青女と8人のシュヴァリエ

りくあ

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プロローグ

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「ねぇ…。一体どこに行くつもりなの?」

一回り大きな手が、私の手を力強く握りしめる。ランタンの灯りで足元を照らしながら、深い森の中をゆっくりと歩き進めて行く。

「ひーみーつ!先に教えちゃったら面白くないでしょ?」
「で、でも…森は危ないから入っちゃダメって、リオ様に言われ…」
「お母様は過保護すぎるのよ。私はもう子供じゃないんだから、このくらいどうって事ないわ!」

風が吹き抜け、森の木々がカサカサと音を立てた。遠くの方から、鳥が羽ばたく音が聞こえてくる。

「ひっ…!も、もう帰ろうよ…!」
「風で草木が揺れただけでしょー?もー…ビオレータは男の子のくせに、怖がりだよね。」
「お、男だって怖いものは怖…」

ガサガサと茂みが揺れ、驚いた彼が私の腕に身を寄せた。

「うわぁぁぁ!あそこ!何か居た!」
「えー?どうせウサギかリスでしょ?」

彼の指差す方へランタンを向けると、白くて小さな生き物が森の奥へと走り去って行った。

「ほら。やっぱりウサギだった。」
「な、なんでそんなに平気で居られるの…!?」
「逆にどうしてそんなに怖いのか、知りたいくらいよ。ほら!早く行こう!モタモタしてると、日が昇っちゃうわ。」

彼の手を引き、歩みを進める。緩やかな登り坂を上がって行くと、開けた場所に出た。

「着いた!ここよここ!ここに来たかったの!」
「見た感じ…何も無さそうだけど…?」
「何も無いから良いの!ほら、空を見て。」
「空…?」

上を見上げると、空いっぱいに星が輝いていた。夜空を横切るように、雲状の光の帯が視界いっぱいに広がる。

「な、何これ…。」
「何って…星よ星。星も知らな…」
「違うよ!これはただの星じゃない…。天の川だよ。」
「あま…の…?え?何て?」
「沢山の星が集まって、川みたいに見えるんだ。今の時期しか見られない、珍しい現象だよ…!」
「へぇ~…。そう…なんだ。」
「こんなに綺麗に見える場所があるなんて知らなかったなぁ…。怖い思いをした甲斐があったよ!」

彼は星のように目を輝かせ、ランタンの灯りに負けないくらい、眩しい笑顔を浮かべていた。
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