2 / 4
②
しおりを挟む
ダン
ダンダン
ダンダンダン
ハルカ:(息を荒く、走っているように)
トウコ:(ハルカほど、息を荒くしないで走る)
アキト:(アホっぽく)「……2人が走って……近づいてくる」
ナツヒコ:(アホっぽく)「……来るね」
ハルカ:「に…げ」
アキト:「ん?」
ナツヒコ:「え?」
ハルカ:「走って……!」
ナツヒコ:(M)2人の背後。
ハルカ:「早く!」
アキト:(M)闇から浮かんでくる巨躯。
アキト:「マッチョな……!!!」
ナツヒコ:「いぬッッッ!!!」
【間】
イヌマッチョ:(N)4人のプレイヤーは1人のモンスターから逃走する。
イヌマッチョ:(N)頭はイヌ。カラダは筋骨隆々な大男である。
アキト:(M)薄暗い廊下を低い声がだんだん響き、近づいてくる。胃が軋む。
イヌマッチョ:「イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ」
ハルカ:「ずっと……よく分からない言葉を連呼してる!」
アキト:「これがモンスター……かぁあ!」
アキト:(M)「体力のシステムは……ない!」
ナツヒコ:「何なんだよ!このデカイ…イヌは!」
アキト:(M)「ナツヒコが俺の隣を走っているってことは…走れる速度は統一されてるのか!」
ナツヒコ:「俺が……じゃあ、俺が囮になるから…2人は!」
アキト:「ナツヒコ、俺も付き合う!」
ハルカ:「私たちは先の階段で1階に降りるから!」
トウコ:「1個でも多く、アイテム……見つけるね!」
ハルカ:(M)2人はあえて、私たちの後方に移動しました。
トウコ:「ハルカ…ちゃん!」
ハルカ:「うん!」
トウコ:「いっせい…」
ハルカ:「……のーーせ!!」
ハルカ:(M)私とトウコちゃんは手を繋ぐぅッ。
トウコ:(引っ張られるトウコ)「……うううぅうううぅ!」
ハルカ:(M)遠心力も加わって、勢いよくカーブ!階段を下りていきます。
トウコ:「3階……だったんですね」
ハルカ:「この勢いで、1階まで降りちゃお!」
トウコ:(N)タッタッタッタッタ
トウコ:(M)一階に到着しました。
ハルカ:「あ!下駄箱の上に何かある!」
トウコ:「……何でしょうか?」
ハルカ:「とりあえず、ゲット!」
トランシーバー GET
トウコ:「トランシーバー!」
ハルカ:「やった!これで、2人に連絡取れるかも!」
【間】
イヌマッチョ:「イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ」
ナツヒコ:「おい、アキトは上に行けよ」
アキト:「ナツヒコをおいて、行けるわけないだろ!」
ナツヒコ:「時間稼ぎなら、このまま上の階まで引き付けてやろうや!」
アキト:「無問題!」
アキト:(M)イヌマッチョの隙を突いて、俺とナツヒコは階段の踊り場まで駆け上がった。
アキト:(M)気づいた時には、俺たちはこのモンスターをイヌマッチョと呼んでいた。だって、ずっとそう鳴いてるんじゃん!
ナツヒコ:「……え」
アキト:「うわああああああ」
イヌマッチョ:「イヌ…………マッチョオオオオオオオオ!」
ナツヒコ:(M)「俺たちの真上を跳躍して飛び越えるイヌマッチョ!」
アキト:(M)「踊り場に着地するイヌマッチョ!」
イヌマッチョ:「フーーーーン!!!」
ナツヒコ:「がはッ!」
アキト:「うわあああ!ナツヒコオオオオオ!」
アキト:(M)着地したイヌマッチョは、ナツヒコを拳で階段の下まで殴り飛ばした。
アキト:(M)ナツヒコは軽く吹き飛ぶ。それに驚いた俺も、階段を転げ落ちた。
ナツヒコ:(M)イヌマッチョは赤い月に照らされて、踊り場から4階へ飛び跳ねた。
ナツヒコ:「アキト……大丈夫か?」
アキト:「俺は大丈夫だけど、ナツヒコが!」
ナツヒコ:「派手に飛ばされたなぁ。痛みは全くなかったけど……視界が少しだけ赤いフィルターにかかったみたいだ」
アキト:「本能的には、アレに殴られるってだけでカラダの震えがヤバいな」
ナツヒコ:「マッッジで、死んだかと思ったぜ」
アキト:「ナツヒコ、ライフが…」
アキト■■■
ハルカ■■■
ナツヒコ■■□
トウコ■■■
ナツヒコ:「そうみたいだけど、連続で殴打してくるワケじゃなくて良かった……」
アキト:「1人にダメージを与えたら、次の攻撃までにタイムラグがあるみたいだ…」
ナツヒコ:「じゃあ、俺たちはどうしようか」
アキト:「アイツの巡回ルートを考えたら、イヌマッチョは奥の階段で下の階へ降りると思うんだ…」
アキト:「このまま屋上まで上がろう。学校を全体から見渡したい」
ナツヒコ:「ん?アイテム欄に何か増えてるじゃん」
アキト:「ハルカとトウコさんが見つけたんだね。トランシーバー?」
ナツヒコ:「おぉー、スパイみたいじゃね」
【トランシーバーが鳴り始めた】
アキト:「あっ、トランシーバー。使えるんだな。こういうアイテムってお飾りのオブジェクトってパターンが多いんだけどな」
ナツヒコ:「もしもし、こちらハンドラーサマーとハンドラーオータム」
ハルカ:『え?』
アキト:「……忘れてくれ」
ハルカ:『あっ、うん。ナツヒコくんのライフ1つ減ったよね?』
ナツヒコ:「その間に2人がアイテムを見つけられたから、結果オーライだぜ」
アキト:「今、屋上に着いたところ」
トウコ:「私たちは、玄関からグラウンドに出たところです」
アキト:「グラウンドにアイテム1つくらいは見つかりそうだから、探してみて」
ハルカ:「うん!」
アキト:「今、イヌマッチョは4階を徘徊しているから」
アキト:(M)見晴らしのいいグラウンドを探すなら…今のうちだ。
ナツヒコ:「おおお!ダルマじゃん!」
アキト:「よし、これでアイテム2つ目か!」
ダルマ GET
アキト:「屋上でダルマ手に入れたよぉ……ん?」
アキト:「あれは?」
アキト:(M)屋上の端から、ハルカとトウコさんの様子が見えた。2人の影ともう1人……。
アキト:「おい!逃げろ!!」
アキト:(M)俺の声に反応して、喜んでいたナツヒコも隣に駆け寄る。
ナツヒコ:「ん?アキト、どうしたんだ?」
アキト:(M)俺もアキトにつられてグラウンドを注視する。視線の先には驚きが隠しきれなかった。
ナツヒコ:「あれは!」
【間】
イヌマッチョ:「イヌマッチョ ワン イヌマッチョ ワン」
ハルカ:「いやああ!」
トウコ:「ハルカちゃん!逃げよ!」
ハルカ:(M)突然の恐怖で、足に力が入らない。
ハルカ:「来ないで!来ないでよ!ク◯イヌ!」
トウコ:(N)「ク◯イヌ……」
ハルカ:(M)ホラーは嫌い。愛銃のレーザーサイト付きベレッタちゃんが手元にあれば、こんなヤツ蜂の巣なのに。
ハルカ:(M)気がついた時に、イヌマッチョは目の前にいた。
イヌマッチョ:「フーーン!!」
ハルカ:「きゃあああ」
トウコ:「ハルカちゃんッ!」
【屋上】
ハサミ GET
アキト■■■
ハルカ■□□
ナツヒコ■■□
トウコ■■□
ナツヒコ:「なんでハルカのライフが2つも減ってんだよ!」
アキト:「分からない」
イヌマッチョ:(段々近づいてくる)「イヌマッチョ イヌマッチョ」
ナツヒコ:(M)俺たちはグラウンドに注意を向け過ぎていた。
ナツヒコ:(M)背後に迫るイヌマッチョに気付けなかった。
アキト:「うわああ」
イヌマッチョ:「フーーン!」
アキト■■□
ハルカ■□□
ナツヒコ■■□
トウコ■■□
アキト:「痛くなくても……衝撃的デスネーー」
イヌマッチョ:(遠ざかっていく)「イヌマッチョ イヌマッチョ……」
ナツヒコ:「やっぱり、1度殴ったらどっか行ったな」
アキト:「グラウンドにもイヌマッチョ…。イヌマッチョは2人いたのか」
ナツヒコ:「ってことは、もっと隠れながらアイテムを探さないと」
アキト:(M)アイテムにハサミが増えている。
アキト:「2人のライフが減ってるね」
アキト:(M)ナツヒコがトランシーバーで2人に応答を求めた。
ナツヒコ:「2人とも、聞こえる?」
【5分前 グラウンド】
トウコ:「ハルカちゃん、大丈夫?」
トウコ:(N)ハルカちゃんが2人目のイヌマッチョに花壇まで飛ばされた。
ハルカ:「うわーー、ビックリした」
ハルカ:「あ!花壇の煉瓦の上にハサミがある!」
トウコ:「これで、3つ目のアイテムだね」
ハルカ:(M)私はハサミを持った。
ハサミ GET
ハルカ:(M)その時。
トウコ:(N)花壇から溢れ出てくる異形の群れ。ハルカちゃんの肩に拳が飛んできた。
ハルカ:(N)不幸中の幸いから、泣きっ面に蜂へと切り替わる。
ハルカ:「きもい!」
ハルカ:(M)イヌの生首から、マッチョの腕が左右に3本ずつ生えている異形。正直、イヌマッチョの方がマシ。
クモマッチョ:「マッチョ マッチョ クモマッチョ」
トウコ:(N)ハルカちゃんへの追撃が始まってしまう。
トウコ:「ハルカちゃん!危ない!」
ハルカ:「きゃあ!」
ハルカ:(M)私を押し退けて、トウコちゃんが代わりにクモマッチョからの攻撃を受けてしまいました。
ハルカ:「花壇からまだ出てくるよ!」
ハルカ:(M)私たちは壁まで追いやられ、無数のクモマッチョに取り囲まれる。
クモマッチョ:「マッチョ マッチョ クモマッチョ」
トウコ:「ハルカちゃん…こっち!」
ハルカ:(M)トウコちゃんは窓を開けて家庭科室へ飛び込みます。
ハルカ:「うん!」
ハルカ:(M)私もトウコちゃんに続きます。
ハルカ:クモマッチョは壁を登りはじめます。
クモマッチョ:「クモマッチョォ!」
ハルカ:「…!」
トウコ:「えい!」
クモマッチョ:「マチョ!?」
ハルカ:(M)間一髪。トウコちゃんが窓を閉めました。
ハルカ:「フーーー、怖かったぁ」
トウコ:「危なかったねぇ」
イヌマッチョ:(遠くで)「イヌマッチョ ワン イヌマッチョ ワン」
ハルカ:「シーーッ!」
トウコ:「シーーッ!」
ハルカ:(M)テーブルの影に隠れて声を抑えます。息をつくひまも無い。
トランシーバーから連絡が来た。
ナツヒコ:『2人とも、聞こえる?』
トウコ:「聞こえるよ。ハサミはハルカちゃんが手に入れたから、残り3つだね」
ハルカ:「イヌマッチョ、2人いるみたいだね。私を殴ってきたのは違うイヌマッチョだったよ」
アキト:『かなり慎重に動かないとダメだな』
ナツヒコ:『残り半分じゃん!頑張ろうぜ!』
アキト:(N)4階
アキト■■□
ハルカ■□□
ナツヒコ■■□
トウコ■■□
アキト:「ハルカのライフ…残り1つだもんな。俺たちが急いだ方が良さそうだ」
ナツヒコ:「残り4階は…教室1つか」
アキト:「4階に1個はアイテム……あると思ったんだけどなぁ」
ナツヒコ:(M)3分経過した。全ての教室を見たはずだけど、4階には何も無かった。
ナツヒコ:「あれ?」
アキト:「ん?ナツヒコ、どうした?」
ナツヒコ:「階段の横に茶道室あるじゃん」
アキト:「全然、気づかなかったわ!」
ナツヒコ:「見とこうぜ」
アキト:(M)扉に手をかけて、開く。
ナツヒコ:(M)そこには……。
カタ子:「カタカタカタ……」
カタ子:「カタカタカタカタカタ……」
カタ子:「カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ」
アキト:(M)カラダが血だらけの少女が、こちらを向いたまま動かない。
アキト:(M)瞳から赤黒い血を流して、立っている。
カタ子:ゴキッ!!
ナツヒコ:「首が……ありえない方向に曲がった!?」
カタ子:「キ ャ ア ア ア ア ア !」
アキト:(M)甲高い唸り声を漏らしながら、コチラへ……。え?こちらへ?
アキト:「うおおお!?」
ナツヒコ:「マジかあぁぁぁ!」
カタ子:「ダ ダ ダ ダ ダ ダ !」
ナツヒコ:(M)少女は畳を蹴りながら、迫ってくる。
ナツヒコ:(M)近くで見たら、意外と美人じゃん!
カタ子:「キ ャ ア ア ア ア ア !」
アキト:(恐怖で声が漏れる)「うううッ…………」
ナツヒコ:(呆気に取られる)「…………。目の前を素通りして行った?」
アキト:「特にライフも減ってない……」
アキト:「そういうギミックだったの……か」
ナツヒコ:(M)呆気に取られて棒立ちする俺たちの背後から、小さく正真正銘に敵の掛け声が聞こえてくる。
イヌマッチョ:(小声で)「イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ」
アキト:「あっ、やべえ」
ナツヒコ:「階段を登ろうとしてる?」
ナツヒコ:(M)俺とアキトは咄嗟に茶道室へ入った。
アキト:(M)人を狩る野獣が、4階まで登ってきたことが理解できた。
イヌマッチョ:「イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ」
ナツヒコ:(M)野獣は扉の前で立ち止まった。勢いよく開く。
ガラガラガラガラ。
アキト:「……!」
ナツヒコ:「……!」
イヌマッチョ:「イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ」
ナツヒコ:(M)イヌマッチョは茶道室に2、3歩入ると見渡した。
ナツヒコ:俺たちがいないことを確認すると、茶道室から出て行った。
ガラガラガラガラ。
ナツヒコ:(M)一瞬の静寂
ナツヒコ:「律儀に扉閉めて行きやがって……」
アキト:(半笑い)「さっきの女の子からの不意打ちは、恐怖倍増…何ですけど」
ナツヒコ:「とっさに押し入れに隠れたから良かったけどさ」
アキト:「……もし押し入れに遮蔽としての機能が無かったら、押し入れごと殴られてたかもしれない」
ナツヒコ:「4階の探索は終わったし……」
アキト:「コレも手に入れたから…」
招き猫 GET
ナツヒコ:(M)さっきの少女の幽霊?のいた場所に招き猫が置いてあった。
アキト:「きっと、アイテムを全て手に入れるためには、必ず見せられるギミックだったんだろうな」
ナツヒコ:「じゃあ、次は3階だ」
アキト:(M)残りアイテム2つ!
アキト■■□
ハルカ□□□
ナツヒコ■■□
トウコ■□□
アキト■■□
ハルカdeath ピコン
ナツヒコ■■□
トウコ■□□
ダンダン
ダンダンダン
ハルカ:(息を荒く、走っているように)
トウコ:(ハルカほど、息を荒くしないで走る)
アキト:(アホっぽく)「……2人が走って……近づいてくる」
ナツヒコ:(アホっぽく)「……来るね」
ハルカ:「に…げ」
アキト:「ん?」
ナツヒコ:「え?」
ハルカ:「走って……!」
ナツヒコ:(M)2人の背後。
ハルカ:「早く!」
アキト:(M)闇から浮かんでくる巨躯。
アキト:「マッチョな……!!!」
ナツヒコ:「いぬッッッ!!!」
【間】
イヌマッチョ:(N)4人のプレイヤーは1人のモンスターから逃走する。
イヌマッチョ:(N)頭はイヌ。カラダは筋骨隆々な大男である。
アキト:(M)薄暗い廊下を低い声がだんだん響き、近づいてくる。胃が軋む。
イヌマッチョ:「イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ」
ハルカ:「ずっと……よく分からない言葉を連呼してる!」
アキト:「これがモンスター……かぁあ!」
アキト:(M)「体力のシステムは……ない!」
ナツヒコ:「何なんだよ!このデカイ…イヌは!」
アキト:(M)「ナツヒコが俺の隣を走っているってことは…走れる速度は統一されてるのか!」
ナツヒコ:「俺が……じゃあ、俺が囮になるから…2人は!」
アキト:「ナツヒコ、俺も付き合う!」
ハルカ:「私たちは先の階段で1階に降りるから!」
トウコ:「1個でも多く、アイテム……見つけるね!」
ハルカ:(M)2人はあえて、私たちの後方に移動しました。
トウコ:「ハルカ…ちゃん!」
ハルカ:「うん!」
トウコ:「いっせい…」
ハルカ:「……のーーせ!!」
ハルカ:(M)私とトウコちゃんは手を繋ぐぅッ。
トウコ:(引っ張られるトウコ)「……うううぅうううぅ!」
ハルカ:(M)遠心力も加わって、勢いよくカーブ!階段を下りていきます。
トウコ:「3階……だったんですね」
ハルカ:「この勢いで、1階まで降りちゃお!」
トウコ:(N)タッタッタッタッタ
トウコ:(M)一階に到着しました。
ハルカ:「あ!下駄箱の上に何かある!」
トウコ:「……何でしょうか?」
ハルカ:「とりあえず、ゲット!」
トランシーバー GET
トウコ:「トランシーバー!」
ハルカ:「やった!これで、2人に連絡取れるかも!」
【間】
イヌマッチョ:「イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ」
ナツヒコ:「おい、アキトは上に行けよ」
アキト:「ナツヒコをおいて、行けるわけないだろ!」
ナツヒコ:「時間稼ぎなら、このまま上の階まで引き付けてやろうや!」
アキト:「無問題!」
アキト:(M)イヌマッチョの隙を突いて、俺とナツヒコは階段の踊り場まで駆け上がった。
アキト:(M)気づいた時には、俺たちはこのモンスターをイヌマッチョと呼んでいた。だって、ずっとそう鳴いてるんじゃん!
ナツヒコ:「……え」
アキト:「うわああああああ」
イヌマッチョ:「イヌ…………マッチョオオオオオオオオ!」
ナツヒコ:(M)「俺たちの真上を跳躍して飛び越えるイヌマッチョ!」
アキト:(M)「踊り場に着地するイヌマッチョ!」
イヌマッチョ:「フーーーーン!!!」
ナツヒコ:「がはッ!」
アキト:「うわあああ!ナツヒコオオオオオ!」
アキト:(M)着地したイヌマッチョは、ナツヒコを拳で階段の下まで殴り飛ばした。
アキト:(M)ナツヒコは軽く吹き飛ぶ。それに驚いた俺も、階段を転げ落ちた。
ナツヒコ:(M)イヌマッチョは赤い月に照らされて、踊り場から4階へ飛び跳ねた。
ナツヒコ:「アキト……大丈夫か?」
アキト:「俺は大丈夫だけど、ナツヒコが!」
ナツヒコ:「派手に飛ばされたなぁ。痛みは全くなかったけど……視界が少しだけ赤いフィルターにかかったみたいだ」
アキト:「本能的には、アレに殴られるってだけでカラダの震えがヤバいな」
ナツヒコ:「マッッジで、死んだかと思ったぜ」
アキト:「ナツヒコ、ライフが…」
アキト■■■
ハルカ■■■
ナツヒコ■■□
トウコ■■■
ナツヒコ:「そうみたいだけど、連続で殴打してくるワケじゃなくて良かった……」
アキト:「1人にダメージを与えたら、次の攻撃までにタイムラグがあるみたいだ…」
ナツヒコ:「じゃあ、俺たちはどうしようか」
アキト:「アイツの巡回ルートを考えたら、イヌマッチョは奥の階段で下の階へ降りると思うんだ…」
アキト:「このまま屋上まで上がろう。学校を全体から見渡したい」
ナツヒコ:「ん?アイテム欄に何か増えてるじゃん」
アキト:「ハルカとトウコさんが見つけたんだね。トランシーバー?」
ナツヒコ:「おぉー、スパイみたいじゃね」
【トランシーバーが鳴り始めた】
アキト:「あっ、トランシーバー。使えるんだな。こういうアイテムってお飾りのオブジェクトってパターンが多いんだけどな」
ナツヒコ:「もしもし、こちらハンドラーサマーとハンドラーオータム」
ハルカ:『え?』
アキト:「……忘れてくれ」
ハルカ:『あっ、うん。ナツヒコくんのライフ1つ減ったよね?』
ナツヒコ:「その間に2人がアイテムを見つけられたから、結果オーライだぜ」
アキト:「今、屋上に着いたところ」
トウコ:「私たちは、玄関からグラウンドに出たところです」
アキト:「グラウンドにアイテム1つくらいは見つかりそうだから、探してみて」
ハルカ:「うん!」
アキト:「今、イヌマッチョは4階を徘徊しているから」
アキト:(M)見晴らしのいいグラウンドを探すなら…今のうちだ。
ナツヒコ:「おおお!ダルマじゃん!」
アキト:「よし、これでアイテム2つ目か!」
ダルマ GET
アキト:「屋上でダルマ手に入れたよぉ……ん?」
アキト:「あれは?」
アキト:(M)屋上の端から、ハルカとトウコさんの様子が見えた。2人の影ともう1人……。
アキト:「おい!逃げろ!!」
アキト:(M)俺の声に反応して、喜んでいたナツヒコも隣に駆け寄る。
ナツヒコ:「ん?アキト、どうしたんだ?」
アキト:(M)俺もアキトにつられてグラウンドを注視する。視線の先には驚きが隠しきれなかった。
ナツヒコ:「あれは!」
【間】
イヌマッチョ:「イヌマッチョ ワン イヌマッチョ ワン」
ハルカ:「いやああ!」
トウコ:「ハルカちゃん!逃げよ!」
ハルカ:(M)突然の恐怖で、足に力が入らない。
ハルカ:「来ないで!来ないでよ!ク◯イヌ!」
トウコ:(N)「ク◯イヌ……」
ハルカ:(M)ホラーは嫌い。愛銃のレーザーサイト付きベレッタちゃんが手元にあれば、こんなヤツ蜂の巣なのに。
ハルカ:(M)気がついた時に、イヌマッチョは目の前にいた。
イヌマッチョ:「フーーン!!」
ハルカ:「きゃあああ」
トウコ:「ハルカちゃんッ!」
【屋上】
ハサミ GET
アキト■■■
ハルカ■□□
ナツヒコ■■□
トウコ■■□
ナツヒコ:「なんでハルカのライフが2つも減ってんだよ!」
アキト:「分からない」
イヌマッチョ:(段々近づいてくる)「イヌマッチョ イヌマッチョ」
ナツヒコ:(M)俺たちはグラウンドに注意を向け過ぎていた。
ナツヒコ:(M)背後に迫るイヌマッチョに気付けなかった。
アキト:「うわああ」
イヌマッチョ:「フーーン!」
アキト■■□
ハルカ■□□
ナツヒコ■■□
トウコ■■□
アキト:「痛くなくても……衝撃的デスネーー」
イヌマッチョ:(遠ざかっていく)「イヌマッチョ イヌマッチョ……」
ナツヒコ:「やっぱり、1度殴ったらどっか行ったな」
アキト:「グラウンドにもイヌマッチョ…。イヌマッチョは2人いたのか」
ナツヒコ:「ってことは、もっと隠れながらアイテムを探さないと」
アキト:(M)アイテムにハサミが増えている。
アキト:「2人のライフが減ってるね」
アキト:(M)ナツヒコがトランシーバーで2人に応答を求めた。
ナツヒコ:「2人とも、聞こえる?」
【5分前 グラウンド】
トウコ:「ハルカちゃん、大丈夫?」
トウコ:(N)ハルカちゃんが2人目のイヌマッチョに花壇まで飛ばされた。
ハルカ:「うわーー、ビックリした」
ハルカ:「あ!花壇の煉瓦の上にハサミがある!」
トウコ:「これで、3つ目のアイテムだね」
ハルカ:(M)私はハサミを持った。
ハサミ GET
ハルカ:(M)その時。
トウコ:(N)花壇から溢れ出てくる異形の群れ。ハルカちゃんの肩に拳が飛んできた。
ハルカ:(N)不幸中の幸いから、泣きっ面に蜂へと切り替わる。
ハルカ:「きもい!」
ハルカ:(M)イヌの生首から、マッチョの腕が左右に3本ずつ生えている異形。正直、イヌマッチョの方がマシ。
クモマッチョ:「マッチョ マッチョ クモマッチョ」
トウコ:(N)ハルカちゃんへの追撃が始まってしまう。
トウコ:「ハルカちゃん!危ない!」
ハルカ:「きゃあ!」
ハルカ:(M)私を押し退けて、トウコちゃんが代わりにクモマッチョからの攻撃を受けてしまいました。
ハルカ:「花壇からまだ出てくるよ!」
ハルカ:(M)私たちは壁まで追いやられ、無数のクモマッチョに取り囲まれる。
クモマッチョ:「マッチョ マッチョ クモマッチョ」
トウコ:「ハルカちゃん…こっち!」
ハルカ:(M)トウコちゃんは窓を開けて家庭科室へ飛び込みます。
ハルカ:「うん!」
ハルカ:(M)私もトウコちゃんに続きます。
ハルカ:クモマッチョは壁を登りはじめます。
クモマッチョ:「クモマッチョォ!」
ハルカ:「…!」
トウコ:「えい!」
クモマッチョ:「マチョ!?」
ハルカ:(M)間一髪。トウコちゃんが窓を閉めました。
ハルカ:「フーーー、怖かったぁ」
トウコ:「危なかったねぇ」
イヌマッチョ:(遠くで)「イヌマッチョ ワン イヌマッチョ ワン」
ハルカ:「シーーッ!」
トウコ:「シーーッ!」
ハルカ:(M)テーブルの影に隠れて声を抑えます。息をつくひまも無い。
トランシーバーから連絡が来た。
ナツヒコ:『2人とも、聞こえる?』
トウコ:「聞こえるよ。ハサミはハルカちゃんが手に入れたから、残り3つだね」
ハルカ:「イヌマッチョ、2人いるみたいだね。私を殴ってきたのは違うイヌマッチョだったよ」
アキト:『かなり慎重に動かないとダメだな』
ナツヒコ:『残り半分じゃん!頑張ろうぜ!』
アキト:(N)4階
アキト■■□
ハルカ■□□
ナツヒコ■■□
トウコ■■□
アキト:「ハルカのライフ…残り1つだもんな。俺たちが急いだ方が良さそうだ」
ナツヒコ:「残り4階は…教室1つか」
アキト:「4階に1個はアイテム……あると思ったんだけどなぁ」
ナツヒコ:(M)3分経過した。全ての教室を見たはずだけど、4階には何も無かった。
ナツヒコ:「あれ?」
アキト:「ん?ナツヒコ、どうした?」
ナツヒコ:「階段の横に茶道室あるじゃん」
アキト:「全然、気づかなかったわ!」
ナツヒコ:「見とこうぜ」
アキト:(M)扉に手をかけて、開く。
ナツヒコ:(M)そこには……。
カタ子:「カタカタカタ……」
カタ子:「カタカタカタカタカタ……」
カタ子:「カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ」
アキト:(M)カラダが血だらけの少女が、こちらを向いたまま動かない。
アキト:(M)瞳から赤黒い血を流して、立っている。
カタ子:ゴキッ!!
ナツヒコ:「首が……ありえない方向に曲がった!?」
カタ子:「キ ャ ア ア ア ア ア !」
アキト:(M)甲高い唸り声を漏らしながら、コチラへ……。え?こちらへ?
アキト:「うおおお!?」
ナツヒコ:「マジかあぁぁぁ!」
カタ子:「ダ ダ ダ ダ ダ ダ !」
ナツヒコ:(M)少女は畳を蹴りながら、迫ってくる。
ナツヒコ:(M)近くで見たら、意外と美人じゃん!
カタ子:「キ ャ ア ア ア ア ア !」
アキト:(恐怖で声が漏れる)「うううッ…………」
ナツヒコ:(呆気に取られる)「…………。目の前を素通りして行った?」
アキト:「特にライフも減ってない……」
アキト:「そういうギミックだったの……か」
ナツヒコ:(M)呆気に取られて棒立ちする俺たちの背後から、小さく正真正銘に敵の掛け声が聞こえてくる。
イヌマッチョ:(小声で)「イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ」
アキト:「あっ、やべえ」
ナツヒコ:「階段を登ろうとしてる?」
ナツヒコ:(M)俺とアキトは咄嗟に茶道室へ入った。
アキト:(M)人を狩る野獣が、4階まで登ってきたことが理解できた。
イヌマッチョ:「イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ」
ナツヒコ:(M)野獣は扉の前で立ち止まった。勢いよく開く。
ガラガラガラガラ。
アキト:「……!」
ナツヒコ:「……!」
イヌマッチョ:「イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ イヌマッチョ」
ナツヒコ:(M)イヌマッチョは茶道室に2、3歩入ると見渡した。
ナツヒコ:俺たちがいないことを確認すると、茶道室から出て行った。
ガラガラガラガラ。
ナツヒコ:(M)一瞬の静寂
ナツヒコ:「律儀に扉閉めて行きやがって……」
アキト:(半笑い)「さっきの女の子からの不意打ちは、恐怖倍増…何ですけど」
ナツヒコ:「とっさに押し入れに隠れたから良かったけどさ」
アキト:「……もし押し入れに遮蔽としての機能が無かったら、押し入れごと殴られてたかもしれない」
ナツヒコ:「4階の探索は終わったし……」
アキト:「コレも手に入れたから…」
招き猫 GET
ナツヒコ:(M)さっきの少女の幽霊?のいた場所に招き猫が置いてあった。
アキト:「きっと、アイテムを全て手に入れるためには、必ず見せられるギミックだったんだろうな」
ナツヒコ:「じゃあ、次は3階だ」
アキト:(M)残りアイテム2つ!
アキト■■□
ハルカ□□□
ナツヒコ■■□
トウコ■□□
アキト■■□
ハルカdeath ピコン
ナツヒコ■■□
トウコ■□□
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
【2人用声劇台本】蟲ノ姫━邂逅━
未旅kay
恋愛
1870年━━明治3年。
蘆屋国光は時代錯誤である陰陽師の子孫だった。
逃れようのない陰陽師としての血が彼を、呪い師として大成させた。
異形の娘は、どうしようもなく人間に絶望していた。
邂逅(かいこう)
男1:女1
約40分
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
フリー声劇台本〜モーリスハウスシリーズ〜
摩訶子
キャラ文芸
声劇アプリ「ボイコネ」で公開していた台本の中から、寄宿学校のとある学生寮『モーリスハウス』を舞台にした作品群をこちらにまとめます。
どなたでも自由にご使用OKですが、初めに「シナリオのご使用について」を必ずお読みくださいm(*_ _)m
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる