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第一節 覚醒する闇6
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納得出来ないような表情をして、ウィルタールはまじまじと、敬愛する主人の秀麗で雅やかな顔を見る。
輝くような蒼銀の前髪の下で、スターレットは、何故か諦めたように小さくため息をつくと、ラレンシェイの剣の切っ先を躊躇いもせず片手で掴んだのだった。
そんな彼の行動に、彼女の気強く美麗な顔が、いぶかし気に歪む。
「おぬし、何をするつもりだ?」
鋭く輝いたままの両眼が見事な赤毛の下で僅かに細められた。
「私は、もうそなたと戦うつもりもない、かと言って、そなたの首を取る気もない・・・・」
「・・・・ならば、選択肢はもう一つしかない」
やけに冷静な声でつむがれた彼の言葉に、茶色の瞳を細めたまま、紅色の唇で彼女はそう答えると、ゆっくりと彼の手中にある剣の切っ先を床に下ろしたのである。
「・・・・・・・・。」
次の言葉を発する事のないスターレットの冷静な横顔を、一瞬、言葉を失ったウィルタールが、耳まで真っ赤に染めて、まじまじと見た。
いくらウィルタールがまだ年若い少年とは言え、その沈黙が何を示唆しているのか全く把握できない訳ではない。
相変わらず耳まで赤くしたまま、彼はついつい本音を口にしてしまった。
「!!?・・・・ス、スターレット様!?まさか・・・・・!?
そんな事をしたら・・・・それがリーヤ姫に知れたりしたら!首を撥ねられますよ!?」
そんな年少者の言葉に、スターレットは思わず愉快そうに笑った。
「あのお方なら、それぐらいやるかもしれぬな」
この国の第一王女リーヤティアが、ロータス家のこの雅な魔法使いを好いているのは、リタ・メタリカの宮中ではあまりにも有名な話である。
そんな彼女の気持ちぐらい、彼女と接する機会が多く、凡人よりも数倍六感が優れているスターレットなら、知らない訳がない。
ましてや彼女は、その高貴な出にも関わらず武術を得意とする奇特な姫だ、ウィルタールの言葉が、さほど的を外しているとも思えない。
美しい姫ではあるが、彼女は存外気性が激しい。
愉快そうに知的な唇をほころばせたまま、スターレットは、先程から、その強く鋭い眼差しでこちらを見つめているラレンシェイの茶色の眼差しを真っ直ぐに見つめすえた。
彼の知的な唇が、彼女に向かって何かを言おうと、僅かに開いた時だった・・・・。
突然、回廊の大きな窓の外で、風の精霊達が、泣き叫ぶようなけたたましい叫び声を上げたのである。
「!?」
魔法を司る者にしか聞こえないその声に、スターレットと、そして、ウィルタールがハッと肩を揺らす。
刹那。
どおぉんという凄まじい爆発音が、強固で巨大な城全体を揺るがした。
宮廷付きの魔法使いである二人が、鋭い視線で回廊の窓から外を見ると、城の中心部、調度、王宮がある辺りから、夜の闇と同化するよう黒い炎が立ち昇っていたのである。
「スターレット様!!」
ウィルタールが声を上げると同時に、ラレンシェイもまた、異変に剣を構え直し、窓の外に鋭い茶色の眼光を向ける。
「なんだ!?」
「この話の続きは、また後だ、ラレンシェイ・・・・
ウィルト、他の術者に召集をかけろ、あやつが現れたようだ」
そう言うなり、雅なその顔を鋭く歪めて、スターレットの姿は、まるで空間に溶けるかのようにその場から一瞬にして消え失せた。
それを確認したウィルタールが、まだあどけないその顔を強く引き締めて王宮の方へとその身を翻す。
「貴女も!もう諦めて城を出た方がいいですよ!!」
「おぬしに指図されるいわれはないな、見習魔法使い殿」
しかし、走り出したウィルタールの隣には、いつのまにやらラレンシェイが並んで走り出している。
彼は思わず、驚いたように大きなその青い瞳を見開いた。
「な!?何で着いてくるんです!?」
「掟を邪魔した魔物を、そのままになどしておけるか!」
「もう!何を言ってるのかなほんとに!?」
けたたましい足音が、騒乱の気配を宿した長い回廊にこだまして行った。
長い騒乱の一幕が、今、まさに上がろうとしていた。
輝くような蒼銀の前髪の下で、スターレットは、何故か諦めたように小さくため息をつくと、ラレンシェイの剣の切っ先を躊躇いもせず片手で掴んだのだった。
そんな彼の行動に、彼女の気強く美麗な顔が、いぶかし気に歪む。
「おぬし、何をするつもりだ?」
鋭く輝いたままの両眼が見事な赤毛の下で僅かに細められた。
「私は、もうそなたと戦うつもりもない、かと言って、そなたの首を取る気もない・・・・」
「・・・・ならば、選択肢はもう一つしかない」
やけに冷静な声でつむがれた彼の言葉に、茶色の瞳を細めたまま、紅色の唇で彼女はそう答えると、ゆっくりと彼の手中にある剣の切っ先を床に下ろしたのである。
「・・・・・・・・。」
次の言葉を発する事のないスターレットの冷静な横顔を、一瞬、言葉を失ったウィルタールが、耳まで真っ赤に染めて、まじまじと見た。
いくらウィルタールがまだ年若い少年とは言え、その沈黙が何を示唆しているのか全く把握できない訳ではない。
相変わらず耳まで赤くしたまま、彼はついつい本音を口にしてしまった。
「!!?・・・・ス、スターレット様!?まさか・・・・・!?
そんな事をしたら・・・・それがリーヤ姫に知れたりしたら!首を撥ねられますよ!?」
そんな年少者の言葉に、スターレットは思わず愉快そうに笑った。
「あのお方なら、それぐらいやるかもしれぬな」
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そんな彼女の気持ちぐらい、彼女と接する機会が多く、凡人よりも数倍六感が優れているスターレットなら、知らない訳がない。
ましてや彼女は、その高貴な出にも関わらず武術を得意とする奇特な姫だ、ウィルタールの言葉が、さほど的を外しているとも思えない。
美しい姫ではあるが、彼女は存外気性が激しい。
愉快そうに知的な唇をほころばせたまま、スターレットは、先程から、その強く鋭い眼差しでこちらを見つめているラレンシェイの茶色の眼差しを真っ直ぐに見つめすえた。
彼の知的な唇が、彼女に向かって何かを言おうと、僅かに開いた時だった・・・・。
突然、回廊の大きな窓の外で、風の精霊達が、泣き叫ぶようなけたたましい叫び声を上げたのである。
「!?」
魔法を司る者にしか聞こえないその声に、スターレットと、そして、ウィルタールがハッと肩を揺らす。
刹那。
どおぉんという凄まじい爆発音が、強固で巨大な城全体を揺るがした。
宮廷付きの魔法使いである二人が、鋭い視線で回廊の窓から外を見ると、城の中心部、調度、王宮がある辺りから、夜の闇と同化するよう黒い炎が立ち昇っていたのである。
「スターレット様!!」
ウィルタールが声を上げると同時に、ラレンシェイもまた、異変に剣を構え直し、窓の外に鋭い茶色の眼光を向ける。
「なんだ!?」
「この話の続きは、また後だ、ラレンシェイ・・・・
ウィルト、他の術者に召集をかけろ、あやつが現れたようだ」
そう言うなり、雅なその顔を鋭く歪めて、スターレットの姿は、まるで空間に溶けるかのようにその場から一瞬にして消え失せた。
それを確認したウィルタールが、まだあどけないその顔を強く引き締めて王宮の方へとその身を翻す。
「貴女も!もう諦めて城を出た方がいいですよ!!」
「おぬしに指図されるいわれはないな、見習魔法使い殿」
しかし、走り出したウィルタールの隣には、いつのまにやらラレンシェイが並んで走り出している。
彼は思わず、驚いたように大きなその青い瞳を見開いた。
「な!?何で着いてくるんです!?」
「掟を邪魔した魔物を、そのままになどしておけるか!」
「もう!何を言ってるのかなほんとに!?」
けたたましい足音が、騒乱の気配を宿した長い回廊にこだまして行った。
長い騒乱の一幕が、今、まさに上がろうとしていた。
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