29 / 165
第3章︰人間と吸血鬼
第26話
しおりを挟む
「お待ちしてました。さ、どうぞ。」
「お、お世話になります…!」
大きな扉を開けてギルドの中に入ると、何度も通った階段を上り、毎回案内されていた部屋の前を通り過ぎて、さらに奥へ向かって廊下を進んだ。
「王城に比べたら…窮屈な所ですが…。」
「そんなことありませんよ!お城が広すぎるんです!」
「ふふっ。それなら…大丈夫そうですね。それよりも…お2人共同じ部屋でよろしかったんですか?」
「執事ですから。常に側にいるべきかと。」
「そうですね。その方が私も安心出来ます。」
「あの…クラーレさん。私も…他の人と同じように接して貰えませんか?確かに私はテトの婚約者…ですけど、他の人達が私に気を使いすぎてしまうの嫌なんです…。」
「ルナ様がそれでいいのでしたら…。わかりました。既にあなたの事を知っている者には、喋らないように伝えておきます。」
「ミグも、私の事ルナ様って呼んだらだめなんだからね?素で喋ってくれればいいから。」
「わ…わかった。」
「正直…形式的な喋り方は緊張…するよね。僕も未だに慣れられなくて…。」
彼は、優しい表情で恥ずかしそうに笑った。怖い人だと思っていたので、イメージと違って少し驚いた。
「そ、そうですね…!私も…苦手です。」
「僕は、ギルドのみんなの事を家族だと思っています。今日から2人も家族ですよ?」
「…はい!」
1番奥の部屋まで来ると、扉を開けて中に入った。広さは王城の私の部屋の半分程だったが、ベッドが2つとテーブルとソファー、窓際には机も備えてあり2人でも十分な大きさだった。
「2人の部屋はここです。他に何か必要だったら言ってね。」
「わかりました。」
「この間もそうだったけど…他のメンバーと話がしたいよね。紹介も兼ねて、今いる人で良ければ一緒に話に行こうか。」
「是非、お願いします!」
一旦荷物を置いて、再び廊下を歩いた。
「シェリア。はいるよ~。」
「はーい。…あら。あなたがルナさんね。随分可愛らしい子だわ~。」
中にいた女の人が、こちらにやって来ると笑顔で私の手を握った。
「は、初めまして!」
「シェリアは僕の妹なんだ。後で弟も紹介するね。」
「そちらは…ミグさんだったかしら?2人はどういった関係なの?」
「えっ…と…。」
「兄妹です。そそっかしい妹ですが…よろしくお願いします。」
「ふふふ。弟や妹って放っておけないわよね~。そそっかしいのは私の弟もそうよ。しっかりしているように見えてどこか抜けてる所があって…」
「あはは。確かにそうかもね。」
「ど、どんな人なんだろうね?」
「さぁ…。」
「でも、魔法の腕は凄いのよ?あれでも一応、特等戦闘員なのだし…」
「特等戦闘員って何ですか?」
「あぁ…説明してなかったよね。このギルドには階級制度があって、上から順番に…特等戦闘員、一等戦闘員、二等戦闘員の3つに分けられているんだ。」
「特等戦闘員は、お兄様と私、それから弟のリーガルよ。」
「あと…一等戦闘員は5人、二等戦闘員は4人かな?」
「結構沢山いるんですね。」
「そうだね。初めは僕達兄弟3人から始めた小さなギルドだったんだけど…少しづつ増えていっていつの間にかこんなに増えちゃった。」
「へ~…そうなんですね…。」
「記憶が無くて辛い事もあるでしょうけど…私も精一杯力になるわ。なんでも頼ってね?」
「あ、ありがとうございます…!」
「じゃあ、今度はリーガルの所行ってくるよ。」
「わかったわ。ルナちゃん、ミグさん、これからよろしくね~。」
「はいっ!」
部屋を出て、再び廊下を歩き始めた。
「さっき、シェリアも言ってたけど、弟のリーガルは魔法の腕はいいんだけど…ちょっと変わっててね。びっくりしないでね…?」
「一体…どんな奴なんだ…?」
ーバン!
廊下を歩いていた私達の、前方の扉が勢いよく開いた。すると、中から背の高い男の人が飛び出してきた。
「な、なんだ!?」
「この魔力は…君か!!!」
「え、な、なんですか!?」
彼がこちらに走り寄って来ると、私の肩を両腕でがっちりと掴んだ。
「こらこらリーガル…。初対面の人にそれは失礼だよ。落ち着いて。」
「す、すまない…兄さん…。」
「あなたが…リーガルさん…?」
「そうです。」
「ちょっと、座って話がしたいんだ。部屋に入るよ?」
「はい。どうぞ。」
「温度差激しいな…。」
「個性的…だね。」
部屋の中も個性的で、机の上に何冊もの本が平積みされ、テーブルやソファーの上にも大量の本が積まれ、本棚の中にもびっしりと本が陳列されている。彼の部屋は、あらゆる場所が大量の本で埋め尽くされていた。
「すごい量の本ですね…。」
「読むのが好きなんです。」
「もー…今日連れてくるから片付けてねって言っておいたのにー…。」
「大丈夫ですよ!散らかってても全然気にしないので…!」
「ごめんね~…。リーガル。今度散らかってたら、少しづつ本捨てるからね?」
「そ、それだけは勘弁してくれ…!!」
「はは…。」
本を移動させて、座れる場所を確保するとようやく話を始めた。
「確か、ルナという名前だったか?」
「は、はい!そうです。」
「歳はわからないそうだが…見た所、ウナと同じくらいだな。」
「ウナ?」
「ウナは、僕の娘だよ。今は…別の街に派遣しているんだ。」
「名前も歳も似ていると、なんだか姉妹のように思えるな。」
「ウナさん…かぁ…。」
「派遣しているメンバーとも話が出来たらいいんだけどね…。いつ戻るかは特に決めてないから、彼等の意思でここに戻るまで、話せないと思う…。」
「そうですか…。あ、あと…リーガルさんに魔法の使い方を教えてもらいたいんですけど…。」
「俺でよければ教えよう。ただ、光魔法は苦手なんだ…そっちは兄さんにお願いしてくれ…。 」
「もちろんそのつもりだよ。」
「ありがとうございます!よろしくお願いします…!」
「魔法の話は、明日からにしようか。あとは…ミグさんがどれくらい出来るのか見てみたいんだけど…。」
「そういえば…ミグが戦う所なんて見た事ないなぁ。」
「自分の身を守るくらいなら…なんとか。」
「じゃあ、ちょっと移動しようか。リーガル、明日からよろしくね。」
「あぁ。わかった。」
1階に降りて、建物の奥にある渡り廊下を進むと、部屋の3倍くらいの広い場所にやって来た。
「ここは…?」
「ここは訓練場だよ。この場所で魔法の練習をしたり、各自で訓練したりするんだ。」
「魔法の練習は明日じゃ?」
「今日は、ミグさんの実力を見せてもらうために。…ちょっと、僕を殺す気でやってくれるかな?」
「え!?」
「本当に殺してしまったら?」
「ちょっとミグ!!」
「あはは…!殺すっていうのは冗談だけど、どちらかが負けを認めるまで…って事でどうかな?」
「わかりました。」
「ルナちゃんは、離れた所で見ててね。…危ないから、手を出したらだめだよ?」
「は、はい…。」
「どうぞ。始めていいよ?」
「ちっ…!」
懐から針を取り出すと、彼の顔を目掛けて投げた。次々投げられる針を、軽々と避けていく。
「避けるだけか!?」
「言ったでしょ?君の実力を見る為だって。手を出すまでもないって事さ。」
「舐めやがって…。」
彼の挑発に、針を投げる本数とスピードが上がっていく。腕や足にかすりはするものの、避けられなかったものは手で弾かれ、1本も刺さることはなかった。
「それにしてもすごい量だね。一体、何本針を持ち歩いてるの?」
「答える義務はない。」
「確かにそうだけど…。もう少し心にゆとりを持つべきだ。それだから周りがよく見えてない。」
「見えてない?何が…」
「僕が避けずに弾いた針。僕が避けていたら、彼女に当たる可能性があるよ?」
「…!」
すると、いつの間にか彼の背後に回り込まれ、地面に落ちていた針を拾って首元にあてていた。
「そうやってすぐに隙ができる。君に足りないものは、心のゆとりと洞察力、あとは冷静さかな?近距離に詰められた時の対処も必要だね。」
「っ…。」
「ミグ…。」
「負けだな…。」
「子供を虐める大人みたいな真似をしてごめんね。」
「こっちこそ…。腕とか足とか擦れて…大丈夫ですか?」
「あれならもう治しておいたよ。」
「え!?あ、ほんとだ…無傷…。」
「治癒魔法が得意なんだ。適正な属性だったらルナちゃんにも教えてあげるね?」
「え?あ、はい…。」
「明日、ミグさんにはシェリアの指導で訓練してもらおうかな。それでいい?」
「はい。お願いします。」
「来たばかりでこんな事させちゃって、疲れたでしょ?夕飯の時間はまだ先だからそれまで部屋で休んで。」
「は、はい。」
「じゃあ、これからよろしくね。2人共。」
先程の緊迫した雰囲気はどこへ行ったのか、彼はいつの間にかいつもの優しい雰囲気へと変わっていた。
「何もしてないのに疲れた…!」
「はー…完敗。」
私達は部屋に戻ると、それぞれのベッドに倒れ込んだ。
「うーん…あれは、クラーレさんが強すぎると思うよ…。」
「な?だから言っただろ?何か、内側に秘めてるものがあるんだって。」
「殺す気で…なんて冗談で言ってたけど…。私、背筋氷っちゃったよ…。」
「明日は俺ら別行動みたいだし…。これからは…あんまりお前についていられないのかもしれないな…。」
「そうだね…。でも、私も自分の身くらい守れるようにならなきゃいけないし、いい機会かも!」
「お互い、頑張らないとな。」
「うん!」
ーコンコン
「失礼します…。」
ノックの音と共にリアーナが扉をそっと開けて、顔を覗かせた。
「あ、リアーナさん!」
「お久しぶりです。今日からこちらに来ると聞いていたので、挨拶にと思いまして。」
「俺らと話すの普通してくれっていうのは、マスターから聞いてないか?」
「そ、そうでしたね…。ごめんなさい…つい…。気をつけ…るね…!」
「今日からいきなりは難しいよね…。少しづつ仲良くなれたら嬉しいな!」
「うん。…あれ…?その…腕に付けてるのって…前はしてなかったよね?」
彼女は私が身に付けているブレスレットに気付くと、目を丸くした。
「あ、そう…だね!私が身に付けてた物らしいんだけど…。」
「これ、ルビーなのかな?綺麗な赤だね。」
「え?…あれ?紫じゃなかったっけ…。」
「変だな。確かにテトから受け取った時は、紫だったはずだけど…。」
「そう…だよね?」
少し目を離した隙に、とても紫には見えない程、ルビーを思わせる鮮やかな赤い色をしていた。
「もしかして、ムードリングってやつかな?」
「ムードリング?」
「うん!その時の気分で色が変化するブレスレット…だったかな?聞いた事があるだけなんだけどね…。」
「気分で色が変わるのか…そんなものもあるんだな。」
「不思議!リアーナさんは、なんでも知ってるんですね!」
「そんなことは…。あ、あの…ルナさん…そうやって敬語で話をされると、私までそうなっちゃいそうで…。出来れば同じように接してもえるといいな…。」
「そ、そっか…!わかった!私も努力するね!」
「ありがとう。あ…私、そろそろ報告に行かないと…。じゃあ、また後でね!」
「うん!またね。」
ーコンコン
部屋でくつろいでいると、再びノックの音の後扉が開いた。
「お邪魔します…!」
「あんたは確か、受付の…。」
「は、はい!」
「あ、久しぶり!えっと…イルムさんだっけ?」
杏色の髪を左右にまとめ、くりくりとした焦げ茶色の瞳をしている。
「そうです!私、イルム・イルマーダって言います。夕飯の準備が出来たので、呼びに来ました!」
「わざわざありがとう…!ミグ行こ~。」
「ん。」
廊下に出て、イルムは私達の前を歩き始めた。
「食堂は1階にあるんです。この階段を降…」
私達の方を向き、話に夢中になっていると、階段を踏み外し後ろに倒れかけた。咄嗟に反応したミグが、彼女の腕を掴んだ。
「っ…!だ、大丈夫か?」
「ご、ごめんなさい…!!!」
「あんたいつもこうなのか…?」
「注意してるはずなんですけど…。何故かいつも転んじゃって…あはは…。つ、着きました!ここです!」
1階の開けた空間には、大きなテーブルとそれを取り囲むように、何個もの椅子が用意されている。先程顔を合わせたメンバー達が、既に席に着いていた。
「あ、2人共!ここに座って~。」
「は、はい…!」
クラーレさんに呼ばれて席に着くと、テーブルの上に沢山の料理と飲み物が並べられていた。
すると彼はその場に立って、話を始めた。
「全員座ったかな?もう話した人がほとんどだと思うけど、改めて今日から僕達のギルドに住むことになった、ルナさんとミグさんです。みんな仲良くしてね?…それじゃあ、食べようか。」
彼が話終えて席に着くと、全員が手を合わせ目を閉じた。その姿はまるで、何かに祈りを捧げる様だった。
「ミラ様に感謝して、頂きます。」
「「頂きます。」」
「い、頂きます!」
「頂きます…。」
先程の神聖な雰囲気は一瞬にして消え、賑やかな食事が始まった。
「あ、ごめんね。驚いた?」
「いつもこれやってから食べるんですか?」
「ええ、そうよ。食べ物に、しっかりと感謝をしてから食べるの。」
「あの…ミラ様っていうのは?」
「ミラ様っていうのは、ミッド王国で信仰してる女神様の事だよ。」
「僕達の故郷では食べる前に、こうやってお祈りしてから食べるんだ。」
「ミラ様は、魔法の力で作物に必要な日光や雨をもたらすと言われている。小さい頃、両親に教えられたものだ。」
「あ!だから、魔法の詠唱の時にも、ミラの加護を受けし者~って言うんですね!」
「えっ…。」
「え?」
その言葉を聞いたクラーレさんは、口に運びかけたスープのスプーンを持ったまま、硬直してしまった。
「兄さんが教えたのか?」
「…え、いや。僕は教えてないけど…。」
「?」
「ルナちゃん。魔法の詠唱してみてくれる?なんでもいいから。」
「え、でも…ここじゃ…。」
「いいから!」
「は、はい…っ…。…“ミラの加護を受けし者。光の精霊と契を交わし、我に力を与えよ。ルミ…エール…”」
呪文を唱えると、目の前が真っ白になり、思わず目をつぶった。恐る恐る目を開くと、何かが起こった様子はなかった。
「なんだったんだ?今の…。真っ白になったけど…。」
「何も…起こってないみたい…ですけど…。」
「おかしいなぁ…。成功したと思ったのに…。」
「魔法自体はちゃんと発動してたよ…。けどこれは…。」
「魔法の事、私はさっぱりわからないけど…とにかく今はご飯食べましょ?その後、お兄様の部屋で話をすればいいわ。」
「そう…だね…。」
彼の表情がどこか悲しげで、見てはいけないものを見てしまったような、そんな顔をしていた。
夕食後、特等戦闘員であるシェリアさん、リーガルさんと共に、クラーレさんの部屋に集まった。相変わらず、彼の表情は曇ったままだった。
「クラーレさん…大丈夫ですか?」
「う、うん。」
「お兄様、何か気になる事があるの?」
「…僕がルカに、初めて教えた魔法がルミエールだったんだ。その時も…さっきみたいに、光っただけで何起きなかった。」
「ルカが…。」
「ルナは、俺の部屋に来た時、本の中身を読んだか?」
「いえ!触れてもいません…!」
「記憶を無くしているのに、どうしてルナちゃんは詠唱を知っていたのかしら?不思議だわ…。」
「ごめんなさい…。私にもよくわからないです…。」
「そう…だよね…。ごめん…取り乱したりして。」
「い、いえ…。」
「ともかく、明日は予定通り魔法の練習をしよう。朝食が終わったら、1階の訓練場で待っててくれ。」
「わかりました。」
自室に戻ると、彼がソファーに座って待っていた。
「おかえり。」
「ただいま!あ、いい匂い。紅茶を飲んでたの?」
「お前の分もあるぞ。ほら。」
「ありがとう!」
彼の隣に座ると、カップに紅茶が注がれた。
「魔法の事…何か聞かれたのか?」
「聞かれたけど…。よくわからくて…。」
「少しづつ、色々思い出してきたって事なのかもな。」
「そうかも…。」
「そろそろ寝るか。明日は訓練があるんだし。」
「うん…!おやすみミグ。」
部屋を暗くして、真新しいベッドに包まると、今日の事を思い返していた。
私の周りで起きている不思議な出来事は、謎ばかりでまだ解決には至らないものばかりだった。ただ、このギルドに関わっていたルカと、その彼が私の夢に出てくる事は、きっと何か関係があるのだと…そう思い始めていた。
「お、お世話になります…!」
大きな扉を開けてギルドの中に入ると、何度も通った階段を上り、毎回案内されていた部屋の前を通り過ぎて、さらに奥へ向かって廊下を進んだ。
「王城に比べたら…窮屈な所ですが…。」
「そんなことありませんよ!お城が広すぎるんです!」
「ふふっ。それなら…大丈夫そうですね。それよりも…お2人共同じ部屋でよろしかったんですか?」
「執事ですから。常に側にいるべきかと。」
「そうですね。その方が私も安心出来ます。」
「あの…クラーレさん。私も…他の人と同じように接して貰えませんか?確かに私はテトの婚約者…ですけど、他の人達が私に気を使いすぎてしまうの嫌なんです…。」
「ルナ様がそれでいいのでしたら…。わかりました。既にあなたの事を知っている者には、喋らないように伝えておきます。」
「ミグも、私の事ルナ様って呼んだらだめなんだからね?素で喋ってくれればいいから。」
「わ…わかった。」
「正直…形式的な喋り方は緊張…するよね。僕も未だに慣れられなくて…。」
彼は、優しい表情で恥ずかしそうに笑った。怖い人だと思っていたので、イメージと違って少し驚いた。
「そ、そうですね…!私も…苦手です。」
「僕は、ギルドのみんなの事を家族だと思っています。今日から2人も家族ですよ?」
「…はい!」
1番奥の部屋まで来ると、扉を開けて中に入った。広さは王城の私の部屋の半分程だったが、ベッドが2つとテーブルとソファー、窓際には机も備えてあり2人でも十分な大きさだった。
「2人の部屋はここです。他に何か必要だったら言ってね。」
「わかりました。」
「この間もそうだったけど…他のメンバーと話がしたいよね。紹介も兼ねて、今いる人で良ければ一緒に話に行こうか。」
「是非、お願いします!」
一旦荷物を置いて、再び廊下を歩いた。
「シェリア。はいるよ~。」
「はーい。…あら。あなたがルナさんね。随分可愛らしい子だわ~。」
中にいた女の人が、こちらにやって来ると笑顔で私の手を握った。
「は、初めまして!」
「シェリアは僕の妹なんだ。後で弟も紹介するね。」
「そちらは…ミグさんだったかしら?2人はどういった関係なの?」
「えっ…と…。」
「兄妹です。そそっかしい妹ですが…よろしくお願いします。」
「ふふふ。弟や妹って放っておけないわよね~。そそっかしいのは私の弟もそうよ。しっかりしているように見えてどこか抜けてる所があって…」
「あはは。確かにそうかもね。」
「ど、どんな人なんだろうね?」
「さぁ…。」
「でも、魔法の腕は凄いのよ?あれでも一応、特等戦闘員なのだし…」
「特等戦闘員って何ですか?」
「あぁ…説明してなかったよね。このギルドには階級制度があって、上から順番に…特等戦闘員、一等戦闘員、二等戦闘員の3つに分けられているんだ。」
「特等戦闘員は、お兄様と私、それから弟のリーガルよ。」
「あと…一等戦闘員は5人、二等戦闘員は4人かな?」
「結構沢山いるんですね。」
「そうだね。初めは僕達兄弟3人から始めた小さなギルドだったんだけど…少しづつ増えていっていつの間にかこんなに増えちゃった。」
「へ~…そうなんですね…。」
「記憶が無くて辛い事もあるでしょうけど…私も精一杯力になるわ。なんでも頼ってね?」
「あ、ありがとうございます…!」
「じゃあ、今度はリーガルの所行ってくるよ。」
「わかったわ。ルナちゃん、ミグさん、これからよろしくね~。」
「はいっ!」
部屋を出て、再び廊下を歩き始めた。
「さっき、シェリアも言ってたけど、弟のリーガルは魔法の腕はいいんだけど…ちょっと変わっててね。びっくりしないでね…?」
「一体…どんな奴なんだ…?」
ーバン!
廊下を歩いていた私達の、前方の扉が勢いよく開いた。すると、中から背の高い男の人が飛び出してきた。
「な、なんだ!?」
「この魔力は…君か!!!」
「え、な、なんですか!?」
彼がこちらに走り寄って来ると、私の肩を両腕でがっちりと掴んだ。
「こらこらリーガル…。初対面の人にそれは失礼だよ。落ち着いて。」
「す、すまない…兄さん…。」
「あなたが…リーガルさん…?」
「そうです。」
「ちょっと、座って話がしたいんだ。部屋に入るよ?」
「はい。どうぞ。」
「温度差激しいな…。」
「個性的…だね。」
部屋の中も個性的で、机の上に何冊もの本が平積みされ、テーブルやソファーの上にも大量の本が積まれ、本棚の中にもびっしりと本が陳列されている。彼の部屋は、あらゆる場所が大量の本で埋め尽くされていた。
「すごい量の本ですね…。」
「読むのが好きなんです。」
「もー…今日連れてくるから片付けてねって言っておいたのにー…。」
「大丈夫ですよ!散らかってても全然気にしないので…!」
「ごめんね~…。リーガル。今度散らかってたら、少しづつ本捨てるからね?」
「そ、それだけは勘弁してくれ…!!」
「はは…。」
本を移動させて、座れる場所を確保するとようやく話を始めた。
「確か、ルナという名前だったか?」
「は、はい!そうです。」
「歳はわからないそうだが…見た所、ウナと同じくらいだな。」
「ウナ?」
「ウナは、僕の娘だよ。今は…別の街に派遣しているんだ。」
「名前も歳も似ていると、なんだか姉妹のように思えるな。」
「ウナさん…かぁ…。」
「派遣しているメンバーとも話が出来たらいいんだけどね…。いつ戻るかは特に決めてないから、彼等の意思でここに戻るまで、話せないと思う…。」
「そうですか…。あ、あと…リーガルさんに魔法の使い方を教えてもらいたいんですけど…。」
「俺でよければ教えよう。ただ、光魔法は苦手なんだ…そっちは兄さんにお願いしてくれ…。 」
「もちろんそのつもりだよ。」
「ありがとうございます!よろしくお願いします…!」
「魔法の話は、明日からにしようか。あとは…ミグさんがどれくらい出来るのか見てみたいんだけど…。」
「そういえば…ミグが戦う所なんて見た事ないなぁ。」
「自分の身を守るくらいなら…なんとか。」
「じゃあ、ちょっと移動しようか。リーガル、明日からよろしくね。」
「あぁ。わかった。」
1階に降りて、建物の奥にある渡り廊下を進むと、部屋の3倍くらいの広い場所にやって来た。
「ここは…?」
「ここは訓練場だよ。この場所で魔法の練習をしたり、各自で訓練したりするんだ。」
「魔法の練習は明日じゃ?」
「今日は、ミグさんの実力を見せてもらうために。…ちょっと、僕を殺す気でやってくれるかな?」
「え!?」
「本当に殺してしまったら?」
「ちょっとミグ!!」
「あはは…!殺すっていうのは冗談だけど、どちらかが負けを認めるまで…って事でどうかな?」
「わかりました。」
「ルナちゃんは、離れた所で見ててね。…危ないから、手を出したらだめだよ?」
「は、はい…。」
「どうぞ。始めていいよ?」
「ちっ…!」
懐から針を取り出すと、彼の顔を目掛けて投げた。次々投げられる針を、軽々と避けていく。
「避けるだけか!?」
「言ったでしょ?君の実力を見る為だって。手を出すまでもないって事さ。」
「舐めやがって…。」
彼の挑発に、針を投げる本数とスピードが上がっていく。腕や足にかすりはするものの、避けられなかったものは手で弾かれ、1本も刺さることはなかった。
「それにしてもすごい量だね。一体、何本針を持ち歩いてるの?」
「答える義務はない。」
「確かにそうだけど…。もう少し心にゆとりを持つべきだ。それだから周りがよく見えてない。」
「見えてない?何が…」
「僕が避けずに弾いた針。僕が避けていたら、彼女に当たる可能性があるよ?」
「…!」
すると、いつの間にか彼の背後に回り込まれ、地面に落ちていた針を拾って首元にあてていた。
「そうやってすぐに隙ができる。君に足りないものは、心のゆとりと洞察力、あとは冷静さかな?近距離に詰められた時の対処も必要だね。」
「っ…。」
「ミグ…。」
「負けだな…。」
「子供を虐める大人みたいな真似をしてごめんね。」
「こっちこそ…。腕とか足とか擦れて…大丈夫ですか?」
「あれならもう治しておいたよ。」
「え!?あ、ほんとだ…無傷…。」
「治癒魔法が得意なんだ。適正な属性だったらルナちゃんにも教えてあげるね?」
「え?あ、はい…。」
「明日、ミグさんにはシェリアの指導で訓練してもらおうかな。それでいい?」
「はい。お願いします。」
「来たばかりでこんな事させちゃって、疲れたでしょ?夕飯の時間はまだ先だからそれまで部屋で休んで。」
「は、はい。」
「じゃあ、これからよろしくね。2人共。」
先程の緊迫した雰囲気はどこへ行ったのか、彼はいつの間にかいつもの優しい雰囲気へと変わっていた。
「何もしてないのに疲れた…!」
「はー…完敗。」
私達は部屋に戻ると、それぞれのベッドに倒れ込んだ。
「うーん…あれは、クラーレさんが強すぎると思うよ…。」
「な?だから言っただろ?何か、内側に秘めてるものがあるんだって。」
「殺す気で…なんて冗談で言ってたけど…。私、背筋氷っちゃったよ…。」
「明日は俺ら別行動みたいだし…。これからは…あんまりお前についていられないのかもしれないな…。」
「そうだね…。でも、私も自分の身くらい守れるようにならなきゃいけないし、いい機会かも!」
「お互い、頑張らないとな。」
「うん!」
ーコンコン
「失礼します…。」
ノックの音と共にリアーナが扉をそっと開けて、顔を覗かせた。
「あ、リアーナさん!」
「お久しぶりです。今日からこちらに来ると聞いていたので、挨拶にと思いまして。」
「俺らと話すの普通してくれっていうのは、マスターから聞いてないか?」
「そ、そうでしたね…。ごめんなさい…つい…。気をつけ…るね…!」
「今日からいきなりは難しいよね…。少しづつ仲良くなれたら嬉しいな!」
「うん。…あれ…?その…腕に付けてるのって…前はしてなかったよね?」
彼女は私が身に付けているブレスレットに気付くと、目を丸くした。
「あ、そう…だね!私が身に付けてた物らしいんだけど…。」
「これ、ルビーなのかな?綺麗な赤だね。」
「え?…あれ?紫じゃなかったっけ…。」
「変だな。確かにテトから受け取った時は、紫だったはずだけど…。」
「そう…だよね?」
少し目を離した隙に、とても紫には見えない程、ルビーを思わせる鮮やかな赤い色をしていた。
「もしかして、ムードリングってやつかな?」
「ムードリング?」
「うん!その時の気分で色が変化するブレスレット…だったかな?聞いた事があるだけなんだけどね…。」
「気分で色が変わるのか…そんなものもあるんだな。」
「不思議!リアーナさんは、なんでも知ってるんですね!」
「そんなことは…。あ、あの…ルナさん…そうやって敬語で話をされると、私までそうなっちゃいそうで…。出来れば同じように接してもえるといいな…。」
「そ、そっか…!わかった!私も努力するね!」
「ありがとう。あ…私、そろそろ報告に行かないと…。じゃあ、また後でね!」
「うん!またね。」
ーコンコン
部屋でくつろいでいると、再びノックの音の後扉が開いた。
「お邪魔します…!」
「あんたは確か、受付の…。」
「は、はい!」
「あ、久しぶり!えっと…イルムさんだっけ?」
杏色の髪を左右にまとめ、くりくりとした焦げ茶色の瞳をしている。
「そうです!私、イルム・イルマーダって言います。夕飯の準備が出来たので、呼びに来ました!」
「わざわざありがとう…!ミグ行こ~。」
「ん。」
廊下に出て、イルムは私達の前を歩き始めた。
「食堂は1階にあるんです。この階段を降…」
私達の方を向き、話に夢中になっていると、階段を踏み外し後ろに倒れかけた。咄嗟に反応したミグが、彼女の腕を掴んだ。
「っ…!だ、大丈夫か?」
「ご、ごめんなさい…!!!」
「あんたいつもこうなのか…?」
「注意してるはずなんですけど…。何故かいつも転んじゃって…あはは…。つ、着きました!ここです!」
1階の開けた空間には、大きなテーブルとそれを取り囲むように、何個もの椅子が用意されている。先程顔を合わせたメンバー達が、既に席に着いていた。
「あ、2人共!ここに座って~。」
「は、はい…!」
クラーレさんに呼ばれて席に着くと、テーブルの上に沢山の料理と飲み物が並べられていた。
すると彼はその場に立って、話を始めた。
「全員座ったかな?もう話した人がほとんどだと思うけど、改めて今日から僕達のギルドに住むことになった、ルナさんとミグさんです。みんな仲良くしてね?…それじゃあ、食べようか。」
彼が話終えて席に着くと、全員が手を合わせ目を閉じた。その姿はまるで、何かに祈りを捧げる様だった。
「ミラ様に感謝して、頂きます。」
「「頂きます。」」
「い、頂きます!」
「頂きます…。」
先程の神聖な雰囲気は一瞬にして消え、賑やかな食事が始まった。
「あ、ごめんね。驚いた?」
「いつもこれやってから食べるんですか?」
「ええ、そうよ。食べ物に、しっかりと感謝をしてから食べるの。」
「あの…ミラ様っていうのは?」
「ミラ様っていうのは、ミッド王国で信仰してる女神様の事だよ。」
「僕達の故郷では食べる前に、こうやってお祈りしてから食べるんだ。」
「ミラ様は、魔法の力で作物に必要な日光や雨をもたらすと言われている。小さい頃、両親に教えられたものだ。」
「あ!だから、魔法の詠唱の時にも、ミラの加護を受けし者~って言うんですね!」
「えっ…。」
「え?」
その言葉を聞いたクラーレさんは、口に運びかけたスープのスプーンを持ったまま、硬直してしまった。
「兄さんが教えたのか?」
「…え、いや。僕は教えてないけど…。」
「?」
「ルナちゃん。魔法の詠唱してみてくれる?なんでもいいから。」
「え、でも…ここじゃ…。」
「いいから!」
「は、はい…っ…。…“ミラの加護を受けし者。光の精霊と契を交わし、我に力を与えよ。ルミ…エール…”」
呪文を唱えると、目の前が真っ白になり、思わず目をつぶった。恐る恐る目を開くと、何かが起こった様子はなかった。
「なんだったんだ?今の…。真っ白になったけど…。」
「何も…起こってないみたい…ですけど…。」
「おかしいなぁ…。成功したと思ったのに…。」
「魔法自体はちゃんと発動してたよ…。けどこれは…。」
「魔法の事、私はさっぱりわからないけど…とにかく今はご飯食べましょ?その後、お兄様の部屋で話をすればいいわ。」
「そう…だね…。」
彼の表情がどこか悲しげで、見てはいけないものを見てしまったような、そんな顔をしていた。
夕食後、特等戦闘員であるシェリアさん、リーガルさんと共に、クラーレさんの部屋に集まった。相変わらず、彼の表情は曇ったままだった。
「クラーレさん…大丈夫ですか?」
「う、うん。」
「お兄様、何か気になる事があるの?」
「…僕がルカに、初めて教えた魔法がルミエールだったんだ。その時も…さっきみたいに、光っただけで何起きなかった。」
「ルカが…。」
「ルナは、俺の部屋に来た時、本の中身を読んだか?」
「いえ!触れてもいません…!」
「記憶を無くしているのに、どうしてルナちゃんは詠唱を知っていたのかしら?不思議だわ…。」
「ごめんなさい…。私にもよくわからないです…。」
「そう…だよね…。ごめん…取り乱したりして。」
「い、いえ…。」
「ともかく、明日は予定通り魔法の練習をしよう。朝食が終わったら、1階の訓練場で待っててくれ。」
「わかりました。」
自室に戻ると、彼がソファーに座って待っていた。
「おかえり。」
「ただいま!あ、いい匂い。紅茶を飲んでたの?」
「お前の分もあるぞ。ほら。」
「ありがとう!」
彼の隣に座ると、カップに紅茶が注がれた。
「魔法の事…何か聞かれたのか?」
「聞かれたけど…。よくわからくて…。」
「少しづつ、色々思い出してきたって事なのかもな。」
「そうかも…。」
「そろそろ寝るか。明日は訓練があるんだし。」
「うん…!おやすみミグ。」
部屋を暗くして、真新しいベッドに包まると、今日の事を思い返していた。
私の周りで起きている不思議な出来事は、謎ばかりでまだ解決には至らないものばかりだった。ただ、このギルドに関わっていたルカと、その彼が私の夢に出てくる事は、きっと何か関係があるのだと…そう思い始めていた。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる