新宿情火~Flamberge~Ⅰ

坂田 零

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 しなやかな首筋と綺麗な鎖骨のライン。

 細く白い肩。

 豊満な胸元でふんわりと長い髪が揺れた。

 ギリシアの彫刻のように美しいボディライン。

 文字通り、一糸まとわぬ姿になった女神が妖艶に、しかし、勝ち誇ったように微笑っている。

「綺麗だ・・・・」

 俺は思わずそう呟いた。

 美麗はますます意味深な表情で微笑む。

「思い出して・・・私のこと」

「え?」

「ちゃんと、思い出して・・・あなたが私に何をしたか」

  美麗のその言葉に、俺はハッとした。

「な、何言って・・・っ」

「別にいいのよ・・・忘れてても・・・でも、今は思い出して
私が一体誰か、あなたならわかるわ」

 異界の夜景を背景に、美しい女神が妖艶に妖しく、そしてどこか無気味に微笑しながら、胸にかかった巻き髪を
そっと払いのける。

「!!!?」

 次の瞬間、俺は、ぎょっと目を向いた。

 俺は、悪い夢でも見てるのだろうか?

 この女は・・・あの女じゃないハズなのに・・・っ!

 何故!?

 美麗の形良く豊満な胸。

 その左胸の脇にあるのは、確かに、蝶々の形をしたあざだった。

「そのあざ・・・・!!まさか!!?」 

「お久しぶりね・・・柴田くん
そう、私よ・・・
あなたに裏切られた、醜い女・・・しのぶ」

「そ、そ、そんな・・・まさか!!まさか嘘だ!!!」

 全身の毛穴が開くような感覚がした。

 背筋が一瞬で凍りつく。

 暑い訳でもなく、だらだらと額から汗がこぼれ落ち、ガクガクと膝が震えるのがわかる。

「やっと・・・思い出してくれたの?」

 俺は美麗から飛びのいて、絨毯の上にへたり込んでしまった。

「まさか!まさか!!!違う!おまえはしのぶなんかじゃない!!!
だって、しのぶは・・・しのぶは!!!」 

 全身の震えが止まらずに、奥歯がぶつかってガチガチと鳴っていた。

 ありえない! 

 この女がしのぶなハズない!!

 俺は何度も、声のない声でそう叫んだ。

 美麗は、勝ち誇ったような微笑をしたまま、美しい姿でゆっくりと俺に近づいてくる。

 俺は、声にならない叫び声を上げながらあとずさりした。

 美麗は、口角を不気味に吊り上げて静かな口調で言う。
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