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第一節 覚醒する闇5
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400年前の呪いに従い、ラグナ・ゼラキエルの墓を暴き、その呪われた魂を持ち去ったエルフェリナという名の女妖がどこへ消えたのか、大魔法使いたる彼ですら追いきれなかった。
レイ・ポルドンでの出来事に絡んでいるのは、実はラレンシェイばかりではないのだが・・・。
スターレットの旧知の友たる魔法剣士もまた、あの時あの場で蘇った闇の者どもと一戦を交えていたのである。
おそらく彼も、既にこの王都に入っているはずだ。
しかし、まさか、彼よりも先にこの異国の誇り高き女剣士殿が城に潜入しているとは、流石のスターレットも考えもしなかった。
もちろん、彼女の言う任務とやらは、リタ・メタリカを脅威にさらしていくだろうあの闇の魔法使いの事ではない・・・
『リタ・メタリカには、これから何が起こるかはわからぬ・・・悪いことは言わない・・・そなたは国へ帰れ。
たる私がいるうちは、どんな手を使ってもリタ・メタリカは陥落しない・・・・皇帝にはそう伝えるがいい』
それを頑として聞き入れない彼女が、彼に向かってその刃を向けたのは言うまでもない。
その時彼は、彼女を魔力で打ち伏せた。
魔法剣士でもない限り、魔法使いと同等に戦うのはまず無理な話だろう。
しかし、彼は知らないでいた・・・・
大陸全土にその名を知らしめるほどの強靭なアストラに、あのような掟があろうとは・・・・。
エストラルダ帝国のアストラ剣士にとって、戦いにおいて異性に負けることは計り知れないほどの屈辱なのだ。
屈辱を受けたら、それは己の命か、体かで相殺する。
つまり、命ある場合はあえて首を切らせるか、一夜の床を共にするか、それが彼女達の部隊の掟なのだ。
「そなた達の掟は、まこと厄介な掟だな・・・・」
思わずそんなことを呟いて、スターレットはまじまじと、鋭い表情をしたまま茶色の両眼でこちらを見据えるラレンシェイの美麗な顔を見る。
「・・・・・臆病者め!リタ・メタリカの大魔法使いが聞いて呆れる!」
そんなラレンシェイの言葉に、最初に激したのは決してスターレット本人ではなかった。
まだまだあどけない顔を上気させて、傍らにいたウィルタールが声を荒げる。
「スターレット様に向かって臆病者とはなんだ!?命を取られなかっただけましじゃないか!?助けてもらってその言い草はなんなんだ!?」
「よせウィルト、本当の事だ」
そう言って、スターレットは、ラレンシェイに掴みかからんばかりに怒り心頭のウィルタールを制した。
「しかし!スターレット様!?」
納得がいかないウィルタールは更に食い下がるが、スターレットはそんな彼に向かって小さく微笑むと、首を横に振る。
そして、銀水色の綺麗な瞳で再び異国の誇り高い秀麗な女剣士の鋭い両眼を見据えた。
「王家の内情を探りたいのなら、このまま探ればいい・・・・
だが、以前も言った通り、このスターレットがいる限り、エストラルダ帝国がどんな戦略をもって戦を仕掛けてきても、リタ・メタリカが落ちることはない」
「ならば・・・・ここでおぬしを殺せばいいだけの事。おぬしが死ねば、このラレンシェイの屈辱も晴れる」
そう言い放つなり、ラレンシェイは、突然ドレスのスコートを片手でめくり上げると、その下に隠し持っていたレイピアをスラリと抜き払ったのである。
見事な赤毛の前髪から覗く鋭利な茶色の眼光が、剣の切っ先にいるリタ・メタリカの雅な魔法使いを真っ向から睨み据えた。
しかし、彼は身動ぎもしないで、殺気立つ視線をその銀水色の綺麗な両眼で受け止めたのだった。
「貴女は!まだそんなことを言うのですか!?」
慌てて止めようとするウィルタールを、再びスターレットの手が制した。
「やめろウィルト・・・この女人は誇り高い戦人だ・・・・その厳しい掟にしたがい戦場を駈けてきた。
それに屈辱を与えたのは他でもない、この私だ・・・・」
「しかし!!」
レイ・ポルドンでの出来事に絡んでいるのは、実はラレンシェイばかりではないのだが・・・。
スターレットの旧知の友たる魔法剣士もまた、あの時あの場で蘇った闇の者どもと一戦を交えていたのである。
おそらく彼も、既にこの王都に入っているはずだ。
しかし、まさか、彼よりも先にこの異国の誇り高き女剣士殿が城に潜入しているとは、流石のスターレットも考えもしなかった。
もちろん、彼女の言う任務とやらは、リタ・メタリカを脅威にさらしていくだろうあの闇の魔法使いの事ではない・・・
『リタ・メタリカには、これから何が起こるかはわからぬ・・・悪いことは言わない・・・そなたは国へ帰れ。
たる私がいるうちは、どんな手を使ってもリタ・メタリカは陥落しない・・・・皇帝にはそう伝えるがいい』
それを頑として聞き入れない彼女が、彼に向かってその刃を向けたのは言うまでもない。
その時彼は、彼女を魔力で打ち伏せた。
魔法剣士でもない限り、魔法使いと同等に戦うのはまず無理な話だろう。
しかし、彼は知らないでいた・・・・
大陸全土にその名を知らしめるほどの強靭なアストラに、あのような掟があろうとは・・・・。
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屈辱を受けたら、それは己の命か、体かで相殺する。
つまり、命ある場合はあえて首を切らせるか、一夜の床を共にするか、それが彼女達の部隊の掟なのだ。
「そなた達の掟は、まこと厄介な掟だな・・・・」
思わずそんなことを呟いて、スターレットはまじまじと、鋭い表情をしたまま茶色の両眼でこちらを見据えるラレンシェイの美麗な顔を見る。
「・・・・・臆病者め!リタ・メタリカの大魔法使いが聞いて呆れる!」
そんなラレンシェイの言葉に、最初に激したのは決してスターレット本人ではなかった。
まだまだあどけない顔を上気させて、傍らにいたウィルタールが声を荒げる。
「スターレット様に向かって臆病者とはなんだ!?命を取られなかっただけましじゃないか!?助けてもらってその言い草はなんなんだ!?」
「よせウィルト、本当の事だ」
そう言って、スターレットは、ラレンシェイに掴みかからんばかりに怒り心頭のウィルタールを制した。
「しかし!スターレット様!?」
納得がいかないウィルタールは更に食い下がるが、スターレットはそんな彼に向かって小さく微笑むと、首を横に振る。
そして、銀水色の綺麗な瞳で再び異国の誇り高い秀麗な女剣士の鋭い両眼を見据えた。
「王家の内情を探りたいのなら、このまま探ればいい・・・・
だが、以前も言った通り、このスターレットがいる限り、エストラルダ帝国がどんな戦略をもって戦を仕掛けてきても、リタ・メタリカが落ちることはない」
「ならば・・・・ここでおぬしを殺せばいいだけの事。おぬしが死ねば、このラレンシェイの屈辱も晴れる」
そう言い放つなり、ラレンシェイは、突然ドレスのスコートを片手でめくり上げると、その下に隠し持っていたレイピアをスラリと抜き払ったのである。
見事な赤毛の前髪から覗く鋭利な茶色の眼光が、剣の切っ先にいるリタ・メタリカの雅な魔法使いを真っ向から睨み据えた。
しかし、彼は身動ぎもしないで、殺気立つ視線をその銀水色の綺麗な両眼で受け止めたのだった。
「貴女は!まだそんなことを言うのですか!?」
慌てて止めようとするウィルタールを、再びスターレットの手が制した。
「やめろウィルト・・・この女人は誇り高い戦人だ・・・・その厳しい掟にしたがい戦場を駈けてきた。
それに屈辱を与えたのは他でもない、この私だ・・・・」
「しかし!!」
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