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第二節 白銀の守り手 青珠(せいじゅ)の守り手13

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 レイノーラにはわかっていた。
 彼がこのような微笑みをする時は、一切その真意を口にしない時であることを・・・・
 邪眼と呼ばれ、人の心を見透かすことの出来るレイノーラでさえ、魔王と呼ばれるこの青年の心内を読むことはできない。
 彼女は、水色のローブを羽織るなだらかな肩を僅かにすくめ、少々不満そうに細めた青玉の両眼で、ゼラキエルの冷淡で端正なその横顔を見やった。

 紫に輝く炎の烙印が刻まれた綺麗な額に、黒い髪束がはらりと零れ落ちる。
 彼女は、どこかつまらなそうに言うのである。

『わかりましたわ、これ以上何も聞きませぬ・・・・それより、この女、まだ時折ひどく私に抵抗しますのよ?まったく、本当に諦めの悪い女ですこと』

『捨て置け、いずれその女もそなたから消える・・・』

 その鮮やかな緑玉の瞳を煌かせて、ゼラキエルは、妻となるはずだった魔性の女性をゆっくりと振り返る。
 彼女は、ますます不満そうな表情をすると、彼女のとは対照的に実に愉快そうな表情をしたゼラキエルの顔を見つめすえた。
 彼は、その冷酷で鮮やかな緑玉の瞳が、何やら策略でもあるかのように爛と輝いている。
 レイノーラは、妖艶な紅の唇で小さく吐息した。

『だといいのですけど・・・・そういえば、どうやら、この城の近くに、あのロータスの者が現れたようですわ・・・いか
がいたします?』

『行きたいなら行くがいい、レイノーラ・・・・そなたの姿を見たあの者が、一体どういう顔をするか、私も見てみたいものだ・・・』

『あら・・・でしたら、挨拶に行って参りますわ・・・』

『余計な手出しは無用だぞ・・・・・あやつが本気でそなたに手出ししなければの・・・話だがな』

『心得ておりますわ』

 ゼラキエルの言葉に、先程までひどく不満そうであったレイノーラの青玉の両眼が、不意に、水を得た魚のように嬉々として輝いた。
 その妖艶な紅の唇を、ニヤリと性悪(しょうあく)に歪めた時、彼女の美麗な顔に、闇に閃く雷光の輝きが鋭利に映り込んだのである・・・・
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