エテルノ・レガーメ

りくあ

文字の大きさ
上 下
74 / 165
第8章︰エーリ学院〜中級クラス〜【前編】

第68話

しおりを挟む
「みなさんおはようございまーす!今日から中級クラスに、新しい仲間が増えました!はい、みなさん拍手で出迎えて下さいね~!」

下級吸血鬼から中級に昇級した私達は、拍手で歓迎されながら新しい教室に足を踏み入れた。

「みなさんの席順は、昇級試験の成績順にしました!この紙を見て、席についてくださいね~。」

成績が良かった私とフランは窓際に、中間よりやや上だったユイは窓寄りの後ろの席に、ギリギリで合格となったララとアレクは廊下側の席に着いた。

「では早速ですが、実習を始めたいと思いま~す。着替えてホールに集まって下さいね~。」

着替えを済ませてホールへ向かうと、先に来ていたタクトさん達が集まって話をしていた。

「なんでも構わないよ。俺ももうみんなの事、勝手に呼び捨てにしちゃってるし。」
「そうよ~フラン。歳上だとか~中級だとか、そういうの気にする事ないわ~。」
「ありがとう2人共。やっぱり聞いておいてよかったよ。」
「何の話をしてるの?」
「フランが、俺達の呼び方をどうしたらいいか迷ってたらしいんだ。」
「そんなん気にする奴やないと思ってたのになぁ。意外やわ。」
「意外は失礼だよアレクくん。相手の事を考えてるって事だもん。私は、それも大切な事だと思うよ?」
「そうよアレク。」
「そ、そんなに言わんでもええやん~。」    

話をしていると、生徒達の前にニム先生がふわふわと飛んで来た。

「今日の実習内容は、みなさんにおまかせします!魔法を頑張りたい人は魔法を中心に、武器の扱いを頑張りたい人は武器の生成を中心に、各自行ってください~。」

その一言に集まった生徒達がホールにバラけはじめ、私達も端の方に移動し始めた。

「実は私も…タクトさんとレミリアさんの事…どう呼んだらいいかわからなくて悩んでたんです…。」

先程の話の続きを、後ろを歩いていたララが喋り始めた。

「あ、あたしも…。」
「さっきフランにも話したけど、好きなように呼んでくれて構わないよ。呼び捨てでも、愛称でも。」
「愛称…かぁ…。」
「あ、じゃあ、タックとレミリーでどう?」

フランが2人の愛称を提案すると、レミリアの顔に笑みが浮かんだ。

「あらいいわね~。私の名前長いから、短くなって呼びやすそうだわ~。」
「タック…かぁ。改めて愛称で呼ばれると、なんかちょっと照れるね…。」
「なんでもいいんでしょ?」
「あ、うん。もちろん。愛称を付けてもらえた事自体は、すごく嬉しいよ。」
「じゃあ、タックって呼ぶね!」
「うん。みんなよろしくね。」
「呼び方は決まった事やし、今度は実習で何やるか決めんとな!」
「魔法にするか…武器生成にするか…。」
「何もみんな、一緒にする事ないんじゃないかしら~?2手に別れるとか~。」
「あたしはどっちを選んでも魔法になるわ。」

オーブを武器にしているユイは、迷う事なく魔法を選んだ。

「僕は魔法は苦手だから、武器の方がいいかなぁ…。」

相変わらず魔法を嫌っているフランは、武器生成の方をやりたい様子だった。

「それなら尚更、魔法を頑張ろうとは思わないの~?」
「俺も魔法はあんまり得意じゃないけど…だからこそ、あえてやるべきなのかもしれない。」

苦手な物から目を背けようとしているフランに対して、タックとレミリーは魔法を勧めている。

「タックは真面目やな~。」
「あんたとは大違いよ。」
「俺は武器も魔法もまだまだやからなぁ~。どっちもせなあかんけどなぁ。」
「わ、私も…。」

アレクとララは、昇級試験でギリギリの合格だった事もあって、どちらもやりたいようだった。

「私はどっちでもいいよ!」
「私もみんなに合わせるわ~。」

一方私とレミリーは、どちらでも構わないという意志を示した。

「この流れなら魔法やな!」
「そうね。」
「フランくんには悪いけど…。」
「ううん。僕も試してみたい事があったから丁度いいかも。頑張るよ。」

こうして私達は、結局全員で魔法の訓練をする事に決めた。



「まずは火からよね!」
「そ、そうだね…。」

少々強引に、火の魔法から練習を始める事になり、ユイは興奮気味だった。

「ほんとユイは火が好きやなぁ。」
「1番派手でかっこいいからよ!」
「俺も、火が1番かっこいいと思う。あんまり使いこなせないんだけどね…あはは。」
「あ、あたしでよければ教えるわ!」
「ほんと?それは助かるなぁ。ありがとうユイ。」
「えー!ユイちゃん、僕には教えてくれないのに!」
「フランはルナに教えてもらうでしょ?」
「な、なんでわかったの…?」
「お見通しよ。」
「わ、私もルナちゃんに教えて貰おうかなぁ…。」
「うん。いいよ!」
「俺はユイがええなぁ!」
「え?なんでアレクが…」 
「私はルナに教えてもらいたいわ~。」
「ほら!2手に別れるなら、半分にするのが鉄板やで!」
「いつから2手に別れる事になったのよ!」
「いいじゃない。そうしましょうよ~。」
「…しょうがないわね。」

こうして、私とユイのチームに別れて魔法の練習を始める事にした。

「ねぇレミリー。」
「なぁに?」
「レミリーは教えてもらわないといけない程、魔法が苦手なの?」
「いいえ?得意ではないけれど、不得意でもないわよ~。」
「え?じゃあなんで私に教えてもらうって言ったの?」
「アレク、ユイの事が好きなんでしょう?」
「ど、どうしてわかるの!?」
「見てたらわかるわ~。ユイちゃんのグループに入れてあげる為に、わざとそう言ったのよ~。」
「レミリーってそういう所ちゃんと見てるんだね…。」

レミリーは、感心しているララの耳元に口を寄せて何かを囁いた。

「す、凄いねレミリー…。」
「うふふ。」
「ねールナちゃーん。僕達もやろうよ~。」
「あ、うんー!」

私はフランに、レミリーはララにそれぞれ魔法を教え始めた。



「ルナー。」
「どうしたの?ユイ…」

ユイと共にタックとアレクがこちらにやって来た。

「あたし1人じゃ、2人を相手に教えられるのも限界だわ。」
「ごめんね、ユイ。俺達の出来が悪いせいで…。」
「そ、そういう意味じゃないの!ルナはあたしと違って、全部の属性を満遍なくやってるから…。ルナの方が適任だと思ったのよ。」
「あ、うん。私は全然大丈…」
「“……我が意思に従え。グラヴィタシオン”」

少し離れた場所で、フランが念力魔法を唱えていた。彼の前に置かれた模型が空気の力で押しつぶされ、3分の1程の大きさになった。

「ちょ、ちょっとフラン…!あんたいつの間にそんな魔法使えるようになったの?」
「…!」

彼は驚いたのか、ユイに掴まれた腕を即座に振り払った。

「え…。」
「…あ。ご、ごめんユイちゃん。びっくりしてつい…。」
「う、ううん。こっちこそ…ごめん…。」
「なんや凄いなフラン!今のって念力魔法ちゃうんか!?」
「ルナちゃんの教え方がいいからかな?」

彼は冗談混じりに、そんな事を言ってみせた。

「ユイの爆破魔法も凄かったけど、フランのも結構凄かったよ。」
「ううん。まだまだだよ。…僕、ちょっとトイレに行ってくるね。」
「いってらっしゃい~。」



「ふぅ…。」
「…フラン。」

トイレの前の水場で、ため息をついている彼の背中に声をかけた。

「あれ?ルナちゃんもトイレ?」
「ううん。その…あんな魔法使ってたから…大丈夫かな?って思って…。」
「大丈夫だよ。あれはルドルフがしたんだ。」
「え、そうなの?」
「うん。魔法の発動の時だけ彼と変われたらいいなと思って、試してみたんだ。僕には出来ない魔法を使えるのかどうかとか、交代するのにどのくらい時間がかかるのかな?とか。」
「そうだったんだ…びっくりしちゃった。」
「ごめんごめん。いつかは、彼の事もみんなに話さなきゃとは思うんだけど…。そういう時だけ臆病になっちゃうんだよね…僕…。」
「フランだけじゃないと思うよ。私だって…ルカの事…。」
「お互いに秘密を共有するって言うのもいいかもしれないね。…しばらくは心の準備がいるかな…。っと…そろそろ戻らないとね。僕は、先に戻ってるよ。」
「うん…。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

魔法少女のなんでも屋

モブ乙
ファンタジー
魔法が使えるJC の不思議な部活のお話です

暴虎馮河伝

知己
ファンタジー
神仙と妖が棲まう世界「神州」。だがいつしか神や仙人はその姿を消し、人々は妖怪の驚異に怯えて生きていた。    とある田舎町で目つきと口と態度の悪い青年が、不思議な魅力を持った少女と運命的に出会い、物語が始まる。 ————王道中華風バトルファンタジーここに開幕!

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~

結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は 気が付くと真っ白い空間にいた 自称神という男性によると 部下によるミスが原因だった 元の世界に戻れないので 異世界に行って生きる事を決めました! 異世界に行って、自由気ままに、生きていきます ~☆~☆~☆~☆~☆ 誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります! また、感想を頂けると大喜びします 気が向いたら書き込んでやって下さい ~☆~☆~☆~☆~☆ カクヨム・小説家になろうでも公開しています もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~> もし、よろしければ読んであげて下さい

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

処理中です...