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7.オッサンとの距離感に困惑する俺
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キャバクラのママが差し出した傘を、無言で受け取ったオッサンに肩を抱えられながら、俺はフラフラと歩いてる。雨が降ってるせいで、少し肌寒いけど、俺の肩を掴むオッサンんの大きな手が、温かいなぁ、とか思ってる。
どうも俺はちょっと飲み過ぎたらしい。いや、アルコールが高いのを飲まされただけだから、量を飲み過ぎたわけじゃない。うん。だけど、足に力が入らないんだ。なんか、情けない……。
「まっすぐ歩け」
オッサンの呆れたような声が、ぼわんと聞こえる。
「す、すみましぇん……」
情けないくらい呂律が回ってない。ここに海老沢がいたら、思い切り馬鹿笑いされてる。
俺は、オッサンが怖い顔をして現れた時のことを思い出す。チンピラに絡まれた時ですら、それほど感情を露わにしなかったオッサンが、この時ばかりは、一瞬だけ俺の酔いが覚めるくらいに怖かった。そんなオッサン相手に『坊ちゃん』はどこかご機嫌そうで、酔った頭でも、この人も怖いもの知らずだな、と思った。
オッサンは何も言わずに、目の前に止まってるタクシーに俺を押し込むと、その隣に大きな身体で乗り込んできた。ぼーっと窓の外を見ると、雨足はだいぶ落ち着いている。気が付くとタクシーは動き出していて、どこにいくんだろう? と酔った頭で考えた。その間、オッサンは何も言わない。だけど、問いかける気力も湧かない俺は、いつの間にか目を閉じていた。
どれくらい経ったのか。時間の感覚もなくて、深い眠りに落ちていたようだ。
「政人」
うん? 優しい誰かの声が聞こえて、徐々に意識が覚醒していく。
「ほら、起きろ」
うーん? 誰だ。明らかに男の声だから、みわ子じゃない。俺は、重い瞼をなんとか開けようとするんだけど、まるで、粘着テープでもついてるんじゃないか? って思うくらい、開けられない。
「しょうがねぇなぁ……」
ずるりと引き寄せられたかと思ったら、急にふわりと身体が浮いた気がした。
――あれ? 俺、抱きかかえられてる? てか、誰に!?
その驚きで、バキンッと急に眠気が覚めて、バチッと目が開いた。
「起きたか」
ええ、起きましたとも。目の前に、オッサンの精悍な顔がありますから。思いの外、穏やかな声にも驚いてますけどね。
「ほえっ、な、なんで?」
情けない声を出しながら、だらしなく開けた口に涎が出てないか、無意識に手で拭う。辛うじて無事だったことにホッとしながら、改めて自分の今の状況に、慌ててしまう。
ていうか、オッサン、俺を簡単に抱えすぎだろっ!
「あ、あの、降ろしてくださいっ」
「……ああ」
ストンと地面に足をついて軽く体がふらつく。俺はなんとか踏ん張ると、周囲を見渡した。
「えと、ここ……どこですか?」
タクシーはすでになく、雨はあがってる。夜中を過ぎているせいで、人影はない。そして目の前には背の高いマンションが建っていた。
オッサンは俺の問いには答えずに、そのマンションの方へと向かっていく。俺はマンションを見上げながら、つい、うちの古びたボロアパートを思い出してしまう。
「早く来い」
振り返って俺を呼ぶオッサンの声に、我に返る。
「え?」
「泊めてやる。早く来い」
オッサンはぶっきらぼうにそう言うと、エントランスの中へ入っていく。ここまでくると、状況がよくわからないながらも、俺はオッサンを追いかけていくしかなかった。
どうも俺はちょっと飲み過ぎたらしい。いや、アルコールが高いのを飲まされただけだから、量を飲み過ぎたわけじゃない。うん。だけど、足に力が入らないんだ。なんか、情けない……。
「まっすぐ歩け」
オッサンの呆れたような声が、ぼわんと聞こえる。
「す、すみましぇん……」
情けないくらい呂律が回ってない。ここに海老沢がいたら、思い切り馬鹿笑いされてる。
俺は、オッサンが怖い顔をして現れた時のことを思い出す。チンピラに絡まれた時ですら、それほど感情を露わにしなかったオッサンが、この時ばかりは、一瞬だけ俺の酔いが覚めるくらいに怖かった。そんなオッサン相手に『坊ちゃん』はどこかご機嫌そうで、酔った頭でも、この人も怖いもの知らずだな、と思った。
オッサンは何も言わずに、目の前に止まってるタクシーに俺を押し込むと、その隣に大きな身体で乗り込んできた。ぼーっと窓の外を見ると、雨足はだいぶ落ち着いている。気が付くとタクシーは動き出していて、どこにいくんだろう? と酔った頭で考えた。その間、オッサンは何も言わない。だけど、問いかける気力も湧かない俺は、いつの間にか目を閉じていた。
どれくらい経ったのか。時間の感覚もなくて、深い眠りに落ちていたようだ。
「政人」
うん? 優しい誰かの声が聞こえて、徐々に意識が覚醒していく。
「ほら、起きろ」
うーん? 誰だ。明らかに男の声だから、みわ子じゃない。俺は、重い瞼をなんとか開けようとするんだけど、まるで、粘着テープでもついてるんじゃないか? って思うくらい、開けられない。
「しょうがねぇなぁ……」
ずるりと引き寄せられたかと思ったら、急にふわりと身体が浮いた気がした。
――あれ? 俺、抱きかかえられてる? てか、誰に!?
その驚きで、バキンッと急に眠気が覚めて、バチッと目が開いた。
「起きたか」
ええ、起きましたとも。目の前に、オッサンの精悍な顔がありますから。思いの外、穏やかな声にも驚いてますけどね。
「ほえっ、な、なんで?」
情けない声を出しながら、だらしなく開けた口に涎が出てないか、無意識に手で拭う。辛うじて無事だったことにホッとしながら、改めて自分の今の状況に、慌ててしまう。
ていうか、オッサン、俺を簡単に抱えすぎだろっ!
「あ、あの、降ろしてくださいっ」
「……ああ」
ストンと地面に足をついて軽く体がふらつく。俺はなんとか踏ん張ると、周囲を見渡した。
「えと、ここ……どこですか?」
タクシーはすでになく、雨はあがってる。夜中を過ぎているせいで、人影はない。そして目の前には背の高いマンションが建っていた。
オッサンは俺の問いには答えずに、そのマンションの方へと向かっていく。俺はマンションを見上げながら、つい、うちの古びたボロアパートを思い出してしまう。
「早く来い」
振り返って俺を呼ぶオッサンの声に、我に返る。
「え?」
「泊めてやる。早く来い」
オッサンはぶっきらぼうにそう言うと、エントランスの中へ入っていく。ここまでくると、状況がよくわからないながらも、俺はオッサンを追いかけていくしかなかった。
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