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9.俺と母親の幸せの形
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アパートに向かう間、ほとんど無言の車内。なんとなく居心地が悪いなぁ、なんて思ってたタイミングで、俺のバッグの中からマナーモードにしてあったスマホの振動音が聞こえてきた。
「でなくていいのか」
こんな時間に誰からだ? と思いながら、電話にでようか迷ってた俺に、若頭のほうから聞いてきた。
「あ、はい……じゃ、す、すみません」
手にした携帯に表示されている名前を見ると、みわ子からだ。そういえば、拉致られた後、まったく連絡も入れてなかったことを思い出す。俺は慌てて、電話に出た。
「は、はいっ」
『政人、今、どこっ』
みわ子の悲鳴のような焦った声が聞こえてきた。たまたま目が覚めたのかもしれない。
いつもなら俺も帰宅して、寝てすらいる時間。それなのに帰宅した様子もなく、LINEでの連絡もないのに気付いて電話してきたのかもしれない。
俺だって二十歳を過ぎた大人なんだけど、借金取りに脅され続けてたみわ子にしてみれば、もしかして、という恐怖はいまだに残ってる。だからこそ、マメに連絡をいれてはいたのに。今回ばかりは俺の失敗だ。
「ごめん、連絡し忘れてた。今、そのぉ……」
つい、チラリと隣に座る若頭の顔色を伺ってしまう。
「し、知り合いの人の車で送ってもらってるから」
『そ、そうなの? 本当に?』
「ほ、本当、本当。あ、もうすぐ着くから」
『わかった。迎えに行く』
「うぇっ!? いいよっ……あ、ああ、切っちゃった」
まさかの、みわ子迎えに行く発言……若頭見たら、ビビっちゃうか……と思ったけど、若頭単体なら、ヤクザだとは思わないか? スキンヘッドたちだったらアウトだな。
「なんか、随分と騒がしかったな」
「あ、ああ、母がちょっと……心配性でして……」
苦笑いしながらそう答えると、若頭が気の毒そうな顔をする。
「お前もいい大人だろうに」
「はぁ……うち、母子家庭で……ちょっと、色々ありまして……」
そんな俺たちを助けてくれたのは、若頭の父親なんですけどね。それは口にしないけど。
みわ子に伝えた通り、大通りの角を曲がった細い通りの突き当りに、俺たちのアパートが見えてきた。と同時に、パジャマに大き目なグレーのパーカーを羽織ったみわ子の小さな姿が見えてきた。心配そうな顔でウロウロしているのが、街灯に照らされてるせいで、よく見える。
「うわ、マジでヤバイ」
つい、ポソッと呟いた声に、若頭がニヤニヤ笑う。
「しっかり怒られろ。俺が見届けてやる」
夜中に怒鳴り散らすことはないとは思うけど、怒られるのは目に見えてる。でも、そもそも、この車見ただけで、みわ子、ビビりそうなんだけど。
車がみわ子の目の前に停まった。俺は溜息をつきながら後部座席のドアを開けた。 案の定、みわ子は目をまんまるにして固まって立ってる。
「えーと、ただいま」
「……」
みわ子、声もない。
若頭が反対側のドアから降りて、俺の隣へと歩いてくる。うん、デカいよね。みわ子、ポカーンとした顔で見上げてる。
「すみませんね。マサトくん、遅くまで連れまわしちゃって……」
「へっ」
みわ子、変な声で返事するな。口、口開いたまま。閉じろ、みっともないから。恥ずかしいなぁ、と思いながら、若頭のほうへとチラリと目を向けると、なぜか若頭のほうもみわ子のことを見ながら目を見開いてる……あれ、なんで?
「でなくていいのか」
こんな時間に誰からだ? と思いながら、電話にでようか迷ってた俺に、若頭のほうから聞いてきた。
「あ、はい……じゃ、す、すみません」
手にした携帯に表示されている名前を見ると、みわ子からだ。そういえば、拉致られた後、まったく連絡も入れてなかったことを思い出す。俺は慌てて、電話に出た。
「は、はいっ」
『政人、今、どこっ』
みわ子の悲鳴のような焦った声が聞こえてきた。たまたま目が覚めたのかもしれない。
いつもなら俺も帰宅して、寝てすらいる時間。それなのに帰宅した様子もなく、LINEでの連絡もないのに気付いて電話してきたのかもしれない。
俺だって二十歳を過ぎた大人なんだけど、借金取りに脅され続けてたみわ子にしてみれば、もしかして、という恐怖はいまだに残ってる。だからこそ、マメに連絡をいれてはいたのに。今回ばかりは俺の失敗だ。
「ごめん、連絡し忘れてた。今、そのぉ……」
つい、チラリと隣に座る若頭の顔色を伺ってしまう。
「し、知り合いの人の車で送ってもらってるから」
『そ、そうなの? 本当に?』
「ほ、本当、本当。あ、もうすぐ着くから」
『わかった。迎えに行く』
「うぇっ!? いいよっ……あ、ああ、切っちゃった」
まさかの、みわ子迎えに行く発言……若頭見たら、ビビっちゃうか……と思ったけど、若頭単体なら、ヤクザだとは思わないか? スキンヘッドたちだったらアウトだな。
「なんか、随分と騒がしかったな」
「あ、ああ、母がちょっと……心配性でして……」
苦笑いしながらそう答えると、若頭が気の毒そうな顔をする。
「お前もいい大人だろうに」
「はぁ……うち、母子家庭で……ちょっと、色々ありまして……」
そんな俺たちを助けてくれたのは、若頭の父親なんですけどね。それは口にしないけど。
みわ子に伝えた通り、大通りの角を曲がった細い通りの突き当りに、俺たちのアパートが見えてきた。と同時に、パジャマに大き目なグレーのパーカーを羽織ったみわ子の小さな姿が見えてきた。心配そうな顔でウロウロしているのが、街灯に照らされてるせいで、よく見える。
「うわ、マジでヤバイ」
つい、ポソッと呟いた声に、若頭がニヤニヤ笑う。
「しっかり怒られろ。俺が見届けてやる」
夜中に怒鳴り散らすことはないとは思うけど、怒られるのは目に見えてる。でも、そもそも、この車見ただけで、みわ子、ビビりそうなんだけど。
車がみわ子の目の前に停まった。俺は溜息をつきながら後部座席のドアを開けた。 案の定、みわ子は目をまんまるにして固まって立ってる。
「えーと、ただいま」
「……」
みわ子、声もない。
若頭が反対側のドアから降りて、俺の隣へと歩いてくる。うん、デカいよね。みわ子、ポカーンとした顔で見上げてる。
「すみませんね。マサトくん、遅くまで連れまわしちゃって……」
「へっ」
みわ子、変な声で返事するな。口、口開いたまま。閉じろ、みっともないから。恥ずかしいなぁ、と思いながら、若頭のほうへとチラリと目を向けると、なぜか若頭のほうもみわ子のことを見ながら目を見開いてる……あれ、なんで?
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