エテルノ・レガーメ

りくあ

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第9章︰エーリ学院〜中級クラス〜【後編】

第78話

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「ここだな。」

ミグの案内で1件の店の前に辿り着いた。どうやら服を売っているお店のようで、服を着た人形がガラスの向こうに展示されている。

「俺は一旦戻るよ。」
「うん。ありがとうミグ。」

ツヴェルと店内を歩き回っていると、椅子に座っているフランを見つけた。

「あ…フラン!」
「あれ?2人共、なんでここに…。」
「それはこっちの台詞です!病み上がりの彼女を、何故ここに連れてきたんですか!」
「気分転換が必要だと思ってね。…いけなかった?」
「ぼ、僕には…何も言えませんが…。」
「ところで、肝心のララは?」
「ララちゃんなら、あっちの方で服を見てまわっ…」
「あれ?なんや~。結局2人も来たんやね。」

紙袋を手に待ったアレクが、私達の元にやって来た。

「なんでアレクも一緒にいるの?」
「俺は付き添いやで。」
「でも確か…置き手紙にはデートって…。」
「デートだよ?」
「アレクがいたらデートじゃないよ!?」
「そうなの?男女2組でお出かけする事を、ダブルデートって言うんじゃないの?」
「どこからそんな言葉を覚えてきたんですか…。」
「男女2組という事は…ユイもいるって事?」
「呼んだ?」
「あ、ユイ!」

ユイが私達に気づいて歩み寄ってきた。彼女の手には、アレクが持っている紙袋と違うデザインの物が握られている。

「どうしてルナがここに…」

私の隣に立っていたツヴェルに気づいた彼女は、歩みを止めて表情を曇らせた。

「お待たせ~フランく…あ、あれ?ツーくん…!」

後ろからやって来たララが、ツヴェルに気付いて小走りでこちらにやって来た。

「おかえりララちゃん。気に入った服は見つかった?」
「あ、うん…!」
「お迎えも来たし、そろそろ帰ろっか。」
「そうだね。…ごめんね?2人に黙って出かけちゃって…。」
「ううん!元気になったみたいでよかった。」
「2人の看病のおかげだよ。ありが…」
「やめてください…!礼なんて…」
「どうして?」
「僕のせいで…こんな事になったんですから…。」
「そんな事…」
「僕は…先に戻ります。」
「ツーくん…!」

彼はお店を飛び出し、来た道を走って行ってしまった。



「ねぇララ。」
「なぁに?ルナちゃん。」

買い物から戻って来た私達は、それぞれの部屋に戻る事になり、私はララと話をする為に彼女の部屋に来ていた。

「ララは…ツヴェルの事どう思ってるの?」
「どうって…?」
「ツヴェル、今回ララに無理させちゃった事をすごく悔やんでた。ララの力になりたくて一生懸命教えてたけど、そのせいで倒れちゃったって…。自分の事をすごく責めてた。」
「私は…ツーくんのせいだなんて思ってないよ…!確かに…厳しい所もあったけど…。私の為にしてくれてるんだってわかったもん。」
「ツヴェルに、ララの気持ちを話してくれない?ツヴェルのせいじゃないよって、ララの口から言ってくれたら、少しは落ち着くと思うから…。」
「そうだね…。ちゃんとお礼も言いたいし…。私、今からツーくんの所行ってくるね。」
「無理はしないでね?」
「うん。ありがとうルナちゃん。」

廊下で彼女を見送ると、私も自分の部屋に戻って行った。



あれから数日が経ち、実習の度に私達の元に来ていたツヴェルは姿を見せなくなっていた。教室で会った時に軽く挨拶をする程度で、彼と出会ったばかりの頃に逆戻りしてしまった。

「ねぇララ。」
「…。」
「ちょっとララ。聞いてる?」
「……え?な、何?ユイちゃん。」
「何ぼーっとしてるのよ。向こうでフランが呼んでるわよ?」
「あ、ごめーん!今行くねー…!」

小走りで駆けて行く彼女の背中を見送ると、ユイは小さくため息をついた。

「最近ずっとあんな調子ね。」
「せやなぁ。ツヴェルが来んくなってから、なんとなく元気ないみたいな気がするよなぁ。」
「なんであいつが出てくるのよ。」
「ユイはそう思わへん?」
「それは…。」
「2人は…ツヴェルの事どんな風に考えてるの?」
「俺はもう気にしてへんよ。悪気があった訳やないし、ララの為にした事やろ?」
「あたしは許してないわよ。別にあいつが居なくてもララが死ぬわけじゃないし、関わる必要ないわ。」
「でも、ララに元気がないのは嫌でしょ?」
「そりゃそうだけど…。」
「私は、ツヴェルと一緒にいる事でララが元気になるなら、なんとかツヴェルを説得したいなって思うんだけど…。」
「説得って言ってもなぁ…。本人の気持ち次第やろ?」
「そっかぁ…。どうしたらいいのかなぁ…。」
「ならあたしが話をつけてくるわ。」
「え!?ちょっと…ユイ!?」

歩き出した彼女の後を慌てて追いかけると、端の方で座って本を読んでいたツヴェルの前にユイが立ちはだかった。

「な、なんですか…?」
「あんた。ララの事、大事なの?大事じゃないの?」
「……はい?」
「好きなのか、好きじゃないのか聞いてんのよ!」
「嫌いではないですが…。」
「何よその曖昧な答えは!」
「ユイ…落ち着いて…?」
「さっきからなんなんですか?…僕はもう、彼女と関わるつもりはありません。ですから安心して…」
「そういう所がムカつくのよ!!!」
「は…?」
「ララに申し訳ない事したと思うなら、償いなさい!あの子の要求、全部叶えてあげるくらいしてみなさいよ!」
「そ…それは…無理です。」
「はぁ!?努力で何とかしろって言ったのあんたでしょ!?」
「僕には…彼女を傷つける事しか出来ません…。」
「あんたが傷つけてから…その後もあの子が傷ついてるのが分からない?」
「えっ…?」
「ララ、ここ最近元気がなくて…。ほとんど笑わなくなっちゃったの。」
「それと僕に一体何の関係が…。」
「いいから来なさい!」
「え!?ちょっ…」

ユイはツヴェルの腕を強引に引っ張って、ララの元へ向かった。

「ララ!」
「ユイちゃん?どうし…」
「…。」
「ツーくん…!」

彼女はツヴェルを見るなり、目を輝かせて駆け寄ってきた。

「休憩がてら、ちょっと2人で話してきなさい。」
「え?」
「な、何を言い出すんですか…!僕は別に話す事なんて…」
「ありがとうユイちゃん!」
 
ユイが差し出したツヴェルの腕を、ララが両手で掴むと、そのまま壁際に引っ張って行ってしまった。

「珍しいね…。ララがあんなに強引に引っ張ってくなんて…。」
「…認めたくないけど、元気がなかった原因はやっぱりあいつみたいね。」
「ユイ…。やっぱりツヴェルの事は許せない?」
「あたしが許せないのは、あいつがララから逃げてる事よ。ちゃんと償うって言うなら、あたしは見守るわ。」
「そっか…。一緒に見守ろう?2人の事。」
「…そうね。」

ユイの想いが通じたのか、ツヴェルはララと向き合い、償う意味を含めて彼女の側で支えていこうと、決意したようだった。
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