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第6章 エルフの船
第6章 エルフの船 7~空も権謀術数が渦巻く世界?
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第6章 エルフの船 7~空も権謀術数が渦巻く世界?
●S-1:空のどこか/エーギル号船内
どかどかどかどかっ。
乱暴な軍靴の音を鳴らして10人ほどの一団が乗りこんできた。
先頭に立つのはいかにも居丈高で偉そうな軍服のおじさん。
後ろの兵士たちは手に自動小銃を構えたヘルメットの人たち。
映画どかでよく見そうな光景だよ。
大抵こういう時って主人公がピンチになる時だよね。
偉そうなおじさんはぐるりと辺りを睨め回し……その視線がボクのところで止まった。
なんでー!?
「おいおい。あんた、さにゃの胸ばかり見詰めて、なんてヤラしー野郎だ」
クロちゃんが挑発気味に言った。
こういう時、クロちゃんの垂れ目はとっても嫌味っぽいから。相手を怒らせるにはとっても効果絶大だ。
いや。挑発しないでよ。
「やーねえ。しかもロリコンよお?いくらさにゃちゃんが可愛いといってもねえ」
後ろからマリちゃんがぎゅっと抱きしめてくる。
いや、まって。
ロリとは何事!?
ボクはもうこの世界では推定……16才のはずだよー!
そろそろオトナの色気のある美女っぽくなってきてるハズ。
そりゃ身長伸びてないけどさ。
「たまにクロもスケベそうな顔で見とれてるけどな」
え!?
シュラちゃん、それ本当!?
クロちゃんむっつりスケベ説爆誕。
「してねーっス。それにオレはお兄さんであって、おじさんじゃないからセーフっス」
「黙らんか!」
おじさんが吠えた。
「吾輩は第8駆逐隊司令リッチマン大佐である!これからこの船の臨検を行う」
臨検!?
何?この船って密輸でもしてたの?
「ね?どーゆーことー?」
ボクはアイリさんに訊いてみた。
どこか困ったような顔をしている。
むむむー?
兵士たちが足音も荒く散開した。
しかも、ボクたちが一歩でも動こうものなら容赦なく銃口を向けてくる。
物々しいぞ。
「ねー?」
「煩い」
ばんっ。
計器盤を強く叩いたリッチマンなるおじさんがこっちを睨みつけて来る。
「貴様らはドラゴンとの戦闘の現行犯なのだぞ!」
「……はあ?」
「そ、それは……」
「明確な国際法違反であり重罪である」
こくさ……い……なんだって?
ボクたちはこのエルフな人たちの存在自体をつい最近まで知らなったくらいなんですけどー!?
国際も何も帝国とその周辺国くらいしか知らないんですが!
「これよりライラナーの空軍本部に連行する」
「へ?」
それ、どこ?
聞いたこともない。
なんかすごーく嫌な予感がするんだけどー。
ボクは周囲を見回して事情を説明してくれそうな人を探すけど……アイリさんがダメならルゥしか思いつかなかった。
「ね?どゆことー?」
子供に訊くのは少し抵抗あるがあるけど。
「理由はどうあれドラゴンと戦うことは国際協定違反なんです」
「どことの?」
「ドラゴン族です」
ルゥが辛そうに口を開いた。
「や。余計にさっぱりわからなくなったー」
「すみません。巻き込んでしまって」
「いやー。そーいわれましても……」
ボクは隣にいるはずのクロちゃんに顔を向ける。
視線を感じたクロちゃんがボクの方を向くけど、やっぱり困惑した様子は同じだ。
「オレも何が何だかわからねーんスよ」
そりゃそーか。
飛行船なんてものがいきなり現れた上に、こんな状況だもんね。
「しばらく様子を見て観察したりで情報を集めるしかないっスな。こっちの立場がどうなのかもわからないんじゃ行動できないっス」
「ん、んー」
「ま……」
クロちゃんはボクの頭をポンポンと撫でるように叩く。
「何とかしてみるっスから、あんま不安にならないで良いっスよ」
なんだろう。
気休めなんだろうけど、クロちゃんが言うと何となく安心できた。
●S-2:空のどこか/エーギル号客用船室
ボクたちは客用船室に纏めて放り込まれた。
客用といっても豪華客船でもなんでもないエーギル号だから、倉庫よりましという程度のものだった。
壁に半分埋め込まれたような二段ベッドを左右に置いて真ん中に辛うじて人が通れるほどの通路。
突き当りには申し訳程度の机が設置してある。
ソファなんかは当然だけど、ない。
仕方会ないので各自が適当に場所を決めて座ったり立ったり寝転んだりしてる。
ボクは二段ベッドの上段に腰を掛けて足をぶらぶらさせていた。
小さめの旅客機みたいに天井が低いので、ちょっと背中を丸めてだけど。
「あんまり足を動かすと中身が見えるっスよ」
「えっち!」
見るなよ!
だいたい下段で寝転んでるクロちゃんが悪い。
シュラちゃんなんかは入り口の傍で背中を壁に預けるように立っててくれてるのに。
体が大きいからみんなの邪魔にならないようになんだろうけど。
他にもマリちゃんもマーチスも賢者もヒンカ婆ちゃんもルシエさんといった男爵チーム(仮称)とアイリさんやルゥまで一緒にされていた。
これは狭っ苦しい。
「この状況だともう少しは説明してもらえるんスよな?」
クロちゃんがアイリさんに話しかけた。
もっともだ。
「う、うむ。しかし、こちらも状況が把握しきれていないのだ」
「それはどういうことっスか……」
そこでルゥが小さく手を挙げた。
「アイリさんが言ってることは事実です。でも、だからこそ最初から順番にお話しすべきでしょう」
「ほう……」
シュラハトが感心したような声をあげた。
うん。判るよ。
この子は結構賢い子なんだ。
「まずは……僕たちエルフとドラゴンはお互い不干渉の協定を結んでいます」
「へ?」
「え?」
「ちょいと待つでござるよ。それはドラゴンとは交渉ができるということなのでござるか?」
賢者がいつもの興奮した『ブフゥ』が出ない。
これはかなり真剣な感じなのかも。
「ええ。そうです。そして、その特使をとして派遣されたのが僕なのです」
巨大トカゲとお話する……想像もつかない。
予想もつかないというよりも想像の遥か斜め上を行っていたので、全員が無言になってしまった。
「空はエルフとドラゴンが大きな勢力なのですが、ここ数百年来は相互不干渉を原則にしています」
「ほーほー」
「いやあ。オレは空に鳥や飛行魔獣以外がいたこと自体が驚きなんスが……」
そりゃそーだよ。
今まで空を見ても飛行船の影も形も見たことなかったんだし。
まさかそこに人……もといエルフが住んでるなんて。
「かつては協力関係にあったりもしたのですけど歴史を説明すると長くなるので掻い摘んでお話します」
ルゥは10歳くらいに見える外見からは想像できないほど落ち着いていた。
「今まで大きな問題はなかったのですが、近年になって状況が変わってきました」
「どんな感じにじゃ?」
「一部の若いドラゴンが飛行船を襲撃するということが度々起きたのです」
「原因は何スか?」
「わかりません……」
ルゥが視線を落とした。
そこでアイリさんが補足する。
「当初は病気や呪いのようなものか、あるいは反動勢力の行動かと思われていたのだが……」
「それが違った、と?」
「ああ。ドラゴン側で起こった事件が我々エルフの仕業ではないかと思い込んだ一部のドラゴンたちの暴走だったのだ」
「なあに?それ」
マリちゃんが腕を組んで大きな胸を載せていた。
あ、あれはボクもできるぞ。
ちょっと楽なんだよね。肩凝らないし。
「幼いドラゴンや孵化前の卵が行方不明になったり、成竜前のドラゴンが殺されたりだそうだ」
「……んだ。そりゃあ」
シュラハトが眉を寄せた。
「ふーむ。脈絡がないように聞こえるっスなあ」
「ああ。こちらも捜査をしたが、エルフにそのようなことに関与した者は発見できなかった」
「……ふぅん」
床で座禅を組んだマーチスが首を傾げた。
「捜査が不十分だったということもありエマスが……そもそも、ドラゴンが死傷することによってエルフ側に利益が何かあるのでショウカネ?」
「ない」
アイリさんは即答した。
「空の二大勢力同士がゲリラ的に対決しても利益はない。だからこその共存共栄の協定なのだ」
ほんとに困ってるような顔だった。
「エルフの元老院では事態の収拾を図るためにドラゴンに対しての一切の戦闘行動の禁止を厳命して、特使を派遣することにしたのです。その特使が僕で、護衛として随行したのがアイリさんでした」
ルゥは誠心誠意で説明しようとしていたのかもしれない。
それでも辻褄が合わないことこの上ない。
「ですが、運悪く。エーギル号はドラゴン数体に襲撃されてしまいました。一切交戦をしなかったために船は大きな被害を受けて……あなたたちの地上へと不時着しました」
「地上との交流も禁止事項ではあるのだが、なんとか応急修理をして帰還しようとしていたのだが……」
「襲撃された……と?」
ううん。襲撃される理由が判らないぞ。
いや。まって。それって……。
「ね?それって両方を対立させるための第三勢力の仕業ってことはないのー?」
ボクが思いついた推論はそれだった。
利益が無いのにテロを行う理由が無い時は……たいていそういうものなんだ。
「それで得する連中はどこかに……」
「……ふうむ」
今度は全員が考えこんっでしまった。
みんな心当たりがないのかもしれない。
でもね。そういう時って、意外と訳の判らない逆恨みとかあるからねー。
んー。もうー。
「あれ?」
ボクはな何か引っ掛かるものがあった。
最近何か見た気がするぞ。
「ねー。ドラゴン……第三勢力……自分で言っててなんだけど」
「何か思いついたっスか?」
「エルフの飛行船と関係なく、ボクたちドラゴンに襲われたことあったよねー?」
「む?」
「ほらー。空飛ぶ怪獣軍団ー!」
「あ」
そうなんだ。
ボクたちは空飛ぶ怪獣軍団の中にドラゴンを見たはずなんだ。
まとめてぶっ飛ばしちゃったけど。
あれが全然関係ないわけないよね?
「確かに幼竜が混じってたっスな」
クロちゃんが頷く。
「幼竜って生後どのくらいのをいうのお?」
「だいたい50年以下っスな。多分あのサイズだと15~20年くらいじゃないっスかね」
「じゃあ、そのドラゴンがどうこうっていう事件はいつぐらいから始まってるのー?」
「それは……」
ルゥが一瞬、口籠って。
「ここ10数年です」
「ねえ?それって……」
「ビンゴかもー!」
我ながら良い着眼だったと思う。
問題は……だからといって解決法を思いついたわけではないことだった。
ボクたちは今はまだ軟禁されてる状態なんだよねー。
●S-1:空のどこか/エーギル号船内
どかどかどかどかっ。
乱暴な軍靴の音を鳴らして10人ほどの一団が乗りこんできた。
先頭に立つのはいかにも居丈高で偉そうな軍服のおじさん。
後ろの兵士たちは手に自動小銃を構えたヘルメットの人たち。
映画どかでよく見そうな光景だよ。
大抵こういう時って主人公がピンチになる時だよね。
偉そうなおじさんはぐるりと辺りを睨め回し……その視線がボクのところで止まった。
なんでー!?
「おいおい。あんた、さにゃの胸ばかり見詰めて、なんてヤラしー野郎だ」
クロちゃんが挑発気味に言った。
こういう時、クロちゃんの垂れ目はとっても嫌味っぽいから。相手を怒らせるにはとっても効果絶大だ。
いや。挑発しないでよ。
「やーねえ。しかもロリコンよお?いくらさにゃちゃんが可愛いといってもねえ」
後ろからマリちゃんがぎゅっと抱きしめてくる。
いや、まって。
ロリとは何事!?
ボクはもうこの世界では推定……16才のはずだよー!
そろそろオトナの色気のある美女っぽくなってきてるハズ。
そりゃ身長伸びてないけどさ。
「たまにクロもスケベそうな顔で見とれてるけどな」
え!?
シュラちゃん、それ本当!?
クロちゃんむっつりスケベ説爆誕。
「してねーっス。それにオレはお兄さんであって、おじさんじゃないからセーフっス」
「黙らんか!」
おじさんが吠えた。
「吾輩は第8駆逐隊司令リッチマン大佐である!これからこの船の臨検を行う」
臨検!?
何?この船って密輸でもしてたの?
「ね?どーゆーことー?」
ボクはアイリさんに訊いてみた。
どこか困ったような顔をしている。
むむむー?
兵士たちが足音も荒く散開した。
しかも、ボクたちが一歩でも動こうものなら容赦なく銃口を向けてくる。
物々しいぞ。
「ねー?」
「煩い」
ばんっ。
計器盤を強く叩いたリッチマンなるおじさんがこっちを睨みつけて来る。
「貴様らはドラゴンとの戦闘の現行犯なのだぞ!」
「……はあ?」
「そ、それは……」
「明確な国際法違反であり重罪である」
こくさ……い……なんだって?
ボクたちはこのエルフな人たちの存在自体をつい最近まで知らなったくらいなんですけどー!?
国際も何も帝国とその周辺国くらいしか知らないんですが!
「これよりライラナーの空軍本部に連行する」
「へ?」
それ、どこ?
聞いたこともない。
なんかすごーく嫌な予感がするんだけどー。
ボクは周囲を見回して事情を説明してくれそうな人を探すけど……アイリさんがダメならルゥしか思いつかなかった。
「ね?どゆことー?」
子供に訊くのは少し抵抗あるがあるけど。
「理由はどうあれドラゴンと戦うことは国際協定違反なんです」
「どことの?」
「ドラゴン族です」
ルゥが辛そうに口を開いた。
「や。余計にさっぱりわからなくなったー」
「すみません。巻き込んでしまって」
「いやー。そーいわれましても……」
ボクは隣にいるはずのクロちゃんに顔を向ける。
視線を感じたクロちゃんがボクの方を向くけど、やっぱり困惑した様子は同じだ。
「オレも何が何だかわからねーんスよ」
そりゃそーか。
飛行船なんてものがいきなり現れた上に、こんな状況だもんね。
「しばらく様子を見て観察したりで情報を集めるしかないっスな。こっちの立場がどうなのかもわからないんじゃ行動できないっス」
「ん、んー」
「ま……」
クロちゃんはボクの頭をポンポンと撫でるように叩く。
「何とかしてみるっスから、あんま不安にならないで良いっスよ」
なんだろう。
気休めなんだろうけど、クロちゃんが言うと何となく安心できた。
●S-2:空のどこか/エーギル号客用船室
ボクたちは客用船室に纏めて放り込まれた。
客用といっても豪華客船でもなんでもないエーギル号だから、倉庫よりましという程度のものだった。
壁に半分埋め込まれたような二段ベッドを左右に置いて真ん中に辛うじて人が通れるほどの通路。
突き当りには申し訳程度の机が設置してある。
ソファなんかは当然だけど、ない。
仕方会ないので各自が適当に場所を決めて座ったり立ったり寝転んだりしてる。
ボクは二段ベッドの上段に腰を掛けて足をぶらぶらさせていた。
小さめの旅客機みたいに天井が低いので、ちょっと背中を丸めてだけど。
「あんまり足を動かすと中身が見えるっスよ」
「えっち!」
見るなよ!
だいたい下段で寝転んでるクロちゃんが悪い。
シュラちゃんなんかは入り口の傍で背中を壁に預けるように立っててくれてるのに。
体が大きいからみんなの邪魔にならないようになんだろうけど。
他にもマリちゃんもマーチスも賢者もヒンカ婆ちゃんもルシエさんといった男爵チーム(仮称)とアイリさんやルゥまで一緒にされていた。
これは狭っ苦しい。
「この状況だともう少しは説明してもらえるんスよな?」
クロちゃんがアイリさんに話しかけた。
もっともだ。
「う、うむ。しかし、こちらも状況が把握しきれていないのだ」
「それはどういうことっスか……」
そこでルゥが小さく手を挙げた。
「アイリさんが言ってることは事実です。でも、だからこそ最初から順番にお話しすべきでしょう」
「ほう……」
シュラハトが感心したような声をあげた。
うん。判るよ。
この子は結構賢い子なんだ。
「まずは……僕たちエルフとドラゴンはお互い不干渉の協定を結んでいます」
「へ?」
「え?」
「ちょいと待つでござるよ。それはドラゴンとは交渉ができるということなのでござるか?」
賢者がいつもの興奮した『ブフゥ』が出ない。
これはかなり真剣な感じなのかも。
「ええ。そうです。そして、その特使をとして派遣されたのが僕なのです」
巨大トカゲとお話する……想像もつかない。
予想もつかないというよりも想像の遥か斜め上を行っていたので、全員が無言になってしまった。
「空はエルフとドラゴンが大きな勢力なのですが、ここ数百年来は相互不干渉を原則にしています」
「ほーほー」
「いやあ。オレは空に鳥や飛行魔獣以外がいたこと自体が驚きなんスが……」
そりゃそーだよ。
今まで空を見ても飛行船の影も形も見たことなかったんだし。
まさかそこに人……もといエルフが住んでるなんて。
「かつては協力関係にあったりもしたのですけど歴史を説明すると長くなるので掻い摘んでお話します」
ルゥは10歳くらいに見える外見からは想像できないほど落ち着いていた。
「今まで大きな問題はなかったのですが、近年になって状況が変わってきました」
「どんな感じにじゃ?」
「一部の若いドラゴンが飛行船を襲撃するということが度々起きたのです」
「原因は何スか?」
「わかりません……」
ルゥが視線を落とした。
そこでアイリさんが補足する。
「当初は病気や呪いのようなものか、あるいは反動勢力の行動かと思われていたのだが……」
「それが違った、と?」
「ああ。ドラゴン側で起こった事件が我々エルフの仕業ではないかと思い込んだ一部のドラゴンたちの暴走だったのだ」
「なあに?それ」
マリちゃんが腕を組んで大きな胸を載せていた。
あ、あれはボクもできるぞ。
ちょっと楽なんだよね。肩凝らないし。
「幼いドラゴンや孵化前の卵が行方不明になったり、成竜前のドラゴンが殺されたりだそうだ」
「……んだ。そりゃあ」
シュラハトが眉を寄せた。
「ふーむ。脈絡がないように聞こえるっスなあ」
「ああ。こちらも捜査をしたが、エルフにそのようなことに関与した者は発見できなかった」
「……ふぅん」
床で座禅を組んだマーチスが首を傾げた。
「捜査が不十分だったということもありエマスが……そもそも、ドラゴンが死傷することによってエルフ側に利益が何かあるのでショウカネ?」
「ない」
アイリさんは即答した。
「空の二大勢力同士がゲリラ的に対決しても利益はない。だからこその共存共栄の協定なのだ」
ほんとに困ってるような顔だった。
「エルフの元老院では事態の収拾を図るためにドラゴンに対しての一切の戦闘行動の禁止を厳命して、特使を派遣することにしたのです。その特使が僕で、護衛として随行したのがアイリさんでした」
ルゥは誠心誠意で説明しようとしていたのかもしれない。
それでも辻褄が合わないことこの上ない。
「ですが、運悪く。エーギル号はドラゴン数体に襲撃されてしまいました。一切交戦をしなかったために船は大きな被害を受けて……あなたたちの地上へと不時着しました」
「地上との交流も禁止事項ではあるのだが、なんとか応急修理をして帰還しようとしていたのだが……」
「襲撃された……と?」
ううん。襲撃される理由が判らないぞ。
いや。まって。それって……。
「ね?それって両方を対立させるための第三勢力の仕業ってことはないのー?」
ボクが思いついた推論はそれだった。
利益が無いのにテロを行う理由が無い時は……たいていそういうものなんだ。
「それで得する連中はどこかに……」
「……ふうむ」
今度は全員が考えこんっでしまった。
みんな心当たりがないのかもしれない。
でもね。そういう時って、意外と訳の判らない逆恨みとかあるからねー。
んー。もうー。
「あれ?」
ボクはな何か引っ掛かるものがあった。
最近何か見た気がするぞ。
「ねー。ドラゴン……第三勢力……自分で言っててなんだけど」
「何か思いついたっスか?」
「エルフの飛行船と関係なく、ボクたちドラゴンに襲われたことあったよねー?」
「む?」
「ほらー。空飛ぶ怪獣軍団ー!」
「あ」
そうなんだ。
ボクたちは空飛ぶ怪獣軍団の中にドラゴンを見たはずなんだ。
まとめてぶっ飛ばしちゃったけど。
あれが全然関係ないわけないよね?
「確かに幼竜が混じってたっスな」
クロちゃんが頷く。
「幼竜って生後どのくらいのをいうのお?」
「だいたい50年以下っスな。多分あのサイズだと15~20年くらいじゃないっスかね」
「じゃあ、そのドラゴンがどうこうっていう事件はいつぐらいから始まってるのー?」
「それは……」
ルゥが一瞬、口籠って。
「ここ10数年です」
「ねえ?それって……」
「ビンゴかもー!」
我ながら良い着眼だったと思う。
問題は……だからといって解決法を思いついたわけではないことだった。
ボクたちは今はまだ軟禁されてる状態なんだよねー。
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