上 下
27 / 43

ACT3  ローマは一日にして成らず、そう言った先人まじすげー10

しおりを挟む
 エレベーターに乗り込むと、あおいはいったん笑いをおさめて、ふと、俺の顔をみた。
 
「てっちゃん」

「ん?」

 妙に神妙な顔つきになって、あおいは低めたトーンで言う。

「あたし・・・サイゾーさんと寝たりしてないよ」

 俺は一瞬きょとんとして、そして、あおいが何を言いたいの理解して、にまっと笑って見せる。

「わかってるよそんなこと、そもそも、あおいはそういうタイプじゃないだろ
結構真正面から突進してくタイプじゃん、だからわかる」

 少しほっとした顔をして、あおいは言葉を続けた。

「ん・・・ありがとう・・・」

「心配しなくていいから、今日はもう部屋帰って寝とけ」

「うん・・・・」

「Toyってあいつのせいで微妙な気分だったけど・・・・膝カックンしてやったからいいかw」

「よくあんなことできたよね?wあいつ、結構売れてるアイドルグループのメンバーだよ?」

「別にあいつがなんだろうと、俺、興味ないしwどうでもいいしww」

「あはははw
なんか、てっちゃんらしいっていうか、さすがっていうか、なんていうか・・・・!」

 そこまで言って、あおいはまた神妙な顔になって俺を見上げる。

「てっちゃんは・・・・聞かないの?Toyとあたし、何があったとか?」

 あんまりにも神妙な顔をするもんだから、俺は思わずあおいの頭を撫でた。
 いたって率直に俺は言う。

「いや~・・・特につっこんで聞きたいとか思わないかなぁ?
多分、あおいにとって嫌な思い出なんだろうしさ
とりあえず、あいつが元カレじゃないのはなんとなくわかるし
言いたくないこと言う必要もないしな」

 あおいは、どこか嬉しそうに、でもどこか切なそうに、そんな複雑な表情をしながら、ぺたっと俺の胸に抱き着いてきたから、思わずその体を抱きとめた。

「てっちゃん・・・・やっぱてっちゃんは良いね・・・
なんか安心する・・・ほんとに」

 ふんわりと香る香水の匂いに、うかつに俺はどきっとする。
 やわらかい髪が、否応なしに俺の指先に絡む。
 それよりなにより、抱きとめたあおいの体が異様に熱い。

「っ!?
おまえ・・・これ、熱上がってないか??」

「ん・・・・ちょっと・・・だるい」

「いやいやいや、だるいとかだるくないとか、そういう問題じゃないだろこれ
病院いったほうがよくないか???」

 そう言った瞬間、あおいの体からふっと力が抜けて、床の上にずるずると倒れそうになるから、慌ててぎゅっと抱きしめてしまう。
 あおいは、力なく俺のTシャツの背中を握りながら、か細い声で言うのだった。

「ちょっと・・・・ふらっと・・・する・・・・
なんか、安心したら・・・力抜けちゃった・・・・」

「ちょっとじゃないだろ!部屋まで連れてく!
マネージャーにも連絡しないとダメだろこれ・・・・っ!」

「ん・・・・」

 あおいが潤んだ瞳で俺の顔を見上げた時、エレベーターのドアが開いた。 
  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ダメな君のそばには私

蓮水千夜
恋愛
ダメ男より私と付き合えばいいじゃない! 友人はダメ男ばかり引き寄せるダメ男ホイホイだった!? 職場の同僚で友人の陽奈と一緒にカフェに来ていた雪乃は、恋愛経験ゼロなのに何故か恋愛相談を持ちかけられて──!?

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

パート先の店長に

Rollman
恋愛
パート先の店長に。

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

処理中です...