41 / 44
41 女王とプロポーズ
しおりを挟む
遅刻がこわいので、手早くシャワーを済ませ、恭弥は暗い廊下に出た。
何気なく歩きだそうとして、床板の真ん中に、何か巨大な白い塊が落ちているのに気づいた。
恭弥はぎょっとして立ち止まった。
もちろんそれは怪異などではなかった。さちこさんの横腹だ。
ルディやボンが廊下に転がっているのはよく見かけるが、さちこさんがこうして無防備に寝そべっているのは見たことがない。
(踏むところだった)
恭弥は畏敬の念を抱いてさちこさんを眺めた。
堂々とした寝姿だった。恭弥が見つめているのが不快なのか、太いしっぽでときおり、ばさ、ばさ、と床を叩いている。
しばらくぼうっと見惚れたあとで、恭弥は時間がないことを思い出した。だが、進行方向にはさちこさんがいる。
「通ります」
仕方なく、恭弥はおそるおそるさちこさんのそばに足を下ろした。
さちこさんは頭を上げた。威圧感のある吊り目が恭弥を見つめる。
引っ掻かれるかと、恭弥は思わず固まった。
だがさちこさんは何もすることなく、頭を床にふたたび下ろした。
恭弥は胸をなでおろした。
(これは、もしかして)
恭弥はそうっとさちこさんの顔に指先を近づけた。
「ごあいさつ……」
さちこさんはふんふんと恭弥の匂いを確かめた。
さちこさんは逃げない。
勇気を出して、恭弥はさちこさんの首筋をそっと撫でてみた。
繊細でなめらかな毛並みを、恭弥の指先はたしかに感じ取った。
(やった)
惰眠を妨害され、さちこさんは大あくびした。鋭い牙だ。
恭弥が思わず指をひっこめると、さちこさんは立ち上がった。伸びをして、のそのそと階段をあがっていく。
実に迷惑そうな雰囲気だ。
それでも、さちこさんを撫でたという事実は揺るがない。
(ついに)
恭弥はぬくもりの残る手のひらを見つめて、勝利の喜びをかみしめた。小躍りしたいぐらいだ。
「ん、何やってんの」
アランが洗面所からひょっこりと顔を出した。小躍りしなくてよかった。
「さちこさんが、撫でさせてくれた……」
アランはしたり顔で笑った。
「ほらぁ。やっぱりさちこさんも恭弥くんを待ってた。ぼくの奥さんとして君を認めたんだよきっと」
「奥さんって……」
恭弥はぽかんとした。
「ああ、ごめん、令和だね今。連れ合い? パートナー?」
「そういうことではなく……またからかってますよね?」
「本気、本気。前からいろいろ考えてたんだ。法律的にはまだ無理だけど、恭弥くんあてに遺言書いたり、資産共有したり? あ、苗字は君の好きにしていい」
アランは実に楽しそうに語る。
「そうそう、こんど指輪買わなくちゃ」
「話が急すぎる」
アランはちゅっと恭弥の鼻の頭にキスした。
「じゃあ、またプロポーズするからさ。返事、考えておいてよ」
「え、ちょっと、亜蘭さん」
「話してると、遅れるぞ」
時計をあわてて見ると、たしかに遅れそうだった。言いたいことは山ほどあったが、恭弥は家を飛び出すしかなかった。
店につくと、サボの妻が済まなさそうな顔で恭弥を迎えた。
「おはよう榛名くん、大丈夫だった? ごめん、ほんと余計なこと言って」
「おはようございます、ちゃんと話し合ったんで、大丈夫です」
出がけにプロポーズまがいのことを言われたぐらいには、大丈夫だ。
「ご心配おかけしました」
「……榛名くん、風邪ひいた?」
恭弥のかさかさした声を聞いて、サボの妻は心配そうな顔をした。
「元気です」
恭弥はあいまいに笑うしかなかった。
サボの妻はだんだん状況を理解した顔になっていく。
「エプロンつけてきます……」
いたたまれなくなった恭弥は一礼して、スタッフルームに逃げ込んだ。アランめ。
その午後、アランはまた店に客としてやってきた。恭弥が水を出すと、アランはにこにことしてテーブルに肘をつき、両手に顎を乗せた。
「プロポーズの返事、聞きに来たよ」
「早えよ」
ランチタイムの戦場をやっと乗り越えたところだ。そんなことを考えている暇なんてなかったというのに。
サボ夫妻はやりとりを聞き、顔を見合わせている。
「だからあんたは軽いんですって。そもそも俺たち出会って半月も経ってねぇ」
「じゃあ、いつだったらオーケーくれるの」
「あー、じゃあ、あんたが仕事についたら、ですかね。俺じゃ専業主夫を養うの、無理なんで」
恭弥は面倒になって、冗談で答えた。もちろん、アランが働かなくてもふたりで十分食べていけるのは知っている。
そう、冗談のつもりだった。
「わかった。働けばいいんだね」
アランは真面目くさった顔で答えた。
「……うそ」
サボ、サボの妻、そして恭弥は異口同音に言った。
「え、お前ほんとうに霜山か? 変なもん食ったか?」
疑うサボに、アランは笑った。
「それで恭弥くんと一生いっしょにいられるなら、ぼくは働くよ。
そうだ、サボ、手伝ってよ。友だちでしょ。ぼくねぇ、保護猫カフェ、やってみたい。かわいそうな猫ちゃんを保健所から引き取って、里親探しを兼ねて。そしたらいつか、恭弥くんといっしょに働けるし」
寝耳に水の話が多すぎて、恭弥は目を白黒させている。
「協力はするけどさ……あれ、許認可がけっこう大変だぞ。資格とか実務経験、いるんじゃなかったっけ。飲食の方はともかく、俺は動物の方は助けになれないから」
ふだんはいい加減な店長が真面目に取り合ったので、恭弥はさらに驚いた。
「がんばる。実はずっとぼんやり、やってみたいとは思ってたんだ。ボランティア団体に寄付するだけじゃなくてさ、自分で。夢、みたいな? でもひとりだと決心がつかなくて」
「わかる。俺も奥さん貰って初めて開業しようって思ったもん」
似た者同士が共感しあっている。
恭弥は困ってサボの妻を振り返った。
「なんか、俺が一言余計なこと言ったせいで、大変な事態になってしまった気が」
サボの妻は苦笑している。
「いいんじゃない? うちの人だってできたんだもん、霜山さんだって大丈夫だよ」
「恭弥くん、どう思う? 恭弥くんが嫌なら、やめるけど」
アランに訊かれて、恭弥は意を決した。誰かに必要とされていたいこの人にとっては、きっといちばん幸せな未来だ。
「俺も、応援します」
何気なく歩きだそうとして、床板の真ん中に、何か巨大な白い塊が落ちているのに気づいた。
恭弥はぎょっとして立ち止まった。
もちろんそれは怪異などではなかった。さちこさんの横腹だ。
ルディやボンが廊下に転がっているのはよく見かけるが、さちこさんがこうして無防備に寝そべっているのは見たことがない。
(踏むところだった)
恭弥は畏敬の念を抱いてさちこさんを眺めた。
堂々とした寝姿だった。恭弥が見つめているのが不快なのか、太いしっぽでときおり、ばさ、ばさ、と床を叩いている。
しばらくぼうっと見惚れたあとで、恭弥は時間がないことを思い出した。だが、進行方向にはさちこさんがいる。
「通ります」
仕方なく、恭弥はおそるおそるさちこさんのそばに足を下ろした。
さちこさんは頭を上げた。威圧感のある吊り目が恭弥を見つめる。
引っ掻かれるかと、恭弥は思わず固まった。
だがさちこさんは何もすることなく、頭を床にふたたび下ろした。
恭弥は胸をなでおろした。
(これは、もしかして)
恭弥はそうっとさちこさんの顔に指先を近づけた。
「ごあいさつ……」
さちこさんはふんふんと恭弥の匂いを確かめた。
さちこさんは逃げない。
勇気を出して、恭弥はさちこさんの首筋をそっと撫でてみた。
繊細でなめらかな毛並みを、恭弥の指先はたしかに感じ取った。
(やった)
惰眠を妨害され、さちこさんは大あくびした。鋭い牙だ。
恭弥が思わず指をひっこめると、さちこさんは立ち上がった。伸びをして、のそのそと階段をあがっていく。
実に迷惑そうな雰囲気だ。
それでも、さちこさんを撫でたという事実は揺るがない。
(ついに)
恭弥はぬくもりの残る手のひらを見つめて、勝利の喜びをかみしめた。小躍りしたいぐらいだ。
「ん、何やってんの」
アランが洗面所からひょっこりと顔を出した。小躍りしなくてよかった。
「さちこさんが、撫でさせてくれた……」
アランはしたり顔で笑った。
「ほらぁ。やっぱりさちこさんも恭弥くんを待ってた。ぼくの奥さんとして君を認めたんだよきっと」
「奥さんって……」
恭弥はぽかんとした。
「ああ、ごめん、令和だね今。連れ合い? パートナー?」
「そういうことではなく……またからかってますよね?」
「本気、本気。前からいろいろ考えてたんだ。法律的にはまだ無理だけど、恭弥くんあてに遺言書いたり、資産共有したり? あ、苗字は君の好きにしていい」
アランは実に楽しそうに語る。
「そうそう、こんど指輪買わなくちゃ」
「話が急すぎる」
アランはちゅっと恭弥の鼻の頭にキスした。
「じゃあ、またプロポーズするからさ。返事、考えておいてよ」
「え、ちょっと、亜蘭さん」
「話してると、遅れるぞ」
時計をあわてて見ると、たしかに遅れそうだった。言いたいことは山ほどあったが、恭弥は家を飛び出すしかなかった。
店につくと、サボの妻が済まなさそうな顔で恭弥を迎えた。
「おはよう榛名くん、大丈夫だった? ごめん、ほんと余計なこと言って」
「おはようございます、ちゃんと話し合ったんで、大丈夫です」
出がけにプロポーズまがいのことを言われたぐらいには、大丈夫だ。
「ご心配おかけしました」
「……榛名くん、風邪ひいた?」
恭弥のかさかさした声を聞いて、サボの妻は心配そうな顔をした。
「元気です」
恭弥はあいまいに笑うしかなかった。
サボの妻はだんだん状況を理解した顔になっていく。
「エプロンつけてきます……」
いたたまれなくなった恭弥は一礼して、スタッフルームに逃げ込んだ。アランめ。
その午後、アランはまた店に客としてやってきた。恭弥が水を出すと、アランはにこにことしてテーブルに肘をつき、両手に顎を乗せた。
「プロポーズの返事、聞きに来たよ」
「早えよ」
ランチタイムの戦場をやっと乗り越えたところだ。そんなことを考えている暇なんてなかったというのに。
サボ夫妻はやりとりを聞き、顔を見合わせている。
「だからあんたは軽いんですって。そもそも俺たち出会って半月も経ってねぇ」
「じゃあ、いつだったらオーケーくれるの」
「あー、じゃあ、あんたが仕事についたら、ですかね。俺じゃ専業主夫を養うの、無理なんで」
恭弥は面倒になって、冗談で答えた。もちろん、アランが働かなくてもふたりで十分食べていけるのは知っている。
そう、冗談のつもりだった。
「わかった。働けばいいんだね」
アランは真面目くさった顔で答えた。
「……うそ」
サボ、サボの妻、そして恭弥は異口同音に言った。
「え、お前ほんとうに霜山か? 変なもん食ったか?」
疑うサボに、アランは笑った。
「それで恭弥くんと一生いっしょにいられるなら、ぼくは働くよ。
そうだ、サボ、手伝ってよ。友だちでしょ。ぼくねぇ、保護猫カフェ、やってみたい。かわいそうな猫ちゃんを保健所から引き取って、里親探しを兼ねて。そしたらいつか、恭弥くんといっしょに働けるし」
寝耳に水の話が多すぎて、恭弥は目を白黒させている。
「協力はするけどさ……あれ、許認可がけっこう大変だぞ。資格とか実務経験、いるんじゃなかったっけ。飲食の方はともかく、俺は動物の方は助けになれないから」
ふだんはいい加減な店長が真面目に取り合ったので、恭弥はさらに驚いた。
「がんばる。実はずっとぼんやり、やってみたいとは思ってたんだ。ボランティア団体に寄付するだけじゃなくてさ、自分で。夢、みたいな? でもひとりだと決心がつかなくて」
「わかる。俺も奥さん貰って初めて開業しようって思ったもん」
似た者同士が共感しあっている。
恭弥は困ってサボの妻を振り返った。
「なんか、俺が一言余計なこと言ったせいで、大変な事態になってしまった気が」
サボの妻は苦笑している。
「いいんじゃない? うちの人だってできたんだもん、霜山さんだって大丈夫だよ」
「恭弥くん、どう思う? 恭弥くんが嫌なら、やめるけど」
アランに訊かれて、恭弥は意を決した。誰かに必要とされていたいこの人にとっては、きっといちばん幸せな未来だ。
「俺も、応援します」
26
お気に入りに追加
109
あなたにおすすめの小説
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
【本編完結】ふざけたハンドルネームのままBLゲームの世界に転生してしまった話
ういの
BL
ちょっと薄毛な大学生、美髪(みかみ)しげるはゲームのデータを姉に飛ばされた腹いせに、彼女がプレイ途中だった18禁BLゲームの主人公にふざけたハンドルネームを付ける。そして確定ボタンを押した瞬間に起こった地震によって、しげるはそのゲーム、『私立ベイローレル学園』、通称BL学園の世界に転生してしまった。よりによって、しげるが付けたふざけたハンドルネームの主人公『コノハ・ゲー(このハゲ)』として。
「このハゲ……とても愛らしい響きの名前だな」
…んなわけあるか、このボケ‼︎
しげるには強力なハゲ…ではなく光魔法が使える代わりに、『コノハ・ゲー』としか名乗れない呪いが掛かっていた。しかも攻略対象達にはなぜか『このハゲ』と発音される。
疲弊したしげるの前に現れたのは、「この、ハゲ……?変な名前だな」と一蹴する、この世界で唯一と言っていいまともな感性の悪役令息・クルスだった。
ふざけた名前の主人公が、悪役令息とメイン攻略対象の王太子をくっつける為にゆるーく頑張っていく、ふざけたラブコメディ。
10/31完結しました。8万字強、ちょっと長めの短編(中編?)ですがさらっと読んで頂けたら嬉しいです。
※作品の性質上、ハゲネタ多い&下品です。かなり上品でない表現を使用しているページは☆印、R18は*印。お食事中の閲覧にご注意下さい!
※ BLゲームの設定や世界観がふわふわです。最初に攻略対象を全員出すので、悪役が出てくるまで少し時間がかかります。
※作中の登場人物等は、実在の人物や某男児向け機関車アニメとは一切関係ございません。
※お気に入り登録、いいね、しおり、エール等ありがとうございます!感想や誤字脱字報告など、ぜひコメント頂けるととっても嬉しいです♪よろしくお願いします♡
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。
俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします
椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう!
こうして俺は逃亡することに決めた。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる