新宿情火~Flamberge~Ⅰ

坂田 零

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「だって・・・しのぶは・・・なに?」

「ありえない・・・ありえない!!しのぶはしのぶは・・・・!!」

「あなた・・・あの時、私に・・・何をしたか、覚えてる?」

「来るな!!来るなぁぁぁ!!まさか!まさか!!!」

「柴田くん・・・あの時の私は、本当にあなたを愛してたのに・・・
あなたは、私を・・・裏切った・・・・そして、私を・・」

 そこまで言った美麗は、不意に歩みを止めて、まるで糸が切れた人形のようにガクッと首を垂れてしまう。

 顔にかかった長い髪。

 白い肌に絡みつくネオンの光が、無気味に点滅している。

「許してくれ・・・許してくれしのぶ!!!!!!
殺す気なんかなかったんだ!!!殺すつもりなんかなかったんだ!!!
許してくれ!!!!」

 俺は思わずそう叫んだ。

 あの日・・・

 借金取りがしのぶの部屋に来ていたあの日。

 一度は逃げた俺だけど、気になって、深夜、しのぶの部屋に戻った。

 しのぶは、泣き腫らした目で俺を見て、こう言った。

「柴田くんは・・・どんなに私が苦しんでても、助けてくれないんだね」

「いや・・・別にそんなことはないけど」

「じゃあ、どうして今日は逃げたの?なんで、あんなこと言ったの!?」 

 しのぶは、珍しく声を荒げてそう言った。

 その言葉に、俺も一瞬で頭に血が上った。 

「だってほんとに俺はおまえの彼氏なんかじゃないだろ!!
おまえはただの金づるで!!おまえがどうなろうと俺には関係ないんだよ!!」

「ひどい・・・ひどいよ・・・・!!お父ちゃん・・今朝死んじゃったのに!!
私、帰れなかったんだよ!!!お金なくて!!
柴田くんのために給料も全部使って、お金借りて!!
柴田くんのために柴田くんのために!!!!」

 涙を飛び散らせて、しのぶは俺に掴みかかってきた。

「返してよ!!お金返してよ!!!返して!!返してよ!!!!」

「うるせーよ!離せよブス!!!触るんじゃねーよ!!!」

「返して!!返してよ!!!」

「離せよ!!!」

 俺はしのぶを床に突き倒した。

 だけどしのぶは起き上がって、今度は俺の足にしがみついてくる。

 そんなしのぶの体を蹴り飛ばすと、しのぶは悲鳴を上げて後ろに倒れ込んだ。

 俺は玄関に向かおうとすた、だけど、しのぶが俺の足にすがりつく。

 うざかった。

 ひたすら面倒くさかった。

「離せよ!!」

「返して!!お金返して!!返してよ!!!!」

「離せって言っていんだろ!!!」

 俺は、足にすがりついて離れないしのぶの顔を殴りつけた。
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