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ACT3 優柔不断は早々簡単に治らない6

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 音楽業界も芸能界も、きっと色々ごちゃごちゃあるんだろうな・・・
 俺はそんなことを思って、Marinからはオーダーがきてないけど、なんとなく、なんとなくだけど、今、彼女がしてる表情のようなカクテルを作ってみた。

 チャイナブルーという、青いカクテル。

「とりあえず、これ・・・なんとなく、こんな表情してるなって」

 そう言ってカクテルグラスを差し出すと、Marinは一瞬きょとんとして、どこか切なそうに、どこか嬉しそうにリップをつけた唇で微笑った。

「キレイなブルー・・・たしかに、うん、なんていうか、こんな気分かも」

「そんな強くないから、普通に飲んで大丈夫だよ」

「ありがと・・・
なんかてっちゃんて、クズクズ言われてるわりに、変なとこで気が利くし優しいね?」

 今日会ったばっかりのMarinにまでクズと言われるこの俺って、一体・・・??
 あまりにもさらっとクズと言われたんで、俺はもはや返す言葉もなくなって、遠い目をして宙を仰いだ。

「ああ・・・いえ、その・・・クズなんで・・・
むしろこんなことしかできないからクズなんで・・・
クズはクズ以外取り柄ないんで・・・まじ俺、クズなんで・・・」

「あははは!可笑しい!
でも、なんか・・・・きぃちゃんがてっちゃんが気に入ってる理由分かった気がする」

「え?だから気に入られてなんかないって・・・・」

「そうかな?それはきっと勘違いだよ・・・
っていうかね、あたし、本名が葵(あおい)っていうんだ」

「ああ・・・だから、きなこがあおちぃって?」

「そうそう!だから、このカクテルの色と自分の本名が、なんか、かぶった気がして、ちょっとおもしろかった。
最近、ずっとアーティストMarinでいることの方が多かったから、久々に本当に自分に戻った気がしたよ・・・
ありがと、てっちゃん」

 そう言って無邪気に笑ったMarin・・・もとい、あおいは、きっと、これが本当に素のままのあおいなんだろうなと、なぜかしみじみ思った。
 メジャーどころで有名になってきたアーティストは、常に人の目に晒される。
 ステージだけながらまだしも、きっとプライベートも常に人の目を気にする生活してるんだろうな・・・
 たいしてきなこと変わりない歳のあおいが、アーティストとして背負ってるプレッシャーはきっと半端ない。

 なんとなくそれが、羨ましいような・・・
 だけど、俺は一般人でよかったなとか、そんなことも思ってみたりもして。


「いや、俺はカクテル作っただけだし、どうせクズだし、カスだし・・・」

「なにその自虐!!」

「いつも言われてるんで・・・!」

「あはははは!もぉwwほんと面白いwww」

 あおいは、俺が作ったチャイナブルーを飲みながら、ひとしきり笑って大きく息を吐くと、隣で寝込んだきなこに視線を向けながら言う。

「きぃちゃんはいいな~無邪気で」

「無邪気っていうか・・・ばかっていうか、ぼけっていうか、こんなで看護師とか信じらんねーっていうか」

「だからもうww笑わせないでよwww
でもさ、こんなきぃちゃんだけど・・・うーん、こんなきぃちゃんだからかな・・・
小学、中学とすっごいいじめにあってさ・・・
可哀想だったんだぁ
まともに学校から帰ってきたためしがなかったんだよ・・・」

 そう言って、あおいは切なそうな表情をして、ふんわりしてるきなこの髪を撫でた。
 あおいのその言葉があまりにも意外で、俺はまじまじとあおいのキレイな顔を見る。

「きなこが?いじめにあってた??まじで?」

「まじだよ~ほんとに可哀想だったんだ・・・あたし、きぃちゃんより学年いっこ上でさ。
家も近所だったし、帰りにきぃちゃんに会うとさ、ランドセルには落書きだらけ、靴は誰かに隠されてなくなってて、きぃちゃん裸足で歩いてたんだよ・・・
でも泣かないんだよ、この子
強いから・・・
自分は何もしてないから、泣く必要ないって・・・
おばさんが、嫌なら学校行かなくていいって言っても、絶対いくって・・・
ほんと強い子なんだよ
ねぇ・・・・きぃちゃん?」

 あおいにそういわれて、なぜか、眠っているはずのきなこがまたにんまりと笑う。

 おい、こいつ、ほんとに寝てんのか????

 俺は思わず、寝ているきなこに疑いのまなざしを向ける。
 だがきなこは、もぞっと動いて、訳のわからない寝言を言うとまたぴたりと動かなくなって寝息を立てた。

「‥‥‥‥‥」

 やっぱり寝てやがるらしい‥‥
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