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10.牛丼よりも、愛を大盛、お願いします
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あれからもオッサンは、俺が働く牛丼屋にやってくる。
相変わらずカウンターに座って、牛丼大盛を頼んで完食したら、俺が仕事があがるまで待っててくれる。自分で言うのもなんだけど、愛されちゃってるよね、とか思ったり。
今までと違うのは、なぜだか、その両隣に武原さんと、その息子の若頭が座ってることが増えた。なんでだろう?
この二人だけじゃなくて、武原さんもいるせいか、護衛みたいな怖そうな人もいるから、店の中が狭く感じるんですけど。威圧感、半端ない~!
「……なんで親父がいるんだよ」
「……お前こそ、なんでいる」
見た目、どっちも系統の違うイケメンだけど、低音で言い合う様はやっぱり親子だなぁ、と思う。でも、止めて欲しい。他のお客さん、怖がってるから!
「政人」
「はいっ」
二人を無視して、オッサンは俺に声をかける。
その声にすぐに反応しちゃうあたり、俺も相当だよな、って思うけどね。
差し出された食券を確認して「牛丼大盛ですっ!」と声を張る。
「お、政人、俺も同じの」
「親父、いつも言ってるだろうが、先に食券買え。食券。政人、俺も大盛な」
「は、はい~」
うん、武原さん、自分で買わないよね。で、毎回、若頭に注意されてる。それも態となんじゃない? って、最近思うんだけど。もう、ここ、武原組の専用の牛丼屋みたい。店長も顔色悪いんだけど。
「た、高橋くん、そ、それよろしくね」
苗字を呼ぶとか、店長、どんだけ緊張してるんですか。苦笑いしながら、受け取る俺。
「お待たせしました」
カウンターに座るオッサンの目の前に、大盛の牛丼。視線は牛丼から俺に向けられて、ニヤリと笑う。不意にそんな笑みを浮かべられると、動揺しちゃうよ。
「剣」
「藤崎~」
渋い顔の武原さんと、ニヨニヨしてる若頭。
「お先に」
いい笑顔で二人に言うあたり、やっぱりカッケェって思う。オッサンの黙々と食べてる姿を見続けたいとか思うけど。
「ぎゅ、牛丼大盛、二つ、お願い~」
「は~い」
店長、俺以外にもいるよね。中を見ると、和田くんもいる。逃げ腰になってるんじゃないよ。
でも、こうしてオッサンの近くにいられるのは、正直、嬉しいって思う。
「はい、牛丼大盛です」
「サンキュ、あ、親父、紅ショウガくれ」
「そっちにもあるだろ」
「いいだろ、そこにあんだからよ」
「……若頭、邪魔です」
……うん、全然、怖くないね。
オッサンたちが牛丼をかきこんでる姿に、なんだか和んでしまう。
店のドアが開いて、お客さんが入ってきた。ああ、やっぱり、ビビるよね。この状況は。
「いらっしゃいませ!」
そんな空気を吹き飛ばすように、俺は元気に声を出す。
視線を感じてカウンターを見ると、箸を持ったオッサンが優しく笑いながら、俺を見ていた。
もう、やっぱり、カッケェな。
俺はニヘラッと笑い返すと、お客さんの元へと向かうのだった。
▶END◀
相変わらずカウンターに座って、牛丼大盛を頼んで完食したら、俺が仕事があがるまで待っててくれる。自分で言うのもなんだけど、愛されちゃってるよね、とか思ったり。
今までと違うのは、なぜだか、その両隣に武原さんと、その息子の若頭が座ってることが増えた。なんでだろう?
この二人だけじゃなくて、武原さんもいるせいか、護衛みたいな怖そうな人もいるから、店の中が狭く感じるんですけど。威圧感、半端ない~!
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見た目、どっちも系統の違うイケメンだけど、低音で言い合う様はやっぱり親子だなぁ、と思う。でも、止めて欲しい。他のお客さん、怖がってるから!
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「お、政人、俺も同じの」
「親父、いつも言ってるだろうが、先に食券買え。食券。政人、俺も大盛な」
「は、はい~」
うん、武原さん、自分で買わないよね。で、毎回、若頭に注意されてる。それも態となんじゃない? って、最近思うんだけど。もう、ここ、武原組の専用の牛丼屋みたい。店長も顔色悪いんだけど。
「た、高橋くん、そ、それよろしくね」
苗字を呼ぶとか、店長、どんだけ緊張してるんですか。苦笑いしながら、受け取る俺。
「お待たせしました」
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「剣」
「藤崎~」
渋い顔の武原さんと、ニヨニヨしてる若頭。
「お先に」
いい笑顔で二人に言うあたり、やっぱりカッケェって思う。オッサンの黙々と食べてる姿を見続けたいとか思うけど。
「ぎゅ、牛丼大盛、二つ、お願い~」
「は~い」
店長、俺以外にもいるよね。中を見ると、和田くんもいる。逃げ腰になってるんじゃないよ。
でも、こうしてオッサンの近くにいられるのは、正直、嬉しいって思う。
「はい、牛丼大盛です」
「サンキュ、あ、親父、紅ショウガくれ」
「そっちにもあるだろ」
「いいだろ、そこにあんだからよ」
「……若頭、邪魔です」
……うん、全然、怖くないね。
オッサンたちが牛丼をかきこんでる姿に、なんだか和んでしまう。
店のドアが開いて、お客さんが入ってきた。ああ、やっぱり、ビビるよね。この状況は。
「いらっしゃいませ!」
そんな空気を吹き飛ばすように、俺は元気に声を出す。
視線を感じてカウンターを見ると、箸を持ったオッサンが優しく笑いながら、俺を見ていた。
もう、やっぱり、カッケェな。
俺はニヘラッと笑い返すと、お客さんの元へと向かうのだった。
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