28 / 165
第3章︰人間と吸血鬼
第25話
しおりを挟む
「着いたよ~ルナ。」
翌日、なんとか寝坊せずに朝食を済ませてギルドの前にやって来た。
「ここがギルド…結構大きい建物だね。」
「ほら、入るぞ。」
昨日ミグが話していたギルドのマスターが怖い人だと聞いて、緊張しながらテトの後に続いて中に入っていった。
「こんにちは~。」
「よ、ようこそいらっしゃいました!…テト様…でしょうか…?」
「うん。マスターはいるかな?」
「しょ…少々お待ちくださ…ぅわあ!?」
受付に立っていた女の子が、何かに躓いたのか、大きな音を立てて派手に転んだ。
「だ、大丈夫ですか!?」
「だ、だ、大丈夫ですー!すいませんすぐにー!」
彼女はすぐに立ち上がると、階段をダッシュで上って行った。
「慌ただしい奴だな…。」
「すごく痛そうだった…。」
「今の子は初めて見たなぁ。新しく入った子かな?」
「俺も見た事ないな。多分そうなんじゃないか?」
「これはこれは…わざわざお越しくださって、ありがとうございます。テト様。」
階段をゆっくりと下りながら、青年がこちらにやってきた。ミグが言っていた通り、見た目はとても優しそうな青年だった。
「わぁ!クラーレ!久しぶりだね~。」
「お久しぶりです。…ミグさんも。」
「お、覚えていてくださったのですね…。ありがとうございます。とても光栄です。」
「そちらがルナ様ですか?思っていたより若くて可愛らしい方ですね。」
「そ、そんなことは…。」
「お話は部屋でしましょうか。どうぞこちらに。イルム、急がなくていいから紅茶をお願いね。」
「は、はい…!」
中央に大きなテーブルがあり、その周りを囲むようにソファーが置いてある部屋に案内されると、テトが座った隣に私も並んで腰を下ろした。
「ルナ様。まだきちんと名乗っていませんでしたね。私、クラーレ・セシルと申します。このギルドのマスターをしています。」
「あ、はい!今日はお時間頂いて…ありがとうございます。」
「今日は…ギルドを見に来た…んでしたっけ?」
「うん。そうだなぁ…出来れば他の人と話もしたいかな。」
「今いるのは…さっき受付にいたイルムと…リアーナくらいかな…。」
「リアーナって…結構前からギルドにいる子だよね?話聞けないかな?」
「じゃあ、ちょっと聞いてみますね。」
「し、失礼します…。お待たせしました…!」
彼女はゆっくりと部屋に入ると、私達の前に紅茶のカップを置いた。
「ありがとうイルム。それと、ちょうどよかった。リアーナを呼んできてくれる?」
「はい…わかりました!」
ぺこりと頭を下げて、彼女は部屋を出て行った。
「彼女は初めて見たのですが…最近入られた方ですか?」
「いえ。前からいたんですけど…少しの間、別の街に派遣してたんです。」
「派遣…もするんですね。」
「あまり遠くには行かせられませんが…彼女が希望したのでそうしました。他にも派遣している者が何人かいますよ。」
「そうなんですね…。」
「ルナ様は…記憶喪失なんですよね?何か思い出せた事はありましたか?」
「そうですね…きっかけになりそうなことは何も…。」
「そうですか…。」
扉をノックする音が聞こえ、赤い髪の少女が入って来た。
「失礼します。」
「あ、リアーナ。ごめんね急に呼び出して。座ってくれる?」
「はい。」
彼女は私達の向かい側に座ると、シャキッと姿勢を正した。
「こちらにいるルナ様が、記憶喪失になってしまって…。何か思い出せることがないか話をしたいんだって。」
「ルナ様…ですか。…そういえば、以前街中でルナ様とお会いした事があります。」
「え!?ど、どこでですか!?」
「ですが…私が見たルナ様は、髪色がピンクで…髪型はツインテールでした。背丈や年齢は…今いらっしゃるルナ様と同じくらいに見えましたが…。」
「その子と話はしたの?」
「確か…。私の事を知りませんか?と尋ねてきました。」
「変ですね。まるでその時も…記憶がないような…。」
「ほ、他には?」
「あなたに似たような名前の人は知っていますが…初対面だと思います。と答えました。その時…私は急いでいたので、他には何も…。」
「そうですか…。」
「見た目は違うけど…名前が全く同じなのが気になるね。」
「もしかすると…ルナ様は魔法使いなのかもしれませんね。」
「魔法使い…ですか?」
「実際に見た事はないのですが…容姿を変える魔法があると聞いた事があります。」
「容姿を変える魔法…。」
「クラーレは…ルナに魔力があるかどうか、調べる事は出来ない?」
「そうですね…。触れてみたらわかるかも…しれないですが…。」
「なら触ってください!」
「では…手をお借りしますね。」
彼が私の手を掴んだ瞬間、頭が割れるような痛みに襲われた。
「痛っ!?」
目を閉じると、頭の中に声が響き始めた。
「役に立ちたいとか、強くなって誰かを助けたいって思うのは、素晴らしい事だと思うよ。でも、焦ってもしょうがないんだ。少しづつ出来るようになればいいんだよ。」
「でも…!」
「アリサもリアーナも、もちろん僕だって最初から出来たわけじゃない。いろいろ悩んで、回り道もして、それでようやく出来るようになったんだ。ここに来てまだ少ししか経ってないでしょ?焦る必要はないし、負い目を感じる事もしなくていいんだよ。」
「…はい。」
2人の会話が終わると、次第に痛みはなくなり、再び目を開いた。
「…誰…なの…?」
「ルナ…!ねぇルナ!!!」
「あれ…テト…。」
「大丈夫ですか?頭を抱えていましたが…痛いのですか?」
「痛かったけど…もう大丈夫。」
「誰?と仰っていたように聞こえたんですが…。今の一瞬で一体何が…?」
「クラーレさんと…もう1人…男の子の声が聞こえてきて…。」
「私の声…?それと男の子…ですか…。」
「ルナはクラーレと…会ったことがあった…のかな?」
「それはないはずです。私の記憶にはありません。」
「そうだ。魔力の方はどうだった?」
「とてつもなく…大きな力でした。こんなに膨大な魔力は初めてです…。」
「なら…魔法を使って容姿を変えていた可能性が高いってとかな…。」
「…。」
「テト様。今日はこの辺りでやめておきましょう…。」
「そう…だね。色々考えを整理したいし…。ありがとうクラーレ。また今度来てもいいかな?」
「もちろんです。いつでもお越しください。」
「ありがとう…ございました…。」
何が何だかわからないまま、馬車に乗ってお城へと帰って行った。
「ルナ。大丈夫?」
「よく分からないことだらけで…頭の中がごちゃごちゃしてる…。」
「無理すんな。少しづつでいいんだから。」
「うん…。」
「僕はこの後、公務があるから…。ごめんねルナ…側にいてあげられなくて…。」
「大丈夫!1人で少し考えてみるよ。」
「俺はいるぞ?」
「そっか…そうだね。じゃあ、ミグと話をしてようかな。」
「あまり根詰めないでね。」
「ありがとうテト。公務、頑張ってね!」
彼が部屋を出ると、ミグと2人でベッドの端に座った。
「前に…魔法で容姿を変えてリアーナさんと会ったことがあったんだよね?どうして見た目を変えなきゃいけなかったんだろう?」
「そのままの姿で…見られたらなにかまずい事があった…とか?」
「わからないなぁ…。それに、クラーレさんの手に触れた時、聞こえた声…。クラーレさんと男の子が親しそうな感じで話をしてた。」
「どんな内容だったんだ?」
「んーと…男の子が何か出来ない事があって、クラーレさんが慰めてるような内容だったかな…。」
「それもよく分からないな。クラーレさんは、会ったことがないって言ってたし…。もう1人が誰だかわからないしな…。」
「うー…。」
「大丈夫か?少し寝たらどうだ?昼になったら起こすから。」
「そうしようかな…。ありがとうミグ。」
「ん。おやすみ。」
「ん…。あれ…ここは…。」
寝たはずのベッドは先程のものと違い、転がったらすぐに落ちてしまう1人用の小さなものだった。
「あ、起きた?本当によく寝るよねルナ。」
私と同じ髪色、同じ瞳の色をした少年がこちらに近づいて、椅子に座った。
「あなたは…確か…ルカ?」
「もしかして…また忘れちゃった…?」
「あれ…その声…もしかして…。」
「どうしたの?お腹空いた?」
「お腹は空いてない…!それよりもルカ。クラーレっていう人…知らない?」
「どうしてクラーレさんの事聞くの?ギルドのマスターだよ?」
「なんでその事知ってるの!?どこで会ったの!?」
「どこって…ここだよ?だってここがギルドだもん。」
「えっ…?私が見たのと違う建物に見えるけど…。」
私が覚えている限りでは、壁や天井は白く、床には絨毯が敷かれていた。しかしここは、壁も天井も床も全て木で出来ている。クラーレさんに案内された部屋ではない事は確かだが、別の部屋だとしても明らかに部屋の雰囲気が違いすぎる。
「別のギルドと勘違いしてるんじゃない…?」
「じゃあ…リアーナさんは!?」
「もちろんリアーナも知ってるよ。同じギルドメンバーだもん。」
「ルカも…ギルドの一員なの…?」
「うん。そうだよ。」
「そう…なんだ…。他には…誰が加入してるの?」
「なんだか今日は質問ばっかりだね。まぁ…話が出来て嬉しいけど…。アリサと…ウナと…シェリアさんと…リーガルさん…あとはガゼルとリアーナと…クラーレさんの7人だよ。」
アリサさんは、街で1度会った事がある。他のメンバーの名前は聞いた事がないが、確かにリアーナさんもメンバーに含まれていた。
「あれ?イルムって子は?」
「イルム?誰?それ。」
「受付にいる子だけど…。」
「受付なんてないよ~。だって街の外れにある小さなギルドだもん。」
「街の…外れ…?」
次第に食い違って来る話に、頭が混乱し始めた。
「ルナ?大丈夫?顔色良くないけど…。」
「ルカのギルド…名前はなんて言うの?」
「エテルノ・レガーメだよ。小規模でアットホームなギルドなんだ。」
「っ!?」
勢いよく身体を起こすと、ミグが驚いた顔をして駆け寄ってきた。
「ど、どうした?すごい汗かいてるぞ…?一体どんな夢見て…」
「ミグ!私…わかったの…!あの男の子が誰なのか!」
「え?どうしてわかったんだ?今寝てただろ?」
「夢の中に出てきたの!ルカっていう男の子!あの時聞こえた声と同じだった…!」
「夢に?ルカか…聞いた事あるような名前だな…。」
「ルカはクラーレさんのギルド、エテルノ・レガーメのメンバーだって言ってた!イルムさんの事は…知らなかったけど…。そうだ…アリサ…!アリサさんも同じギルドだって言ってた!確か、国家騎士なんだよね?もしかしたらこの城の中に…」
「落ち着けルナ。深呼吸だ深呼吸。」
「すー…はー…。」
「夢の中の話じゃ、本当かどうかわからない。すぐに決めつけるのはよくない。アリサなら、確かに城の中にいるかもしれないけど…。探してくるか?」
「私も行く!」
「わかった。じゃあ、探してみよう。」
部屋を飛び出すと、廊下をあちこち走り回った。1階から順番に上にあがっていくが、この広い城の中では人1人探すだけでも一苦労だった。
「はぁ…はぁ…。…ルナ。大丈夫か?」
「アリサさん…どこ?早く確かめたいのに…!」
「ルナ…。」
ついに1番上の階までやってくると、テトの後ろ姿と一緒に、黒い髪の女性が何やら話をしているのを見つけた。
「あれは…テト?隣にいる女の人…もしかして…!…おーい!テトー!」
「あれ?2人共なんで走ってるの?」
「アリサ様!」
「よかった!やっと…見つけた…アリサさん…。」
「え、私ですか…?」
「アリサさんに…聞きたい…話…が…。」
「ルナ…走ったりしたらまた体調崩しちゃうよ。ひとまず部屋に入って。アリサも時間あるよね?」
「はい大丈夫です。」
部屋の中に入ると、ミグが用意してくれたお茶を一気に飲み干した。
「はぁ~…。」
「あはは。落ち着いた?」
「うん…。ごめんねテト…。」
「それはいいんだけど…アリサに聞きたい事って?」
「アリサさん!ルカって人知ってますか!?」
「ルカ!?…どうしてあなたがルカを知ってるんですか?」
「それは…その…。」
「まさか…あいつの仲間なんじゃ…!」
「あいつ…?」
彼女はその場から立って、腰に下げている剣に手を触れると、その表情は一瞬にして別人のように変わった。
「アリサ!落ち着いて。」
「っ…!す…すみません…。」
「あいつっていうのは一体…。」
再び椅子に座ると、彼女は俯きがちに呟いた。
「ヴェルという少女です。ルカは…私達のギルドのメンバーでした…。」
「やっぱり…!」
「ヴェルっていう女の子とルカっていう子は一体どんな関係なの?」
「ルカは…何年も前に行方不明になりました。ヴェルがどこかへ連れ去ったんです…。」
「行方不明…。」
「ヴェルって子は、どうしてルカを連れて行ったの?」
「わかりません…。どうして…ルカなのか…。なんの為に…ルカを連れて行ったのか…。」
「アリサさん…。」
彼女の目に溜まった涙が、ぽたりぽたりと机に滴り落ちた。
「っ…ルナ様は…どうしてルカの事をご存知なんですか?」
「その…信じて貰えないかもしれないけど…。夢にルカが出てきたの。それで…ルカに色々聞いて…。本当なのか確かめたくて、アリサさんと話がしたかったの。」
「私が聞いていた限りでは、アリサ様の話とルナ様の話が、噛み合っているように思えます。」
「じゃあ、ルナが聞こえた声はクラーレとルカだったんだね。どうして2人の会話が聞こえたのかは…謎だけど…。」
「…。」
「アリサさん…ありがとうございます。話してくれて…。」
「いえ…お力になれたならよかったです…。では、私はこれで…失礼します。」
彼女は悲しげな顔をしながら、部屋を出ていった。
「ルナ、どうする?また明日ギルドに言ってみる?」
「そうしたいな…。ごめんね…わがまま言って…。」
「別にわがままなんて思ってない。それより身体は大丈夫か?」
「話をしたら、ちょっと気持ちが楽になったよ。身体の方も、どこも痛くないし、大丈夫。それよりも…アリサさんに辛い思い…させちゃったかな…?」
「そうだね…。クラーレが、ギルドメンバーは、みんな家族だって言ってた。家族が行方不明じゃ…辛いと思うよ。」
「今度会ったら…謝らなきゃ…。」
「じゃあ、また明日、ギルドに行って話を聞こう。」
「うん。」
翌日、再び3人でギルドへ向かった。
「ようこそいらっしゃいました。」
「ごめんねクラーレ…。昨日の今日で申し訳ない…。」
「いえいえ。いつでも来ていいと言ったのは私の方ですから。どうぞお座りになってください。」
「今日は…ルカさんの事で、話したいことがあってきました。昨日、アリサさんとも話をしたら、私が聞いた男の子の声はルカさんだとわかりました。かなり親しそうに話をしていましたが…クラーレさんとルカさんの関係は?」
「ルカは…私の息子です。」
「息子?クラーレさん結婚してたんですか?」
「いえ、していません。森に倒れている彼を見つけて…私がギルドに迎え入れました。彼は、名前以外何も覚えていなかったので…私が親の代わりになったんです。」
「森に…。そういえば、ルカさんがこのギルドは街の外れにある、小さなギルドだと言っていたんですけど…。」
「確かに街の外れにありましたよ。何年も前の話で…街もこことは別の街です。」
「そういえば、クラーレが城に来て僕にお願いしに来たんだったね。この街にギルドを建てたいって。」
「はい。ルカが行方不明になった後、彼を探すためにはもっと大きなギルドに育てる必要がありました…。それで、この街にギルドを作りたくて、テト様のお力を借りました。」
「そう…だったんですね…。」
「ところでルナ様…どこで彼と話をしたんですか?」
「えっと…夢の中なんです…。私も初めは信じられなくて…なので今日クラーレさんに確かめようと思って…。」
「そうでしたか…。なんとも不思議な夢ですね…。」
「ルカさん…見つかるといいですね…。」
「はい…。ありがとうございます…。」
行方不明になったルカを、何年も探しているクラーレさん。そんな辛そうな彼を見ていられず、私達は早々に城へと戻って来た。
「ルカが何者なのかはわかったけど、ルナの事は何もわからなかったな。」
「でも、どうして私の夢にルカが出てくるんだろう?私達にも何か関係があるのかな?」
「わかった事も多いけど…わからない事も多いね。」
「そうだな。」
「ねぇ…テト。」
「ん?どうしかした?」
「私…ギルドで暮らしてみたい。」
「え!?」
「だめだ!あんな街のど真ん中にある、危険な所に置く訳には…!」
「ミグも一緒だったらいい?あそこで思い出せること、いっぱいありそうな気がするの。だめかな…?」
「寂しくなるけど…ルナの記憶の為ならしょうがないか…。明日、クラーレに聞いてみるよ。」
「ありがとうテト!」
「ものすごいわがままな要求だな…。」
「ごめんね…ミグ…。」
「しょうがないか…。思い出せたらまた城に戻るんだろ?」
「まだわからないけど…多分!」
「はぁ…。僕、毎日ギルドに通っちゃうかもしれないなぁ…。」
「それは目立つからやめとけ…。」
翌日、クラーレさんから了承を得た私達はギルドに住める事になった。
「身体に気をつけてね。あ、あと…食べる物にも注意しないとだめだよ?あとは…」
「俺も一緒に行くんだから、大丈夫だって。」
「それは…そうだけどさぁ…。」
「大丈夫!こっちにも遊びに来るし、お別れする訳じゃないんだから…。」
「まあ…そうだね…。あ、そうだった…!ルナに渡さなきゃいけない物があったんだった。」
私の手を取り、腕にブレスレットをはめた。ブレスレットの中央には紫色に光る宝石が埋め込まれている。
「これは?」
「僕達が初めて会った場所…カナ村の丘の上で拾ったんだ。みんなに聞いてみたんだけど…誰の物でもなかったから、多分ルナの物じゃないかと思って。返す機会が無くてずっと預かってたんだ。」
「そうなんだ…。ありがとうテト!」
「ううん。返すの遅くなってごめんね。」
「そろそろ行くか。」
「行ってくるね…テト。」
「行ってらっしゃい。帰ってくるの、待ってるよ。」
馬車に乗り、お城の方を振り返ると私達の姿が見えなくなるまで、彼は手を振り続けていた。
翌日、なんとか寝坊せずに朝食を済ませてギルドの前にやって来た。
「ここがギルド…結構大きい建物だね。」
「ほら、入るぞ。」
昨日ミグが話していたギルドのマスターが怖い人だと聞いて、緊張しながらテトの後に続いて中に入っていった。
「こんにちは~。」
「よ、ようこそいらっしゃいました!…テト様…でしょうか…?」
「うん。マスターはいるかな?」
「しょ…少々お待ちくださ…ぅわあ!?」
受付に立っていた女の子が、何かに躓いたのか、大きな音を立てて派手に転んだ。
「だ、大丈夫ですか!?」
「だ、だ、大丈夫ですー!すいませんすぐにー!」
彼女はすぐに立ち上がると、階段をダッシュで上って行った。
「慌ただしい奴だな…。」
「すごく痛そうだった…。」
「今の子は初めて見たなぁ。新しく入った子かな?」
「俺も見た事ないな。多分そうなんじゃないか?」
「これはこれは…わざわざお越しくださって、ありがとうございます。テト様。」
階段をゆっくりと下りながら、青年がこちらにやってきた。ミグが言っていた通り、見た目はとても優しそうな青年だった。
「わぁ!クラーレ!久しぶりだね~。」
「お久しぶりです。…ミグさんも。」
「お、覚えていてくださったのですね…。ありがとうございます。とても光栄です。」
「そちらがルナ様ですか?思っていたより若くて可愛らしい方ですね。」
「そ、そんなことは…。」
「お話は部屋でしましょうか。どうぞこちらに。イルム、急がなくていいから紅茶をお願いね。」
「は、はい…!」
中央に大きなテーブルがあり、その周りを囲むようにソファーが置いてある部屋に案内されると、テトが座った隣に私も並んで腰を下ろした。
「ルナ様。まだきちんと名乗っていませんでしたね。私、クラーレ・セシルと申します。このギルドのマスターをしています。」
「あ、はい!今日はお時間頂いて…ありがとうございます。」
「今日は…ギルドを見に来た…んでしたっけ?」
「うん。そうだなぁ…出来れば他の人と話もしたいかな。」
「今いるのは…さっき受付にいたイルムと…リアーナくらいかな…。」
「リアーナって…結構前からギルドにいる子だよね?話聞けないかな?」
「じゃあ、ちょっと聞いてみますね。」
「し、失礼します…。お待たせしました…!」
彼女はゆっくりと部屋に入ると、私達の前に紅茶のカップを置いた。
「ありがとうイルム。それと、ちょうどよかった。リアーナを呼んできてくれる?」
「はい…わかりました!」
ぺこりと頭を下げて、彼女は部屋を出て行った。
「彼女は初めて見たのですが…最近入られた方ですか?」
「いえ。前からいたんですけど…少しの間、別の街に派遣してたんです。」
「派遣…もするんですね。」
「あまり遠くには行かせられませんが…彼女が希望したのでそうしました。他にも派遣している者が何人かいますよ。」
「そうなんですね…。」
「ルナ様は…記憶喪失なんですよね?何か思い出せた事はありましたか?」
「そうですね…きっかけになりそうなことは何も…。」
「そうですか…。」
扉をノックする音が聞こえ、赤い髪の少女が入って来た。
「失礼します。」
「あ、リアーナ。ごめんね急に呼び出して。座ってくれる?」
「はい。」
彼女は私達の向かい側に座ると、シャキッと姿勢を正した。
「こちらにいるルナ様が、記憶喪失になってしまって…。何か思い出せることがないか話をしたいんだって。」
「ルナ様…ですか。…そういえば、以前街中でルナ様とお会いした事があります。」
「え!?ど、どこでですか!?」
「ですが…私が見たルナ様は、髪色がピンクで…髪型はツインテールでした。背丈や年齢は…今いらっしゃるルナ様と同じくらいに見えましたが…。」
「その子と話はしたの?」
「確か…。私の事を知りませんか?と尋ねてきました。」
「変ですね。まるでその時も…記憶がないような…。」
「ほ、他には?」
「あなたに似たような名前の人は知っていますが…初対面だと思います。と答えました。その時…私は急いでいたので、他には何も…。」
「そうですか…。」
「見た目は違うけど…名前が全く同じなのが気になるね。」
「もしかすると…ルナ様は魔法使いなのかもしれませんね。」
「魔法使い…ですか?」
「実際に見た事はないのですが…容姿を変える魔法があると聞いた事があります。」
「容姿を変える魔法…。」
「クラーレは…ルナに魔力があるかどうか、調べる事は出来ない?」
「そうですね…。触れてみたらわかるかも…しれないですが…。」
「なら触ってください!」
「では…手をお借りしますね。」
彼が私の手を掴んだ瞬間、頭が割れるような痛みに襲われた。
「痛っ!?」
目を閉じると、頭の中に声が響き始めた。
「役に立ちたいとか、強くなって誰かを助けたいって思うのは、素晴らしい事だと思うよ。でも、焦ってもしょうがないんだ。少しづつ出来るようになればいいんだよ。」
「でも…!」
「アリサもリアーナも、もちろん僕だって最初から出来たわけじゃない。いろいろ悩んで、回り道もして、それでようやく出来るようになったんだ。ここに来てまだ少ししか経ってないでしょ?焦る必要はないし、負い目を感じる事もしなくていいんだよ。」
「…はい。」
2人の会話が終わると、次第に痛みはなくなり、再び目を開いた。
「…誰…なの…?」
「ルナ…!ねぇルナ!!!」
「あれ…テト…。」
「大丈夫ですか?頭を抱えていましたが…痛いのですか?」
「痛かったけど…もう大丈夫。」
「誰?と仰っていたように聞こえたんですが…。今の一瞬で一体何が…?」
「クラーレさんと…もう1人…男の子の声が聞こえてきて…。」
「私の声…?それと男の子…ですか…。」
「ルナはクラーレと…会ったことがあった…のかな?」
「それはないはずです。私の記憶にはありません。」
「そうだ。魔力の方はどうだった?」
「とてつもなく…大きな力でした。こんなに膨大な魔力は初めてです…。」
「なら…魔法を使って容姿を変えていた可能性が高いってとかな…。」
「…。」
「テト様。今日はこの辺りでやめておきましょう…。」
「そう…だね。色々考えを整理したいし…。ありがとうクラーレ。また今度来てもいいかな?」
「もちろんです。いつでもお越しください。」
「ありがとう…ございました…。」
何が何だかわからないまま、馬車に乗ってお城へと帰って行った。
「ルナ。大丈夫?」
「よく分からないことだらけで…頭の中がごちゃごちゃしてる…。」
「無理すんな。少しづつでいいんだから。」
「うん…。」
「僕はこの後、公務があるから…。ごめんねルナ…側にいてあげられなくて…。」
「大丈夫!1人で少し考えてみるよ。」
「俺はいるぞ?」
「そっか…そうだね。じゃあ、ミグと話をしてようかな。」
「あまり根詰めないでね。」
「ありがとうテト。公務、頑張ってね!」
彼が部屋を出ると、ミグと2人でベッドの端に座った。
「前に…魔法で容姿を変えてリアーナさんと会ったことがあったんだよね?どうして見た目を変えなきゃいけなかったんだろう?」
「そのままの姿で…見られたらなにかまずい事があった…とか?」
「わからないなぁ…。それに、クラーレさんの手に触れた時、聞こえた声…。クラーレさんと男の子が親しそうな感じで話をしてた。」
「どんな内容だったんだ?」
「んーと…男の子が何か出来ない事があって、クラーレさんが慰めてるような内容だったかな…。」
「それもよく分からないな。クラーレさんは、会ったことがないって言ってたし…。もう1人が誰だかわからないしな…。」
「うー…。」
「大丈夫か?少し寝たらどうだ?昼になったら起こすから。」
「そうしようかな…。ありがとうミグ。」
「ん。おやすみ。」
「ん…。あれ…ここは…。」
寝たはずのベッドは先程のものと違い、転がったらすぐに落ちてしまう1人用の小さなものだった。
「あ、起きた?本当によく寝るよねルナ。」
私と同じ髪色、同じ瞳の色をした少年がこちらに近づいて、椅子に座った。
「あなたは…確か…ルカ?」
「もしかして…また忘れちゃった…?」
「あれ…その声…もしかして…。」
「どうしたの?お腹空いた?」
「お腹は空いてない…!それよりもルカ。クラーレっていう人…知らない?」
「どうしてクラーレさんの事聞くの?ギルドのマスターだよ?」
「なんでその事知ってるの!?どこで会ったの!?」
「どこって…ここだよ?だってここがギルドだもん。」
「えっ…?私が見たのと違う建物に見えるけど…。」
私が覚えている限りでは、壁や天井は白く、床には絨毯が敷かれていた。しかしここは、壁も天井も床も全て木で出来ている。クラーレさんに案内された部屋ではない事は確かだが、別の部屋だとしても明らかに部屋の雰囲気が違いすぎる。
「別のギルドと勘違いしてるんじゃない…?」
「じゃあ…リアーナさんは!?」
「もちろんリアーナも知ってるよ。同じギルドメンバーだもん。」
「ルカも…ギルドの一員なの…?」
「うん。そうだよ。」
「そう…なんだ…。他には…誰が加入してるの?」
「なんだか今日は質問ばっかりだね。まぁ…話が出来て嬉しいけど…。アリサと…ウナと…シェリアさんと…リーガルさん…あとはガゼルとリアーナと…クラーレさんの7人だよ。」
アリサさんは、街で1度会った事がある。他のメンバーの名前は聞いた事がないが、確かにリアーナさんもメンバーに含まれていた。
「あれ?イルムって子は?」
「イルム?誰?それ。」
「受付にいる子だけど…。」
「受付なんてないよ~。だって街の外れにある小さなギルドだもん。」
「街の…外れ…?」
次第に食い違って来る話に、頭が混乱し始めた。
「ルナ?大丈夫?顔色良くないけど…。」
「ルカのギルド…名前はなんて言うの?」
「エテルノ・レガーメだよ。小規模でアットホームなギルドなんだ。」
「っ!?」
勢いよく身体を起こすと、ミグが驚いた顔をして駆け寄ってきた。
「ど、どうした?すごい汗かいてるぞ…?一体どんな夢見て…」
「ミグ!私…わかったの…!あの男の子が誰なのか!」
「え?どうしてわかったんだ?今寝てただろ?」
「夢の中に出てきたの!ルカっていう男の子!あの時聞こえた声と同じだった…!」
「夢に?ルカか…聞いた事あるような名前だな…。」
「ルカはクラーレさんのギルド、エテルノ・レガーメのメンバーだって言ってた!イルムさんの事は…知らなかったけど…。そうだ…アリサ…!アリサさんも同じギルドだって言ってた!確か、国家騎士なんだよね?もしかしたらこの城の中に…」
「落ち着けルナ。深呼吸だ深呼吸。」
「すー…はー…。」
「夢の中の話じゃ、本当かどうかわからない。すぐに決めつけるのはよくない。アリサなら、確かに城の中にいるかもしれないけど…。探してくるか?」
「私も行く!」
「わかった。じゃあ、探してみよう。」
部屋を飛び出すと、廊下をあちこち走り回った。1階から順番に上にあがっていくが、この広い城の中では人1人探すだけでも一苦労だった。
「はぁ…はぁ…。…ルナ。大丈夫か?」
「アリサさん…どこ?早く確かめたいのに…!」
「ルナ…。」
ついに1番上の階までやってくると、テトの後ろ姿と一緒に、黒い髪の女性が何やら話をしているのを見つけた。
「あれは…テト?隣にいる女の人…もしかして…!…おーい!テトー!」
「あれ?2人共なんで走ってるの?」
「アリサ様!」
「よかった!やっと…見つけた…アリサさん…。」
「え、私ですか…?」
「アリサさんに…聞きたい…話…が…。」
「ルナ…走ったりしたらまた体調崩しちゃうよ。ひとまず部屋に入って。アリサも時間あるよね?」
「はい大丈夫です。」
部屋の中に入ると、ミグが用意してくれたお茶を一気に飲み干した。
「はぁ~…。」
「あはは。落ち着いた?」
「うん…。ごめんねテト…。」
「それはいいんだけど…アリサに聞きたい事って?」
「アリサさん!ルカって人知ってますか!?」
「ルカ!?…どうしてあなたがルカを知ってるんですか?」
「それは…その…。」
「まさか…あいつの仲間なんじゃ…!」
「あいつ…?」
彼女はその場から立って、腰に下げている剣に手を触れると、その表情は一瞬にして別人のように変わった。
「アリサ!落ち着いて。」
「っ…!す…すみません…。」
「あいつっていうのは一体…。」
再び椅子に座ると、彼女は俯きがちに呟いた。
「ヴェルという少女です。ルカは…私達のギルドのメンバーでした…。」
「やっぱり…!」
「ヴェルっていう女の子とルカっていう子は一体どんな関係なの?」
「ルカは…何年も前に行方不明になりました。ヴェルがどこかへ連れ去ったんです…。」
「行方不明…。」
「ヴェルって子は、どうしてルカを連れて行ったの?」
「わかりません…。どうして…ルカなのか…。なんの為に…ルカを連れて行ったのか…。」
「アリサさん…。」
彼女の目に溜まった涙が、ぽたりぽたりと机に滴り落ちた。
「っ…ルナ様は…どうしてルカの事をご存知なんですか?」
「その…信じて貰えないかもしれないけど…。夢にルカが出てきたの。それで…ルカに色々聞いて…。本当なのか確かめたくて、アリサさんと話がしたかったの。」
「私が聞いていた限りでは、アリサ様の話とルナ様の話が、噛み合っているように思えます。」
「じゃあ、ルナが聞こえた声はクラーレとルカだったんだね。どうして2人の会話が聞こえたのかは…謎だけど…。」
「…。」
「アリサさん…ありがとうございます。話してくれて…。」
「いえ…お力になれたならよかったです…。では、私はこれで…失礼します。」
彼女は悲しげな顔をしながら、部屋を出ていった。
「ルナ、どうする?また明日ギルドに言ってみる?」
「そうしたいな…。ごめんね…わがまま言って…。」
「別にわがままなんて思ってない。それより身体は大丈夫か?」
「話をしたら、ちょっと気持ちが楽になったよ。身体の方も、どこも痛くないし、大丈夫。それよりも…アリサさんに辛い思い…させちゃったかな…?」
「そうだね…。クラーレが、ギルドメンバーは、みんな家族だって言ってた。家族が行方不明じゃ…辛いと思うよ。」
「今度会ったら…謝らなきゃ…。」
「じゃあ、また明日、ギルドに行って話を聞こう。」
「うん。」
翌日、再び3人でギルドへ向かった。
「ようこそいらっしゃいました。」
「ごめんねクラーレ…。昨日の今日で申し訳ない…。」
「いえいえ。いつでも来ていいと言ったのは私の方ですから。どうぞお座りになってください。」
「今日は…ルカさんの事で、話したいことがあってきました。昨日、アリサさんとも話をしたら、私が聞いた男の子の声はルカさんだとわかりました。かなり親しそうに話をしていましたが…クラーレさんとルカさんの関係は?」
「ルカは…私の息子です。」
「息子?クラーレさん結婚してたんですか?」
「いえ、していません。森に倒れている彼を見つけて…私がギルドに迎え入れました。彼は、名前以外何も覚えていなかったので…私が親の代わりになったんです。」
「森に…。そういえば、ルカさんがこのギルドは街の外れにある、小さなギルドだと言っていたんですけど…。」
「確かに街の外れにありましたよ。何年も前の話で…街もこことは別の街です。」
「そういえば、クラーレが城に来て僕にお願いしに来たんだったね。この街にギルドを建てたいって。」
「はい。ルカが行方不明になった後、彼を探すためにはもっと大きなギルドに育てる必要がありました…。それで、この街にギルドを作りたくて、テト様のお力を借りました。」
「そう…だったんですね…。」
「ところでルナ様…どこで彼と話をしたんですか?」
「えっと…夢の中なんです…。私も初めは信じられなくて…なので今日クラーレさんに確かめようと思って…。」
「そうでしたか…。なんとも不思議な夢ですね…。」
「ルカさん…見つかるといいですね…。」
「はい…。ありがとうございます…。」
行方不明になったルカを、何年も探しているクラーレさん。そんな辛そうな彼を見ていられず、私達は早々に城へと戻って来た。
「ルカが何者なのかはわかったけど、ルナの事は何もわからなかったな。」
「でも、どうして私の夢にルカが出てくるんだろう?私達にも何か関係があるのかな?」
「わかった事も多いけど…わからない事も多いね。」
「そうだな。」
「ねぇ…テト。」
「ん?どうしかした?」
「私…ギルドで暮らしてみたい。」
「え!?」
「だめだ!あんな街のど真ん中にある、危険な所に置く訳には…!」
「ミグも一緒だったらいい?あそこで思い出せること、いっぱいありそうな気がするの。だめかな…?」
「寂しくなるけど…ルナの記憶の為ならしょうがないか…。明日、クラーレに聞いてみるよ。」
「ありがとうテト!」
「ものすごいわがままな要求だな…。」
「ごめんね…ミグ…。」
「しょうがないか…。思い出せたらまた城に戻るんだろ?」
「まだわからないけど…多分!」
「はぁ…。僕、毎日ギルドに通っちゃうかもしれないなぁ…。」
「それは目立つからやめとけ…。」
翌日、クラーレさんから了承を得た私達はギルドに住める事になった。
「身体に気をつけてね。あ、あと…食べる物にも注意しないとだめだよ?あとは…」
「俺も一緒に行くんだから、大丈夫だって。」
「それは…そうだけどさぁ…。」
「大丈夫!こっちにも遊びに来るし、お別れする訳じゃないんだから…。」
「まあ…そうだね…。あ、そうだった…!ルナに渡さなきゃいけない物があったんだった。」
私の手を取り、腕にブレスレットをはめた。ブレスレットの中央には紫色に光る宝石が埋め込まれている。
「これは?」
「僕達が初めて会った場所…カナ村の丘の上で拾ったんだ。みんなに聞いてみたんだけど…誰の物でもなかったから、多分ルナの物じゃないかと思って。返す機会が無くてずっと預かってたんだ。」
「そうなんだ…。ありがとうテト!」
「ううん。返すの遅くなってごめんね。」
「そろそろ行くか。」
「行ってくるね…テト。」
「行ってらっしゃい。帰ってくるの、待ってるよ。」
馬車に乗り、お城の方を振り返ると私達の姿が見えなくなるまで、彼は手を振り続けていた。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ReBirth 上位世界から下位世界へ
小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは――
※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。
1~4巻発売中です。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる