上 下
84 / 92
10.牛丼よりも、愛を大盛、お願いします

60

しおりを挟む
 目の前にいる天童と海老沢。二人並んで座ってる。
 涙は止まったけれど、涙を拭き過ぎて目の周りを真っ赤にしている天童。
 長い脚を偉そうに組みながら、思いっきり不機嫌そうに俺を睨みつけている海老沢。
 本来なら二人の修羅場、のはずが、なぜか責められてる俺。

 ……なんか、おかしくない?

「どうもこうもないわ。原因はお前だ。お前。海老沢」

 怒りたいのは俺の方だっての。
 不機嫌そうに文句を言う俺だけど、海老沢の方は納得いかないって顔してるし。
 理不尽だ。

「なんで俺よ」
「はぁ? お前、自覚なしとか、最低だなっ」
「……何のこと?」

 俺がマジで怒ってることがわかったのか、今度は困惑する海老沢。そりゃそうだよな。俺、あんまり怒ることないし。
 そして隣で泣きそうな顔で俯く天童を心配そうに見下ろし、優しく声をかける。

「テンちゃん、どうしたの?」
「……っ!?」

 ……おいおい。奥の方で人が少ないとはいえ、ここ、一応、学食だから。
 俺の目の前で天童の手を両手で握りしめるとか、やめれ。天童も恥ずかしそうにしてるだろうがっ。というか、見てる俺の方が恥ずかしいぞっ。
 仕方がないから、俺が代弁するしかない。

「んんんっ、お前、天童と付き合ってるんだろ。それなのに、女と朝から一緒にくるとか、ありえねぇだろ」
「は?」
「は? じゃねぇよ。 お前ら、仲良く入ってきたの、天童が見たらどう思うかって考えろよ」

 俺の言葉にキョトンとする海老沢。

「……テンちゃん、高橋に俺たちのこと、言っちゃったの?」
「だ、だって」

 俺の言葉を無視して、海老沢は天童に話しかける。
 おいおい、距離、近い、距離、近いってば。天童は天童で、困ったような顔してるだろうが。

「……もう……やだ、嬉しいっ」

 海老沢は突然天童を抱きしめた。まさに、ギュウギュウと音が聞こえそうなほどに。

「えっ、えっ、えっ?」

 抱きかかえられてる天童は目を白黒させている。それは状況のわかってない俺も同様で。

 ……えーと。これは、どういうこと? わけわからん。

 俺は呆れて二人を見つめるしかなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

くまさんのマッサージ♡

はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。 2024.03.06 閲覧、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。 2024.03.10 完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m 今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。 2024.03.19 https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy イベントページになります。 25日0時より開始です! ※補足 サークルスペースが確定いたしました。 一次創作2: え5 にて出展させていただいてます! 2024.10.28 11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。 2024.11.01 https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2 本日22時より、イベントが開催されます。 よろしければ遊びに来てください。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

とろとろ【R18短編集】

ちまこ。
BL
ねっとり、じっくりと。 とろとろにされてます。 喘ぎ声は可愛いめ。 乳首責め多めの作品集です。

僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。 「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」 高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。 そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに… その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。 ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。 かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで… ハッピーエンドです。 R18の場面には※をつけます。

年上の恋人は優しい上司

木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。 仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。 基本は受け視点(一人称)です。 一日一花BL企画 参加作品も含まれています。 表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!! 完結済みにいたしました。 6月13日、同人誌を発売しました。

処理中です...