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第5章︰エーリ学院【前編】
第47話
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「おはようルナちゃん。」
翌日、教室でララと話をしていると、フランがこちらにやって来た。
「あ、おはようフラン。もう身体は平気?」
「うん。随分良くなったよ。ララちゃんもおはよう。」
「お、おはよう…。」
女子会で話した内容で動揺しているのか、彼女は目を逸らしながら挨拶を交わした。
「ララちゃんどうしたの?なんだか元気ないね?」
「そ、そんなことないよ!」
彼はララの元に近づくと、彼女の額に手を当てた。
「え、な、何///!?」
「うーん。熱はなさそうだね…。顔が赤いけど…なんの病気かな?ルナちゃんわかる?」
「え?んーと…。」
「恋の病よ…。」
鞄を持ったまま、ユイがこちらに歩み寄ってきた。
「ユ、ユイちゃん!?」
「コイノ…ヤマイ?それって、どんな病気なの?」
「知らないの?…女子なら誰でもなる病気よ。」
「え!…そ、そうなんだ…。ごめんね…ララちゃん…悪気はなかったんだ…。」
彼は申し訳なさそうに彼女の額から手を引くと、後ろに2歩程下がって距離をとった。
「う、うん…大丈夫。気にしてないよ…。」
「じゃあ…僕は席に戻るね。また後で。」
恋の病と聞いて、一体彼はどんな病気を想像したのだろうか…。彼の謎は深まるばかりだった。
授業中、私はぼーっと窓の外を眺めて考え事をしていた。
フランとララの事も気になるのだが、今の私の頭の中にはルカの事が浮かんでいた。好きな人は誰かと聞かれて、私はミグと答えた。しかしミグは使い魔であり、好きは好きでも恋や愛ではない事は自分が1番よくわかっていた。そうした時、私が好きな人とは誰なのだろうか?自分にそう問いかけると、真っ先に思い浮かぶのはルカだった。
初めて会ったのは夢の中だったが、彼の優しい性格と、気さくな笑顔が心地よく感じ、一緒にいるのが楽しいといつも思っていた。恋や愛がどういうものなのか、フラン程ではないが私にもイマイチよくわからない。好きとは一体なんなのか…
「…ルナさん!!!」
「え!?あ、はい!!!」
「何をぼーっとしているのですか!授業中ですよ!?」
遠くにいたはずのニム先生が、私の目の前まで迫っていた事に全く気づかなかった。周りの生徒達が、くすくすと笑い始める。
「ご、ごめんなさい…。」
「ルナさん。教科書のこの部分読んでください。」
「は、はい…。」
言われた通り、教科書を読み始めた。
好きとは一体なんなのか…。その答えがすぐに出ることはなかった。
「お、おかえり…ルナ。」
「た、ただいま…。」
あれから、ルカとは仲直りをした…はずなのだが、なんとなく気まずい空気が流れ、ギクシャクした関係が続いていた。
彼が座っている前のテーブルに、様々な草花が広げられている。
「それ…薬草?」
「あー…うん。この前、夜中に摘んだやつだよ。」
「あぁ…あの時の…。」
暗くなった森の中を彼と歩いた事、珍しく彼が声を荒らげて怒った事、去り際に彼が見せた表情…起こった出来事が頭の中で繰り返される。
「その…立ってないで座ったら?」
「あ、うん…。」
彼の向かいのソファーに座ると、彼は再び手を動かし始めた。
溝がついている器の中に薬草を入れると、木の棒を動かして粉々にすり潰した。粉々になった数種類の薬草を白い紙の上にのせて、透明な瓶に詰めていく。その瓶を塞ぐように、彼はそっと手を乗せた。
「“ミラの加護を受けし者。光の精霊と契を交わし、我に力を与えよ。我が祈りは加護となり、その恩恵は汝に還らん。更なる力を、我に授けたまえ。リカールストヴァ”」
彼は、私の目の前で光魔法を唱えてみせた。驚きの余り、思わず出そうになった声を手で抑え込んだ。瓶の中の薬草が溶け始め、緑色の液体に変化した。
「…ルナ。どうしたの?…気分が悪い?」
「う、ううん…びっくり…しただけ…。」
「びっくり?薬を生成するのは初めて見た?」
「それもそうだけど…光の魔法を使ってたから…。ルカって魔法が使えたんだね。」
「あ、うん…前は使えなかったんだけど…。ここに来てから使えるようになったみたい。それから本を読んで勉強したんだ。」
「ここに来た。」それは、ルカの身体が無くなり、私の身体の中に入ったという事を意味していた。
「そう…なんだ…。」
「ただいまー。」
薬草のはいった籠を持ったミグが、家に戻ってきた。
「おかえりミグ。」
「あ、ルナ。来てたんだな。」
「うん…。」
「ルカ。この薬草どこに置く?」
「あ、じゃあ…棚にしまって置いてくれる?」
「了解。」
彼は部屋の奥に消えていくと、再びルカと2人きりになった。
「ルナ。そろそろ起きる時間だよ。」
「え、そう?…そっか。」
その場に立ち上がると、彼も同じように立ち上がり、先程作った薬の瓶を私に差し出した。
「これ、よかったら飲んで。」
「これって…どんな薬なの?」
「実は…なんの効果もないんだ。」
「へ…?じゃあ、なんの為に…?」
「僕が初めて作った薬だから…ルナに飲んでもらいたいな…って。その代わり、美味しく出来てるはずだから…!」
「う、うん…なら貰うね。」
瓶の蓋を開けると、花の甘い香りが鼻を抜けていく。飲んでみると、香りと同じように甘い味が口の中に広がった。甘過ぎず、後味が残りにくくて飲みやすい、薬とは思えない物だった。
「おいしい…。これ、本当に薬なの?」
「よかった…!えっと…薬のつもりで作ったけど…。効果はないから…薬じゃないのかもね。」
「あはは…何それ!…次はちゃんと成功した薬を作ってね?」
「う、うん。頑張るよ。」
「じゃあそろそろ行くね。」
「うん。いってらっしゃい。」
ルカの薬を飲んでから数日の間、随分と調子がよかった。忘れ物はしなかったし、授業中にニム先生に怒られる事もなく、平和な日々を過ごしていた。
「ねえルナ。最近いい事あった?」
「え?どうして?」
「機嫌がいいように見えるからよ。」
「そうかな?普通だと思うけど?」
「なんか怪しいわね…。」
「えー?そんな事…」
ユイと話をしながら廊下を歩いていると、曲がり角から突然現れた人影とぶつかった。身体が投げ飛ばされ、床に倒れ込んだ。
「ってて…。」
「ルナ!大丈夫!?…ちょっとあんたどこ見て歩…」
ユイの目線の先には、私と同じように床に倒れた少女の姿があった。腰の辺りまで伸びていそうな長めの金髪のツインテールをしていて、青いリボンをつけている。彼女が目を開くと、透き通った翠色の瞳と目が合った。その少女は、ユイを生き写したのではないかと言える程に、そっくりだった。
「ユ、ユイにそっくり…。」
「あんた…なんでこんな所にいるの?」
「…ぶつかってごめん。怪我…ない?」
少女は立ち上がると、私に手を差し出した。彼女の手は、白い手袋で覆われている。
「大丈夫です…。その…あなたは大丈夫ですか?」
「平気。」
「ルナ。行きましょ。授業に遅れるわ。」
「で、でも…この子…」
「そんなのに構わなくていいから!早く行きましょ!」
ユイは強引に手を引き、教室へと向かった。
「ねえララ。さっき、ユイに凄く似た子と会ったんだけど…。誰か知ってる?」
休憩の時間、ララとトイレにやってくると、廊下で出会った少女の話をした。
「ユイちゃんに似た子?あぁ…ユノさんの事かな?」
「ユノさん?名前までそっくり…。」
「そりゃそうだよ。双子の姉妹なんだよ?」
「へー!ユイって双子だったんだ!知らなかった。」
「凄く似てるよね。リボンの色とか髪の長さとかちょっとだけ違う所があるし、性格は全く違うから…見間違える事はほとんどないけどね。」
「そうなんだ…。」
「でも…ユイちゃんの前でユノさんの話はしない方がいいよ。機嫌悪くなっちゃうから。」
「ふぅん…なんでだろうね?」
「そこまでは知らないけど…。触らぬ神に祟りなしだよ、ルナちゃん。」
「う、うん…わかった。そうするね。」
授業を終えて、いつものように部屋に戻ろうと荷物をまとめていると、遠くの方でフランが声を掛けてきた。
「ルナちゃーん。ちょっと来てー。」
「なんだろ?はーい。」
教室の扉までやってくると、廊下で出会った少女、ユノの姿があった。
「あ、あなたは…ユノさん…?」
「はい。」
「ルナちゃんに、渡したい物があるんだって。」
「渡したい物?」
「正確には、渡して欲しい物。姉様に。」
「姉様って…。」
「ユイちゃんの事だね。彼女なら、まだ教室にいるよ?直接渡したら?」
「いえ、あなたにお願いします。これ。」
彼女はポケットからピンクのハンカチを取り出すと、それを私に差し出した。
「これ、ユイのハンカチ?」
「そう。あなたが、拾った事にして。…後は、お願いします。」
彼女はそう言い残すと、静かに来た道を戻って行った。
「フランは2人の事知ってる?」
「もちろん。有名な話だから、エーリにいる人は大体知ってるはずだよ。」
「仲が悪いの?喧嘩してるとか…?」
「仲は悪いよ、ものすごく。喧嘩じゃないけどね。」
「喧嘩じゃないならなんで…」
「ユイちゃんは、姉だけど下級吸血鬼。それに比べてユノちゃんは、妹なのに上級吸血鬼。エーリで1番2番を争う魔法の使い手なんだ。ユイちゃんからしたら、姉としての立場はないし、妹ばかりチヤホヤされていい気はしないんだろうね。」
「へぇ…そうなんだ…。」
「ちょっと2人共何してるのー?早くルナの部屋行きましょー?」
教室の中からユイの声が聞こえ、私達は慌てて中へ戻って行った。
翌日、教室でララと話をしていると、フランがこちらにやって来た。
「あ、おはようフラン。もう身体は平気?」
「うん。随分良くなったよ。ララちゃんもおはよう。」
「お、おはよう…。」
女子会で話した内容で動揺しているのか、彼女は目を逸らしながら挨拶を交わした。
「ララちゃんどうしたの?なんだか元気ないね?」
「そ、そんなことないよ!」
彼はララの元に近づくと、彼女の額に手を当てた。
「え、な、何///!?」
「うーん。熱はなさそうだね…。顔が赤いけど…なんの病気かな?ルナちゃんわかる?」
「え?んーと…。」
「恋の病よ…。」
鞄を持ったまま、ユイがこちらに歩み寄ってきた。
「ユ、ユイちゃん!?」
「コイノ…ヤマイ?それって、どんな病気なの?」
「知らないの?…女子なら誰でもなる病気よ。」
「え!…そ、そうなんだ…。ごめんね…ララちゃん…悪気はなかったんだ…。」
彼は申し訳なさそうに彼女の額から手を引くと、後ろに2歩程下がって距離をとった。
「う、うん…大丈夫。気にしてないよ…。」
「じゃあ…僕は席に戻るね。また後で。」
恋の病と聞いて、一体彼はどんな病気を想像したのだろうか…。彼の謎は深まるばかりだった。
授業中、私はぼーっと窓の外を眺めて考え事をしていた。
フランとララの事も気になるのだが、今の私の頭の中にはルカの事が浮かんでいた。好きな人は誰かと聞かれて、私はミグと答えた。しかしミグは使い魔であり、好きは好きでも恋や愛ではない事は自分が1番よくわかっていた。そうした時、私が好きな人とは誰なのだろうか?自分にそう問いかけると、真っ先に思い浮かぶのはルカだった。
初めて会ったのは夢の中だったが、彼の優しい性格と、気さくな笑顔が心地よく感じ、一緒にいるのが楽しいといつも思っていた。恋や愛がどういうものなのか、フラン程ではないが私にもイマイチよくわからない。好きとは一体なんなのか…
「…ルナさん!!!」
「え!?あ、はい!!!」
「何をぼーっとしているのですか!授業中ですよ!?」
遠くにいたはずのニム先生が、私の目の前まで迫っていた事に全く気づかなかった。周りの生徒達が、くすくすと笑い始める。
「ご、ごめんなさい…。」
「ルナさん。教科書のこの部分読んでください。」
「は、はい…。」
言われた通り、教科書を読み始めた。
好きとは一体なんなのか…。その答えがすぐに出ることはなかった。
「お、おかえり…ルナ。」
「た、ただいま…。」
あれから、ルカとは仲直りをした…はずなのだが、なんとなく気まずい空気が流れ、ギクシャクした関係が続いていた。
彼が座っている前のテーブルに、様々な草花が広げられている。
「それ…薬草?」
「あー…うん。この前、夜中に摘んだやつだよ。」
「あぁ…あの時の…。」
暗くなった森の中を彼と歩いた事、珍しく彼が声を荒らげて怒った事、去り際に彼が見せた表情…起こった出来事が頭の中で繰り返される。
「その…立ってないで座ったら?」
「あ、うん…。」
彼の向かいのソファーに座ると、彼は再び手を動かし始めた。
溝がついている器の中に薬草を入れると、木の棒を動かして粉々にすり潰した。粉々になった数種類の薬草を白い紙の上にのせて、透明な瓶に詰めていく。その瓶を塞ぐように、彼はそっと手を乗せた。
「“ミラの加護を受けし者。光の精霊と契を交わし、我に力を与えよ。我が祈りは加護となり、その恩恵は汝に還らん。更なる力を、我に授けたまえ。リカールストヴァ”」
彼は、私の目の前で光魔法を唱えてみせた。驚きの余り、思わず出そうになった声を手で抑え込んだ。瓶の中の薬草が溶け始め、緑色の液体に変化した。
「…ルナ。どうしたの?…気分が悪い?」
「う、ううん…びっくり…しただけ…。」
「びっくり?薬を生成するのは初めて見た?」
「それもそうだけど…光の魔法を使ってたから…。ルカって魔法が使えたんだね。」
「あ、うん…前は使えなかったんだけど…。ここに来てから使えるようになったみたい。それから本を読んで勉強したんだ。」
「ここに来た。」それは、ルカの身体が無くなり、私の身体の中に入ったという事を意味していた。
「そう…なんだ…。」
「ただいまー。」
薬草のはいった籠を持ったミグが、家に戻ってきた。
「おかえりミグ。」
「あ、ルナ。来てたんだな。」
「うん…。」
「ルカ。この薬草どこに置く?」
「あ、じゃあ…棚にしまって置いてくれる?」
「了解。」
彼は部屋の奥に消えていくと、再びルカと2人きりになった。
「ルナ。そろそろ起きる時間だよ。」
「え、そう?…そっか。」
その場に立ち上がると、彼も同じように立ち上がり、先程作った薬の瓶を私に差し出した。
「これ、よかったら飲んで。」
「これって…どんな薬なの?」
「実は…なんの効果もないんだ。」
「へ…?じゃあ、なんの為に…?」
「僕が初めて作った薬だから…ルナに飲んでもらいたいな…って。その代わり、美味しく出来てるはずだから…!」
「う、うん…なら貰うね。」
瓶の蓋を開けると、花の甘い香りが鼻を抜けていく。飲んでみると、香りと同じように甘い味が口の中に広がった。甘過ぎず、後味が残りにくくて飲みやすい、薬とは思えない物だった。
「おいしい…。これ、本当に薬なの?」
「よかった…!えっと…薬のつもりで作ったけど…。効果はないから…薬じゃないのかもね。」
「あはは…何それ!…次はちゃんと成功した薬を作ってね?」
「う、うん。頑張るよ。」
「じゃあそろそろ行くね。」
「うん。いってらっしゃい。」
ルカの薬を飲んでから数日の間、随分と調子がよかった。忘れ物はしなかったし、授業中にニム先生に怒られる事もなく、平和な日々を過ごしていた。
「ねえルナ。最近いい事あった?」
「え?どうして?」
「機嫌がいいように見えるからよ。」
「そうかな?普通だと思うけど?」
「なんか怪しいわね…。」
「えー?そんな事…」
ユイと話をしながら廊下を歩いていると、曲がり角から突然現れた人影とぶつかった。身体が投げ飛ばされ、床に倒れ込んだ。
「ってて…。」
「ルナ!大丈夫!?…ちょっとあんたどこ見て歩…」
ユイの目線の先には、私と同じように床に倒れた少女の姿があった。腰の辺りまで伸びていそうな長めの金髪のツインテールをしていて、青いリボンをつけている。彼女が目を開くと、透き通った翠色の瞳と目が合った。その少女は、ユイを生き写したのではないかと言える程に、そっくりだった。
「ユ、ユイにそっくり…。」
「あんた…なんでこんな所にいるの?」
「…ぶつかってごめん。怪我…ない?」
少女は立ち上がると、私に手を差し出した。彼女の手は、白い手袋で覆われている。
「大丈夫です…。その…あなたは大丈夫ですか?」
「平気。」
「ルナ。行きましょ。授業に遅れるわ。」
「で、でも…この子…」
「そんなのに構わなくていいから!早く行きましょ!」
ユイは強引に手を引き、教室へと向かった。
「ねえララ。さっき、ユイに凄く似た子と会ったんだけど…。誰か知ってる?」
休憩の時間、ララとトイレにやってくると、廊下で出会った少女の話をした。
「ユイちゃんに似た子?あぁ…ユノさんの事かな?」
「ユノさん?名前までそっくり…。」
「そりゃそうだよ。双子の姉妹なんだよ?」
「へー!ユイって双子だったんだ!知らなかった。」
「凄く似てるよね。リボンの色とか髪の長さとかちょっとだけ違う所があるし、性格は全く違うから…見間違える事はほとんどないけどね。」
「そうなんだ…。」
「でも…ユイちゃんの前でユノさんの話はしない方がいいよ。機嫌悪くなっちゃうから。」
「ふぅん…なんでだろうね?」
「そこまでは知らないけど…。触らぬ神に祟りなしだよ、ルナちゃん。」
「う、うん…わかった。そうするね。」
授業を終えて、いつものように部屋に戻ろうと荷物をまとめていると、遠くの方でフランが声を掛けてきた。
「ルナちゃーん。ちょっと来てー。」
「なんだろ?はーい。」
教室の扉までやってくると、廊下で出会った少女、ユノの姿があった。
「あ、あなたは…ユノさん…?」
「はい。」
「ルナちゃんに、渡したい物があるんだって。」
「渡したい物?」
「正確には、渡して欲しい物。姉様に。」
「姉様って…。」
「ユイちゃんの事だね。彼女なら、まだ教室にいるよ?直接渡したら?」
「いえ、あなたにお願いします。これ。」
彼女はポケットからピンクのハンカチを取り出すと、それを私に差し出した。
「これ、ユイのハンカチ?」
「そう。あなたが、拾った事にして。…後は、お願いします。」
彼女はそう言い残すと、静かに来た道を戻って行った。
「フランは2人の事知ってる?」
「もちろん。有名な話だから、エーリにいる人は大体知ってるはずだよ。」
「仲が悪いの?喧嘩してるとか…?」
「仲は悪いよ、ものすごく。喧嘩じゃないけどね。」
「喧嘩じゃないならなんで…」
「ユイちゃんは、姉だけど下級吸血鬼。それに比べてユノちゃんは、妹なのに上級吸血鬼。エーリで1番2番を争う魔法の使い手なんだ。ユイちゃんからしたら、姉としての立場はないし、妹ばかりチヤホヤされていい気はしないんだろうね。」
「へぇ…そうなんだ…。」
「ちょっと2人共何してるのー?早くルナの部屋行きましょー?」
教室の中からユイの声が聞こえ、私達は慌てて中へ戻って行った。
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レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
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