?」
「おわ!?ミ、ミグ!?」

身体の中で大人しくしていたはずのミグが、突然部屋の中に姿を現した。それに驚いた2人は、口を開けたまま目を大きく見開いている。

「なんでミグがここに!?た、確か…ルナの使い魔じゃ…。」
「そ、それが…」
「2人共久しぶり!」
「こ、今度はルナ本人が出てきた!どうなってるんや!?」
「お、落ち着いてアレク!ちゃんと説明するから…!」



レジデンスへ戻った後、ルナとミグが使い魔になった事を彼等に話した。

「すごいなぁ…2体も使い魔を使役出来るなんて…!」
「そんな!すごくなんてないよ…!」
「それにしても、ルナもミグも無事でよかったわ~。みんな心配しとったんやで?」
「ごめんね…。他のみんなとも、会って話す時間があればいいけど…。」
「それは難しいと思うなぁ。ルカは幹部で、みんな上級クラスになったからね…。時間が合う方が珍しいくらいだよ。」
「だよねぇ…。」
「そうだ!みんなに手紙を書くのはどう?」
「あー!前に書かなきゃって思って、便箋を買ったのにずっと書かないままだった!」
「あはは!ルナらしいね。」
「僕達がイフェスティオにいる間、ルナは手紙を書いてたら?」
「え、でも、翻訳があるし…。」
「そんなの後回しでいいよ。また忘れたら、今度こそ困るでしょ?」
「それもそうだね…ありがとうルカ!」
「こっちは終わったぞ。次はタクトか?」

話をしていると、アレクにマッサージをしていたミグが僕達の元へやって来た。

「あれ?もう終わったの?」
「終わる前に、あいつが寝たんだよ…。これ以上やったら起こしそうだったから、途中でやめておいた。」
「アレク…寝るの早くない?」
「疲れてたんだと思うよ?慣れない作業だったし。」
「タクトもしてもらいなよ!ミグの事は気にしなくていいから。」
「じゃあ…お願いしようかな。俺も慣れない作業で肩凝っちゃって…。」
「じゃあ、ルカは私がマッサージしておくね!」
「え、僕はいいのに…。」
「主のルカが遠慮してどうするの?それぞれマッサージしてもらって、今日はもう休もうよ。」
「そっか…。じゃあそうしよっか。おやすみタクト。」
「うん。おやすみ。また明日も頑張ろうね。」
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