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ACT1 暴言吐きまくり女子だけどなんか可愛いのは何故だろう?7

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 うん、まぁ、こんな事思ってる時点で、ほんとに、俺は何に対しても、本気になんてなってないんだろうな…

「てっちゃーん?おーい?てっちゃーん?瞳孔開いてるよぉ?」

 きなこのそんな声に、俺は、ハッと我に返る。

 「あ……?」

 きなこの大きな二つの眼が、ぱちぱちと瞬きしながら、さも不思議そうに俺を見ていた。

「どうしたの~?図星付かれ過ぎて、心肺停止??」

「んなことになったら死ぬわっ、あほっ!」

「え?だって瞳孔…」

「やwwwかwwwまwwwしwwwいwww
別におまえには関係ないべ?俺が真奈美と喧嘩しようがしまいが、イチイチ報告する義務なんかない…っ」

「うん…まぁ…それは~、そうなんだけど…
てっちゃん、女癖悪そうだから、あたしも注意しないと…と、思って」

「殺wwwすwwwぞwwwおwwwまwwwえwww」

「いや~!殺さないでぇ~!」

 きなこはそう言うと、ぱっと俺の隣から、ソファのはじっこ辺りまで遠退いて、じとっと疑いの眼差しで俺を見る。
 俺は、銀髪頭に片手を突っ込みながら、ため息まじりに手元のデンモクをいじった。

 まったく…こいつはほんとに…
 きなこの言うことは、いつだって突拍子もない。
 まさに、きなこクオリティだ…

 大体、俺が大遅刻かました今日のこのカラオケだって、そもそも、きなこが「歌の歌いかたを教えてくれ」って言い出したのがきっかけだった訳だし。

 なんで突然そんなこと言い出したのか、俺にはさっぱりわかんねーけど…まぁ、きなこの意味不明な行動や言動は、今に始まったことでもない。
 俺は、ため息を吐き出しながら、未だにソファの端っこにいるきなこに言った。

「んで…歌い方って、どの曲の歌い方知りたい訳?」

「えー?んとね~…!」

 そう言うなり、きなこは、滑るように俺の隣に寄ってきて、デンモクの画面を覗き込むと、遠慮もしないで俺の手からタッチペンをむしり取る。

「これこれ!てっちゃんなら判るんじゃないかな~って思ってさ!
なんか難しくて歌えないんだよね!」

 そう言って、きなこが選曲した曲を見た俺は、思い切り、頭をテーブルにぶつけるハメになった…。

「天城越え~っ!」

 きなこはなんの悪気もなさそうに、タイトルを叫んで無邪気に笑う。
 俺は、真面目に、こいつに対して殺意を覚えた…orz

「お、おまえ…俺のこと舐めてんのか?!」

 やたらとムキってそう叫んだ俺。
 そんな俺を、不思議そうな目で見るきなこ。

「やだ~、てっちゃん…何怒ってんの?」

「普通に怒るだろう!馬鹿かおまえは!?」

「えー…?」

「えー…じゃねーよ!」

「だからぁ、なんで怒るのぉ?だって、なんでも歌えるって言ってたじゃ~ん?」

「あのな!同じジャンルならな、確かになんでも歌えるわぼけ!
だけどな!おま…天城越えって演歌だろ!?」

「えー…?」

「だから!えー…じゃねー!!!どう考えてもジャンルちげーだろ?!」

「そんな小さいことは気にしないで~…教えてよ~♪」

「おまえ…まじで殺すwwwwwwwwwwww」

 俺は、思い切りひきつって笑うと、ジロッときなこを睨み付けた。

「つかさ…なんで演歌なんか歌いたいんだよ?
おまえの彼氏、もしかしておっさんなんか?」

俺がそう言うと、きなこはきょとんとした顔をして、三秒ぐらいフリーズすると、ふるふると首を横に振る。

「違うよ~!あのね、病棟のおじいちゃんがね、あたしに歌って欲しいんだって~天城越え」

「はっ?」

 文字通り俺は、目が点になった。

 どうやら今夜は、違う意味で寝れそうにない。

 俺は遠い目をして天井の上の上を思わず眺めてしまったのは、言うまでもない・・・
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